41. バズ・ライトイヤー
《ネタバレ》 もはや説明のしようのないディズニーの大ヒットアニメシリーズ『トイストーリー』。その中に登場する、「さぁ無限の彼方へ」のセリフで有名なおもちゃ、バズ・ライトイヤーを主人公としたスピンオフ作品。トイストーリーはあの1から3までの3部作が最高に好きだったので、余計な蛇足でしかなかった4があまりに酷かったこともあり、本作もずっと観る気はありませんでした。それが今回地上波でノーカット放送されるということで、まぁタダならいいかと今回鑑賞。そんな期待値ゼロで観始めたのが功を奏したのか、意外と悪くないじゃん、これ。冒頭から、超高速で移動したら時間の経過が遅くなるという『インターステラー』ばりのハードSF設定にハート鷲掴まれでした。他にも、「これ、子供ついてこれんのか?」ってくらい、過去の名作SF映画への愛が随所にちりばめられていて自分はけっこうアリ。『エイリアン』や『エイリアン2』、『スターウォーズ』シリーズの名場面を髣髴とさせるシーンがてんこ盛りだし、あの大量の虫型エイリアンに襲われるシーンなんて完全に『スターシップ・トゥルーパーズ』だったしね。そんな女子供そっちのけの内容の中で、あのモフモフ猫型ロボットの可愛さがナイス!!中盤、顔が半分潰れた彼が登場した時はその健気なグロ可愛い姿に胸キュンでした。まぁ最後のマルチバースな展開はちょっとどうかと思うけど。あと、最近のディズニーではお馴染み、ポリコレへの過剰な配慮が鼻につくのも相変わらず。とは言え、エンタメに全振りした内容は単純に良く出来ていたし、トイストーリーシリーズとか考えずに観たら自分はボチボチ楽しました。まぁタダだったし(笑)。 [地上波(吹替)] 6点(2024-10-13 10:20:07) |
42. スラムドッグス
《ネタバレ》 あのサイテー野郎のチ〇コに噛みついてやる――。彼の名前はレジー。ミックステリアという種類のちょっと小さめのワンコだ。生まれたばかりの自分を拾ってくれた飼い主ダグがレジーは大好き。でも、ずっと一緒に暮らしていた女の人が出ていってから、ダグはあまりレジーの相手をしてくれなくなった。そればかりか自分のことを、「このクソ犬が!」って呼ぶことも増えてしまう。それでもレジーは、ダグが最近お気に入りの遊び、遠くに投げたボールを持って帰ってくるゲームに夢中だった。でもその日、レジーが連れてこられたのは、初めて見るものばかりの遠く離れた街だった。「きっと僕はダグに捨てられたんた」。あまりのことに呆然となるレジー。復讐の炎がメラメラと湧きあがった彼は、この街で知り合った仲間の犬たちとダグの家を目指して旅に出るのだった。そう、アイツが一番大事にしているものを噛みちぎってやるために……。パッケージだけ見ると、犬が喋るほのぼの系の動物ファンタジーかと思いきや、これが下ネタ・お下劣ネタ満載のブラックコメディでした。だって、主人公と仲間になるフレンチブルドックがいきなり「野良犬ってサイコーだぜ。いつでも何処でもファック出来るからな」と言い出して、近所のゴミ捨て場に捨てられたソファと〝ヘコヘコ〟し始めるんですもん。他にもアソコがデカいのに気が小さくて警察犬になれなかったグレートデンやヒステリー気質で若干メンヘラなメスシェパードとか、のちに仲間となる犬もだいぶ個性的。こいつらが元飼い主のチ〇コに咬みつくために旅に出るってどんなストーリーやねん(笑)。対する元飼い主もネットのエロ動画見ながらヘコヘコしてたりマリファナやりまくってたり浮気してたりと、だいぶクズ。いや、これ何も知らず「カワイイ犬映画だ」だと家族で観始めたらだいぶ気まずいやろ!でも、そんなお下品100%の内容なのに、これがもう振り切ってて自分はかなり笑っちゃいました。森の中で怪しいキノコを食べてラリちゃった4匹が現実に覚めた時のネタとか、ブラック過ぎてもう爆笑(モフモフのカワイイウサギたちが!笑)。全体的に、青春映画の名作『スタンドバイミー』のパロディになってるのが良いですね。とにかくこの4匹が皆、ちゃんとキャラ立ちして魅力的なのが大変グッド。最後、とうとうクズ飼い主の元へと帰ってきた4匹がみなで協力してアソコに咬みつこうとするシーンなんて、かなりやり過ぎ感半端ないけどサイコーだったし!まぁ、さすがにちょっと下ネタがしつこいのとうんこだらけの監獄脱出シーンがばっち過ぎたので、そこがちょとマイナスかな。とは言え、可愛いワンコたちとお下劣下ネタワールドとのギャップにだいぶ萌えました。続編できたら絶対観るぞ! [DVD(字幕)] 8点(2024-10-01 11:04:50) |
43. CLOSE/クロース(2022)
《ネタバレ》 13歳になったばかりのレオと近所に住む同い年の少年レミは、子供のころからいつでも一緒にいる大の親友同士。ヒマさえあれば互いの家に行き来し、食事や寝る時も遊ぶ時も親の仕事を手伝う時もいつも一緒、お互いの親同士ももはや家族同然と言ってもいいくらい仲の良い2人だった。レオはアイスホッケー、レミはクラリネット演奏と趣味はまったく違うもののそれでも2人はお互いに応援し合い満たされた日々を過ごしている。きっと僕たちの友情は永遠に続くんだろう。そう信じきっていた。あの日を迎えるまでは――。中学校に入ってクラスメイトから掛けられた何気ない一言、「君たち、実は付き合ってるの?」。その言葉がレオの心を酷く動揺させる。休み時間に素っ気ない態度を取ったり、何も言わずわざと先に帰ったり、レオは何気なくレミと距離を取ろうとするのだった。途端にギクシャクしてゆく2人。納得いかないレミはある日、レオと大喧嘩してしまう。そして、2人の関係はその後、取り返しのつかない事態に陥ってしまうのだった……。とにかく文句なしに映像が美しい作品でした。色とりどりの花が咲き乱れるキレイな花畑をキラキラとした陽光を浴びながら駆けてゆく美しい少年たち……。イエローを基調とした映像のその吸い込まれそうな美しさに、僕は終始目が釘付けでした。主演を務めた2人の少年のもう本当の親友同士なのではとも思える等身大の魅力も素晴らしい。監督の豊かな色彩感覚と詩情溢れる映像センス、繊細で気品に満ちた音楽も相俟って、この世界に永遠に浸っていたいとさえ思えてくる。ただ、物語はそれとは真逆のとても哀しい顛末を辿ります。思春期特有の誰もが体験したであろう些細な行き違いと喧嘩。結果、それが最悪の悲劇を招いてしまう。誰が悪いわけでもない。でも、レオはまだ経験しなくてもいいような心の負荷を負わされ、互いの家族を巻き込んでどんどんと追い詰められてゆく。正直、観ればみるほど気分が沈んでゆくお話なのですが、主人公をはじめとするこの家族たちのひたむきさに心打たれます。特に、圧倒的な悲劇を体験しながらそれでも前向きに生きようとするレミのお母さんの凛とした佇まいに、僕は思わず涙してしまいました。誰の気持ちも痛いほど分かる丁寧で繊細な心理描写、そんな中でこの監督の人に対する暖かな視線が光ります。映画としてもう少しドラマティックな展開があればなお良かったとも思いますが、それは好みの問題なのでしょう。思春期に誰もが経験する切ない思いを瑞々しく切り取った、まるで宝石のように美しい物語でした。 [DVD(字幕)] 7点(2024-09-27 09:08:03) |
44. エスター ファースト・キル
《ネタバレ》 あの超凶悪ロリっ娘エスターが帰ってきた!!可愛い笑顔の裏に冷酷なナイフを忍ばせて周りの大人たちを恐怖のどん底に陥れた、あの史上最恐の9歳児にまさかの続編登場。でも、前作はそもそもあの巧みなミスリードの見せ方と驚異の大どんでん返しが見事な作品だっただけに、完全ネタバレ状態でどう続編を作るのだろうと思ったらまさかの前日譚でした。これがねぇ……、エスターの正体を分かったうえで見ると始まりの惨劇&脱出シーンからちっともハラハラしないんですよね~~。だって前作はこんな普通の子供がどうしてこんな恐ろしいことを?というのがじわじわと恐怖を掻き立てたのに、これじゃ普通の殺人鬼がただただ人を殺しまくってるだけじゃん。まぁ前作のラストを考えるとこーゆー前日譚でしか作れなかっただろうし、そもそも続編を作ること自体失敗だったのでは。それにここまでネタバレ状態ではストーリーを最後まで引っ張れないと思ったのか、途中からまさかの家族の方もサイコパスでしたと言う無理やりなどんでん返し!殺人鬼vs殺人鬼って……。こんなのもう、ジェイソンvsフレディとか貞子vs伽椰子みたいなもんでちっともサスペンスが盛り上がらないですよ。前作が良かっただけになんとも残念な続編でございました。もし前作未見で本作からエスターを観ようとしてる方がいたら、一映画ファンとして絶対やめた方がいいと進言しておきます。 [DVD(字幕)] 4点(2024-09-27 08:45:40)(良:1票) |
45. ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
《ネタバレ》 確かに子供が観たらおしっこちびりそうになるほど楽しい作品なのは分かるけど、いい歳こいたおっさんが一人で観るとさすがに内容がなさすぎじゃないですか、これ。マリオは初代ファミコンで3にドハマりしたのが最後の自分にとっては、マリオカートもスマッシュブラザーズ?ネタもいまいちピンとこず。もう少しマリオ兄弟の仲を掘り下げてほしかったし、ピーチ姫とクッパとマリオの三角関係ももっとままならない大人の男女視点で描いても良かったのでは?例えば、ただ好きな人と一緒になりたかっただけなのにその全ての努力が空回りするモテない男クッパの悲哀とかさ。とは言え、息をもつかせぬスピーディな展開や超ハイクオリティなCG、何より初代マリオの2D横スクロール画面を3Dで描いたトコなんかは素直に面白かったです。要は、「そもそもおっさんが夜中に一人で観て楽しむような映画ちゃうし」ということなんでしょうね(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2024-09-17 10:54:12) |
46. マルセル 靴をはいた小さな貝
《ネタバレ》 「皆さん、はじめまして。僕の名前はマルセル。君たち人間からしたらとっても小さな存在だと思うけど、ちゃんとここに居るよ。見ての通り、僕の身体は貝殻。でも、ちゃんと靴は履いてる。僕が住んでるこの家には、僕の仲間の貝殻たちが20匹もいたんだ。でも、色々あって今はもう2匹しかいない。僕とお祖母ちゃんのコニー。もちろん寂しいけど、何とか暮らしてる。でもね、やっぱり僕は家族のことが心配なんだ」――。短期滞在型のゲストハウスに越してきたアマチュア映画作家のディーンは、そんな小さな貝殻であるマルセルと出会う。こいつはなんてユニークなんだと彼の映像を動画に撮り、ネットにアップしてみると案の定、彼の存在は瞬く間に評判を呼び、再生回数はうなぎ上り。マルセルは一躍人気者となるのだった。テレビや雑誌から取材依頼が殺到、彼を一目見ようと遠くからたくさんの人たちがやってくることに。でも、マルセルはやっぱり居なくなった仲間のことが心配で仕方ない。彼は、前住人の荷物に紛れて連れ去られてしまった仲間たちを捜しに行こうとディーンに提案する。そんな折、お祖母ちゃんが棚から落ちて大怪我をしてしまい……。靴を履いた小さな貝殻であるマルセルの日常と冒険を、実写とストップモーションを組み合わせて描いたアニメーション。とにかくこのユニークな発想となんとも言えないほのぼのとした雰囲気が終始心地良い作品でしたね、これ。まぁNHKのEテレなんかでよくある5分程度のパペットアニメを引き延ばして映画にしただけという気がしなくもないですが、自分はこーゆー独自の世界観、嫌いじゃない。なにより主人公であるマルセルの声が良いんですよね~。声変わり間近の男の子って感じのこのたどたどしい喋り方がなんとも愛らしくて、思わずぎゅっとしたくなってしまいます(実際にしたらぶちゅっと潰れるだろうけど!笑)。また、終始ほのぼのしてるだけじゃなくて、この貝殻から見た人間世界がどこか歪んでるのもシニカルで大変グッド。マルセルが家族を捜したいって訴えてるのに動画を見た視聴者はただ面白がって家に押しかけて不法侵入するだけだったり、人間カップルが常に怒鳴り合いの大喧嘩してたり離婚調停中だったりと現実的なのがこのふわふわとした物語に深みを与えている。そして、怪我が原因で体調を崩してしまったお祖母ちゃん貝殻。彼女が孫のマルセルの為に必死に元気な姿を装おうとするとこなんかジーンときちゃいますね(多少あざとさは感じるけども!笑)。そして最後は見つかった20匹の様々な貝殻たちとパーティーして大団円。さすがにこんなに動く貝殻が居ると気持ち悪……、いや感動的でした。うん、なかなか個性的で面白かった! [DVD(字幕)] 7点(2024-09-11 13:41:41) |
47. M3GAN ミーガン
《ネタバレ》 彼女の名は、ミーガン。最新の学習型AIを搭載したアンドロイド型玩具だ。9歳の少女の姿をした彼女は、自ら思考しほぼ自立して行動できるもはや人間とほとんど変わらない存在だった――。交通事故で両親を亡くし哀しみの底に沈んでいた少女ケイティ。一人ぼっちになってしまった彼女は、玩具メーカーに勤める伯母ジェマに引き取られることに。だが、両親を亡くしてしまったショックから、ケイティは誰にも心を開かずいつも一人で過ごしていた。どう接していいのか分からないジェマは、まだ試作段階であったミーガンを家に持ち帰り、ケイティに与えるのだった。自分の傷ついた心に寄り添ってくれるかのようなミーガンの優しい言葉や気遣いに、瞬く間に心を開くケイティ。ご飯を食べる時も遊ぶ時も常に一緒のもはや大の親友同士と言ってもいい関係を築いてゆく2人。だが、まだ誰も知らない。ミーガンは自ら学習し思考する機能により、徐々にその一途な愛情を暴走させてしまうことを……。巷で何かと話題になっていた本作、これが期待通りの面白さで自分は大満足でした!何が良いかって、もちろんミーガンのあまりにキャラ立ちしまくった唯一無二の造形美。おめめぱっちりのふさふさ金髪美少女なのに、どこか人をいや~~~な気持ちにさせるとこなんかもうサイコー!彼女が喋ったり微笑んだりするだけで、なんか物凄く不安になってくる。本物の人形が動いてるかのようなこのぎこちない動きは全部CGなのかなと思ってメイキングを見てみたら、なんと何十体もの様々なミーガンを用意して何人もの人形師が動かしていたとのこと。いやー、この絶妙な気持ち悪さはやはりこんなアナログな手法から来てるんですね。ミーガンが意地悪な男の子の耳を引きちぎったり、隣の嫌がらせおばさんを高圧洗浄機でむちゃくちゃにするシーンは斬新過ぎて「ひえぇぇ」と変な声が出ちゃったし。そしてミーガンの全身が映るシーンは、実際の少女が人形のお面を被って演じていたそうで。ネットで話題となったあのクネクネダンスはこのプロ級のテクを持った子役が実際に踊ったらしいですね。あのシーンはしばらく脳裏に焼きつくくらい強烈なインパクト!いやー、あそこだけでご飯何杯でもいけます。ただ惜しいのは、全体的に演出が大人しめで優等生にすぎること。エンタメなんだからクライマックスはもっとやり過ぎってくらいぶっ飛んだ展開にして欲しかった気がしなくもない。そこいらへんが少々物足りなくもありましたが、それでも充分面白かったです!とにかくミーガンのキャラが強烈過ぎてこれはもう続編決定ですね!以下、本作を観て思い出したどーでいい余談。以前とあるアダルトショップに行ってみたら、奥の方の暗がりのショーケースに一体ウン十万もする超リアルな少女型ラブドールが置いてあって、心底ビックリしました。人形も怖かったけど、これを買う人の方がよっぽど怖いわって後で思った記憶が…(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2024-09-11 13:02:11) |
48. コンパートメントNo.6
《ネタバレ》 1990年代のロシア。フィンランドからの留学生である中年女性ラウラは、世界最北端の駅ムルマンスクへの旅行を計画する。目的は、その地にある有名なペトログリフを見に行くこと。それは1万年前、この地に暮らしていた人類が岩肌に描いたという壁画だった。考古学者であるラウラはそんな人類最古と言ってもいい貴重な壁画を見ることが長年の夢だったのだ。ところが出発直前になって、一緒に行く予定だった同性の恋人からキャンセルを告げられる。それでも見に行きたい――。ラウラは一人、寝台列車に乗り込こむとそんな世界最北端の駅を目指して数日間の旅に出るのだった。だが、予約した寝台列車6号室で同室となったのは、粗野で下品な言動を繰り返し、夜になると常に強いウォッカを煽るような炭鉱労働者リョーハだった。最悪だと思いながらも長年の夢を叶えるために彼とともに出発するラウラ。当初こそ衝突を繰り返していた彼女だったが、旅を進めるうちに次第に彼の隠れた優しさに気づいてゆき……。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、この淡々とした物語展開といまいち魅力を感じない主人公2人に特に感情移入することもなく、最初はけっこう退屈でした。でも、中盤辺りから次第にこの不器用な2人の隠された魅力に気づいて、途中からはけっこう微笑ましく観ることが出来ました。普通、こーゆー一期一会の出会いを描いたロードムービーって、どちらかが魅力的な若い人だったりあるいはのっぴきならない過去を引き摺っていたりするものだけど、この2人にそんなものはありません。普通に何処にでもいるような、くたびれた冴えないおっさんとおばさん。この2人の等身大にも程があるほどの等身大の魅力が良いですね~~。倦怠期を迎えている恋人と別れが近いことを自覚しながら何度も電話する主人公や、そんな彼女を最初はバカにしながらも他の男と仲良くしているとこを見てやきもち焼いて機嫌悪くなっちゃう男とか、ホント面倒臭い(笑)。でも、そんな近所の飲み屋でよく見かけるような男女のやり取りが妙に心地良いんですよね~。終盤、今は閉鎖されているペトログリフに向かうシーンは、こいつらアホやと思いつつも普通に応援している自分がいました。んで、最後に主人公が男から受け取る似顔絵と裏側のメッセージ。前半のエピソードを見事に回収してて、こんなにバッチリ決まっているオチは久しぶりかも。ただ、前半がかなり退屈だったのと全体的に画がいまいちキレイじゃなかったのが自分としてはそこまでって感じだったかな。ま、そこまで心に残るものはないけど愛すべき小品であったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2024-09-11 12:32:20) |
49. イビルアイ
《ネタバレ》 難病に侵された妹とともに祖母の家に預けられた少女が体験する恐怖の日々を濃厚に描いたオカルトスリラー。監督は、『パラドクス』『パラレル/多次元宇宙』を撮ったイサーク・エスバン。ぶっちゃけて言うと、さっぱり面白くありませんでした、これ。とにかく脚本がゴミ。大まかなストーリーは何となく理解できるものの、細部の詰めが荒く、最後まで観てもいまいちよー分かりませんでした。このお祖母ちゃんが魔女で孫の血を吸って若返っていたらしいのだけど、お母さんがそんな祖母に娘たちを預けてどっか行っちゃう理由が恐ろしく弱い。娘の難病を治すために夫婦そろって危険な旅に出るってなんじゃそりゃ。しかもその様子をいっさい描かないという、もうこの祖母に娘を預けるというストーリーにしたいがためにテキトーに考えたアイデアなんが丸わかりでもはや怒りすらわいてきそうでした。また、劇中に差し挟まれる昔話の「魔女と三つ子」の物語も詰め込み過ぎでよく分からんし。んで、なんなんですか、あの唐突に出てくるサバトみたいな謎の集会は。伏線も状況説明も全ておざなり、基本である起承転結すら組み立てられていない。ホント、酒でも飲みながらテキトーに書いた脚本なんじゃないの、これ。映像もばっちいし、音楽の使い方もまるでなっちゃいないし、最近観た中では恐ろしくレベルの低い作品でありました。監督、デビュー当時は良かったんですけど、最近はどんどん右肩下がりになっちゃってますね。次こそ再起を願いたいものです。頑張って! [DVD(字幕)] 3点(2024-09-11 12:12:15) |
50. Pearl パール
《ネタバレ》 彼女の名は、パール。1910年代のアメリカ南部の寂れた田舎町で、貧しい生活を送る農家の一人娘だ。激しい恋愛の末に結婚した夫は現在、ヨーロッパの戦線に従軍中でもう長いこと顔も見ていない。数年前に発作を起こし全身麻痺の後遺症が残った父親を献身的に介護しながら、保守的で気難しい母親と鬱屈した毎日を送っている。そんな彼女のささやかな楽しみは、たまに町でミュージカル映画を観ること。夢のようなそんな世界に憧れるパールは、いつか自分も華やかな表舞台に立つことを夢見ている。だが、ヒステリックで厳格な母親はそんなパールに厳しく当たるばかり。息がつまるような現実に次第に爆発しそうな感情を募らせてゆくパール。そんな中、次代のミュージカルスターを発掘するためのオーディションが町の教会で開かれることを知った彼女は……。謎の老夫婦にひたすら殺されまくる若者たちを描いたスプラッターホラーの怪作『X』。そこに登場するシリアルキラー老婆の約60年前の若かりし日を描いたという本作、さして観る気はなかったのだけど、自分の一推しそばかす美少女ミア・ゴスちゃんが再び主演を務めているということで今回鑑賞。前作は、とにかく全編これでもかってくらいの悪趣味エログロ描写の連続とあまりの内容のなさに自分はまったく嵌まれませんでした。でも、続編となる本作は、確かに悪趣味は悪趣味なのだけど、その悪趣味具合が今回は自分の好みにバッチリ嵌まっていて普通に面白かった!いやぁ良いですね~、この悪趣味さ。まず、主人公パールの理想と現実とのギャップが悪趣味。全身まひで喋れない父親とヒステリー爆発な母親と薄暗ーい部屋の中でトウモロコシメインの晩御飯を食べるシーンなんてもうやんなっちゃいますわ。んで、パールが何かやらかしそうな周りの設定が悪趣味。前作に引き続き登場の裏の池に住むワニちゃんがもうヤダ。久々に男に口説かれたパールが畑の案山子に跨って悶々解消するとこなんか見てらんない。何の根拠もなくオーディションに合格すると信じたパールが、いざ本番で披露するタコ踊りなんてもはや監督の悪意しか感じません(笑)。そして、満を持して暴走するパールのイカレっぷりが悪趣味。大火傷を負った母親のゾンビ顔も悪趣味だし、一部始終を見ている全身麻痺の父親が何も出来ずただ見てるだけというのをただ観客に見せるだけというとこも悪趣味。極めつけは最後の〝ディナー〟。メインディッシュがまさかのあのウジ虫だらけの腐った豚の肉とか、もはや悪趣味の極み!!!!!でも、この悪趣味さが終盤心地良くなってる自分がいました。それはやはり、ミア・ゴス演じるこの主人公が存外に魅力的だったからでしょうね。女と言うだけで家庭に縛られることを余儀なくされたこの時代、精一杯自分らしく生きようともがいたある女性の生き様を極めて悪趣味に描いた逸品。脚本も担当したミア・ゴスの熱演も相俟って、なかなか見応えのある悪趣味映画の秀作でありました。 [DVD(字幕)] 8点(2024-08-13 10:08:00) |
51. グランツーリスモ
《ネタバレ》 世界的な人気を誇るレーシングシミュレータゲーム『グランツーリスモ』。徹底的にリサーチを重ねたそのリアルで細かい車の動きはもはや本物と変わらないほどで、いまでも世界中の愛好家がネットでそのドライビングテクニックを競い合っている。そんな中、日本の大手自動車メーカー日産が驚きのプロジェクトを発表し、世界に衝撃を与えるのだった。なんと、ゲームのトッププレーヤーたちをスカウトし、厳しい訓練を受けさせたうえで本物のプロレーサーとして実際のレースに出場させようというのだ――。イギリスの小さな田舎町でゲーマーとして冴えない日々を送っていた青年ヤン・マーデンボローは、家族の反対を押し切り、そんなプロジェクトに参加することを決意する。見事予選を突破し選抜メンバーへと選ばれた彼は自分の人生を変えるため、毎日厳しい訓練に励むのだった。たが、現実のレースはやはりゲームとは違っていて……。監督はかつて、『第9地区』で華々しいデビューを飾ったニール・ブロムカンプ。この人って、デビュー作こそ素晴らしい仕上がりだったもののその後はいまいちパッとしない印象だったのですが、いやはやどうして、久しぶりの大作となる本作はなかなか良い出来だったんじゃないでしょうか。まぁ相変わらずの大味演出は仕方ないとは言え(前半の予選レース参加から選抜メンバーに選ばれる過程がいまいち分かりづらいところや父親との確執があっさりし過ぎなところなど)、後半からの盛り上げはさすが!一年以内に予選4位内に入らないとライセンスが貰えない中、主人公が徐々に自信をつけ少しずつ順位を上げてゆくとこなんてもはや少年漫画のノリ。ベタベタだけど、これはやぱテンション上がりますわ~~。と思ったら、物語の後半、主人公が事故を起こし巻き添えとなった観客が死亡するという重いエピソードも差し挟んできます。ここも重くなり過ぎずかといってあっさり流すわけでもない、絶妙にリアルな描き方で、ここらへん、監督のセンスが光ってますね。んで最後、何もかもを掛けてル・マン耐久レースに雪崩れ込んでゆく展開はもうテンション爆上がり。普通に手に汗握って見入っちゃってる自分が居ました。こんな少年ジャンプみたいな王道ストーリーがまさか実話だなんて!ソニーが全精力を注ぎ込んだであろう映像もスタイリッシュでかっこ良かったし、なにより実際に車を走らせて撮ったというレースシーンは言わずもがなの大迫力。いやー、けっこう面白かった。ブロムカンプ監督、なかなかやるじゃん! [DVD(字幕)] 7点(2024-08-08 12:01:12) |
52. ドラキュラ デメテル号最期の航海
《ネタバレ》 1897年、とある帆船が50個の謎の木箱を積んで、ルーマニアから英国へと出発する。だが一か月後、英国の海岸で座礁したその船には誰も乗っていなかった。船の名は、デメテル号。残されていたものは、船長が記した数週間にも及ぶ航海日誌。これはその日誌を基に描かれた物語である――。これまで映画や小説、漫画やアニメ、果てはゲームにまで様々な影響を与えてきた怪奇ホラー小説の古典、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』。もはや説明の必要のない超有名なこの小説の第7章「デメテル号船長の航海日誌」にのみ焦点を絞って映画化したのが本作。監督は、『スケアリーストーリーズ/怖い本』や『ジェーン・ドウの解剖』などでスマッシュヒットを飛ばしてきた新進気鋭のホラー監督アンドレ・ウーヴレダル。題材からも分かる通り、もう超が何個もつきそうなくらい超超超オーソドックスなホラー映画なので、もちろん新しい部分は一切ありません。が、そこはセンスでならしてきたエンタメ映画界の俊英、ツボを押さえた演出がバッチリ決まっているなかなかの佳品でございました。一から丸ごと一隻造ったという木造の小さな帆船の中で繰り広げられる、おどろおどろしいストーリーはやはり楽しい。まぁベタっちゃベタですけど、ここまでベタを貫き通してくれたらもはや清々しいですわ(笑)。コンプラやポリコレなんてゆう窮屈で退屈な代物なんて存在しなかった時代の古典だけあって、その容赦のない展開はさすがですね。今の時代、9歳の子供が全身火だるまになって焼死するシーンなんて誰もやりたがらないだろうけど、それを敢えて逃げず、ここまでちゃんと映像化してくれたウーヴレダル監督に素直に拍手!黒焦げになった子供の遺体が海に沈んでいくシーンは最近じゃ観られない暗鬱な美しさに満ちた名シーンでした。途中で意識を取り戻すドラキュラの食料用に詰まれていた女性もミステリアスな魅力に満ちていて大変グッド。徐々に狂ってゆく船長の不気味さも印象的。ただ、それ以外のキャラ(主人公含む)がいまいち魅力的でなかったのが残念だったかな。あと、後半に姿を現したドラキュラがいかにもなコウモリ怪人だったのも評価が分かれるところ。自分はもう少し見せない恐怖を貫いてほしかったような気がしなくもない。とは言え、ほとんどCGで描かれたうねるような海面描写もキレイだったし、いかにも年季の入った木造船の美術もリアルだったし、なかなか面白かった!6点! [DVD(字幕)] 6点(2024-08-08 10:43:56) |
53. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
《ネタバレ》 世界どころか、こことは違う多元宇宙を股にかけて大活躍するスーパーヒーロー、スパイダーマンの戦いをスタイリッシュな映像で描いたアニメーション。アカデミー賞の栄誉に輝いた前作は観たのだけど、ストーリー自体はさっぱり分からずただただその独創的な映像だけはとにかく印象的でした。という訳で、今回もとにかく映像のみを楽しむ目的で鑑賞。なのだけど、前作以上のさっぱり意味不明なストーリーはもはやノイズ。こんな独り善がりでつまんないストーリーが2時間20分もひたすら垂れ流されるというのは、いくらそこには期待してないとは言え自分にとってはもう苦行以外の何者でもありませんでした。これで前作同様、映像が凄かったらまだ観ていられたたのだろうけど、映像面のクオリティもけっこうレベルが下がってるような気がしたのは自分だけ?特に印象に残るシーンもないし、前作のようなオタク心をくすぐる魅力的なキャラクターも出てこないし、ずっと同じような画ばかりが繰り返されるので自分は開始30分で早々に飽きちゃいました。好きな人には申し訳ないですけど、自分には何が良いのかさっぱり分からなかったです。4点! [DVD(字幕)] 4点(2024-08-05 08:29:01) |
54. The Son/息子
《ネタバレ》 彼の名は、ピーター。大手法律事務所で様々な企業案件をこなすエリート弁護士だ。経営陣からの信頼も篤く、最近では有力政治家から選挙対策の責任者として働いてほしいというオファーまで舞い込むほど。再婚した現在の妻との間にはまだ生まれたばかりの赤ん坊もいる。そんな公私ともに順風満帆な彼だったが、ただ一つ気になることがあった。それは別れた前妻と暮らしている息子ニコラスのこと。息子はもう長いこと高校に行っておらず、その理由も一切語らないらしいのだ。直接息子に会ったピーターは、彼の願いによりしばらく今の家で一緒に暮らすことに――。幼子を抱え最初は戸惑っていた今の妻もピーターのためにと精一杯の優しさで迎え入れ、ニコラスもまた人が変わったように学校に通い始める。当初の懸念も忘れ、次第に息子との生活に喜びを見出すようになっていたピーター。たが、息子が抱えている心の闇は思った以上に深く……。監督は、前作『ファーザー』でアカデミー賞を受賞した劇作家でもあるフロリアン・ゼレール。前作同様、この監督の丁寧な演出と気品に満ちた美しい映像、なにより全ての登場人物に対する深い洞察力は素晴らしいですね。決して楽しい物語ではないし、最後まで暗い展開が続くので人によってはあからさまな拒否反応を示すことも多いと思う。でも、自分は最後まで惹き込まれて見入ってしまったし、最後は涙が止まらなかった。これは家族愛という幻想を全て取り払った後に残る、永遠に分かり合うことの出来ない人間の切なさを冷徹なまでに見つめた哀切極まりない物語なんだと思う。物語の終盤、息子を診察した精神科医が語る「愛だけでは力不足だ」という言葉を聞いて、自分は昔読んだ、夜回り先生として名高い水谷修氏の著書を思い出してしまった。定時制高校の教師として様々な問題を抱える生徒たちと向き合ってきた氏が、重度の薬物依存に苦しむ生徒がまた薬に手を出したとき、「俺はお前を絶対見捨てない。何があろうとお前と一緒に頑張るつもりだ。なのにお前はまだ甘えてる」と叱咤した直後、その生徒が自殺してしまったのです。このことに深く傷ついた氏は、「薬物依存や精神疾患はれっきとした病気なのです。それなのに自分が愛してるから治れというのは、風邪や肺炎で苦しむ人に周りが愛してるのだから自力で治れと言うようなもの」と述べておられました。本作の哀しい結末はまさにそれ。この親子には愛があった。それも深い深い愛が。愛は人を救うこともあるし、傷つけることもある。そして人を殺すことも。きっと最後、息子は「今が死ぬのに最適な時だ」と思ったのだろう。両親が昔のように愛情を取り戻し、自分も親から深い愛情を感じ、そして自分も両親に「愛してる」と心から伝えた。人生で一番幸せな瞬間、このまま終わればきっとこの時間は永遠になる――。愛に傷つき愛に裏切られボロボロになりながらも、それでも人は愛に縋りついて生きてゆく。そんな人間の切なさと美しさを冷酷なまでに見つめた傑作だと自分は思う。 [DVD(字幕)] 9点(2024-07-28 15:01:07) |
55. ワース 命の値段
《ネタバレ》 世界を震撼させた米中枢同時多発テロ。世界中が大混乱へと陥るさなか、アメリカ政府は水面下である重大な問題に直面していた。テロの被害者や遺族が皆、損害賠償を求め航空会社や国を訴えたらアメリカ経済は大変なことになる――。経済の停滞を恐れた政府は、すぐさま被害者救済を目的とする専門機関を立ち上げる。被害者の年齢や年収、社会的地位などを基に独自の計算式で算出した賠償金を支払うことで集団訴訟を阻止しようというのだ。機関の特別管理人に就任した法律学者のケネス・ファインバーグは、被害者たちの8割以上のサインを求め日々奔走するのだが……。911直後、米経済の混乱を避けるために立ち上げられた「911被害者補償基金プログラム」の内情を実話を基に描いたヒューマンドラマ。日本でも近年話題となった、交通事故の被害者となった女の子が耳に障碍があったことを理由に慰謝料を減額された事案――健常者に比べ働ける職種に差が出ることから損害賠償額の基となる推定生涯賃金が減額された――を髣髴とさせる本作、いたく興味を惹かれ今回鑑賞。実在した法律家を演じるのは名優マイケル・キートン。この人と言えば、世界的企業マクドナルドの内幕を生々しく描いた『ファウンダー/ハンバーガー帝国の秘密』で演じた世の中金が全ての守銭奴成金が強烈な印象を残してくれたのだが、本作ではあくまでリアルに徹してそんな法律家を演じている。確かに、あの歴史的大事件の裏側で地味ながらこんな悩ましい問題があったのだと問題提起する点ではなかなか意義深いものがあったと思う。遺族の方が淡々と亡くなった人々の思い出を語る姿には、見ていてどれも胸が締め付けられそうになる。「息子は消防士だったの。それがあのビルの上層にいた株屋の命より安いというの?」という遺族の言葉は重い。ただそのように事実の重みは充分伝わってきたのだが、映画として率直に面白かったかと問われれば正直「否」と言わざるを得ない。あまりにも淡々と事実だけがただ羅列されていくので、長い再現VTRを見せられているような感覚になってしまうのだ。事実を面白おかしく捻じ曲げろとまでは言わないが、映画としてもう少し観客の興味を惹き込むための脚色や演出を心掛けてほしい。そうかと思えば最後、余りにもきれいごとに纏めようとしてくるのも何か鼻白むものがある。これでは、「人間の命に優劣をつけることの是非」という本作の重要なテーマが霞んでしまっていると言われても仕方ないだろう。物語の題材自体は大変興味深いものだっただけに残念だ。 [DVD(字幕)] 5点(2024-07-28 13:07:58)(良:1票) |
56. コカイン・ベア
《ネタバレ》 ある日、へまを犯した麻薬の運び屋がヘリコプターから森に巻き散らしたもの。それは、大量のコカインだった――。たまたま森を歩いていた何も知らないクマがそんなコカインを食べてしまったからさあ大変。普段は大人しいはずのクマが突如として狂暴化!その日、偶然森にやってきていた人々を襲い始めるのだった。学校をさぼり幻の滝を見に行こうとしていた少年少女、大自然が大好きなネイチャーカップル、地方に出張へ向かっていた刑事、森の警備を担当する森林パトロール、そして麻薬の元締めである地元の大物マフィア……。果たして彼らは殺人ラリックマの脅威から無事に逃れることが出来るのか?というお話。それ以上でもそれ以下でもありません。シンプルイズベストにもほどがあるほどシンプルな、まぁ一言で言うとバカ映画なのですが、それでもクマのCGが予想以上に高クオリティでぼちぼち楽しめたかな。よだれを滴らせながら襲い掛かってくるこのクマ、もちろん怖いんですけど、それでも時たまなんか変に可愛く見える瞬間があるのが本作のミソ。大量のヘロインに全身をこすりつけて寝転がる姿なんてなんともキュートで、ここらへん、女性監督ならではかもですね。物語の後半、さらに可愛い2匹の子熊が出てきたのも嬉しいサプライズでした。まさかの母親やったんかーい(笑)。ただ、そんなキャラ立ちしまくったクマ親子に比べ、対する人間キャラがいまいち魅力的でなかったのが残念。唯一印象に残ったのが森の保安官であるおばさんくらいであとはみんな、何処かで何度も見たようなステレオタイプの平凡な人たちだったのが惜しい。ここはもっとぶっ壊れた、一度見たら忘れられないくらい強烈なキャラが一人くらい欲しかった。また、肝心のお話自体もそんなにはじけ切れていない印象。クライマックスとかもっとむちゃくちゃしてくれても良かったような気がしなくもない。と、そこら辺に物足りなさは残るものの、コカインでラリッたクマが大暴れというぶっ飛び設定とそのクマちゃんの意外な可愛さに最後まで楽しんで観ることが出来ました。真夏の熱帯夜にビール片手に観る分にはそこそこ面白い、いいおつまみムービーであったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2024-07-28 11:38:45) |
57. ヒンターラント
《ネタバレ》 第一次大戦後のヨーロッパ、まだ戦争の傷跡が深々と残るオーストリアを舞台に、猟奇的な連続殺人事件に巻き込まれたとある帰還兵を悪夢のような映像で描いたサスペンス・ミステリー。セットやロケなどは一切使わず、全編ブルーバックで撮影したというのが売りの本作、なんとなく興味を惹かれ今回鑑賞。全編CGで描かれたという映像はまるでヨーロッパの陰鬱な絵画の世界に入り込んだかのような感覚で、この重厚な世界観はなかなかのものだった。戦争の影響が生々しく残っていたこの時代と、おどろおどろしいこのストーリーも見事にマッチしている。ただ、肝心の脚本の方はいまいち。主人公である心に傷を負ったこの帰還兵の過去を巡る物語かと思いきや、何故かこのおじさんがいつの間にか刑事になって街を騒がす連続殺人事件を捜査し始める。元刑事という肩書があったとはいえ、友人の計らいで主任刑事にいきなり復帰とかさすがに無理がある。ここは要所要所で助言を行うアドバイザー的な立ち位置で良かったんじゃなかろうか。また、主人公の妻を巡る友人との三角関係を無駄に差し挟んでくるのもお話のテンポを悪くしている要因。中盤辺り、自分はかなり退屈してしまった。肝心のことの真相もけっこう無理があるうえにいまいち分かりづらい。全編ブルーバックで撮影したという映像も最初こそ「おお」と思わせるものの、それ以降はずっと同じような画ばかりが続くので早々に飽きてしまった。この手法を使うなら、もっとシュールでグロテスクで一度見たら忘れられないような悪夢のような世界で観客を魅了してほしい。なんだか全てに於いて中途半端な作品と言うのが自分の率直な感想だ。 [DVD(字幕)] 4点(2024-07-26 10:45:37) |
58. ザ・ホエール
《ネタバレ》 彼の名は、チャーリー。過去、ボーイフレンドを亡くしてしまったショックから鬱と過食に苛まれ、いまや体重270キロ、一人で歩くこともままならない極度の肥満症に陥ってしまった中年男性だ。当然、家の外に出ることも出来ず、食事はもっぱらデリバリーで済まし、仕事はオンラインでできる大学のエッセイ講座の講師、毎日訪れてくれる看護師の献身的なサポートに頼り切った生活を送っている。自分に会いに来てくれる人などほとんどいない。ときたま訪れるのは、終末論を説く新興宗教の勧誘ぐらい。そんなどうしようもない孤独な毎日を送る彼だったが、ある日、大きな心不全の発作を起こしてしまうのだった。明らかに死期が近いことを悟った彼は、とある決断をくだす。「昔、ボーイフレンドと付き合うために捨ててしまった家族、自分の一人娘であるエリーともう一度心から向き合いたい」――。16歳になったエリーとなんとか連絡をとったチャーリーは、8年ぶりに会う娘にただただ感情を揺さぶられるばかり。だが、父に捨てられた過去をいまだ許していない娘は、ブクブクと太った醜い父親に嫌悪感をあらわにする……。僕の敬愛してやまない現代を代表する優れた映画監督の一人ダーレン・アロノフスキー、彼の最新作にして主演を務めたブレンダン・フレイザーがアカデミー主演男優賞を受賞したという本作、期待して今回鑑賞。冒頭、270キロにまでなってしまった主人公がネットでゲイポルノを見ながら自慰行為をするシーンから始まる。直後、発作を起こし命の危険を感じながらも落としてしまったスマホを拾うことが出来ず、救急車を呼ぶことすら出来ない。生きることの醜さや人間の愚かさ、目を背けたくなるような現実を容赦なく突きつけてくるこのシーン、監督の冷徹な視線にただただ圧倒されるばかりだった。その後、彼の孤独な生活に介入してくる同じく心に様々な葛藤を抱えた人々と繰り広げられる会話劇は、役者陣の鬼気迫るような熱演も相俟って、非常に見応えのある深いものだった。舞台劇を映画化しただけあって、自分は『ゴドーを待ちながら』を思い出してしまった。あの古典的舞台で登場人物たちが待っていたのはゴドー(≒神)だったが、本作で登場人物がただ待ち続けているものはなんだろう。いや、彼らはもはや何も待っていない。そう、神なき時代を生きる我々にはもはや待つことすら許されないのだ。自分は最後に救われた、自分の人生に意味はあったのだというもはや自己満足に過ぎない救済のみが、自らの縋りつくすべて。最後、まるで陸に上がった鯨のようにその巨体をうねらせながら飛び上がった時、果たして彼の魂に救済は齎されたのだろうか。それは鑑賞者の心に委ねられている。主人公がキリスト教で否定されてきた同性愛者であることも本作の見逃せないテーマの一つだろう。毎日何時間もかかる特殊メイクを受け、自身の半生をも髣髴とさせる熱演でそんな孤独な男を見事に演じたブレンダン・フレイザーも忘れてはならない。この監督は相変わらず、役者の力を極限まで引き出させるのが本当に巧い。神なき時代を生きる現代人の苦悩と救済を美しい映像でもって描いた、アロノフスキー監督のあらたなる傑作と言っていい。 [DVD(字幕)] 9点(2024-07-10 09:31:04)(良:1票) |
59. スクール・フォー・グッド・アンド・イービル
《ネタバレ》 ここは、昔々のおとぎ話を生みだす様々な人たちを育て上げ、立派な物語を後世に残すことを目的に創られた全寮制学園。その名も、「善と悪の魔法学院」――。そこはお姫様や王子様と言った「善」側の人間を育て上げる善の学院と、魔女や妖術使いと言った「悪」側の人間を育て上げる悪の学院とに分かれていた。田舎の小さな村で暮らす幼馴染の少女ソフィーとアガサは、赤い月が照らす夜、異形の鳥にさらわれ、そんな学院へと連れてこられてしまう。だが、幼い頃からお姫様を夢見るソフィーは何故か悪の学院へ、そして昔から魔女に憧れ不気味なものが大好きなアガサは善の学院へと振り分けられてしまうのだった。キレイなドレスの着こなし方や上品な笑顔の作り方、人を殺す毒薬の作り方や恐ろしいモンスターを召喚する方法など、それぞれ求めてきたものとは正反対の教育を受けさせられるアガサとソフィー。「違う!これはあたしたちの求めていた世界じゃない!」。それぞれの教官にそう訴えるも、学園は何も間違いはないの一点張り。だが、その裏には学園を揺るがす恐ろしい陰謀が隠されていたのだった……。おとぎ話の登場人物を養成するという謎の学校を舞台に、そんな2人の少女の波乱万丈の冒険を描いたファンタジー。と、かなりぶっ飛んだ設定のそんな本作、これがなんともはや、もう女子受け要素しか入ってない乙女純度100%のガールズ・ムービーでした。善側のキラキラ輝くようなカラフルでゴージャスなプリンセス衣装も悪側の怪しい魅力に満ち満ちたゴシックロリータな衣装も、どちらもまさに少女たちが夢見る理想世界。自分はいい歳したおっさんですが、心のどこかに乙女な部分が2割くらいあるので、そんな世界観をここまで映像化してくれただけでただただ眼福。特に主人公の一人、プリンセスを夢見る少女ソフィ―が悪側に目覚めゴスロリファッションに身を包んで現れるシーンは、息を吞むほどの美しさ。何もかもを見下すような切れ長の瞳も今にも折れてしまいそうな華奢な体つきも、もう色んな意味でヤバかった(笑)。それにファンタジー映画としてもけっこう頑張ってましたよ、これ。次々登場する異形のモンスターの映像がどれもセンスを感じさせるものばかりで、特に龍のタトゥーを本物のドラゴンに変えてしまう少女や全身に蜂をまとったラスボスの映像なんか普通にクオリティが凄い。お花畑のキレイな花が突然牙を剥き出して襲ってくるところなんて夢に出そうなほどグロメルヘンで、若干病み気味な女の子にはけっこう刺さるんじゃないですかね?とは言え、肝心のお話の方はしっちゃかめっちゃか過ぎて意味不明でしたけど。最初からよく分からんまま始まって中盤からもはやカオス、クライマックスなんて完全に破綻しまくってました。いやー、まさに内容なんてなし、映像と世界観を楽しむだけの映画でしたね、これ。とは言え、ここまでの世界観を構築してくれたらもはや自分は称賛しかありません!超個人的採点で、7点! [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-04 09:41:59) |
60. ノーウェア 漂流
《ネタバレ》 そう遠くない近未来。逼迫する食糧事情に業を煮やした政府が発動した政策。それは貧しい者や女性や子供といった社会的弱者の権利を大幅に制限しようというものだった――。自由を求め、他の国へと亡命しようとしたとある夫婦は、違法業者に多額の現金を払い、なんとか港まで辿り着く。だが、いいかげんな業者により引き離されてしまった夫婦は別々のコンテナに乗せられてしまうのだった。しかも妊娠中の妻ミアを乗せたコンテナは、軍の強襲に遭い、彼女以外の密航者が皆殺しにされてしまう。荷物に紛れてたった一人、難を逃れたミアをさらなる悲劇が襲う。なんと激しい嵐に遭遇した船から、彼女の隠れていたコンテナが広大な大海原に投げ出されてしまったのだ。狭いコンテナに役に立つような荷物は何もなく、食料すらほとんどない。銃によって空いた穴からは徐々に海水が入り込んでくる。しかもミアは、そんな絶望的な状況で急に産気ついてしまい……。果たして彼女は無事に陸上へと戻ることが出来るのか?昔からホントよくあるタイプのいわゆるソリッドシチュエーションスリラーというやつで、今回主人公が閉じ込められるのはなんと海に投げ出されたコンテナの中。謎の立方体だったり、地中の棺桶だったり、きっちゃないバスルームだったり、営業終了後のスキーリフトだったり……、よくもまぁこんなに人を色んな場所に閉じ込めてきたもんだ(笑)。さて本作、さすがに突っ込みどころ満載だけど、そこら辺に目をつむればそこそこ観ていられる感じにはなってたんじゃないでしょうか。荷物を開けてみてもそこにはタッパーやテレビなどこの状況に役に立つものは一つもなかったりだとか、海水がじわじわと水嵩を増してくるとことか、この小さなコンテナの中に一人だけという絶望感はなかなかよく表現できてたしね。あと、主人公が妊婦で途中で出産してしまうというのも捻りが効いてて大変グッド。まぁ後半、親子愛でひたすら泣かそうとしてくるのがあからさま過ぎて、自分は若干苦笑い気味で観てましたけど。あとこれ、近未来設定いったのかな。普通に不法入国しようとした難民設定でも充分成立したし、その方がリアリティもあって社会的テーマも明確になったしそっちの方が良かったと思う。とは言え、ほぼ独り芝居となるミア役の役者さんはけっこう頑張ってたし、ワンシチュエーションながらあの手この手で物語を上手く盛り上げてたし、ボチボチ面白かったんじゃないでしょうか。まぁ最大の突っ込みどころである、「さすがにこれだけ穴の開いた鋼鉄のコンテナはすぐ沈むやろ!!」という部分を許容できればですけど(笑)。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-06-27 09:04:16) |