61. 浮き雲(1996)
《ネタバレ》 カウリスマキ監督の映画は二本目。「希望の灯り」以来。 「希望の灯り」もかなり動きの少ない演出だったけど、これはそれに輪をかけて大げさな演出はなし。 ドラマもそれなりにあるし、けっこう致命的な悲劇も迎えるんだけど、それを淡々と乗り越えて受け入れていく。 実生活と照らし合わせてみると、まあそんなもかものしれないなと。 互いに信頼して労わり合う夫婦の在り方も意外と嫌いじゃなかった。 まあ好き嫌いはあるだろうし、観る人を選ぶ映画かもしれないけど、私は嫌いじゃなかった。むしろ癖になるかも。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-08-12 10:18:39) |
62. FALL/フォール
《ネタバレ》 そうか。緩衝材はもう靴ではなく、友人の体なんだね。 彼女が誘ったんだから、それは仕方ない。 どうやって降りるか、ではなく、どうやって救助を呼ぶか、という所に話がいってしまったのがちょっと早くて、もう少し何か考えて欲しかったな、というのが残念なポイントの一つ目。そしてもう一つは、登山の悲しみや恐怖から脱却するには、鉄塔登りじゃなく登山では?というのは、映画の設定自体がそうなのでまあ仕方ないよね。 しかしながら、高所の恐怖感は十二分に味わえる、今までにはなかった映画。 ジェフリー・ディーン・モーガンは、ウォーキング・デッドの悪役を完全に払拭できた感じで、彼が出ていることで映画が引き締まった感が強い。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-07-14 08:18:49) |
63. アス
《ネタバレ》 そもそも人の言葉を話せるのは例の彼女だけなんだろうか。 残りのいったい何億人いるのかわからない人たちが言葉を話せないとしたら、そもそもどうやってこの決起を成功させることができたのか。 まさかテレパシー? で、これはアメリカだけの話なのか全世界的なことなのかも判然せず、なんだか感情移入できないままハサミで殺戮、という痛いシーンを観ることになってしまった。 仲良しの家族役、いけすかない人たちだったけど、あの妻は透明人間に出てた女優さんだったのかな。なんてことを考えたり、主役のニョンゴさんはアクションホラーに引っ張りだこだなあなんてことを考えながらの鑑賞。 でもね、例の偽?一家が家を狙うシーンはけっこうな恐怖感だった。やっぱり種明かしはあんまりはっきりしない方がホラー映画としては成功するのかもなあ。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-07-14 08:09:31) |
64. ヒューマン・キャッチャー/JEEPERS CREEPERS 2
《ネタバレ》 前作の「ジーパーズ・クリーパーズ」には、心の奥底がぞわぞわっとするような得体のしれない恐怖感があった(前半だけだけど…)。 が、この二作目は、クリーチャー退治がメイン。 底知れぬ恐怖、という点ので大きく前作に及ばない感じ。 ただ、クリーチャー復活がどういう形になるのか、続きが観たくなる点では大いに成功。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-07-09 15:00:41) |
65. Pearl パール
《ネタバレ》 「x」の前日譚などどいう予備知識も何もなしで鑑賞。 で、ここのレビューでそれを知った次第。 いや、それならもっとその気で観れば良かったと後悔したが、今更もう一度最初から観る気にもなれないかな。 「x」の老婆はもっと自信満々で自己愛に満ち溢れていたような気もするが、この時代のパールはもっと自己肯定感が低い印象。 冷静な自己分析のシーンがこの映画の一番の山場となっているのだが、私にはむしろそんなものは余計で、良心の呵責や後悔などこれっぽっちも感じることのないシリアルキラーを期待してしまった。 遺体となった両親と腐敗した豚の食卓で夫の帰りを待つなんてどう考えても尋常じゃないから、やっぱりパールは振り切れてるのかなとも思うが、それならラストの表情アップのシーンで涙は流して欲しくなかった。 彼女には同情よりも得体のしれない恐怖を感じさせてもらいたかったな、というのが正直な感想。で、この点数。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-07-09 14:45:23) |
66. クワイエット・プレイス DAY 1
《ネタバレ》 1作目から楽しみにしているシリーズなのだが、今回はエミリー・ブラント様の出演はなし、ということでそこが残念なポイント。 とりあえずたくさん出してみるか、という「エイリアン2」のような流れは嫌いじゃない。 ただどうやっても倒すことはできず、水にもぐるしかない、というのはDAY1なら致し方ないところ。むしろ、よくそんなに早い段階で弱点見つけたなと展開の早さに驚き。 音楽を聴く=文化を楽しむ=人間としての尊厳を奪われてたまるものか!というラストは良かった。でもこれ、まさか続編はないよね。 [映画館(字幕)] 7点(2024-07-03 10:14:37) |
67. グランツーリスモ
《ネタバレ》 元になったゲームをやったことはないんだけど、ブレーキの状態まで再現できるかなりリアリティの高いゲームなんだね。 ゲームのチャンピオンが現実のルマンで入賞するなんて、夢のある話じゃないか。 父親との葛藤の部分もうまく描けていたんじゃないかな。 主人公の青年もコーチ役の元レーサーもはまり役で、割に感情移入して観ることができた。 でも一番良かったのは、主役の恋人の女の子。 あんまり登場しないんだけど、爽やかで嫌みがなくて、魅力的。もっと出して欲しかった。 あの子がもっと登場していればもう2点は上がるなかなかの佳作。 ゲームファンはたまらないだろうね。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-06-20 10:34:44) |
68. あなたが寝てる間に・・・
《ネタバレ》 これ観たの二回目かなあ。 やっぱりサンドラ・ブロックって魅力的だよね。女性らしさを売りにしてないって言うか。 いや、もう男性らしさとか女性らしさとか定義づけする時代ではないんだけど、適当な言葉が見つからないのでご容赦を。 まあ私としてはピーターが全く魅力的に思えず、なんでこんな男に惚れちゃうんだ!ってのが先に立つんだけど、昏睡から目覚めたあとのピーターもやはり人間性に疑問符がつく設定で、観ている側としてはジャックを愛することに対する葛藤が必要ないのが映画としてはもったいない感じ。でもこれラブコメなら深く考えないでいいのかもしれないけど、けっこう家族愛を描くヒューマンな作りだったから、そこのところはもう少し丁寧に描いて欲しかったかな。 クリスマスを孤独に過ごすことは、アメリカではかなり孤独で寂しいことなんだね。寂しさを拭うために恋人というよりも家族と過ごすために嘘を貫いたルーシーが切なかったなあ。だからラストで指輪を改札口に出すシーンはぐっと来た。 電子マネー全盛の現代では、改札口でのあんな演出はもうできないのかと思うと、それも切ないね。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-06-19 10:22:02) |
69. イコライザー THE FINAL
《ネタバレ》 このシリーズの見どころの一つは、武器ではその辺にあるものを利用してやっつける、ということなのだが、今回はその点では期待外れで、あくまでナイフや銃が主役。 人知れず悪を挫き、正義を貫くスタイルだったのが、今回は救うのが町全体ってことで かなり露出度高め。西部劇のような展開になってしまったのはちょっと期待外れだったかな。 ダコタ・ファニング演じる女性捜査官とのやりとりは、スリリングで見応えがあったが、ちょっと不完全燃焼だったかも。この映画の悪党はだいたいせこい奴ばかりなんだけど、今回もやはりせこくて不愉快な奴らだった。 それなりに年齢を重ねたイコライザーも、そろそろお役御免で隠居生活かなあ。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-06-18 14:55:58) |
70. ラーゲリより愛を込めて
《ネタバレ》 シベリア抑留の厳しさがどれくらい真に迫っていたかには疑問符がつくものの、家族と離れ離れになった男たちの苦悩は伝わってきた。 決して希望を失わない、二宮君演じる山本に敬服。前向きに生きようとする彼の言葉は、どこか有島武郎の「小さき者へ」を思い出させる。 山本のダモイが果たせないことは予想がついたものの、やはり帰してやりたかった。 彼の死を知った北川景子演じるモジミの慟哭は有無を言わせぬ迫力があり、「嘘つき!」と叫ぶ彼女の心の痛みが、スクリーンを通じて胸に突き刺さった。 そしてその後の遺書を記憶するシーン。 これは予想外だった。 確かに、文字を残すことはソ連の罪を暴露することにつながる恐れがあり、当局としては絶対に許せないところだろう。 没収につぐ没収。 ならば記憶するしかない。 山本を慕う仲間たちの思いがやるせなくて美しくて、泣けて仕方なかった。 安田顕も良かったが、中島健人君が特に良かった。読み書きを教えてくれた山本に対する思いが伝わる、本当に胸が熱くなるシーンだった。 最後の山本とモジミが海岸で二人並んで、思いを伝え合うシーン。北川景子の表情が抜群で、これをラストに持ってくるのも憎い演出。 そこで終わっても充分戦争のむなしさや、愛する人を思う気持ちの尊さは伝わっていたと思うのだが、なぜか二人の息子として登場する年老いた寺尾聡。 これは寺尾聡の無駄遣いだし、蛇足だよ。くどい。 もう少し観る者の感性を信じて欲しかったかな。 でも、いい映画だった。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-06-16 14:59:50) |
71. 隣人X 疑惑の彼女
《ネタバレ》 雑誌記者の男が、良子に惹かれながらも、祖母を施設に入れるお金のために彼女の父親を売る苦悩が弱い。頭を下げて謝罪する姿勢は真摯でも、そこに至る彼の苦悩の描かれ方が観る者に伝わって来ず、単に良子を裏切った、という点だけに焦点が当たってしまったのは残念。そこがあれば、その後の良子との復縁にも納得がいったと思うのだが。 結局誰がⅩなのかなんてことはたいした問題ではなく、どのように生きるか、人と接するかを考える映画かな。 本作の上野樹里も相変わらずの安定感で、力の抜けた妙齢の女性を上手く演じている。寂しく笑う表情とか、時々見せる芯の強さを秘めた瞳とか、この人はとにかく魅力的。 まあこれは個人的な好みなんだけれども。 そこに加点。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-06-16 14:19:35) |
72. 箱入り息子の恋
《ネタバレ》 まあこういう役をやらせたら星野源は無双だろうね。 見合いの後で自分の部屋を無茶苦茶に破壊する様子は迫力があって切なくて良かった。 二人の距離を一気に縮めた吉牛の破壊力はやはりすさまじい。日常とか、庶民とか、やはり生きていく上で大切な要素なんだよね。 職場のイケイケの女性がどういう役回りなのか気になってたけど、ぶざまでいいじゃんとか、早退するシーンでエールを送るとか、なかなか憎い役回りだった。 ただ、早退後に走って(文字通り走って!)奈穂子の家に行ったシーンにはちょっとモノ申したい感じ。カエルの鳴きまねの伏線を回収するためだけのシーンのように思えて、別の方法があった気がしてならない。そこが残念。 彼は昇進できたのかな。あれだけ点字が打てるなら、かなり優秀ってことだろうから、大丈夫か。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-06-16 13:42:33) |
73. プラトーン
《ネタバレ》 二人の軍曹の物語、であろうか。 ベトナム戦争の映画と言えば、まず思い出されるのが「ディア・ハンター」か本作ではないかと。 若いアメリカ兵たちを襲ったのは、ベトコンの恐怖だけではなく、疑心暗鬼によって善と悪の境界線が判断できなくなってしまう狂気。戦場で生き残るために必要なものは正義か、保身か。あんな所にいたら、まともな判断なんかできるわけがない。バーンズは許しがたいけど、それはあくまで安全な場所で暮らす我々のスタンス。エリアスでありたいと思うけど、果たして極限のあの状況でそれが果たせるのか。 どちらにしても、戦争は虚しい。結局そこに行きつかせてしまう力がこの映画にはあると思う。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-06-16 08:01:38) |
74. いつか読書する日
《ネタバレ》 田中裕子って、つくづくいい女だよなあ。 声、なのか。 眼差し、なのか。 よそよそしい会話から、一瞬でその垣根が取り払われる瞬間は見応えあった。 ただね、大人なんだから、もっときれいに抱いてほしい。 そんな心の余裕がないほど求めあっていたのかもしれないけど、「全部、して」からの落差がひどくて、返す返すもそこが残念。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-06-06 12:37:17) |
75. 恋は光
《ネタバレ》 女性が恋している時の光が見えるという大学生が主人公なのだが、これが全く漫画チックな印象を与えない。「先生」と呼ばれるこの学生が浮世離れしている(と言っても適度にスマートフォンは使いこなすのだが)ことや、初恋と思われる女性がこれまた浮世離れしている(こちらはスマートフォンも使わない徹底ぶり)ことが功を奏している。浮ついたところがない二人の仲を取り持つことになるのが、西野七瀬演じる「北代」なのだが、このちょっと今風でありながら芯の通った感じが素晴らしく好感が持てた。早々に「先生」に恋していることを認めるところも、実は恋しているの、みたいなもったいぶった振りがなくて良い。 「恋」の定義もなかなか考察が深く、観ていて引き込まれるものがあった。 なぜ「北代」の恋している光が「先生」に見えなかったのかという謎解きには少し不満が残るものの、トータルで非常に面白い作品だった。とにかく本作の西野七瀬は抜群。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-06-06 12:27:24) |
76. プレデターズ(2010)
《ネタバレ》 二度目の鑑賞ですが。 皆さんどのように感じておられるかわかりませんが、私自身は、エイリアン・ブロディなる役者に兵隊のイメージが全くなく。 どうしてもピアノ弾いてる姿しか思い浮かばなくて、その時点でこの映画に違和感を覚えたまま鑑賞を続けるわけですが。 それに加えて、スペッツナズはいいとして、ヤクザって。どう考えても弱いに決まってるわけですが、外国人はヤクザに対する妙な強いはずという信仰があるのでしょうか。まあけっこう強くて一匹やっつけますけども。 そういう点でも日本人の私には妙な違和感がありつつ鑑賞を続けるわけですが。 ラストもすっきりしないのはちょっと。 シリーズの1作目も2作目も、その点はちゃんと気持ちよく着地させてくれたのに、本作はそういうわけでもなく。せめてそこはすっきりしたかったなあ。 という映画。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-05-03 13:46:40) |
77. 処刑人
《ネタバレ》 観終わった後に残るのは、正直ウィリアム・デフォーのぶっ飛んだ演技。 神の使徒による神聖な処刑とか法廷での息詰まるやり取りとか、なんだかぼんやりしてしまったが、デフォーの演技だけは鮮明に記憶に刻まれた感がある。 もうそれだけで映画としては成功しているのでは。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-05-03 13:37:38) |
78. 猟奇的な彼女
《ネタバレ》 なぜ彼女はあそこまで乱暴にキョヌに当たる必要があったのかな。 恋人が亡くなった悲しみを癒やすのに必要とも思えないし、もともとそんな女性であったとも思えない。 観ているうちにその疑問に対する答えがあるのかと期待していたが、それもどうやら見当たらない。まあ映画のタイトルとしては、かなり人を惹きつける力はあるから、そこに寄せたのかなと。 しかしラストはちょっと都合が良すぎるよ。死んだ恋人がおばさんの息子ってことはキョヌにとっては従兄弟だろうし、そこにまったく接点がないっていくらなんでも無理があるのでは。 他に再会の方法はあった気がするので、そこは拍子抜けしてしまった。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-05-03 13:29:58) |
79. パスト ライブス/再会
《ネタバレ》 恋人もちゃんといたはずのヘソンは、やっぱりノラが一番好きなんだって気づいたのか、それとも気まぐれでニューヨークへ行ったのか。 人生のちょっとした隙間に、かつて愛した人のことを思い出すのは理解できる。 愛し合っていたならなおさらそうだろうけど、本作の場合は、恋すら始まっていなかった幼馴染を忘れられない設定。 それは大いなる勘違いで独りよがりだよと言ってやりたい気もするが、なにせヘソンがいい奴過ぎて、まあやるだけやってみろよと背中を押したくなってしまう。 そしてノラの夫のアーサーも底抜けにいい奴で、最初から白旗上げて二人の再会を見守るって、なんだか切ないけど、でもきっと自分でもそうしてしまうだろうなと思わされてしまった。 ニューヨークでの再会は、心の距離が近づくにつれてカメラも二人に近づいて、お互いの表情が読み取れるようになるのは憎い演出。 ラストの「その時にまた会おう」は、最近の映画のセリフの中で一番ぐっときたかな。 いや、佳作。 [映画館(字幕)] 8点(2024-05-03 13:21:21) |
80. ブローン・アウェイ/復讐の序曲
《ネタバレ》 アイルランドの歴史的な背景をある程度知っておくことが求められる、ちょっと観る者を選ぶ映画。ただ、そこに縛られ過ぎず、アクション映画としての要素もきっちり押さえた娯楽作品でもある。 何でも爆弾に変えてしまう爆弾魔という設定が良く、冷蔵庫を開けたり、電話をかけたりする度にドカンとくるのではないかという緊張感が走り、最後まで飽きずに観ることができる。 ジェフ・ブリッジスはこういうどこか陰がありつつ、どこまでもいい奴的な演技をやらせたら、ちょっと並ぶ者がないような気がする。爆弾魔のトミー・リー・ジョーンズとともに完璧にはまり役。 9.11のあと、「隣人は静かに笑う」とともにレンタルビデオ店の店頭から消えてしまい、しばらく観ることがかなわずにいたが、ネットで観ることができて良かった。やはりこの時代のこの手の映画には、何か品格のようなものがあるんだよなあ。 時代を経ても間違いのない佳作。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-04-23 14:35:38) |