1001. 101日
《ネタバレ》 廃墟。ガスマスクをつけた人。キャッチコピーは「第三次世界大戦 人類滅亡 生き残った6人」。DVDジャケットの表だけでも盛大なネタバレですが、裏の説明は更に詳細です。時系列を示し丁寧に粗筋を説明しています。ですから、てっきり“ここから”の物語がメインと思いきや、まさか“ここまで”で終了とは。何故このような身も蓋もないプロモーションとなったのか。その答えは本編にありました。時間軸を弄り徐々に真相に迫る手法を取っておきながら、肝心の真相を隠そうとする意図が感じられないのです。唯一のサプライズは○○が生き残った事くらい。時間軸を駆使した意味があまり無いような。非常時に人気を博すバラエティ番組。この切り口は実に興味深かったのですが…残念。 [DVD(字幕)] 5点(2013-04-12 21:27:59) |
1002. ペントハウス
《ネタバレ》 犠牲を払ってでも勝利を掴もうとする主人公と、無傷で勝ちきる王道を望む大富豪。チェスの戦略に両者の人生観が観て取れます。奪われたものを取り返すため、主人公が挑んだ一世一代の大勝負。多分に運が味方したとはいえ、主人公に勝利の女神が微笑んだのは必然だった気がします。「償いを避けて通れると思ったら大間違いだ」という彼自身の言葉に沿った結末も腑に落ちました。ザ・アメリカンコメディのノリも楽しいですし、多彩なキャラクターも気に入りました。ストーリー上、エディ・マーフィの存在価値がほとんど無かった点が最高のジョークだと思います。多少の(?!)粗は笑い飛ばしてしまいましょう。 [DVD(吹替)] 7点(2013-04-09 19:27:48)(良:1票) |
1003. 貞子3D
《ネタバレ》 『貞子3D~2Dバージョン~』。このタイトルからして、もうちょっと面白いのですが、終始ホラー映画を観ている感覚はありませんでした。そう怖くないのです。繰り返されるのは、白い手が画面から飛び出てくるシーンに「お前じゃない」の声。脳裏に超絶美少女橋本愛ちゃんの顔が浮かびます。思わず顔がニヤける始末。主人公に迫りくる危機も、彼女自身の超能力で撃破できますし、漂流教室の未来人みたいな奴も物理攻撃が有効でした(蝶(蛾?)になって消えるってどういうコト?)どう怖がればいいのでしょう。染谷翔太や田山涼成部下の死に様などは、笑わせに来ているとしか思えません。3Dの映像技術を楽しむ映画としての価値はあるのかもしれませんが(劇場で観ていないので知りませんが)、それ以外で観るべき部分は皆無だと感じました。おそらく本作最大のホラー要素は、2013年夏に続編が公開されるということ。正気の沙汰とは思えません。こちらの方がよっぽどホラーではないかと。 [ブルーレイ(邦画)] 2点(2013-04-06 18:59:16) |
1004. 小川の辺
《ネタバレ》 一言で言い表すなら、リアリティに拘った映画。行燈の明かりを表現する室内のライティングに、感傷主義に振り過ぎない抑えた脚本。外連味を感じたのは殺陣くらいのものです。配役も然り。東山の侍姿は本当に絵になります。さすがジャパニーズソウル調味料・しょうゆ顔アイドル。尾野真千子も着物姿が素敵です。さて問題は、菊地凛子。あのアバンギャルドな顔立ちに日本髪と着物を合わせたらどうなるものか。印象的な頬骨と鰓が、強情な内面を物語る女剣士の出来上がり。完璧な人物造形ですが、正直“これじゃない”感は否めません。同じ藤沢周平原作時代劇の女剣士でも、片や北川景子、片やリアル小姑フェイス。勝地に同情こそすれ、祝福する気になれないのはちと辛い。もっとも、女剣士という単語の前に“可憐な”とか“美少女”なんて装飾語を勝手に付けて想像してしまう自分に問題があるわけですが。 [DVD(邦画)] 6点(2013-04-03 21:56:20) |
1005. ポテチ
《ネタバレ》 (ネタバレあります。未見の方はご注意願います……) 出生の秘密を知った主人公は、いったい何に衝撃を受けたのでしょうか。彼女は言います。母親との血の繋がりの有無でもなければ、本物の母親に会いたいわけでもない。多分、お母さんが可哀そうだと思ったのではないか。もっと優秀な息子を持てたかもしれないのだからと。おそらく彼女の指摘は当たっています。主人公は母親思い。彼がまず考えたのは、自分のことよりも母親の事だった気がします。「死んだお父さんは酒豪だったけど、忠司の(酒の)弱さは隔世遺伝かね」という母の台詞。尾崎の母が昨年心臓病で亡くなったという話。そして健康診断を初めて受けた主人公が、母親にも健診を強く勧めた理由。これらの事柄から、主人公の身の上に“ある悲劇”が起きている事が推測されます。母親を一番悲しませてしまうこと。劇中語られぬ隠された真実に届いた瞬間から、喜劇調の物語は色を変えました。主人公がどんな思いで、尾崎に肩入れしていたのか気づかされます。空き巣狙い、美人局、ポテチ。物語を紡ぐ要素は、すべて何かの身代わりを象徴していました。本物ではなく、代用品。主人公が“気づいてしまった”のもまた、身代わりの人生でした。今の尾崎は代打専門。そして弓子(母親)にとっては本物の息子。そんな男が放った渾身の一撃は、特大の場外ホームランでした。代用品も、本物も、関係ないという力強いメッセージが其処には在りました。万有引力の法則や三角形の内角の和の定理も、誰かが先に見つけただけ。主人公の発見も本物に違いありません。身代わりの人生なんて、そもそも無いのだと思います。誰もが自分の、本物の、人生を歩んでいます。気づかない方が幸せ?そうかもしれません。でも気づきは喜びです。ホームランのように誇っていい人生であれ。 [DVD(邦画)] 8点(2013-03-30 19:24:44)(良:6票) |
1006. 骨壺
《ネタバレ》 (いきなりネタバレあります。未見の方はご注意ください。) 呪いの元凶となった遺骨は、命乞いの甲斐なく惨殺された妊婦のものでした。彼女の怨霊は、憑りついた人々から体のパーツを奪い、この世に生まれることが出来なかった子供の姿を再現しようとします。我が身を分け与え、子の命を育むのが母親。遺骨の一部を身の内に宿した者は、彼女の身代わりという訳です。なんという痛ましい、やるせない物語。『仄暗い水の底から』と同じ“切なホラー”路線。しかし主人公はそんな妊婦(遺骨)の思いを知るはずもありません。彼女は単に自責の念で命を絶ったのです。確かに見る事すら叶わなかった“我が子”を成形した妊婦は満足そうでした。しかし誰ひとり救われていません。最悪の結末でした。同じく見るに耐え難い内容でも『ミスト』や『オールド・ボーイ』といった傑作と本作は決定的に違うと感じます。それは“物語の構想”と“監督の意思”の有無。この結末にたどり着くまでの道筋の中に、監督の意思が全く感じられなかったのは致命的だったと思います。残念。最後に篠崎愛について一言。いわゆるロリ顔巨乳というカテゴリーのタレントさんですが、芸はある様子(歌は上手い)。演技も磨けば光りそうです。ただグラビアでは強力な武器となるバストが、女優では足枷にならないかと、余計な心配までしてしまいそうです。 [DVD(邦画)] 4点(2013-03-27 19:51:31) |
1007. ザ・ウォーカー
《ネタバレ》 日本でリメイクするなら、主演はあの人以外に考えられませんが、オファー不可能により断念。となると、次の候補は巨匠かスマップという事になりますが、どちらもデンゼル・ワシントンのイメージには程遠い。というわけで、消去法により、主演はおっぱいバレーちゃんに決定。網走刑務所まで般若心経でも運んでもらうっていうのはどうでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-03-24 17:27:31) |
1008. あなたの知らない怖い話 劇場版
《ネタバレ》 『観ると呪われるビデオ』ならぬ『観ると相手を呪い殺せる能力が手に入る動画』。呪い殺そうとした対象者も同じ動画を観ていた(既に呪い殺す能力を有していた)場合に限り、呪いが跳ね返される危険はありますが、誰かの死を望まない限り自分自身は安全です。怖がる必要もなければ、少女の怨念を解く必要もない訳です。核武装をして専守防衛ならば問題なし。しかし自分だけ武装が許されるはずもありません。それが世の道理。誰か一人が武器を手にした以上、全員が同等の武器を手にするしか“世界の平和”は望めません。そして銃を手にしたら撃ってみたいのが偽らざる本音。連続怪自殺事件から数年。鳥古町は平和な日々を取り戻したと言います。しかしそれは仮初の平和。いつ、だれが、引き金を引いてもおかしくない。呪いの連鎖は決して断ち切れないのだと思います。ラストシークエンスの解釈について。産婦人科で懐妊を告げられる主人公。「あの先生、変な事言うんですけど、わたし」に続く言葉は何だったのか。何故産婦人科医は呪い殺されたのか。そしてエコー写真の胎児に刺さっていた釘の意味は……。呪殺少女は主人公の子として転生(処女懐胎)し、堕胎を阻止するために産婦人科医を呪い殺した”と推測しますが、かなり唐突な印象を受けます。何故、このタイミングで少女は主人公に助けを求めたのか、よく分かりません。もっともこれが呪いの連鎖を断ち切る唯一の手段だとすれば、ハッピーエンドと捉えられなくもありません。 [DVD(邦画)] 6点(2013-03-21 19:56:18) |
1009. TEST10 テスト10
《ネタバレ》 薬剤投与により超人的な治癒力を身に付けた被験者たち。副作用は薬剤の中毒性に、危険察知能力の欠如と理性の喪失。傷が治るスピードが速すぎて手術のメスも通らないとか、人間という枠を超えたから動物本来の能力が退化するとか、構想は実にユニークだと思いました。物語後半、制御が効かなくなっていくあたりの流れも定番ながらドキドキします。ただ、これだけアイデアが豊富なら、もっと面白い脚本が書けたのではないかとも思いました。解毒剤をキーアイテムとしたドラマ展開も可能でしょうし、実験成果を製薬会社上層部が単に揉み消すというのも芸が無いような。軍事利用も含め、この薬は金の成る木。物語終盤はもっとエキサイティングな展開が望めたと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2013-03-18 18:22:41) |
1010. おとなのけんか
《ネタバレ》 子供の喧嘩は後腐れがありません。殴り合いをしても、その後は仲直り。喧嘩前より仲良くなっているくらい。ところが大人の喧嘩はそうはいきません。しこりが残る。手打ちをしたはずなのに、顔を合わせると気まずい。だから大人は極力諍いを避けようとするのだと思います。以上自分の実体験(汗)。不思議だなあと思います。何故大人は喧嘩が下手になってしまったのか。本作を観るとその理由が分かる気がしました。子供の喧嘩は争点がピンポイント。戦い終わればノーサイド。ところが大人は違います。自身の存在全てを賭けた戦いに発展してしまう。そもそも関係ない話まで争点に組み込んでしまう。子供の喧嘩がスポーツの試合なら、大人の喧嘩は戦争。いやー大人は面倒くさいですわ(笑) [DVD(吹替)] 7点(2013-03-14 19:24:14)(良:1票) |
1011. ×ゲーム2
《ネタバレ》 明らかに不自然な描写が2ヶ所ありました。ひとつは、バケツを持って立ってろの刑。重りはご婦人が苦も無く運んできた球(ボーリング球?)。確かにバケツに入れるとキツイでしょうが、大の男が耐え切れない程の負荷ではありません。もうひとつは、顔面パンチの刑。振り子の質量から考えて、絶命は考え難いです。いずれも同一人物に対する刑罰。ということは、彼は刑罰執行側のスパイだった(演技で苦しんだふり)?一応結末とも符合はするのですが、どうも真相は違うようです。つまり単純に演出が稚拙であったということ。何故このような“間違い”が発生してしまうのか不思議です。とはいえ、前作よりも格段に見応えがあったのは事実。その点は評価します。オチ、演出共に、ソリッドシチュエーションスリラーの代表格『○○○』をお手本にしたような気が、しないでもありません。 [DVD(邦画)] 5点(2013-03-11 22:26:05) |
1012. スウィッチ
《ネタバレ》 本作で登場する“スイッチ”なる家交換システムは、“HOME EXCHANGE”という名称で実在するサービスのようです。私は未見ですが、C・ディアスやK・ウィンスレット出演の『ホリデイ』でも取り上げられたとのこと。別荘の交換ならまだしも、居宅を明け渡す事には相当抵抗があります。壊されやしないか、盗まれやしないか、気が気ではありません。しかし想定されるトラブルとは、所詮この程度。お金で穴埋めできるものばかり。本作の主人公の身に降りかかった災難は想像を絶するものでした。カナダのモントリオールとフランスのパリ。言語は同じでも、やはり国境を超えるとリスクは桁違いに高まります。誰も自分を知る者がいない状況。それが旅の醍醐味の一つではありますが、大きな危険も孕んでいました。普段自分が如何に“守られて”生きているかを実感しました。作話上の粗は数多あるものの、その隙間を埋めるアイデアは努力賞もの。辻褄の合わせ方はお見事でした。ただし事情が特殊過ぎたが故に、当初物語が有していた“誰の身の上にも起こり得る”感覚は薄まってしまったかもしれません。存在を否定される事は恐ろしいこと。アミューズメントパークの絶叫マシンに乗る感覚で、非日常に身を投じて恐怖を堪能してみては如何でしょう。掘り出し物感覚の良作。 [DVD(字幕)] 7点(2013-03-08 21:49:39)(良:1票) |
1013. トリハダ -劇場版-
《ネタバレ》 幽霊や超常現象なし。音楽で恐怖を煽らない。過度な演出をしない。日常から逸脱しない。このコンセプトは強く支持したいところ。事実、雰囲気は抜群でした。それだけに細部の粗が悔やまれる出来でした。如何にスクリーンの日常を自身のそれと置き換えて物語に飛び込めるか。本作を楽しむためにリアリティは絶対条件。その点で大いに不満が残ります。コールセンターや宅配便の業務については、リサーチ不足を感じさせます。固まらない血も現実的ではありません。最終2話についてはリアリティ云々の前にアンフェア。これはいけません。ティーン向けのライトホラーと割り切って楽しめば問題ないかもしれませんが、自分はもうワンランク上の完成度を狙える設定と考えます。改良版の続編を期待します。追伸。宅配便の話の女優さんが絶品でした。笹野鈴々音さん。TV版でも評判を呼んだ模様。この存在感は圧倒的です。前田敦子の物真似でブレイク中のキンタロー。もお笑いの仕事が無くなったら是非ともホラー映画の世界で活躍されては如何でしょう。笹野、キンタロー。の悪夢の?競演が観たいような、観たくないような。 [DVD(邦画)] 5点(2013-03-05 18:53:54) |
1014. ジョーカーゲーム(2012)
《ネタバレ》 当局の思惑はどうあれ、ルール上は一人の勝者を決める戦いではなく、一人の敗者を決める戦い。この設定が秀逸でした。前者であれば、全員が戦わざるを得ません。しかし後者は違います。積極的に戦う必要がありません。自身がたった一人の敗者にならなければいい。そんな消極的な思考を助長するのが“契約制度”でした。生死のかかった戦いを代理人に委託する。余りにリスキー。怖くて二の足を踏みそうなものですが、契約を結ぶ者が続出しました。でも不思議ではありません。おそらくこれが一般人の思考。面倒な事は誰かに身代わりしてもらいたい。“自分で決めた事だから、悲惨な結果でも悔いはない”ではなく“他人が決めた事だから、悲惨な結果でも自分の責任じゃない”が勝るのです。そんなバカなと思うかもしれません。でも現実世界も同じ。責任の恐怖に慄き、代理システムに馴らされているのが現代人だと思います。主人公はそんな姿勢から一歩踏み出せた様子。そこに本作のメッセージがありました。シンプルなゲームでありながら、戦略性が発揮できるジョーカーゲーム。ドラマ性も豊富。面白い素材だったと思うのですが、脚本の出来はイマイチでした。暴力とイカサマを公認してしまったのは、ゲームの面白味を激減させる悪手。一から脚本を練り直してのリメイクを希望します。最後に本作のヒロイン、北原里英について少々。演技云々に注文を付けるつもりはありません。大体みんな同レベル。よくも悪くもバランスは取れています。気になったのは前髪です。あの長さでは女優の生命線“眼力”を殺してしまいます。前髪はオンザ眉毛(死語?)でお願いしたい。なんか生活指導みたいになっちゃいましたが。 [DVD(邦画)] 5点(2013-03-02 22:54:58)(良:1票) |
1015. NINIFUNI
DVD収録のメイキングでプロデューサーと脚本家は、こう明言しています。本作は答えの無い映画。出来事を提示して観客が何を感じるか投げかけているだけであると。その説明に嘘偽りはありませんでした。なるほど、そういう映画もアリなのかもしれません。映画の解釈は観客の手に委ねられているものだとも思います。ただし、シチュエーションの提示だけなら40分は必要ない気がします。2分で十分でしょう。尺は観客のイマジネーションを刺激するための仕掛けに費やして欲しいと思いました。本作を楽しめるのは、映画鑑賞の達人か感性が豊かな人だと思います。自分にはまだ無理でした。それでは最後に自分の率直な感想をば。「やっぱり怪盗は6人バージョンがしっくりくるな」 [DVD(邦画)] 2点(2013-02-27 18:51:54) |
1016. トト・ザ・ヒーロー
《ネタバレ》 トマの姉への愛情は、異性に対するそれと同じでした。赤子の自分が、病院の火事で取り違えられたとの妄想も、姉弟の血の繋がりを拒絶する願望の表れ。いわゆるシスターコンプレックス。いわば風邪のようなもので、心と体の成長(自我の確立)により治癒するのが一般的かと。ですから、少年トマがあのとき姉を失わずに済んだら、彼の人生は全く違ったものになっていたでしょう。一瞬にして、それも自分の言葉が引き金となって、姉を死なせてしまった衝撃は、彼の心を凍てつかせました。姉への思いで縛られた一生。決して手に入らぬものを思い続け、前に進めなくなってしまった少年は、そのまま老いさらばえた。彼の「これと言う事が何一つ起こらない人生だった」という言葉が胸に突き刺さります。本当は“何も起こらなかった”のではなく“何も起こさなかった”のだから。そんな彼が選んだ人生の最終回は、妄想を現実に変えること。せめてもの帳尻合わせです。それは彼のささやかな自己肯定でした。エンドロール。ブラックバックとクレジットが織り成す模様がまるで人生の道程のように思えます。幾つもの分岐点を介し、真っ直ぐに進む一本の道。自身の人生をトマの人生に重ね合わせて、観客は安堵するのでしょうか、戦慄するのでしょうか。輪廻転生を思わせるエンディングと陽気な歌が、この映画の救い。そして希望です。 [DVD(字幕)] 9点(2013-02-24 20:24:05)(良:2票) |
1017. ブレーキ(2012)
《ネタバレ》 痛みを拠り所とする拷問では決して口を割らないであろう男から、情報を聞き出すために仕組まれた壮大なギミック。彼の一瞬の気の緩みを突く作戦です。おそらく機密事項について、目星はついていたのでしょう。ただ最終確認がしたかったと。うーん、それなら一応理屈は通ります。でも釈然としません。というのも、仕掛けの数々に“必然性”が感じられないからです。その象徴となるアイテムはタイマー。他のレビュワー様もご指摘のとおりです。4分毎のカウントダウンは、単に観客の気を惹くためだけの設定に思えてしまいます。言わば観客を釣るための撒き餌のようなもの。そりゃ釣られた方は、いい気はしません。大オチにしても中途半端。観客はサプライズがお好きですが、気持ちよく騙されたいのです。 [DVD(吹替)] 5点(2013-02-21 18:58:37) |
1018. バカリズム THE MOVIE
バカリズムコントの映画版。それ以外に評しようもありません。これを映画と呼んでよいかどうか微妙な気はしますが、自分は楽しめました。何度「くだらねえ」と突っ込んだことやら(ホメ言葉です)。個人的には津田主演の『(株)ROCK』が一番好きです。そして何よりエンディングの『バカリズム THE MOVIE音頭』の身も蓋もない歌詞に大笑いしました。バカリズムが面白いと思う方のみどうぞ。 [DVD(邦画)] 6点(2013-02-18 18:45:58) |
1019. SADO TEMPEST 佐渡テンペスト
《ネタバレ》 主人公は島に流されたのか、呼び寄せられたのか?本田博太郎は存在するのか?島に春が来ないとはどういう事?鬼とは一体何なのか?話が進むに連れ積み重なっていく謎。そして矛盾点。十分な説明のないまま始まった物語は、明確な種明かしをせずに幕を閉じます。スクリーンを前にして、しばし呆然。しかし不条理映画でもなければ、説明放棄でも無い事だけは確信がありました。その拠り所となるシーンは2つ。薬を盛られた主人公が鏡を拭く場面。そして囚人たちが道具を持たずに砂金を探す場面。前者は“目の霞み”を、後者は“カネに価値は無い”という事を端的に表現しています。説明のための台詞ではなく、描写で観客に伝えようとする姿勢を感じました。この監督は信用できます。果たして物語を読み解く鍵は何だったのか。それは医者の言葉に隠されていたと考えます。「時間は真っ直ぐに進むと思うか?それとも大きな輪を描いていると思うか?」島にはもう何年も春が来ていないと言いました。終わらない冬の正体。歌(魔術)によって島の時間の流れがループしているとしたら……これで多くの謎が説明できるのではないかと。蓄積されない。辿り着かない。いずれは元通り。だから刹那の快楽にしか価値を見出せない。“死”さえも終着点でないとしたら、島の人間が死に対して不感であった事も説明が付きます。時の流れを干渉するほどの魔力があれば、人の心を操る事など造作もないでしょう。ジュントクは(もしかしたら“今回の”ジュントクは)、春を呼び寄せ島に秩序を取り戻した。鬼とは島の精霊。自然の摂理と共に有るもの。変革がもたらしたのは、世界が本来あるべき姿でした。オール佐渡ロケーションで製作された映画。冬と春を映し出す色調整も的確で、佐渡の自然が持つ厳しさと美しさを存分に表現してくれたと思います。ジルバの歌も心に響きました。劇中歌(春を呼ぶ歌)は心を震わせます。大衆受けする映画ではないでしょうが、監督の作家性が伝わってくる作品に仕上がっていたと思いました。最後に一箇所だけツッコミを。施設長が要求したのは、佐渡では造れない美味い酒だったはず。真野鶴は佐渡が誇る美味しいお酒でございますよ。 [試写会(邦画)] 7点(2013-02-15 18:57:22) |
1020. 赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター
《ネタバレ》 サメの描写自体は、水族館やネイチャーチャンネルでお目にかかるものと、何ら変わりありません。画のインパクトは無いに等しい。にもかかわらず、これほど恐怖を感じるのは何故でしょう。それは人が置かれた立場が、あまりに無力だからです。抵抗する事すら叶わぬ状況。もし彼らがナイフ1本でも所持していたら、きっと勇気を持てたと思うのです。実際それでどうなる訳でもないでしょうが、心の在り様は全く違ったはずです。見事な設定勝ちでした。サスペンスホラーは、とかく“加害者”を如何に恐ろしく描くかに腐心しがち。でも本当に大切なことは、そうではありません。この映画には“恐怖のメカニズム”が正しく活かされていたと感じます。それにしても、あの状況で船に残らない選択が正解だったとは。まさに事実は小説よりも奇なり。海洋パニック映画の金字塔『ジョーズ』とは違う手法論でサメの恐怖を引き出した点を評価したいと考えます。 [DVD(吹替)] 7点(2013-02-12 19:44:08)(良:1票) |