1961. 地上より永遠に(1953)
《ネタバレ》 初見。オスカーを受賞したフレッド・ジンネマン監督が描く「信念を貫き通す男」に酔わせてもらう期待の大きさに比例した落胆の大きさでした。 どれだけ虐められてもボクシングはしないというスケールに欠ける意地に辟易し、恋愛模様は幼くて盛り上がらない。曹長と上官の妻の不倫模様に至っては二人は作品上の客寄せパンダなのかと呆れ返る。無駄死ににしか見えない結末に白けるばかり。「何じゃこりゃ、これがオスカー?」の作品。 [DVD(字幕)] 3点(2017-10-15 17:08:08) |
1962. 大列車作戦
《ネタバレ》 操車場の爆撃、単機による列車掃射、機関車の衝突、全てのシーンが臨場感に溢れる息を呑む迫力で撮影の困難さが想像出来ます。 「わが命つきるとも」で信念を貫き通したポール・スコフィールドが演じる悪役は、絵画に対する異常な執着心を持ち、やはり偏執的な信念を貫き通しておりました。一言の抗弁も許さぬ無言の目力に見惚れてしまいナチス式の敬礼までかっこいい。バート・ランカスターとの最後の対決は圧巻。盗人猛々しく価値観をまくしたてる威風堂々とした大佐に無言で引き金を引くラビッシュ。転がる多数の木箱と多数の射殺体が戦いの虚しさを漂わせます。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2017-10-15 01:07:45) |
1963. クイズ・ショウ
《ネタバレ》 TV業界のやらせ行為は1956年当時に於いて衝撃が大きかったのが今では誰でもさもありなんと言えるので、「公的事業ではなく娯楽番組においての不正行為によって皆が得をした、誰も傷ついていない」委員会でのダン・エンライトの証言にうっかり納得しそうになる本作。彼や事業者達がチャールズ・ヴァン・ドーレンをビジネスの道具としてしか見ておらず傷つけたとは頭の隅にも浮かばない事が薄ら寒い。父子がケーキを食するシーンが忘れられません。自業自得の後戻り出来ない苦しさを吐き出すのを懸命に堪える息子と訝る父、もどかしさで泣きそうに。お目当てのポール・スコフィールドに満足させられ、嫌いなレイフ・ファインズの驚きの好演に得した気分になりました。監督の生真面目さを感じる良作。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-13 15:50:18) |
1964. 遥かなる戦場
《ネタバレ》 挿入される風刺の効いたアニメーションが秀逸。自殺行為の突撃においてカスとクズが生き残り、当然のように痛痒を感じない姿に血圧上昇。更にラグラン卿の「私の字ではない」に血圧計が振り切れそうに。責任の擦り付け合いのラストシーンに、力尽きた人々が報われない虚しさに脱力感で一杯。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-04 14:56:50) |
1965. 素晴らしき戦争
第一次世界大戦が描かれた本作。監督の意欲的な試みは退屈さしか覚えず、絢爛豪華な俳優陣の印象も薄い。ラストショットに目が覚める。その峻烈さはダラダラとした物語を要約した見事なメッセージであり点数の全てを。 [DVD(字幕)] 4点(2017-10-04 14:28:47) |
1966. シャイン
《ネタバレ》 幼少時から父親に勝つことを義務付けられ、鬼気迫る名演奏を披露した直後に精神が崩壊してしまった天才ピアニスト。父親からの抑圧はさぞ苦しかった事でしょう。回復後の演奏で喝采を浴びて流す嬉し涙が胸に迫ります。長い暗闇の中でも光を浴びれる日が訪れる事を信じられる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2017-09-30 23:50:07) |
1967. わが命つきるとも
《ネタバレ》 初見。邦題が結末を端的に著しています。500年前から現在に至るまでこの世に溢れる「ご都合主義の」正義。誰が何と言おうとそれを否定し堂々と信念を貫き通した生き様にひれ伏すばかりです。夫と永久の別れを交わすウェンディ・ヒラー演ずる妻の姿に悔し涙が滲みました。重厚な傑作です。 2017.10.18 DVD購入して再見 妻子との別れのシーンを何度も見る。 娘に「一度誓ったら両手でしっかり支えるのだ。指を開けば自分を失ってしまうのだ」と尚毅然とするも 妻に「この思いをお前に解ってもらえず死ぬのがなお辛い」「実に美味しい、良い妻だ」と作中唯一苦しさを滲ませる。 王の離婚問題で何故こんな事になるのか、悔し涙が止まらない。 刑場での首切り人への言葉「お前を許そう、神の元に送ってくれるのだから」に只々ひれ伏すばかり。 私の棺に納めて欲しいリスト入りの作品。 [DVD(字幕)] 10点(2017-09-30 23:28:19) |
1968. ハワーズ・エンド
《ネタバレ》 名優達の共演であっても、お粗末な脚本の中では何の輝きも放てないことを実感しました。マーガレットとヘンリーがあっさり結ばれるのには唖然茫然であり、偽善者が美しい舞台の中で気取っているだけの作品でした。 [DVD(字幕)] 4点(2017-09-28 16:03:33) |
1969. メル・ブルックスの大脱走
《ネタバレ》 冷酷無比なナチスとブロンスキー一座の対決を堪能しました。反骨心と笑いの塩梅が絶妙であり、特筆もののチャールズ・ダーニングの百面相は絶品でオスカーを受賞してもらいたかったです。逃亡劇で誰一人ニセ総統である事に気付かなかった無理筋は残念でしたが快作です。 [DVD(字幕)] 8点(2017-09-28 15:47:49) |
1970. チャーリング・クロス街84番地
アン・バンクロフト、アンソニー・ホプキンス夢の共演。見つめ合い、唇を重ね・・・妄想でワクワクしながらの鑑賞。20年に亘る誠実な店員と満足する顧客との関係に於いて劇的な事は何一つ起きなかった。にもかかわらず私の安っぽい期待を超える感慨を覚えた夢の共演でした。 [DVD(字幕)] 8点(2017-09-26 00:24:34) |
1971. ザ・ワイルド
《ネタバレ》 クマの腕(脚か)の下で抱かれるように横たわるチャールズにどうやって撮影したのだろうかという疑問にエンドロールが答えてくれました。バートくんグッジョブ。うろたえることなく知識と知恵と勇気でもって対処するチャールズの姿に、億万長者の事業家は譲り受けたのではなく自ら勝ち取った地位なのだと思わされます。自分を殺そうとした者を助けるのは挑戦する価値があるという考えが印象的。この世は挑戦の連続なのでしょう。このような人物はアンソニー・ホプキンスのドンピシャのはまり役。大自然の中に一際美しく映えるブルーグレイの瞳に、数あるツッコミどころも封殺されました。 [DVD(字幕)] 7点(2017-09-21 16:11:25)(良:1票) |
1972. カポーティ
《ネタバレ》 どこかで見たような話だと思っていたら、以前に鑑賞した「冷血」でした。タイトルに惹かれた思いは空振りに終わった作品でした。本作は作家カポーティが作品を完成させる過程を描いています。語り口と立居振舞が無機質な彼こそが「冷血」であり、彼にも作品にも魅力を感じられず、真っ当な一家四人の無念が晴らされるのを長引かせた一因に腹立たしさが募りました。フィリップ・シーモア・ホフマンの怪演に接し早逝が惜しまれます。 [DVD(字幕)] 5点(2017-09-17 19:21:09) |
1973. エレファント・マン
《ネタバレ》 若きアンソニー・ホプキンスが当時から端整な佇まいでベテラン俳優の中に混じって抜群の存在感を放っています。余りにも特異な外見に接した際の人々の反応が丹念に描かれています。ギョッとするだけの者、金儲けの道具と思う者、慈悲をかける者、人となりに触れて気持ちを通わせる者。見世物小屋の仲間達がメリックを檻から逃がしてあげるシーンに、真の醜い怪物はボイラーマンやバイツなのだと痛感させられます。メリックが誰にもサヨナラを言わず母のもとへ旅立ってゆく結末は残念でなりません。「もう、十分に生きた」「もう、生きる事に疲れた」どちらなのでしょうか。 [DVD(字幕)] 9点(2017-09-17 15:27:53) |
1974. M★A★S★H/マッシュ
エリオット・グールド、ドナルド・サザーランドが共演する傑作の誉れ高い本作でしたが見るも無残な内容に心底ガッカリ。起承転結がなくニコリとも出来ない単に下劣な悪ふざけが延々と続くだけ。血まみれの手術シーンでの兵士はうめき声一つ上げるわけでもないマネキンのような扱いに厭戦が感じられない。ベトナム反戦を謳っていながら舞台が朝鮮戦争という製作陣の気概の無さに白けて、小馬鹿にしたような日本描写に怒りがこみ上げる。 [DVD(字幕)] 1点(2017-09-17 14:33:47) |
1975. 夜の大捜査線
《ネタバレ》 初見。ロッド・スタイガーが絶品。曲折を経た末に見せた別れの際の笑顔と「元気でな」の一言はこの先も忘れることはないでしょう。1967年に本作を世に送り出した製作者の気概に脱帽。 [DVD(字幕)] 10点(2017-09-17 00:20:08) |
1976. 奇跡の人(1962)
初見。食卓での長回しシーン。共にオスカー受賞も納得のアン・バンクロフトとパティ・デュークが体現する究極の「迫真の演技」が圧巻。獣の調教ではなく、世界を知り自身で考えて行動出来る為の教育を施すというサリバンの尋常ならざる信念が、自身の悲惨な境遇に起因しているところが感慨深い。 [DVD(字幕)] 9点(2017-09-16 23:57:27) |
1977. 愛と喝采の日々
特筆すべきはアン・バンクロフトの美しさで一目惚れ分+1点。エマとディーディーのエミリアを巡る確執に、スターになった者となれなかった者、母親になった者となれなかった者が、それぞれ自分で選んで歩いてきた道を振り返り後悔と嫉妬で身悶える虚しさを見せられます。バレエのレッスンシーンや舞台シーンの格調高さと肉体美の極みに惚れ惚れしました。 [DVD(字幕)] 9点(2017-08-31 16:17:34)(良:1票) |
1978. 黄色いロールスロイス
《ネタバレ》 1台のロールスロイスにまつわる3つの物語。着想がユニーク。豪華キャストによる3つのカップルの中でのMVPはシャーリー・マクレーン。「彼は生きて幸せになれる、私は生きてるだけで幸せ」という真意をアラン・ドロンが知らないラストが何とも切なく、この時の蓮っ葉な情婦とは別人の美しさに目を見張る。掘り出し物の一作。 [DVD(字幕)] 7点(2017-08-28 09:28:53) |
1979. 愛と追憶の日々
《ネタバレ》 エマをペットの様に扱うオーロラ、同様に長男を扱うエマ。こんな二人が互いの不倫を報告し合うのに嫌悪が募り、物語を冷めた目で眺めていた。擦れてしまった長男の心の拠り所になってあげられそうなラストシーンのギャレット。本作のニコルソンは宇宙飛行士であった事をカケラも感じさせない色気の無いエロオヤジでガッカリだったので、最後の最後で我慢して鑑賞した甲斐を感じた。 [DVD(字幕)] 5点(2017-08-27 14:11:34)(良:1票) |
1980. ウルフ
《ネタバレ》 中学高校時代に夢中になったジャック・ニコルソン(本作57歳)とここ3ヶ月注目しているクリストファー・プラマー(同65歳)が同じ画面に映っている。嗚呼、夢みたい。 オトコマエにクラクラっとなったのはプラマー。 語り口や表情から発せられる色気に今でもウットリさせられたのはニコルソン。 先祖は狼なのかと思わされる獣人模様(遠吠えはやりすぎだけど)はプラマーには逆立ちしても出来ない。 役者が一枚上手のニコルソンを再認識させられました。 妻を寝取られ、役職を追い落とされたウィルが狼の活力を得て奪い返す。 挙句の果てに狼男同士の殺し合いとなる。(ここまで出来るのはニコルソンをおいて他に無し) その猛々しさは、スーツを着てネクタイ締めているヒトも「ダーウィンが来た」の弱肉強食世界同様に戦わなきゃならんのを示しているように感じました。 ヒトは優しくなければ生きていく資格がないというのは青臭い台詞なのだろうか。 満月を見上げて考えてみようか。 [インターネット(字幕)] 8点(2017-08-23 13:31:39) |