1. タイタス
《ネタバレ》 最初に映画館で見たときは、とにかく予想以上のグロテスクさで拒絶反応が先行してしまって、冷静に鑑賞出来なかった。改めてみてみると、随所にちりばめられた視覚的趣向の凝り具合にひたすら感心させられた。『タイタス』というのはシェイクスピアの作品の中でもあまり完成度が高い作品とは思わないけど(タイタス自身の性格の欠陥に対する内政が描かれていないんで)、何故か人気の演目でもある。カーニバル的な祝宴に満ちているからなんだろうな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-10-17 05:32:58) |
2. さらば、わが愛/覇王別姫
《ネタバレ》 はるか昔に録画したテレビ放送のビデオで鑑賞。 最初に見たときはそれほど感動しなかった。レスリー・チャンの美しさが嘘っぽく見えて、それで物語に入っていけなかった。 でも、二度目は、何故か違和感なく引き込まれた。同性愛的愛情を抱いていることや現実世界で逃げ場がないことで、舞台の上という虚構の世界でしか幸せを見出せない男が、現実の過酷な動乱の中にいやおうなく巻き込まれる悲劇。ひたすら美しいレスリーの舞台姿が逆に嘘くさくていいのだ。うその世界の中にしか幸せがないのだから。二度目で気がつきました。 コン・リーが派手に登場して、そういう破天荒な振る舞いをするキャラクターなのかと思ったら、結婚してからは意外と常識的な女になってしまったのが、不満といえば不満。でも、コン・リーも、苦労してやつれた姿ですら美しかったから、まあ、いいか。 [地上波(邦画)] 8点(2007-09-09 20:40:51) |
3. 十二夜(1996)
シェイクスピア映画は数あれど、喜劇で成功している作品というのは、本当に少ない。この映画が、ほとんど唯一の成功作ではないだろうか。ヒロインの男装が引き起こす騒動が、単なる趣向だけでなく、ヒロインやその周りの人々の内面を掘り下げる技法になっている。風景の美しさ、人物たちの愛すべき滑稽さ、そのすべてがいとおしい。何度見ても幸福な気分になれる。 [DVD(字幕)] 9点(2007-06-17 15:09:37) |
4. オセロ(1995)
ケネス・ブラナーはどう見ても善人面なのだから悪人のイアーゴーには向いていない、と私の知人が言っていたが、そんなに私には違和感はない。オセロをねちねちと攻め落とす演技は、さすがだと思う。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-06-17 15:00:14) |
5. ソナチネ(1993)
《ネタバレ》 私もこの映画が北野映画の中で一番の傑作だと思う。映像として、演技として、そして、あけっぴろげなまでの空虚さにおいて。ピストルが響くたびにドキっとしてしまうのだけど、そのあとにとにかく哀しくなる。とにかく圧倒された。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-05 22:59:49) |
6. 菊次郎の夏
《ネタバレ》 最初は、「これは外れだな」と、正直思った。たけしの映画は好きだけど、これは駄目かと。音楽よすぎて(すでに映画を離れて一人歩きしてるほどだし)映像として音楽に負けてるなと。ところが、(かなり多くの人が不快に感じてらっしゃる)後半に突入するや、一気に引きずり込まれてしまった。母を探すという目的がなくなったときに、残ったのは、ひたすら夏を消費すること。大人も子供も、同じレベルで。ああ、こういう夏、いいなあ、と心から思えてしまった。(私も夏が嫌いなんで。)エンディングが冒頭につながっているが、冒頭であざといなと思った映像なのに、そのリフレインがこんなに心地よく写るなんて。ある意味奇跡的な映画。きっと私は、何度もこの映画を見てしまうんだろうなあ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-06-05 22:51:56)(良:4票) |
7. ひかりごけ
《ネタバレ》 正直、ここまで作りこまれた重々しさは、辛い。きつい。画面も暗い。最初に人肉を食らう場面は、こちらが空腹だったせいもあって、ほんとに気持ち悪くなってしまったよ(苦笑)。 でも、最後の裁判の場面は圧巻。この船長の自己主張、わかるなあ。 この映画は、確かに三国錬太郎の映画です。↓のレビュワーさんに同感です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-06-02 22:28:11) |
8. 42丁目のワーニャ
《ネタバレ》 チェーホフっていうのは難しい劇作家だと思う。全世界的に見て、シェイクスピアについで上演回数が多いくせに、滅多に成功した舞台に出会えない。でも、みんなチェーホフを上演したがる。そういう作家だ。思いをうちに抱えていながら、その思いを人に伝えることも出来ず、また、それゆえに、他の人の思いを理解することも出来ない。そういうディスコミュニケーションの世界。そりゃ、表現するのは難しいよ。 で、この映画は、チェーホフに正当に挑んで、成功している。アメリカ人なのに、いや、アメリカ人だからこそ、成功したのか。とにかく俳優たちがうまい。ホント、感心するほど、うまい。でも、特筆すべきは、ジュリアン・ムーアだと思う。エレーナという役どころに必要なのは、こういう美しさだ。存在するだけで人をひきつける。その説得力が大切なんだ。(モスクワでの初演ではチェーホフ夫人が演じたというが、これはかなり違うと思う。)その美しい彼女がひたすらわが身の不幸をかこつ。だからこそ絵になるのだ。 原作で言う第二幕の終幕、エレーナとソーニャの和解の場面の美しさよ。 そしてこの一級品の「舞台」を、「映画」としての一級品に仕上げた、ルイ・マルの生涯最後の力業に心からの敬意を評したい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2007-06-02 22:24:29) |
9. 静かな生活
《ネタバレ》 今のところ、この映画の最高得点になってしまいそうですが、正直な感想です。そんなに悪くはなかったのです。ただ、正直言えば、この映画だけだと障害者の生活を美化してしまう部分があるかなとも危惧を抱きました。そのあたりが、この映画でも(同列には並ばないけど)『レインマン』とかでも、感じてしまう。障害のある人に天才的な能力を発揮する人はいるのは事実。でも、全ての人がそうじゃない。だから、そのあたり、誤解を生んでしまうのではないかと思ったのです。でも、一方で、障害の有無を問わず、天才的な人は、いる。これはそういう、一人の天才とその家族をめぐる物語として、私にはとても面白かったのです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-05-20 23:34:15)(良:1票) |
10. マイ・プライベート・アイダホ
《ネタバレ》 いや、シェイクスピア原作だってことは知っていた。見始めて、最初、そう言われればそうだなあ、という感じだった。しかし、30分ほど経って…「あっ」と。これは、シェイクスピアの『ヘンリー四世』じゃなくて、それをもとにして作られた『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』をベースにしてる! シェイクスピアから選ばれたシーンやせりふが、全部このウェルズの映画に準じてるんだもの。全編ウェルズへのオマージュだ、これは! 何しろウェルズの方の原題に使われた「真夜中の鐘をよく聞いたものだった」ってせりふがしっかり使われてるのだもの。他にも、ロックスターを襲撃する場面のリバーやキアヌやボブの衣装とか、彼らのたむろしている宿(?)のおかみがウェルズのイーディス・エヴァンズにそっくりなしゃべり方をしたりとか、ネタには事欠かない。 若いころウェルズにはまっていた身としては、ホントは、それだけで嬉しくなってしまうところなんだけど、この映画は、それをベースにしっかりと、青春の痛みが描かれている。もちろん、そのことの方がこの作品で最大に評価されるべき点だ。これは強調しておこう。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-05-16 21:40:47) |
11. ゴースト・ドッグ
《ネタバレ》 下の方のレビューの方々の間でも問題視されていたけれど、主人公が正確に武士道を理解していたかどうか、って問題。いや、これは、ズレてますよ。誤解してます。でも狙ってるズレだと思う。いちいち挿入される「葉隠」の引用、これが、どうも物語ともずれてるし。で、このズレが、違和感となってしまったらこの映画は楽しめないんだろうな。私にはツボにハマってしまった。ばかばかしくて面白かった。ディテールのこだわりもたまらんです。イヌの表情、アニメばかり見ている敵役たち、いいところで飛んでくる鳥。思い出すとくくっと笑ってしまう。主人公と少女が語る、『羅生門』というアンソロジーの中では「藪の中」が一番よかったわ、という会話。さりげなく黒澤へのオマージュ、入ってません? 武士道ときたら黒澤ってことかしら。それもまた誤解のような気もするんだけど。そこまで狙ってる? [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-04-13 23:18:02)(笑:1票) |
12. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
なかなかいい出だし。でも、ロビン・ウィリアムズが出てきた時点で先が読めてしまった…丁寧な描き方をしているいいドラマだと思うけど、もうひとひねりほしかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-03-09 23:10:58) |
13. ファーゴ
《ネタバレ》 かつて『バートン・フィンク』を映画館で見て、全然ついていけず、以来、ずっと敬遠していたコーエン兄弟の映画。恐る恐る見たら、当時ほど拒否反応はなかった。 実話ってことはわかっていても、こんなに人が死ななくてもいいのになあ、ってのが正直な感想。女刑事のやさしい瞳が救いかな。ユーモアとしては、やはり、昔と同様笑えなかったけど、世界観は好きかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-02-20 22:38:48) |
14. 帰って来た木枯し紋次郎
テレビシリーズの記憶がかすかにある世代です。正確には覚えてません。ですから、シリーズになじみのある人とは違う感想になるかもしれませんが、これは予想外にいい映画でした。物語は、それ自体新しさは感じませんでしたが、でもそこそこ面白かった。もともとのシリーズの常套的な展開なのかもしれません。しかし、特筆すべきは、何より、市川監督の映像美でしょう。丁寧に描かれた自然の美、陰影のある深みのある画面。 テレビシリーズを映画にするならここまでやらなくてはいけないのだな、と納得させる映像美です。近頃はやりの、テレビの演出をそのまま流用する形での安易な映画化の対極に、この映画はあります。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-02-04 08:06:36)(良:1票) |
15. リトル・ブッダ
《ネタバレ》 西洋人にわれわれの知らないアジアを教えられるっていうのもちょっと不思議な感じがします。ストーリー的に心踊らされる部分がなく、その分見ていてちょっとつらいけど、でも、そんなに不愉快ではなかった。 ほかの方も書かれてますが、キアヌ・リーブスは見事にアジア人になっていて(英語の発音もインド人の英語のように聞こえる)確かにいわれないと気づきませんね。 歴代のダライ・ラマも、実際、あんなふうにして生まれ変わりの後継者探しの末に選ばれるのだそうですね。 [地上波(字幕)] 6点(2007-01-25 23:22:44) |
16. セレブリティ
ケネス・ブラナーが主役なのに、全編、キャラがいつものウディ・アレンそのもの。完全コピーじゃん! 笑ってしまった。ならばアレンが主役でもいいのに。いや、やはりアレンでは、この色男ぶりはうそ臭くなってしまうか。その説得力のためだけのブラナー起用なのか。 しかし、まあ、あきれるまでのこの無軌道ぶりは、確かに一般向けじゃないかも。でも、アレンって、時々こういうフェリーニまがいのはちゃめちゃがやりたくなるみたい。昔も『スターダストメモリー』ってのがあったし。好みでいえば、『スターダスト』の方が好きだけど、これはこれで、この無軌道ぶりがたまらないです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-01-10 23:56:33) |
17. ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
ダークなのに美しい。不思議なアニメです。しかもあの動きがCGでないなんて。今のピクサーの仕事を見ていると、手仕事でこれが出来ていたってことが奇跡としか思えなくなりますね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-12-28 00:06:44) |