1. ザ・コミットメンツ
《ネタバレ》 たしかイタリアのシエナの野外映画祭で見たのだが(記憶が定かではない笑)、あれは1992年の夏。今見直すと、ドラマが一応あって、音楽がやはりいい。本格的な音楽ものを見直したくなってきた、『ラスト・ワルツ』とか。 [DVD(字幕)] 7点(2025-07-16 23:26:01)★《更新》★ |
2. ワイルド・アット・ハート
《ネタバレ》 映画商品ということに悪態つきまくる映画というか、汚い、グロい。コーエン兄弟のようなブラックなユーモアが滲み出るタイプなのだろうか、それにしても完成度は低い。あれはイザベラ・ロッセリーニだったのか、あとから気が付いた。「ブルー・ベルベット』は良かったな。 [DVD(字幕)] 5点(2025-07-04 08:57:47) |
3. がんばっていきまっしょい(1998)
《ネタバレ》 類似品はいっぱいあるジャンルで、これは意外な名作だ。ピンク映画を生業にしていた監督が、男の好色的な視線を徹底的にオフにしてこの溌剌たる「女性映画」(と呼んでいいだろう)を撮ったのは、凄いことだと思う。主役はこの女子ボート部だけではない、美しい伊与の海もである。シネスコではなくヴィスタサイズ画面が横にも奥にも広い感じで、横の動きはボートの気持ちの良い運動に、奥への広がりは美しい海の光景に、開かれている!つまり、このヴィスタサイズは、ボート部の「がんばり」を美しい海ごと抱き抱えるスタイルなのである。 [DVD(邦画)] 9点(2025-07-02 13:43:44) |
4. コントラクト・キラー
《ネタバレ》 ジャン・ピエール・レオは、忙しく饒舌な割には筋への影響力の乏しい役柄が多そうだが、それとは真逆なのが、寡黙で無表情にみずからの死に向き合うこの作品。その同じ無表情が、カノジョの出現に温むように見えるのが、クレショフ効果のよう。じわり映画の構造自体にある愉しさなのである。 [DVD(字幕)] 8点(2025-06-28 14:38:06) |
5. 暗い日曜日
《ネタバレ》 途中まではルビッチ『生活の設計』のオドロキの肯定的な成り行きを彷彿とさせるような三角関係映画だが、ナチの話題となったところで『シンドラーのリスト』をネガティブに捉え直したものでもあろうことが判明する。収容所行きの見殺しシーンの理由が説明されないのをなんとなくナチの気まぐれな残酷さということで了解してしまいそうだが、あれは嫉妬なのである。憧れの女性の寵愛を受けている果報者に対する、愛されざる者(卑劣にも交換条件で同衾を手に入れるだけの)の嫉妬。この嫉妬という理解の点でもナチという「巨悪」の「凡庸さ」が説明されうる(ハンナ・アーレントふうに)、つまりナチだけのことではなく、誰のものでもある普遍的な問題であるというように。そんな嫉妬を生むくらいの魅力である、エリカ・マロジャーンというこの女優さん。たくさんの名画に出ていそうだが検索した範囲では意外にそうではないようだ。 [DVD(字幕)] 8点(2025-06-03 21:42:05) |
6. 木と市長と文化会館/または七つの偶然
《ネタバレ》 時事問題的な議論を細かく調査して、いかにも作り物の浅いレヴェルを脱して、実質的な充実感のあるものにこしらえあげている。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-26 22:08:09) |
7. パリのランデブー
《ネタバレ》 ロメールの人物は戸外を歩く(小津なんかと比べれば圧倒的に歩く)。で、特に第二話は、なんと戸外を歩くしかない設定。この話の終わり方、アナタはメインのカレの補完存在なのだからメインと切れればアナタの存在理由も自動消滅よ、とはなんとも面白い。こういうリクツやアイロニーやパラドックスが必ず仕込まれているのがロメール味。まさにそのために若者たちを使うのが主で、いつまでも若者たちの生態に興味があったとしてもそれは従だろう。 [DVD(字幕)] 8点(2025-05-25 05:18:13) |
8. 恋の秋
《ネタバレ》 カップルを成立させるための仲介をする女性が、純粋に仲介役割にとどまらずに少々ちょっかいを出したりするので、ややこしくなる。ややこしくなっていいのである、生身の人間なのだから。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-21 23:08:57) |
9. パリでかくれんぼ
《ネタバレ》 無関係の三人の女性をいきなりばら撒く、するとこの三人がどこで出遭うのだろうかというミステリアスな関心が湧く。映画の並行編集の妙である。歌ありダンスありで、豊穣に作り込まれた痛快な織り物だ。面白い事例を一つだけ挙げると、女性の一人が盗みを働いた際その現場を偶然にとある男に見られたとのではないかと疑心暗鬼である(実は男は目撃していないことを観客は知っているのだが)ゆえ、男に近づき「目撃したかどうか」を確かめたいが果たせない(問題の性格上絶対に不可能である)のを、映画が決して説明的にならないでひたすら見守ること。 [DVD(字幕)] 8点(2025-05-19 08:52:01) |
10. テルマ&ルイーズ
《ネタバレ》 テルマの方がお馬鹿さんすぎる感じなのがどうもね(ルイーズはこんな相手を親友とするだろうか)、女性のプライドを背負ったルイーズの所作はいい感じだがラディカル調のゆえ日常に引き返せない行為をやらかしてしまう。「引き返せない」のは映画だから当たり前の設定だろうが、この映画の場合それを観たかったわけではない気がする。地道に、有効に、日常を作り変えることの方を。 [DVD(字幕)] 5点(2025-05-17 10:17:58) |
11. 夏物語(1996)
《ネタバレ》 特徴ある「三種類」の女性が相手でいずれも捨て難いとなれば(実はあの本命はケシカランが)どれかに絞れない、主人公の「優柔不断」となる。この「優柔不断」は本来どの選択肢もキープしておきたいという欲望の表れ、ということだろうが、しかしこの場合はむしろビョーキに近い。だからこそ、この「優柔不断」の贅沢を転覆する外的事情があのような目覚ましい解放となる。皮肉なものである、というか、こういうアイロニー味こそロメールだ。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-06 08:18:23) |
12. マグノリア
《ネタバレ》 この群像ものというのは、けっきょく個々の話題の深掘りが苦手なのだろうか。ありそうなモンダイをいくつか配置して浅いまま終わってゆく、バラバラな印象をカエルで強引にくっつけましたぁ、で。 [DVD(字幕)] 5点(2025-04-13 09:45:07) |
13. 神曲
《ネタバレ》 『神曲』におけるビッグな「意味」のキッチュなまでの露出(それはそれで印象的)で勝負、を見れば、『家路』があって本当によかったと思う。後者は、突如身辺の巨大な不幸により空虚の中に放擲されその空虚の必然として、新たにかろうじて生の「意味」(さりげない「意味」)を探ることになる。 [DVD(字幕)] 6点(2016-02-24 09:53:09) |
14. ロスト・ハイウェイ
《ネタバレ》 無い話はいらんなぁ。出先でメフィストみたいな怪しい人物が目前でささやく、「俺今おまえの家に忍び込んでいる、嘘だと思うなら電話しろ・・・な、ほんとだろ」、これには倒れ込むほどの恐怖がある。この辺で十分で、あとはいらんなぁ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2015-11-18 22:33:52) |
15. カップルズ
《ネタバレ》 この監督の並行編集癖は、突出した特徴だ。誰が主人公というのではない、あるとき偶然の切り取りで、とりあえずの主人公が産み落とされる。とはいえ、この映画では、ヤクザに追われる実業家の息子というのが一応中心人物だったはずだ、が、激烈な行為に及んだあと、映画の終わりの段階では妙に除けられる。とにかく、並行編集がこの監督の魅力だ、と再度。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-05-09 23:33:41) |
16. トカレフ(1994)
《ネタバレ》 長回しだ、長い、魅力的に長い。相米慎二との違いってなんだろう、と考える。阪本監督のほうがまだ説話的かな、相米はもう破れている味なので。それにしてもこの主人公が死ぬ必要はないわけでね、しぶとく生き抜ぬくべき、説話的なカッコヨサの要請に背いても。 [ビデオ(邦画)] 7点(2015-04-21 23:50:56) |
17. ミラーズ・クロッシング
《ネタバレ》 カフカの『城』を彷彿とさせる作品は多い。『ミラーズクロッシング』もそれで、見るからにカフカ似の主役が、何やら懸命なのだがほんとうに何をしたいのかほんとうは何を求めているのかは不明で、価値が相対化し尽くされている。「相対化」のなかでのあがきなのだコーエン兄弟のブラックな魅力は。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-03-29 17:54:58) |
18. リバー・ランズ・スルー・イット
《ネタバレ》 ハワード・ホークス的な語りのスピーディーなテンポとは真逆の、もちろん意図された間延びにつぐ間延び。もはや語りのメリハリを見せるのではなく、河の流れの方を見せるかのような、「長い」映画だ。 映画は通常、語る主人公の視点を超えたものも大いに映して、観客に高みの見物をさせるのに、この映画は違う。語る兄(優等生)の視点からすれば、弟ブラピに何があったのか、なぜあのように破滅的なのか、は一切分からない(観客にも)。ブラピの死に様すら、その両親も(観客も)、語る兄の言葉によってのみ接し得るにすぎない、というラディカルさだ。何をどういう目的で特に見せたいかという絞り込みを行って、もう一度作り直してほしいくらいだ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2015-02-27 01:51:41) |
19. バートン・フィンク
《ネタバレ》 たったこれだけの設定でこの引き込む力はたいしたものだ。「バートン・フィンク」という固有名詞はユダヤ系だなという台詞とともに意味ありげに急浮上したりするのに(古典的ハリウッド映画はことごとくユダヤ人起業家に支えられていたしこの映画の舞台たる1941年でもまだその事情に大きな変化はなかったはずだとしたら、この映画のハリウッド批判は時代考証的にはちょっと的外れかもしれない)、隣人の親ナチであることがやがて判明する暴力的な大男とはずっと奇妙に共存していたことになる。預けられた小箱の中身がついに明かされないのも作品全体の意図された曖昧さを象徴している。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-02-17 14:36:49) |
20. ザ・プレイヤー
《ネタバレ》 重役プロデューサーが主人公で、ハリウッド流プロデューサー方式の集客主義をリアルに見せる。映画の映画。が、まさにこのリアルゆえの「退屈さ」を酷評する人は、自身がこの映画に対してネガティブなプロデューサーを演じてしまうわけだ。映画の映画の映画・・・ [DVD(字幕)] 8点(2014-10-25 06:34:44) |