1. シュトロツェクの不思議な旅
《ネタバレ》 なんかもう可哀想だなあ。心が塞ぐなあ。 生きるってこうもキビシイもんかな。塀の中の方がまだ人間味があったよ。出所祝いをくれたり。 何のためにアメリカまで来たのやら。邦題のほんわかしたイメージとは真逆の厳しいだけの現実。 この主人公はいわば社会的弱者で、弱い者がいたぶられるのを見せられただけの後味の悪さ。 ラストの動物の描写もちょっと伝わらなかった。 年を取ってくるとシニカルなだけの冷たい作品はしんどい。あまり好きな映画じゃなかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-07-21 23:09:03)《新規》 |
2. 離愁(1973)
《ネタバレ》 終幕のロミー・シュナイダーの横顔。嗚咽と共に前に崩れ落ちたその表情を、私は生涯忘れることができないだろう。作品全編通して、初めて見せるアンナの表情だった。愛した男を破滅へと巻き込んだことへの慟哭のようであり、男が全てを捨てて自分を選んだことへの非常な驚きのようでもあり。 正直この映画を観るまでロミー・シュナイダーの魅力がよく分かっていなかった。本作のアンナ役は翳りを帯びた美貌が設定にハマったし、ナチスの役人の面前での強烈に息詰まるあの数分間の無言の表情演技は凄かった。男に「行って、早く」と言っていた。 苛烈な時代だから生まれた悲劇。一見するとのどかで美しい田園風景があっという間に反転して不条理な暴力絵図と化す。混沌と休息と阿鼻叫喚。その中で出会った二人。 出会いからすでに破綻しかない二人だとは分かっていたけど。分かっていたから、心配しながら見守った。そしてラストには考えうる限り完全な破滅が待っていた。 1940年という時代と、ロミー・シュナイダーとジャン・ルイ・トランティニヤン。そう、この二人でなければ。残酷な時代と美しい二人。忘れ難い名画のひとつ。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2025-07-19 23:14:34)(良:1票) 《新規》 |
3. ライアンの娘
《ネタバレ》 清と濁、美と醜の対比が極めてくっきりしている。人も風景も。 劇中、美しい白浜でドラマを繰り広げるのは主に美人のヒロインと英国軍人で、陸の貧民層の者たちはやって来ない。彼らが海辺に来るシーンは嵐で大荒れの時のみ。 ヒロインと英国人の逢瀬は森の中でこれも美しく撮られてるけど、街に入ると色彩は一気にくすみ、人の意地悪が渦巻いてて主人公がこの先良くないコトになるだろうとは嫌でも想像できてしまう。 キレイからキツイへの振れ幅が大きくて、ずっと落ち着かなかった。監督の狙い通りかな。 印象強い映画ではあるけど意外と感動は少ない。教師である夫の菩薩のような愛の深さと、一見ガサツな人間味あふれる神父の存在が際立っていますが。 つまるところ終幕のバス停まで来てくれたあの二人だけがこの寒村でまともな魂を持っていたということかな。あ、あと花を摘んでてくれた女の子も。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-07-18 23:11:18)《新規》 |
4. ダラスの熱い日
《ネタバレ》 オリヴァー・ストーンの「JFK」よりも創作味が強いので、その思い切りの良さにちょっとびっくり。もちろん実名ではないのでしょうが。 それにしても恐ろしかったのは陰謀を企むメンツが皆淡々と人殺しの計画をしていること。「ヴァンゼー会議」のアメリカ版みたい。 特にオズワルドをハメる為の入念な仕込みには言葉を失います。権力の暴力をじかに受けたD・トランボの筆が冴えわたり、怒りすら伝わってくるような脚本です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-06-30 23:41:02)(良:1票) |
5. アリスの恋
《ネタバレ》 本作は“女性自立映画”のハシリなんだそうな。シングルマザーとして遭遇する数々の困難は50年経った今でもリアルな「あるある」に感じられます。邦題も「シンママアリス奮闘記」とでもした方が一発で伝わるのでは。 歌手の夢を一旦棚上げして現実的にウェイトレスとして働き出す後半が、登場人物が男女ともがぜん個性的でおもしろい。まるで江戸の人情噺を見ているような泥臭さがあって、アメリカの田舎ってこんな感じなんだなあと。笑いあり涙あり。 ところでアリスって小学生の息子にけっこう口調がキツイなあと引き気味に観てたんですが。そのアリスが先輩ウェイトレスの下ネタ交じりの言葉の荒さにドン引きしてるんですよね。え、アリス的にはそういうのはNGなんだ?キリスト教文化が関係してるのかな。あと、あの牧場主ねえ、ワタシはあまり良い物件に感じなかったのですが、どうでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-06-28 23:18:50) |
6. 歌うつぐみがおりました
《ネタバレ》 あらら困ったもんだギアみたいな奴は。なんでひとつの事すらちゃんと腰を据えて取り組めないの。 誠実とは程遠く、金など絶対に貸せないタイプ。クズというには周りからの愛されっぷり許されっぷりの大きいことよ。たしかに“気さくで良い奴”でもあるからね。 本人に悪気はゼロ。「いつも俺が悪いってことになるんだよ」は100%本心で言ってるんだろうな。多面体のような人間の本質を軽やかに描く脚本はなかなか手練れています。 70年のジョージアって旧ソ連下のはずですよね?こんなにタッチが明るくて自由な空気なのには驚きました。女性のファッションもおしゃれだし。 忠告をしたり説教したりする友人らもいる。ギア本人も自分が結局何もしていないことに気づいてる。だけどこういう生き方しかできない人間もいるのだろう。 不意打ちのように終わりを迎えたギアの人生。でも周囲の時間は変わらずに進んでゆく。この無常観は「勝手にしやがれ」と比べられているようだけれど、ゴダールよりずっと入っていきやすくてジョージア製の本作の方が好き。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-06-18 23:12:05) |
7. フレンチ・コネクション2
《ネタバレ》 映画自体がハックマン演じるポパイ刑事そのもの。泥臭い男っぽさ。70年代のギャングものって、ざらっとしたフィルムの質感と相まって本当に恐い。本作もボンドシリーズのような華やぎは皆無で渋面のおっさんたちが走ったり怒鳴ったり、陰気で汚い雑居ビルなどの画ヅラが続きます。キツイです。 ポパイが麻薬漬けにされるシーンは陰気恐怖の極致。異彩を放つヤク中の婆さんがギャングを凌ぐ凄まじい恐怖インパクトで、早く忘れたい。親切そうにポパイの世話を焼きに来たのかと思うでしょ、さにあらず弱った奴からの窃盗ときたもんだ。骨ばった白い腕にたくさんの注射跡・・トラウマになりそうだ。 ポパイはかなりの自己中オヤジでアクが強いキャラクター。仏当局の注意を無視してギャングに捕まった揚げ句、なんでもっと早く助けに来ないのかと仏警察に食ってかかる。逆切れってやつ。女好きで若い娘には色目を欠かさない。件のヤク中婆さんにまで(薬で自意識がハッキリしてないとはいえ)イイ顔しちゃってんのには腰を抜かした。 ここ2~30年ほどはめっきりお目にかかることの無くなった男くさいオヤジ中のオヤジ、ドイル刑事ことG・ハックマン。先日訃報を耳にして、ああポパイ逝ってしまったんだなと思った。彼を偲ぶのに最適な本作。ラストのカタルシスは他の追随を許さないレベル。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-06-10 23:49:01) |
8. タイム・アフター・タイム
《ネタバレ》 H・G・ウェルズと切り裂きジャックは同時代の人物なのですね。タイムマシンで逃げた殺人鬼を追うって筋は興味深かったけど、20世紀に来てからは半ば強引に恋愛話になっちゃったのが好みではなかったな。展開のキレも今から見るともっさりしてるし。 19世紀の世界でスタートした冒頭の雰囲気は素敵でした。こっちに来る前の方が面白かった、という意見にわたしも同意。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-04-30 23:41:09) |
9. おもいでの夏
《ネタバレ》 高1って言ってたから15~16才かあ。男の子って小さい頃からおばかさんでそこが可愛いけど、思春期になってもおバカなままなのね。なにしろ性のことで頭がいっぱいのハーミーと友人ら。医学書(?)を書き写したり、同世代の女の子とのイタいデートや抱腹絶倒の薬局でのひとコマなど若い(青い)エピソードがいっぱい。 笑わせてくれるとこがいっぱいあるけど、一方で大変にロマンチックで美しい映画でもあります。切ない旋律の音楽と輝く海辺と年上の女性。 思いがけず彼女への思いを遂げることになった夜の場面は悲しみと衝撃とが合わさった、静謐な美しさがありました。空回りしているレコードの針を戻し、煙草の火を消すハーミーの所作がなんともいえず良かった。彼女への気遣いがこんなところからも伺えて。 そして夫が戦死したとの報が届いてすぐにあのような展開になるのか、と訝しく思う向きも多いようで。でもたとえばあまりのショックと混乱の中、誰かに頼りたいと強く願った時にドロシーが年下の男の子に身を委ねるのはあの場合アリよね。そう思わせた演出とJ・オニールの演技力が素晴らしかったですねえ。 美しいということは儚いこと。すうっと消えてしまって永遠にハーミーの女神となった年上のひと。幕切れも完璧。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-02-21 23:10:58)(良:1票) |
10. ロイ・ビーン
《ネタバレ》 豪快で自由。西部開拓時代の生き残りロイ・ビーン判事。大いに盛ってほぼほぼフィクションになっちゃってるけど、いちおう実在の人なんですね。 消えゆく西部の残像をしみじみと描いたペキンパーの「ケーブル・ホーグのバラード」をイメージしてしまったのが間違いでした。こま切れのエピソードごとの展開はまるでマンガ。「トムとジェリー」でも観る心持ちでいるべきでした。命が安いし熊のペットぶりはもはやファンタジー。まじめに伝記と向き合う気持ちではついていけません。 ちょっとノリが合わなかったです。わたしの責任ですが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-01-31 17:07:55) |
11. アタック・オブ・ザ・キラートマト
《ネタバレ》 いやーつまんない。高名な本作の鑑賞機会を得るのに時間がかかったから、色々想像してハードルを上げ(下げ?)すぎちゃった。 「トマトが人を襲う」とだけの情報から想像したシュール味が全く無いのにはたまげた。ハリボテトマトが転がってきて人が逃げる画ばっかり。 塩梅の良い不条理さがあれば可愛気も発生するけど、これでは製作上のただの怠慢。物語作品を作る上での重大な手抜きだし誠実さも感じられない。 めったにつけない0点を献上するにあたってマイリストを見たら「プラン9 フロムアウタースペース」に0点をつけてた。愛すべきエド・ウッド作品とこんな本作を同列に置くことになるなんて。つくづく腹立たしい。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2024-12-05 23:40:42) |
12. いちご白書
《ネタバレ》 当時のド・ゴール大統領をして「裏で糸を操っている者がいるはず」とビビらせた世界規模で勃発した学生運動。映画はアメリカの大学だけど、なんかこう思想が一途で理想に燃える若者ってどの国も同じ顔つきしてるもんだなあと思った。若いって純度が高くて愚かで尊い。 今で言う推し活的情熱を社会問題に向けていたあの当時。ネットワークはラジオやテレビといったアナログだし、主人公は保守派の牙城たるボート部とかけもちしたりと、なかなかユルイ。彼の「主張とかより、とりあえず彼女ほしい」という姿勢が若者っぽく健全でリアル。彼らの大半はそんな感じじゃなかったのかしら。 自己実現とか自我の何たるかの手応えを流行の運動に変換してるだけなんだけど、熱狂しちゃってるからどんどん進んでしまうのね。最終的には公権力で強引に撤去させられるのも洋の東西同じ。 モチーフになった学園紛争から時間を空けずに制作されているからか、ファッションや音楽からも当時のリアルな息吹を感じることができます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-10-16 23:44:10) |
13. 夕陽の群盗
《ネタバレ》 見てくれは西部劇だけど、ドンパチ中心の勧善懲悪という所謂西部劇とは全然違いました。これは粉うことなき70'sニューシネマ。ちょっとびっくりしました。 タッチは陽気で主役二人も元気があるので、うっかり明るいノリのつもりでいると彼らもろとも厳しい局面に突き落とされます。そりゃもうえげつないほどにキツイレベルで。その繰り返し。 各エピソードの内容が濃く、19世紀のリアルを感じさせる話ばかりで時代への洞察の深さには唸りました。一日を生き切ることで精一杯の西部放浪者にとっては、目先の金銭のためなら友情も女房の貞操観念も無い、ときた。 ジェイクとドリューの人物像も良くできています。不良チームのリーダー、ジェイク。粗野だけど裏切った仲間の遺体を埋めてやったり、己には無い教養に惹かれる精神性があって文学作品の内容を知りたがったりする。(でも自分で捕った食料は分けてくれないんだな、そこは)。 ドリューは真逆のエエとこ育ちなので、女を買うことにも強盗することにも一貫して抵抗していた・・はずだったのに。ああ、西部の非情さはついに一人の若者を犯罪者に落としてしまった。 ラストショットはいかにもベントン、といった苦い幕切れ。その先の展開を予想すると二人の未来に明るい展望が望めそうにありません。 そうだピアノ単器の音楽も強く印象に残りました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-08-03 23:17:57)(良:1票) |
14. 華麗なるヒコーキ野郎
《ネタバレ》 大空に魅せられた男たちの生き生きしていること!命がけの状況にドーパミンが最大限分泌されているせいか高揚感半端ないですねえ。 翼の上に立つなんて危険極まりない見世物をやっていたとは。中学生のような笑顔で飛びたい飛びたいと言うレッドフォードが無邪気そのものなので、なんかもうしょーがねえなあという気持ちにさせられます。 ヒル監督のユーモアも効いていて所々で笑わせてくれるので、うっかりのんきな気持ちになりかけたら怖くて厳しい現実が展開していくのでした。甘くないなあ。 夢に見た憧れの英雄との空での一戦を叶えたウォルド。良かったねえ、とお話の終わりを見守っていたらエンドロールでウォルド・ペッパーの早世を知らされる。甘美だけど危険な場に身を置いた人生の代償として、ヒル監督はこういう選択をしたのでしょうね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-05-30 13:58:52) |
15. ウィッカーマン(1973)
《ネタバレ》 理解不能型恐怖の完成形「ミッドサマー」の原点が半世紀も前にあったなんて。土着信仰、閉鎖的コミュニティ、年に一度の祭礼、と怖い要素がそのまんま揃ってる。 「ミッドサマー」の画が明るく牧歌的なのに対し、本作はぱっと見の島の感じからしてよそよそしい陰気さ。野外フリーセックスやら娘の裸踊りやら公序良俗に反する島だということが早々と判明。娘の誘いを脂汗流して我慢する警官ハウイー氏も天晴れなんだかどうなんだか、この場面の何とも言えない気色悪さには胸やけしました。 「理解できない」ということの暴力的な理不尽に追い込まれた末の恐ろしい結末。島全体の狂気のスケールはN・ケイジのリメイク版は遠く及ばないレベル。ミッドサマーが出てくるまでこの種の恐怖映画の最上位だったはず。 ただ、日本人のわたしから見るとハウイー氏の“キリスト教絶対主義”にもちょっと疑問を抱く。なぜキリストを信仰しないのかっ、とエライ剣幕で領主に詰め寄るその考え方もまたずいぶんと偏狭なのではないか。ヨーロッパ人にはすんなりと理解できるのかなあ。日本には八百万の神様があちこちにいらっしゃるのでね。 [試写会(字幕なし「原語」)] 7点(2024-05-21 23:26:07) |
16. コンドル(1975)
《ネタバレ》 わあ、70年代ぽい。70'sのサスペンスものは何か空気からして重くて渋い。街並みのくすみ具合はフィルムが影響してるのかな。 いい具合に大人(中年顔)のレッドフォードとフェイ・ダナウェイが落ち着いた空気にハマります。後引かない関係がこれまたクール。 静かなれど冴えている演出も好み。罠と知らず救援と待ち合わせた路地の場面や、暗殺者と乗り合わせたエレベーターの緊迫感は一級品です。 暗殺者が拾い上げる手袋、通行人とすれ違いざまに咄嗟に切り替える外国語。一シーンがぴりっと印象的。電話回線を使った仕掛けもこの時代ならでは。 雰囲気、演出、役者陣は素晴らしく魅力的でした。だけどお話はさほど緻密でもなくて、CIAの伏魔殿ぶりを匂わせてざざっと終わります。まあこれも当時の「どうせCIAはヤバイことばっかりやってるに決まってる」という大方の世相を反映してるのかもしれないですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-02-28 23:02:17) |
17. セリーヌとジュリーは舟でゆく
《ネタバレ》 まさに映像で見る「不思議の国のアリス」。アリスの世界観を実写にするときっとこんな感じ。 もっとも、鑑賞の仕方にはコツが必要です。コマや人物らに整合性を求めるととてもツライことになります。わたしも中盤までは訳わからなくて泣きそうになりましたもん。 もう、監督の手に委ねちゃうことです。目にしたもの全部受け入れる。そうしたらお話が頭からキレイに虚実ない交ぜに入れ替わりながら、繋がっていることが分かります。 「入れ替わる」、これ現実でもアチラ側でも発生してて幻惑状態です。なぜ顔が違うのに久々に会う恋人とすんなり受け入れてしまうのか。そもそもジュリーあての電話を取るなよ。セリーヌの仕事をつぶすなよ・・。や、いかん。こんなことを考えてはいけないのだった。ラストを見てごらんなさいよ。もうそれどころじゃないから。 よく笑って元気いっぱいの女の子二人に引っ張られながら、迷宮の探索に行きませんか。なかなかびっくりしますよ。 ともかくも斬新な経験。有無を言わせぬ感性で一本撮りきっていて、こんな映画は初めて観ました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-04-29 22:21:18) |
18. レッド・サン
《ネタバレ》 ネームだけで大迫力な面子。重量級の役者を揃えておいて、軽快な活劇に仕上げているのが素晴らしいですね。 三者それぞれがハマった役に収まってるんですよ、これは脚本の当て書きかと思うほどに。ドロンは小ずるい悪党顔だし、ブロンソンのやんちゃぶりに我らが三船の揺るぎ無さ。 外国人の侍観がよく分かる映画でもあります。武骨で己が信条を容易に覆さない。凛として清潔な三船演ずる黒田は外国人のみならず日本人も憧憬を抱くラストサムライでありました。 その黒田にゴーシュ殺害を翻意させるべくちょいちょいブロンソンが仕掛けるのが可笑しい。黒田の気配察知能力の鋭さにブーツ奪還し損ねて「この辺は蚊が多くて寝れやしない」とごまかしたり。剣術の見事さに圧倒され、じゃあ素手で、となっても体術でも容易く引っくり返されるガンマンの図。笑った。こんなに日本人にサービスしてもらえるとは思わなかった。 小競り合いしながら同行してきたリンクと黒田。男の友情がほとばしるラストは胸熱。泣けました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-04-02 23:36:34)(良:1票) |
19. ボーイズボーイズ・ケニーと仲間たち
少年期の瑞々しさと幼さが福袋みたくぎゅーと詰め合わさったような。観てて楽しいけれど、まとまりなく取っ散らかってる感もあって、まさに福袋。 今観ると演出や展開に抑揚が欠けててちょっと物足りない。一本の話に収束できてたらな、と思うけれど子どもらは皆生き生きしているし、子供時代の息づかいはそのまま今でもリアル。思春期に差し掛かる直前の時期の永遠性を獲得していると思います。 [試写会(字幕なし「原語」)] 7点(2023-03-20 11:10:53) |
20. クレールの膝
《ネタバレ》 いんやー、さしもの恋愛学名誉教授ロメールがさじ加減を誤ってしまった一本と言わざるを得ない。商業映画として発表するにはニッチすぎる。オッサンの少女膝フェチなんぞ誰が知りたいと思うやら。 趣味の迎合する人なら前のめりになるかもだけど、こんなのはひっそりと心の奥底にしまっていてくれないかな。得々と語っちゃうてのが、もう手に負えないこの主人公。 女の子の身体つきをつかまえてどうこう品評するとか、今ではセクハラコードに完全に引っかかるよ。 ロリコンが高じてオッサンが破滅する、という筋書きでもないので可愛げもないな。ラストに勘違いをさらしていたのがちょっと笑えたけれど。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-02-18 20:09:00) |