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本作は紛れもなく柳楽優弥を見せるための映画である。舞台が都会から農村に移ろうと、自然児のイメージとあの独特の眼差しはまったく変わることがない。演技に関してはまだまだ未成熟で、勉強の余地は十分に残されているが、それでも彼ひとりで一本の映画が成立してしまうのだから、その存在感たるや大したもの。映画は彼の一挙手一投足を余すことなく描写し、存分に魅力を引き出せている。そういう意味では成功作の部類に入るかも知れない。しかし一本の映画として総合的に評価すると、やはり物足らなさが残る。まずドラマとしての構成力が問題に挙げられよう。タイでの修行の後、一人前となって土地を後にするまでが前半の山場。しかし、帰国してから彼が不慮の死を迎えるまでの、後半部分が前半に比べると余りにも弱い。それは、ドラマらしいドラマが無いことに起因する。 ハッキリ言って、タイのシークエンスだけで事実上この映画は既に終わっているのである。だから後はどうでもいいようなエピソードの羅列で、彼の死までを繋いでいるようにしか見えない。実話に基づいているとは言うものの、「こういう事がありました」と断片的に披露しているに過ぎず、ドラマの中でとりたてて深い意味を帯びてこないのだ。もっとも、タイでの各シーンにしても、後半を気にしたような作りとなっていて、少年たちの訓練のプロセスや心の交流などが端折りすぎで、描き込みが足りない。製作者側としては、このタイでのエピソードにもっと焦点を絞るべきではなかったか。その事によって、何故彼が象使いに憧れを抱いたかというテーマが、より鮮明に浮び上がったと思う。象を始めとする様々な動物が出演することで、夏休みの子供向け映画としては無難な作品とも言えるが、人間までもが意味も無く大挙出演するのは、邦画の悪い癖で、映画の印象を散漫にするだけである。
【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-19 18:19:00)
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