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圧倒的な強者と対峙し、重すぎる「職責」を背負ったニューヒーローが、敵を倒すのではなく、“対話”で事態を収める——。その姿は、派手さや超人性とは無縁でありながら、むしろ今この時代にこそ必要とされるヒーロー像に思えた。
思い返せば、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」で初登場したサム・ウィルソンは、退役軍人のためのカウンセラーを仕事としていた。 かつては一人の退役兵に過ぎなかった男が、スティーブ・ロジャースと出会い、共闘を経て“ファルコン”としてアベンジャーズの一員となり、ついには“キャプテン・アメリカ”の象徴たる盾を託される──その道のりには、やはり特別な感慨を覚える。 キャプテン・アメリカの重い“盾”を受け継ぎつつも、サム自身は等身大の人間に過ぎず、超人的能力を持ち得ない。そんな彼が、最後の最後で貫く武器が「対話」であることが、これまでの遍歴を踏まえて、とても胸熱だったと思う。 MCUにおけるサム・ウィルソンのキャラクター造形には魅力を感じる一方、彼単体でのヒーローとしての存在感にインパクトが乏しいことは事実だろう。 それを補うための一つのアイデアとして、過去作で故・ウィリアム・ハートが演じ続けてきたサディアス・E・ロス将軍の代役に、御大ハリソン・フォードを起用した布陣はナイスだったと思う。 作中のメタ的な“イジり”にもあったように“キャラ変”してアメリカ大統領まで上り詰めたロスが、過去に積み上げてきた功罪と、抑え続ける人間的な本質による抑圧に耐えきれなくなり、“レッドハルク”となって暴走してしまうというクライマックスのくだりは、ストーリー的な整合性と説得力が備わっていた。 世界最高の権力者が、「抑圧」から爆発、暴走するという展開には、現実社会の幾人もの権力者を彷彿とさせる現代的な危機とテーマも孕んでいたと感じた。 そして何よりも、ハリソン・フォードのMCU参戦は、なんだかんだ言われつつも、映画ファンにとっては大きなトピックスになり得たとも思う。 アクション映画、ヒーロー映画としての見せ場にはクオリティ的なバラつきがあり、映画作品として完成度が高いとは言い難い。 この手の映画としては珍しい日本の航空自衛隊と対峙する、新キャプテン&新ファルコンによる“二代目コンビ”の空中戦は見応えがあったが、その一方で最大の見せ場であるはずのラストの“レッドハルク戦”は映像的なリアリティが乏しく、没入感が損なわれ、興が冷めたことは否めない。 映画全体として卒なくこなしているという表現が的確な仕上がりで、それが良い意味でも悪い意味でも、サム・ウィルソンの「キャプテン・アメリカ」映画と言えるのかもしれない。 ただ、“アベンジャーズ復活”に向けた布石としては、充分に楽しめる映画であり、MCU再燃の火付けとなる作品だったと思う。 「対話」を最大の武器とする新キャップ率いるアベンジャーズが、どのようなメンバー構成になり、新たな強敵とどのように対峙していくのか。 それは現実の国際社会にも通じる風刺でもあり、ポリティカル要素が強い「キャプテン・アメリカ」シリーズの系譜として相応しい期待感だった。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 7点(2025-06-07 12:10:43)
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