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《ネタバレ》 1番打者が8点で2番打者が9点だから3番のわたしが10点をつけるのではなくて本当にそう思ったから文句無しに献上します。あの時わたしはアメリカに居て毎日アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの英語国の公的テレビがYouTubeにアップしたダイアモンド・プリンセス号のニュースばかりに見入っていました。本作品中でもメディアは少々意地悪に描かれ最後の方で「毎日同じことばかり、『今日も厚労省と医療チームは最善を尽くしました。』の繰り返しじゃ視聴率が上がらない。」とニュース報道のスタッフに言わせていましたが、外国メディアはそれこそ自国民の乗客に何とか無事に帰ってきて欲しいとの願いが見て取れる真っ直ぐな報道が多かったと記憶しています。もしかして(もしかしなくても)欧米メディアとその視聴者は「船が足止めされたのが香港や上海ではなく日本で良かった。」と口には出さなくても心の中で思っていたかもしれません。そしてわたしも「日本の医療チームよ日本の威信にかけて頑張れ!」とスポーツの国際大会の時以上の声援を送っていたような気がします。
さて病気や怪我を治療する、医師を始めとする医療スタッフは平たく言えばあの世とこの世の間に渡された綱の上を渡っている人を「あちらに行ってはダメ。こっちに戻っておいで。」と引き留める役割をしているわけですがDMATの医療チームのスタッフが手掛けるのは正に怒涛の荒海の上に渡された綱の上を不本意にも渡らされている人々をこの世に留めることです。医療スタッフの多くが2011年3月の東日本大震災の経験者で「防疫の経験があるスタッフは一人もいない。」と言いつつも自分たちの任務が通常の得体が知れている伝染病の防疫とは異なることを熟知していたことが乗客の船内での死亡ゼロという一応の成功を収める鍵になったようです。特に小栗旬演じる結城医師の「救命が最優先。」という姿勢に基づいて一人一人の患者に救命の努力が注がれたからこそ後のコロナ蔓延に対応して救命に必要な盤石な体制が築かれたのだと思います。 タイトルの「フロントライン」は「最前線」という意味ですが、それは「ここから先は防護服の着用が必要。」という意味のライン(一線)ではなく個々の患者や感染者が直面している生と死の境界線のことなのです。作品中、どの辺りだったか覚えていませんがチームを率いる結城医師がアメリカには有るCDC(疾病予防管理センター)の日本での不在に触れるシーンがあります。おそらく生物兵器の脅威に対抗する為に設けられた機関だと思いますが、医療の最優先すべき目的が不本意な死を迎える人をこの世に留めることならば作品中に出てくる伝染病の権威の医師が絵に描いた餅のようにやるべきことをてんこ盛りに羅列してみせたその医師の「やるべきこと」はひとまず傍に置いておいて、医療チームがまず取るべき行動は明確なのでしょう。日本は地震大国で自然災害大国で第二次世界大戦終結からしばらく経つまでは火災大国でもあり、おまけに福知山線脱線事故の際にトリアージ(患者の命の選別)まで不本意ながら経験させられた一方で世界に比類のない助け合いの精神と一般人かプロ集団かを問わないチームワーク力を誇っています。だから日本の医療人は世界に向かって正に「ドヤ」顔をしていいのだと思います。 【かわまり】さん [映画館(邦画)] 10点(2025-06-19 18:31:52)
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