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《ネタバレ》 これは凄い。『ユージュアル・サスペクツ』級の傑作ミステリーでは。かつて私が『チョコレートファイター』と『ベイビーわるきゅーれナイスデイズ』の感想で使用した褒め言葉を再び使わせて頂きたい。「1食抜いてでも観てください」。いや劇場公開はとっく(超とっく)に終了しているので、抜くのはおやつくらいで構いませんが。
アイデア自体が特別目新しい訳ではありません。思い返せば、いくつも類似作品が浮かびます。ただ組み合わせの妙と丁寧な描写に唸らされるのです。ネタバレ厳禁映画ですので、余計な情報を仕入れずに速やかにご覧になられる事をお勧めします。以下はどうしても褒めたいので要点を絞って記述しますがこれも「余計な情報」ですのでご注意ください。 「ヒントの出し方が丁寧」髪型が変わると印象が変わる。当たり前の話ですが、きちんと例示している点に好感が持てます。「そういえばそんな事言ってたなあ」な余談もそう。サブリミナルに刻まれた微かな記憶がタネ明かしと同時に甦り、はたと膝を打つ仕組み。気持ちよく騙されるのは快感です。 「ここぞの演出が冴え渡る」ライター水没と車廃棄を重ねる描写。息子を奪われた父親からの乾坤一擲の「かまかけ」は犯人の動揺を見事に引き出しました。多分ほんの僅かな揺らぎで構わなかったでしょう。疑惑を確信に変えることができれば計画を実行に移せるのですから。 「犯人側から描かれる物語」所謂『コロンボ』『古畑任三郎』スタイルですが、これら定型ミステリーと違うのは、あくまで犯人が主役であること。刑事が出てきてバトンタッチではありません。そう本格的なクライムサスペンスです。どうにかして逃げ切りたい。犯罪を隠ぺいしたいと観客が無理矢理「思わされる」のは厄介な話ですが、その分極上のスリルが味わえます。もちろん再鑑賞で逆サイドから検証し直す楽しみもあります。 このように「絶賛」と言いたいところですが、実は残念なポイントがありました。詳細は伏せますが「それをしなければスマートなのに」が一箇所あり。怪人二十面相でもあるまいに。犯人を騙すだけなら多分無くても良い仕掛けですが、映画なので観客も同時に騙さなくてはいけません。ここがもどかしい。日本人である私たちにも多分不要な仕掛け。そんな手間を掛けなくても見分けなんてつきませんもの。そういう意味では、もし日本でリメイクするなら配役には相当神経を使いそうですが。それにしても面白かった!劇場公開当時は話題になったんでしょうか。よく分かりませんが、邦題で損をしている気がします。タイトルだけならまるで典型的なB級サスペンスです。 【目隠シスト】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-05-20 18:20:38)
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