みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
7.《ネタバレ》 「雨月物語」よりも遥かに進化した溝口最高傑作の一つ。 本作は平安末期。 平安時代にキッチリした活字が合わないのは別として、生活を追われたある貴族一家の波乱に満ちた人生を描く。 主人公たちは今まで貴族という安全に浸かった生活を送ってきた。当然世の中に投げ出されれば、一人では生きていけないほど世間知らずでもある。そんな人々が狼や野盗、“偽り”の情けに騙されても文句が言えない過酷な世の中に放り出される。 主人公の兄妹。人買いの大主の山椒大夫(どんな美人の“太夫”かと思ったらオッサンの方の“大夫”かよ、チッ)にこき使われ、今までした事もない野良仕事に明け暮れ倒れそうになる日々。 そこに声をかけた男。 「辛かろうに負けるんじゃないぞ」 声をかけるくらいなら二人が成人するまで見守ってくれても良かろうに。ひやかしもいいところだ。為にならない情けは世の中いくらでもある。いや、俺がひねくれているだけなんだろうな。世の中、声すらかけてくれない奴が多すぎるもの。 妹はそんな男の言葉を支えに懸命に生きるが、兄は山椒大夫のやり方に染まり、山椒大夫がやった行いを同じ様に平気で行えるほど心が荒んでしまった。 国が乱れ、人買いや姥捨てが平気で跋扈する荒んだ世の中は、人の心も荒らす。 年月が経った兄の顔を見てみろよ。その面を、菩薩のような妹が少しずつ浄化していく。 妹は本当に健気で強い女だ。最後まで母親や父親の事を諦めなかったし、グレた兄の事も見捨てなかった。 それがあんな・・・溝口貴様あああっ(それと「山椒大夫」の原作者)! 兄は妹のためにも、何より家族のために一人で生き抜こうと抗う。荒んだ世の中が同時に彼の心も強くした。 そして父親は息子から離れても違う形で息子を助けてくれた。 兄は学を身に付け、官職になっていく。そして山椒大夫への逆襲。政治の攻防。 悪人は一掃されるが、主人公の運命には絶えず残酷な答えが待つ。 解放されて自由に歓喜する人々、ただ一人満たされない兄。それでも一縷の光が見える限り生き続けた。 終盤のあの池の畔に立ち尽くす、悲しみに満ちた場面。 それに全てが流されてしまった浜辺の村。あの黙々と海藻を整理する男が、それを物語っているのだ。 息子はまだいいさ。これからがある。だがもう一人は、“あの人”は最後の最後で救われたのだろうか 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2015-01-05 18:12:55) 6.《ネタバレ》 ここ最近私が見た映画の中では、群を抜いて美しく力のこもった作品だった。黒々とした残酷物語の中を光の矢が走るような展開に胸を高鳴らせ、沼に吸い込まれていく香川京子の、まさに天女のような儚さに目を見開いた。しかし厨子王よ、天晴れ初志貫徹。それは本当になかなかできないことなのだ、今も昔も。 【のはら】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-10-19 19:34:05) 5.《ネタバレ》 家族の別離による激しい苦しみ。安寿と厨子王、それに母親のほとばしる感情が画面から溢れ出ています。そして山椒大夫の根城の陰鬱な雰囲気。物語としては前半部の方が過酷であり劇的なんですけれど、この映画は厨子王の逃亡場面あたりからが特に際立っていると思います。もはや一瞬たりとも気が抜けたシーンがないどころか素晴らしいシーンの連続!まったく驚愕の完璧さです。 【ミスター・グレイ】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2007-09-19 18:31:51)(良:1票) 4.あまりにも深い絶望。苦しくて、どうしようもなく、それなのになぜ死に行く安寿はあれほどまでに美しく描かれているのだろう。水面が揺れ、吸い込まれていく肉体が絶望さえも吸い込んでいくように、美しく見える。溝口監督の作品には必ず、どこかに小さく、本当に目を凝らし、心を完全に広げていなければ見えてこないような儚い希望の光が見えるような気がする。繊細で尊い命という名の光。それを我々に教え、伝えてくれる。心が震えた。 【ボビー】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2007-02-04 15:31:46)(良:1票) 3.《ネタバレ》 驚天動地の傑作。何たる濃密な映像美、芝居の深み。これを神業と云わずして何と云おう。親子の行く末を手に汗握りながら見つめ、ラストの再会は感無量となりました。 【丹羽飄逸】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2006-12-31 21:44:34) 2.《ネタバレ》 溝口健二監督、この監督の描く世界とそしてまたそんな監督の期待に応えるべき名カメラマン、宮川一夫撮影監督の黄金コンビによる美しい映像、力強さの中に見える人間的感情、これまた一つ素晴らしい映画に出会った。もう、何て言ったら良いのか?本当に美しい!それもただ美しいだけでなく、美しくて力強い!カメラがヒロインの姿を映し出している時のその美しさ、海辺のシーン、船に乗せられて誘拐されてまう場面でのため息の出る美しさ、何もかもが本当に惚れ惚れするような圧倒的な美しさ!香川京子演じる安寿が水死した後にそっと広がってく水面の輪の美しさ、とにかくどのシーンも本当に美しい!そんな美しい映像の世界で繰り広げられる人間模様、全てが一本の映画として見事に描かれています。これまた間違いなく傑作と言って良いでしょう!この監督の作品も日本映画黄金時代の時の日本映画が本当に良かった時代の名監督達が沢山、いた時代の一人、小津監督作品と並んで一度、はまってしまうとやめられません! 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2006-01-02 17:37:10)(良:1票) 1.安寿と厨子王で有名な小説を、溝口作品としては割と原作重視で、映画化した作品と言えるのではないでしょうか。溝口独特の「女の物語」に加え、原作の持つヒューマニズムが色濃く反映されているところがこの映画の特徴のひとつでしょう。ただ、この映画を世界的名画たらしめたのは、原作の持つヒューマニティたっぷりのストーリーなどでは断じてなく、圧倒的な映像美にあることは一見すれば明らかだろうと思います。もっと言ってしまえば、キャメラ。そしてそれがもたらす「構図」の美しさでしょう。フレームの一番手前の端に大木や建造物の一部を入れ込んで狙った奥行き重視の構図。この縦の構図の連続でこの映画の映像は成り立っています。キャメラはほとんど引いたままで、しかも奥までしっかりピントがあった見事なパンフォーカス。クレーンは多用しているものの、無駄にキャメラは動かさない。引いたキャメラのおかげで、お芝居の対象物がすっかりフレームに収まり、おまけにピントまであっているのでお芝居の区切りまで一切キャメラを動かす必要がないのです。ここでカットを入れたりキャメラを振り回すのは野暮ってものでしょう。結果的に長回しになり、崩れること無く、長時間保たれた美しい縦の構図の数々が、観るものの脳裏に焼き付き、そのままこの映画の印象となっています。そして、ここぞというお芝居の区切りでゆっくり、おもむろにキャメラが動き出す。キャメラによってここがお芝居の区切りですよと見事に物語を語っています。この瞬間はまさに芸術であって、この理にかなった律儀なキャメラワークは圧巻の一言。これは職人芸。ただ、同じ溝口の1930年代の傑作群ではお芝居の区切りでさえもカットを割らずに移動やパンでシーンをつなぐケースが多々あります。それに比べれば大映時代の溝口のキャメラは実に律儀で、いかにも「円熟期」といった感じがします。若さ溢れる30年代の溝口が好きか、それとも50年代の円熟期の溝口が好きか。これは好みの分かれるところでしょう。30年代と50年代。いずれも溝口の全盛期ですが、これが日本映画の全盛時代とぴたりと一致することを忘れてはならないと思います。ちなみに僕は30年代が好きです。 【スロウボート】さん 9点(2004-09-26 15:17:08)(良:5票)
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