みんなのシネマレビュー

水俣 患者さんとその世界

1971年【日】 上映時間:167分
ドキュメンタリー
[ミナマタカンジャサントソノセカイ]
新規登録(2008-08-22)【にじばぶ】さん
タイトル情報更新(2008-08-26)【イニシャルK】さん
公開開始日(1971-03-12)


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監督土本典昭
編集土本典昭
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2.胎児性の患者さんがこちらを振り向くところからラストまでは、とりわけ凄い。私たちはいままで水俣病を知っているつもりになっていたけど、それはたとえば支援団体の膜越しだったりした。その膜を破って、じかに水俣病に触れ得たという実感がある。このドキュメンタリーだって「支援団体」とさして違わないはずなのに、距離感が違うのだろうか。患者にこちらの眼=カメラをいじるに任せているカット、やっと患者と触れ得たという感動がたしかにあった。漁民の生活を丹念に描いたことも大きい。味噌とバターでの餌づくり、蛸採りの美しい水中撮影。自然と一体となった生活があったのだ。それをずっと続けていけたと言うのは理想論すぎるけど、そういった生活への懐かしさや憧れは、やはり暮らしの方向を考える上で大事なのではないか。あるいは患者のためにオルガンやステレオなど家に似合わないハイカラな物が置かれている光景もジーンとさせる。親の贖罪の気持ちがそこに凝縮している。水銀を食べさせたのは親の責任ではないのに、その申し訳なさはこういう形でしか表せないのだ。スピーカーの振動を手で感じている耳の聞こえない弟。けっきょく優れたドキュメンタリーとは、当事者との距離を正確に知っているということだろう。患者とその家族との苦痛に触れられないということで、観客もチッソと同じ側についている。その認識が安易な同情や哀れみを禁じていて、知らず知らず観客はより積極的に患者の側に身を乗り出さざるを得なくなる。限りなく近づこうと想像力を使役させなければならなくなる。だからたとえば総会で支援団体の人が壇上に上がってきた行為などは浮わついて見えてきてしまうのだ。患者たちの御詠歌の迫力には、薄っぺらな行為は吹き飛んでしまう。伝染病かもしれないと思われて子どもを引き離されたエピソードや、町の発展を妨げるものとして排斥された動きなど、これまでに描かれてきた細かい棘の数々がここで裏返され、あの御詠歌になってごうごうと唸り立てているのだ。 なんのかんのさん [映画館(邦画)] 9点(2012-01-28 12:40:09)(良:1票)

1.ドキュメンタリーに限らないが、映画ではどこに視点を置き、何を撮り、どう編集・構成するかに撮る側の立場・思想が自ずと浮かび上がる。土本監督の作品の魅力は、単なる事実記録や告発などという皮相ではなく、被写体である人間に対する繊細なポジションや撮影手法を通して画面上に具体的に表れるその人間性にある。犠牲者の遺族へのインタビューでは、キャメラは背後に故人の遺影が必ず入る様に位置し、両者を同一画面内に入れるという配慮を忘れない。タコ漁の場面では、漁師と一緒に海中を覗き込み、瑞々しい画面を獲得する。あるいは、胎児性水俣病患者の少女が海沿いの畑道を歩くのをキャメラは後方から慎み深く距離を置いて追っていき、角を右手に曲がったところで海面への夕日の美しい照り返しで彼女を包ませている。注目すべきは、映画の随所で非常に印象的なこの美しい陽光の採り入れ方である。クライマックスともいえる株主総会後のエピローグでも、ボラ漁に出帆していく漁師たちの小船を岸から見送るキャメラは彼らを確信的に輝く水面に包ませる。土本監督の控えめでありつつ雄弁なメッセージだ。映画の中で紹介される胎児性患者たちの表情や仕草、それを慈しむ母親の手などの優れたクロースアップは、時間をかけて撮影環境と馴染ませる地道な関係づくりがあってこその賜物だ。憐憫などという驕りを忘れさせる彼らの表情にはまさに生の輝きがありただただ素晴らしい。映画ではシンクロ撮影が出来なかった為だろう、別撮りの音声と画面を編集段階で調整していることがわかるが、その微妙なズレが方言の難解さと併せて不思議に見る側を画面に引き込む効果をあげている。 ユーカラさん [映画館(邦画)] 9点(2008-10-05 22:09:40)

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【点数情報】

Review人数 4人
平均点数 8.25点
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