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【クチコミ・感想】
3.「狂おしい」
ストーリーそのものは、とても古風でオーソドックスに見えるけれど、過去の宮崎駿作品のどれよりも、もっとも“狂おしい”までの感情に埋め尽くされた映画だと思った。
映画世界に対峙し、己の理屈においては明確な拒否感を感じている筈なのに、涙が溢れて止まらない。こんな映画は初めてかもしれない。
その“拒否感”の大部分は、「主人公」に向けられたものだったと思う。
この映画の主人公は、善人で、優秀な好青年である。
ただし、同時に「変人」であることも揺るがない事実だ。
堀越二郎と堀辰雄、実在した二人の人間に「敬意を込めて」と謳っているが、この映画で描かれる主人公の姿は、明らかに宮崎駿自身の投影であり、その「変人」ぶりにそのすべてが表れていると思う。
そういう意味では、この映画が過去作のどれよりも宮崎駿にとってパーソナルな作品であることも確かであり、それ故の“狂おしさ”なのだとも思える。
主人公の言動を理解し難い面は多く、主人公は世の中のすべての人から非難されてもおかしくはない。
しかし、主人公自身が自分を呪ったとしても、彼が愛したヒロインだけはどこまでも彼を守り愛し抜くだろう。
ならばそれがすべてだ。
余命幾ばくも無い病床の妻を囲い仕事に没頭する主人公も、養生を放棄し命を縮めても夫のもとで過ごしたヒロインも、その姿には、少し狂気じみたものを感じる。
彼らは二人の間に確実にあるはずの“障壁”なんて何もないように、繰り返しキスをして、そして愛を営む。
この「幸福」は二人だけのもの、そしてこの「悲哀」も二人だけのもの。
そこには、“観客”も含めて、周囲の他人が入り込む余地は全くなかった。
その二人の姿は、あまりに独善的で、歯がゆいけれど、何よりも美しく、涙が溢れた。
そう、この映画の主人公、そして宮崎駿自身が追い求めたのは、“美しさ”以外の何ものでもない。
誰に理解されなくとも、自分自身にとっての「美」を最後の最後まで追い求める。
この映画は、そういう“彼ら”の生き方における「覚悟」を描いた作品だと思った。
「ほかの人にはわからない あまりにも若すぎたと ただ思うだけ けれどしあわせ」
あまりにもはまり過ぎている荒井由美の「ひこうき雲」が延々と頭の中をめぐる。
映画館を出た。真夏の太陽が眩しかった。
空の青は、少し、“狂気的”に見えた。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 10点(2013-07-20 19:33:13)(良:7票)
2.《ネタバレ》 堀越二郎は少年時代から海外の飛行機雑誌を読むほどの飛行機マニア。彼は夢で何度もイタリアの飛行機設計者カプローニ伯爵と邂逅する。この夢の内容ですが、恐らくカプローニ伯爵は主人公の憧れであり理想の男だったのだと思います。夢の中でカプローニ伯爵は「発明設計は戦争の道具を作るのではない、夢にかたちを与えるのだ!」と言い、彼の飛行機には爆弾の代わりに客間が乗っている。夢の中でカプローニ伯爵の飛行機に乗っている人は皆にっこり幸せそうに笑っている。彼は本当に純粋に飛行機という乗り物が好きなだけだった。
でもその技術は戦争に使用され、彼の設計した零戦は一機たりとも戻っては来なかった。戦争は根こそぎあらゆるものを奪い去った。それでもなお夢の中で菜穂子に「生きて……!」と言われ生きていく。この世が生き辛いのはどの時代でも当然のこと。それでも私達は生きなければいけないという強いメッセージを感じました。
基本的に零戦の誕生にまつわる話がメインで、菜穂子とのロマンスは短いですが、短い時を懸命に生きた二人はしっかりと描写されていたと思います。何より宮崎駿が主人公と菜穂子の初夜をちゃんと描写したことには驚きつつ感心しました。刹那的に生きた二人を描くには絶対に必要なシーンだったと思うので。
最も心配だった庵野秀明の演技も、まあハッキリ言って周りの役者さんに比べると下手なのですが、劇中の堀越二郎が"好青年だけど変人"と描写されているため、それほど気にはなりませんでした。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-07-20 15:03:04)(良:1票)
1.これは風立ちぬと思って見たら拍子抜けするパターンだろうか。
堀越二郎物語の中に風立ちぬの設定を盛り込んでみましたといった感じ。
零戦7割、風立ちぬ3割くらいの配分なので、風立ちぬを期待して見ると多少淡白に感じるかも。
ヒロインはなかなか登場しないし、やっと登場しても出番が少ない。
まともに風立ちぬし始めた後半は名作の勢いだったので、零戦の話を極限まで削って、風立ちぬに重点を置いた構成にしておけば、間違いなく名作になってたと思う。
まあ、それなら最初から零戦の話なんていらないじゃんってことになってしまうけど、それじゃこの作品を作るモチベーションというか、溢れ出る飛行機愛のやり場に困ってしまうんだろうな。
登場人物はみないい人で好感が持てたし、もう少し尺を使ってそれぞれの登場人物の関係性を丁寧に描けば感動に繋がったのかも知れない。
少年期の夢に始まって最終的に零戦を設計するまでの過程は異常に丁寧に描かれてたのに対して、風立ちぬの物語はかなり端折られた印象。
それでも、そんなおまけみたいな扱われ方でもこの夫婦愛には惹かれるものがあったし、ラストはなんだか切ない気持ちにさせられました。
あと、主題歌のひこうき雲がこの作品の為に作られたかのような嵌り具合で良かったです。 【もとや】さん [試写会(邦画)] 7点(2013-07-04 22:41:23)
マーク説明 |
★《新規》★ | :2日以内に新規投稿 |
《新規》 | :7日以内に新規投稿 |
★《更新》★ | :2日以内に更新 |
《更新》 | :7日以内に更新 |
【点数情報】
Review人数 |
183人 |
平均点数 |
6.56点 |
0 | 4 | 2.19% |
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1 | 1 | 0.55% |
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2 | 2 | 1.09% |
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3 | 8 | 4.37% |
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4 | 16 | 8.74% |
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5 | 17 | 9.29% |
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6 | 31 | 16.94% |
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7 | 39 | 21.31% |
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8 | 37 | 20.22% |
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9 | 13 | 7.10% |
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10 | 15 | 8.20% |
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【その他点数情報】
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