みんなのシネマレビュー

1941年【日】 上映時間:129分
ドラマモノクロ映画動物もの
[ウマ]
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タイトル情報更新(2021-08-05)【イニシャルK】さん


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監督山本嘉次郎(演出)
助監督黒澤明(製作主任)
本多猪四郎
キャスト高峰秀子(女優)小野田いね
藤原鶏太(男優)いねの父・甚次郎
竹久千恵子(女優)いねの母・さく
二葉かほる(女優)いねの祖母・えい
沢村貞子(女優)山下の妻・きく子
小杉義男(男優)佐久間善蔵
丸山定夫(男優)山下先生
清川荘司(男優)鑑定人・坂本
柳谷寛(男優)村の青年
岬洋二(男優)博労
榊田敬二(男優)組合の事務員
馬野都留子(女優)女房
脚本山本嘉次郎
作詞サトウ・ハチロー「馬」/「めんこい仔馬」
作曲古賀政男「馬」
撮影三村明(春/セット撮影)
唐沢弘光(夏)
鈴木博(秋)
伊藤武夫(冬)
製作森田信義
配給東宝
美術松山崇
動物
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【クチコミ・感想】

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8.《ネタバレ》 今ではすたれてしまった、南部曲家で馬と共に暮らす農民の厳しい生活ぶりを、四季折々の農村風習と峻厳な自然風景を織り交ぜながら、詩情豊かに描いた名作。民俗資料としての価値が高い。馬好きの娘イネが、艱難にめげずに母馬と仔馬を愛育していく過程が軸となって展開する。「最後は売られていく」という結末が容易に予想されるので、鑑賞中、随所に哀愁を感じることになる。艱難としては、借金で馬が買えない、父親が馬に蹴られて負傷して借金が膨らむ、母親が馬を厄病神扱いする、馬が病気になるが金欠で医者にかかれない、借金延滞で仔馬が売られる、仔馬を探そうと母馬が逃奔する、などがある。これらを毅然と跳ね返す、イネの土性骨の据わった強情っ子ぶりが最大の見所だ。しかし、それと同等かそれ以上に、イネと母親の、一見反発しあう二人だが、心の底で強い絆で結ばれている関係が描かれる。イネは馬に夢中で、馬のことしか見えない。母は、そんなイネを親不孝者となじり、馬を軽んじる。だが、イネが病気の馬のために、遠隔の温泉地まで雪を踏んで青草を採り、夜間に凍えながら帰ってくると、二人の感情が堰を切ったように爆発する。劇的な場面だ。仔馬が生まれると、母親は自分がイネを産んだときを思い出して、馬にも情が移る。祖母は、母親を補完する役割をしている。母親には無い、柔和で優しい母性を示す。祖母の母性がよく出ているのが、紡績工場へ出発するイネに寒餅を与える場面だ。「これを食えば水中りしねえぞ。来年の盆には馬っこに乗って迎えにいくから」と元気づけるが、一分間ほどの歳月経過風景描写を挟んで位牌姿となって登場する。これぞ熟練の演出で、泣かせる。才能の冴えだ。ひるがえって、父親の影は薄い。母と子の関係に焦点を絞りたかったのだろう。母、イネ、母馬と、母性を描いた映画ともいえる。夜になれば照明は裸電球一つだけの、暗い当時の農家の様子が忍ばれ、又、馬市、かまくら、なもみ、わらべ歌、雪下ろし、馬の代掻き、村祭、などの東北の土俗が丹念に描かれていて飽きない。尚、弟の見送りで、汽車と並走しながら馬上颯爽と尾根を駈け抜けるのは代役の老翁だ。この一場は作品中最も美しいと思う。当時、馬は容易には運べず、野外撮影地毎に別の馬が演じ、のべ総十五、六頭で演じているという。残念な点。病気の馬が洟汁を流す様子、イネが雪中の青草を採る様子、出産の様子が省略されている。 よしのぶさん [ビデオ(邦画)] 8点(2015-02-19 16:55:06)


7.かまくらやなまはげといった風物が織り込まれているってだけじゃなく、その扱いに詩情がある。落とし穴に落ちて雪を投げる子どもたちのシルエット、なまはげがくつろいで面を取ったのを盗み見て「インチキ」と呟くところなど、その扱いに懐かしさを含んだ詩情がある。仔を思う母馬が朝焼けのなかを駆け回る、高峰が病気の馬のために青草を探しに行く、弟を馬に乗って見送る、など、ここらへんのストーリーは常套的と言えば常套的なんだけど、それが繰り返し語られてきた物語を聞いているような、まるで時がたてばそのまま民話になってしまうようなファンタジーになっている。カメラが人物に近寄らないのも、民話の不特定の人物らしくなっている。顔のアップはラストの泣き顔だけだったんじゃないか。馬が仔を生んだときの家族のソワソワが一番いいシーン。小さな家族が一つの心配事を中心に寄り添っている光景のいとおしさ。詩情豊かではあるが、底には農家の貧困があり、馬を家族と見れば「離散もの」と言えるだろう。そして常に日本の少女は明るく健康でけなげなのであった。 なんのかんのさん [映画館(邦画)] 8点(2012-05-04 15:38:17)

6.《ネタバレ》 このとき高峰秀子17歳。ずいぶん子供っぽい。昔の、しかも田舎だとこんなもんか。特集上映で『綴方教室』のすぐ後に見たので「子役」のイメージを引っぱってたってのもあるかもしれん。ところが、預かった馬が子馬を生んでその子馬が売られるまでだから物語の期間は2年くらいだろうか、その物語の終盤で女工を勤め上げた高峰が子馬と再会する場面ではどこか大人びたところをはっきりと見せる。なるほど序盤の子供っぽいのは役作りだったのかと合点がいった。若き黒澤明がこのとき高峰に惚れたのもついでに合点がいった。それにしても淡々と語るセリフまわしの変化の無さとは裏腹にその雰囲気の差異には驚いた。これが女優か。それとも演出の賜物なのか。馬を巡って家族がもめたり嘆いたり喜んだり悲しんだり。そこには物語以上に当時の厳しい生活が活写されている。その見事なまでのリアリズムは山本嘉次郎の色。合間に挟まれる弟くんのエピソードが微笑ましい。 R&Aさん [映画館(邦画)] 7点(2011-10-19 14:02:43)

5.チーフ助監督となっている黒澤明が脚本、撮影、編集を担当した実質的な監督処女作。そのせいか、弟を見送るために馬で駆けるシーンや祭りの泥臭い迫力など、後の黒澤作品の香りが感じられる。ただ冗漫なシーンや聞き取りづらいセリフ(分かりづらい東北弁ということを考慮しても)、暗すぎる画面(フィルムの状態も悪かったにしても)など黒澤作品の短所も随所に見受けられ、正直、2時間9分は長すぎ。1時間40分にしていれば傑作になっていたのでは。 Q兵衛さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-08-25 15:25:07)

4.現地ロケによる地道な長期取材に基づき、自然と人間を描出していくセミ・ドキュメンタリーの手法は、明らかに35年日本公開の『アラン』(ロバート・フラハティ)からくるものだ。
またニュース映画全盛時代の、いわゆる写実的表現を尊重する時流の反映でもあるに違いない。
ただしフラハティの撮った過酷な辺境とは違い、日本の風土ならではの四季折々の豊かな風物が、軟調のローキー画面とフェード・イン、アウト、オーヴァーラップといった緩やかな画面転換を主とする日本的な時間表現の中で抒情詩的な味わいも醸している。

特に感動的な子馬の出産場面は優しいローキー画面の賜物といえる。
その柔らかな黒は迫真性の追及であり、夜間の静けさと緊張感、喜び、厳粛さの表現であり、主役たる馬への誠実な配慮でもある。

また、スタッフの写実性追及の姿勢は劇伴音楽の抑制という面にも現れている。
父親が病に倒れる秋は木枯らしの風音、馬が病臥する冬は吹雪の轟音、子馬の生まれる春はわらべうたの歌声、子馬と別れる夏はひぐらしの鳴声や夏祭りのお囃子、そして全編にわたり印象的な方言の響きといった具合に、あくまで環境音の採り入れ方の妙味によって「自然」と「ドラマ」両者を相乗的に引き立てており、秀逸だ。 ユーカラさん [映画館(邦画)] 10点(2009-02-17 23:12:27)

3.《ネタバレ》 馬を可愛がる気持ち、それはよく分かる。
私も犬が好きなので、何よりさて置いて動物を大事にする。
それも良く分かる。
まして、その馬から小馬が生まれた日にゃあ可愛さもなお更だろう。

だけどだけど、それをただ平たく冗長に描いただけでは、映画として良いということにはならない。
動物を愛護する気持ちは理解できるのに、本作から感じたこの退屈さたるは、何が原因だろうか。
演出面の問題か、それとも題材そのものに無理があるのか、それとも暗すぎる映像面か、聞き取りづらい音声のせいか。
理由は定かでないが、本作を観た後、感動よりも「退屈だった」という感想の方が先にきてしまった。 にじばぶさん [ビデオ(邦画)] 3点(2009-02-08 01:54:41)

2.長い間レビューしようかしまいか迷っていたんですが、思ったまま正直に書きます。この映画、今はなき浅草東宝のオールナイト「山本嘉次郎監督特集」にて、「綴方教室」(8点)「ハワイ・マレー沖海戦」(4点)等と計四本立てで鑑賞しました。私はとりわけ評価の高いこの作品を一番楽しみにしていました。主演した高峰秀子のエッセイ等を読むと、まだ監督デビュー前の黒澤明が演出したシーンも多かったとの由、それも含め期待して。ところがところが・・・東宝という会社はフィルムの管理が極めて杜撰な会社らしく、(成瀬巳喜男監督の遺作「乱れ雲」しかり)私が観た版は、ところどころブツ切りになっていて、常に小雨が画面にぱらついているような劣悪な状態でした。そもそもが東北地方のオハナシ、だだでさえ方言が多く、そういう状態では台詞も聞き取り辛くて、結局訳がわからないうちに映画は終わっていました。かの有名な童謡「めんこい仔馬」も流れなかったような気がします。なんだか狐につままれたような気分で、まだ暗い時間早朝の映画館を出ました。計四本観たうち、これが一番保存状態が悪かったです。戦前の日本映画って戦災等でフィルムすら残っていない名作が多い中、現物を観られただけもめっけもんと考えなければいけないのかもしれませんが・・・。もしDVDが出た際、クリアな画像で鑑賞して評価は改めてしたいと思ってます。映画会社のフィルム管理に抗議の意を込め、一旦はこの点数で。 放浪紳士チャーリーさん [映画館(邦画)] 2点(2009-01-11 10:46:38)

1.《ネタバレ》 戦前の東宝を代表する名匠・山本嘉次郎監督によるセミ・ドキュメンタリー・タッチの傑作。筋立て自体は東北地方の貧しい農家の少女いね(高峰秀子)が懸命に馬を育て上げ、遂に最後で軍馬に買い上げられる迄が淡々と綴られているだけの至ってシンプルなもの。が、山本監督による渾身のオリジナル脚本は愛弟子・黒澤明の協力を得て徹底的な調査の下に書かれただけあって、東北の四季を詩情豊かに掬い取って実に秀抜。これほど活き活きとした東北ズーズー弁が全編を貫く映画は恐らく本作が本邦初であろう。いかにもワザとらしいドラマティック的な展開が極力排除されているのも「綴方教室」を受け継ぐセミ・ドキュメンタリー・タッチの真骨頂。三村明を始めとする4人のカメラマンによる柔らかいロー・キィ・トーンのモノクロ撮影も美しく味わい深い。「かまくら」「なまはげ」「曲がり家」「かんじき」「雪降ろし」といった地方色溢れる要素が丹念に盛り込まれており、当時の平凡な日本人の暮らしぶりも窺い知ることができてとても興味深かった。場面的には何と言っても子馬出産を一家で見守るシーンが素晴らしい。実際の出産場面に出演者たちを立ち会わせただけに全員の表情が真に迫っている。汽車で旅立つ弟を見送るためにいねが裸馬の背に乗って追いかけ、窓越しに併走する場面のダイナミックさにも唸らされる。これだけの作品を(東宝のゴリ押しで)エノケン喜劇映画をも掛け持ちさせられながら完成させた山本嘉次郎のパワーに舌を巻きつつ文句ナシの10点を進呈! <追記>山本嘉次郎監督について補足。何より凄いのは商業作品では職人に徹することで娯楽作品を制作会社の注文通りにウェルメイドに仕立て上げる一方、芸術性に富む意欲作にも果敢に取り組むその姿勢。つまり、興行的にペイさせるだけの実績を挙げた上で、初めて自身の「撮りたい」モノへとチャレンジするというコト。愛弟子クロサワも1960年代までは確実に師匠のスタンスを踏襲していた。だから、私が個人的に高く評価する演出家は「娯楽性と芸術性を兼ね備えた」人物に偏る。そういうワケなので、悪いが私的にはゴダ●ルやタル○フスキーといった「おのれの撮りたい欲望に忠実」過ぎるゲージュツ派の監督はあまり高い評価は致しかねる。 へちょちょさん [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-07-08 19:59:23)(良:2票)

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【点数情報】

Review人数 8人
平均点数 6.62点
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2112.50% line
3112.50% line
400.00% line
5112.50% line
600.00% line
7112.50% line
8225.00% line
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10225.00% line

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