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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. ハロルドとモード 少年は虹を渡る 《ネタバレ》 カルト的な人気を誇 る1971の米国作品。日本にもファンが多く、浅丘ルリ子/西島隆弘の舞台が上演している。 ロンドン出身のシンガー・ソングライターであるキャット・スティーヴンス(後にユスフ・イスラムに改名)の曲が、印象的に使われている。名曲は、映画への思い入れを強くする。本作にもそれが当てはまる。 80歳のヒロインであるモードは、亡命者であり、革命家というバックグラウンドがあるものの、70年代の強いアメリカ女性そのものだ。ハロルドもまた典型的な70年代の思春期から脱出できないでいる19歳の青年。それぞれに奇行癖があるものの、身近に感じるのが容易な人物だ。やがてこの2人は結ばれる。 本作は、「この世界にある複雑な問題のほとんどは、とても単純な方法で解決できる」というメッセージを強く押し進めてゆく。だがこれは、キャット・スティーヴンスの甘い歌声に乗せた70年代という時代へのラブソングでもある。[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2008-08-13 08:45:40)《改行有》 2. バットマン ビギンズ 《ネタバレ》 ヒーロ映画の多くは、まずヒーロを見せ、それからヒーローになるまでの過程を描く。そして前半のうちにボスキャラが顔を出し、それにたどり着くまでにヒーローは幾人かの敵と対決する。例外は「スーパーマン」だが、あれはコスチュームを着る前からすでに超人であるので、同じことだ。だが本作でバットマンが登場するのは、上映から1時間が過ぎて、ようやく。 バットマンを知らない観客が、人間ブルース・ウェインの物語や、忍者だの、無法地帯のゴッサムだのに興味を持つことができるかどうかは、難しいところだ。バットマンになるまでの過程はコミックをベースにしているため、リアルに描写しようとすればするほど雑な印象を受ける。退屈に感じる人もいることだろう。 つまり、本作はバットマンファンにターゲットをしぼった(居直った)作品であると考えて鑑賞するのが良い。 本作でのバットマンの目的は、悪人退治ではない。無法地帯となったゴッサムシティに、司法を取り戻すことだ。だからこそ彼のパートナーは検事であり、警察官だった。ただその過程において、ゴッサムと人間を見限るラーズ・アル・グールの登場は、少々はやいように感じた。 本作でのバットマンには、精神的な弱さと甘さがある。ヒロイン・レイチェルを女性として扱ってしまったことで、さらにバットマンを俗物にしてしまった。そもそもバットマンのキャラクターの魅力は、個人としては決して報われない戦いに挑むそのストイックさにあるのではいだろうか。このあたり、賛否両論がありそうだ。 ともあれ、本作は続編「ダークナイト」の重要な複線となっている。 またリスチャン・ベールの出世作でもあるので、押させておいても良いだろう。[映画館(字幕)] 6点(2008-08-04 04:48:05)(良:1票) 《改行有》 3. ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 ノーラン監督とヒース・レジャーは、徹底的にジョーカーをサイコパスとして描いた。アメコミ「ダークナイト・リターンズ」のフランク・ミラーのジョーカーからすると、その解釈は間違いではない。しかしリアリティを求めたことにより、ジョーカーの器の大きさを限定してしまい、旧シリーズのニコルソン、あるいはレクター博士のポプキンズの見せた「つい憧れてしまいそうになる恐怖」が希薄になってしまっているのは残念。はやくもオスカーの噂が出ているヒースの演技(故人)自体は、評判通りのものだった。ただし役者にとってサイコパスほど演じやすいものはない。身近な例では、日本のお笑い芸人である鳥居みゆき。 映画の印象は、「セブン」に似ている。だが本作の主人公であるブルースは、しっかりとした意志を持っている。少なくともマスクをかぶったときのバットマンには、心の葛藤というものがない。そうした強さこそが人間・バットマンの魅力である。 ふんだんなアクションシーンに加え、全体的にカット数が多く、スピード感がある。しかしどんなに楽しいジェットコースターでも、2時間半も乗り続ければ疲れる。カットするシーンがないと思えるほど緻密に作られているので、「短くしろ」と簡単には言える問題ではないのだが、このことからも「観客を選ぶ映画」になっている。前編、後編にわけるのも1つの手だったかもしれない。 本作でのバットマンの真の敵はジョーカーではない(そもそもジョーカーは狂犬であり、バットマンの眼中にはない)。ゴッサムという架空都市にはびこるマフィアたちであり、汚職であり、不正があたりまえのものだと思う市民の心なのだ。バットマンが信じるのは復讐や暴力的解決ではなく、あくまで司法だ。こうしたドラマは、これまでのアメコミ映画を期待した観客には重いと感じられるかもしれない。 脚本と演出は細かい一方、ずいしょに説明不足であったり乱暴であったりするところが見られる(2人の選択の件や、船の選択の件など)。しかしかつて黒澤明が「七人の侍」で時代劇を壊し、新しい時代劇を作ったように、本作がアメコミ映画の金字塔となることは間違いないのではないかと思う。[映画館(字幕)] 8点(2008-08-03 15:17:33)(良:4票) 《改行有》 4. スターシップ・トゥルーパーズ 本作ほど「悪趣味」という言葉が似合う作品はない。ただしそれはポール・ヴァーホーヴェン監督への最大の賛辞となる。本作の原作は、右翼的とも評されたロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」。ヴァーホーヴェンはこの作品の(軍歴がないと市民権を得られない)世界観を茶化す一方、主人公リコが戦わなければならない道理を説く。このため本作は、いったい何を主張しているのかがはっきりしない。 戦争の無意味さと、生存するためには殺し合わなければならないという矛盾。さらに、男女の裸、ばらばらの死体、虫の内蔵、悪趣味なビジュアルが無造作に散りばめられている。そんな混沌こそが私たちの住む世の中なのだ。 ヴァーホーヴェンの皮肉は、自虐でもある。私たちは反省などすることなく、ただそれを黙って楽しめば良い。 とは言っても、本作はエンターテーメントでありながら観客を選ぶ。彼の悪趣味について行けるなら、本作は珠玉の一本となり得るだろう。[DVD(字幕)] 9点(2008-07-26 00:27:13)(良:1票) 《改行有》 5. スターシップ・トゥルーパーズ3 《ネタバレ》 監督は1作目のポール・バーホーベンではなく、エド・ニューマイヤー。1作目と2作目で脚本を手がけた人物で、本作が初監督作品となる。 バーホーベンの魅力は、その悪ふざけにあった。エロ、グロ、皮肉、批判が同じ重さを持っていた。しかし本作では、まじめに風刺をしてしまったところに、ニューマイヤーの勘違いがある。 スターシップ・トゥルーパーズのテーマは、その混沌にある。物語が軍国主義を笑う一方、主人公のリコには戦わなくてはならない理由があった。こうした2つの主張を、甲乙付けずにそのままぶつけたところに1作目の凄さはあった。エロ、グロ、皮肉、批判が同じ重さであるが故に、主張にリアルな重さを感じることができた。 だが本作は、手垢のついた主義主張が何度もリピートされ、いかにも説教くさい。せっかくの見せ場のアクションシーンが、妙な登場人物の乱入で邪魔されたりもする。 1作目の主人公リコの復活はファンにとって嬉しい限りだ。パワード・スーツにも心躍らせることだろう。ニューマイヤーには、そういったファンの気持ちを、もっともっと汲み取って欲しかった。[映画館(字幕)] 5点(2008-07-25 20:14:00)《改行有》
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