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1. モンゴル
《ネタバレ》 まず、伝承でしか語られないテムジン=チンギスハーンの物語を、血肉の備わったリアルさで現代の私たちの前に見せてくれたことに拍手を送りたい。父イェスゲイの毒殺や嫁選びなど、遊牧民特有の風俗や習慣があってはじめて、原作・元朝秘史が語るひとつひとつの出来事が起こりえたのだと、素直に納得できる出来映えだった。族長が強いうちは結束が固いが、弱ったり信頼を損なうと配下の者に見限られ、別のリーダーのもとへとあっさり去ってしまう淡泊さ。また、盟友となった相手とも仲違いをし、戦をする不合理さ。弱い部族を襲い、殺し合い略奪することなど、私たちの常識に照らし合わせればあまりにも不可解で悲惨だ。殺さなければ殺される、生きることが難しいくらいの過酷な世界。なんでこんなに襲撃・戦さ、殺し合いばかり見せるのか、理解しにくいくらいだ。けれどその疑問をボルテに語らせ、テムジンが答える。それこそがこの映画の要の部分で、チンギスハーン一人の物語にとどまらずに、あの時代に生きた遊牧民全体を語る深みにまで到達できたと思う。景色は雄大で本当に美しかったけど、ロケーションとしては地元モンゴルで撮影した「蒼き狼」のほうがリアルさで上かな。主役浅野とボルテ役の女優の目で語る演技にはとても惹きつけられた。ジャムカはエキセントリックなパンク野郎で、ちょっと笑える。捕虜時代や衣装など、エンタメ性を考慮したフィクションなどもあったんだろうけど上手に処理している。戦闘シーンはつらいけど、もう一度見てもいいな。[映画館(字幕)] 8点(2008-04-10 21:31:58)
2. パフューム/ある人殺しの物語
《ネタバレ》 主人公がシリアルキラーと聞いて想像していたほどには残酷さがなく、むしろ淡々とすすんでいくストーリーに中盤まで飽きを感じるほど。しかし処刑台のシーンで、それまでナレーションで時折語られる主人公の心情に一切感情移入できなかった私と彼の間に、はじめてつながるものを感じました。生い立ちのなかで社会性や人間性をはぐくむことができず、ほとんど本能的に臭覚に頼って生きてきたグルヌイユ。普通の人間なら成長途中でもっと早くに自覚できたことだったろうに、あの場で気づいたのかと思うと、哀れで涙が止まらなくなりました。ああいうのはコミュニケーション不全症候群とでもいうのかな?なにげに現代的なテーマかも。ラストは余計。なにもそんな始末のつけ方しなくてもいいのに。全体的には、ファンタジー映画として満足できる内容でした。かなりグロテスクだけど。なぜか笑いたくなるシーンの多さ(不自然さにつっこみたくなる)と冗長さにマイナス点。音楽は○。[映画館(字幕)] 6点(2007-03-09 23:04:27)
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