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【製作国 : ドイツ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
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変更日付順12

1.  17歳のカルテ 《ネタバレ》 自殺未遂をして精神病院に入院した少女が回復して社会復帰を果たす物語。硝子の心を持つ少女スザンナは、昔気質の両親になじめず、家に居づらい。複数の男性と体を重ねるが愛情はない。高校卒業後して無為に過ごすが、幻覚を見、時間感覚があやふやとなり、猛烈な不安に駆られて自殺を図る。精神病院に入院させられるが、自覚症状はない。監視、薬、規則で患者を管理しようとする病院に反発を覚え、医者に食ってかかり、看護婦に悪口を吐く。そんな中、他の患者達と連帯感が生まれ、友情も芽生える。特に主導者的存在のリサに惹かれていく。彼女は、本音で語り、医者を無能呼ばわりし、薬も飲まず、夜中に診察室に忍び込んで診療録を見るなど、自由奔放に振る舞っていた。ある日、リサの誘いで病院を脱出し、退院したデイジーの共同住宅に泊る。リサはデイジーが近親相姦していることを見抜き、容赦なくなじる。翌朝デイジーが自殺する。リサに疑問を持ったスザンナは病院に戻る。自分と向き合い、今まで治療努力をしてこなかったことを後悔し、前向きに取り組むようになる。リサが戻り、スザンナの日記の同僚批評を非難するが、スザンナはリサの心が空っぽであることを見抜いており、「あなたは既に死んでいる」と痛烈な言葉を浴びせる。退院する前にリサを見舞うと、リサは「私は死んでいない」と答え、二人は歩み寄る。スザンナが無気力に陥り、自立できなかったのは、自分と向き合わなかったからだ。自分の人生がうまくいかないのを、家族や友人や社会や時代の所為にして目をそむけてきた。病院で友達が出来たことで心に余裕が生まれたのが上昇の契機とある。リサを尊敬していたが、彼女の心が空虚であることを知り、彼女の行動のほとんどは虚勢であり、オズの魔法使いの正体と同じだと悟る。リサの中に自分の姿を見て、反面教師としたのだ。閉じこもっていては駄目で、世間を折り合いをつけて生きていくために、成長し、強くならねばならない。映画化が困難な精神病を題材にした点は評価できる。原作者の体験談なので真実味があるが、全ての人に当てはまるわけではない。前半、時間軸を交差させたり、リサと対決した地下の場面を冒頭部に持って来たりと、技巧を凝らしている。映画では自殺未遂は高卒後のことだが、原作では17歳。なので邦題の「17歳のカルテ」は正しい。スザンナとリサを演じる女優が十代に見えないのが難。[DVD(字幕)] 7点(2015-02-07 20:45:08)

2.  ヒマラヤ 運命の山 《ネタバレ》 ナンガ・パルバット(標高8,125m)の南壁「ルパール壁」は、4800mの標高差を持つ世界最大の絶壁。1970年その初登攀に成功したラインホルト、ギュンター・メスナ―兄弟の物語。二人は、ヘルリヒコッファー博士の遠征隊に招待される。博士の兄は、ナンガ・パルバットの初登頂に挑戦して死亡しており、兄の無念を晴らさんと、博士は過去に七度も遠征隊を送り込んだが全て烏有に帰していた。 今回の遠征も天候に阻まれ、登山期限が迫っていた。最終キャンプで無線が使えず、悪天候なら赤、好天気なら青の信号弾が揚がる手筈だった。赤が揚がって、ラインホストの単独決行となる。この赤は後に間違いと判明する。置き去りにされたと感じたギュンターは、身勝手にも下山ルート工作任務を放棄して兄の後を追った。6月27日、兄弟は山頂に立つ。しかし、ザイルも満足な装備も無く、弟の疲労が甚だしいため、登路のルパール壁下降を諦めて、西側のディアミール壁から下山することにした。無装備でのビバークを強いられた下山は辛酸を極め、疲労困憊した弟は兄とはぐれ、雪崩に遭って死亡する。兄は一週間後に生還するが、凍傷で足指七本を失った。独占的に報告書を公開する権利を得ていた博士は次のように報告した。「二人の行動は隊からの離脱である。ラインホルトは、最初から西側から下山する計画をしていて、弟を頂上直下に見捨てて単独下山した」弟の謎の死は様々な憶測を呼び、兄に対する批判も強かった。ラインホルトは独自の登攀記録を発表して、名誉回復裁判を起こしたが、敗訴した。2005年ギュンターの遺体がラインホルトの主張通り、ディアミール側山麓の氷河で発見され、彼の主張が正しことがほぼ証明された。本作は、彼の原作を忠実に映像化したもので、彼の助言も得ている。以上のような事情を知っていればより楽しめるし、下山に多くの時間が割されている理由もわかるだろう。それにしても二人がカメラとヘッドランプをポケットに入れただけで、ザイルもリュックも持たずに登頂するのは驚きである。無謀を超えている。一人だけでも生還出来たのは奇跡だ。若くて自信過剰だった兄弟が、登山経験のない博士を軽んじていたことが悲劇につながったといえる。無線がつながらないのに、想像を交えて報告書を書き綴る博士も異常である。兄弟の救助を拒否したフェリックスは数年後に謎の自殺をしている。真相の一部は未解明だが山岳映画として秀作。[DVD(字幕)] 8点(2014-12-09 21:55:25)《改行有》

3.  王妃マルゴ 《ネタバレ》 16世紀の仏国、カトリック対ユグノーの宗教対立を緩和すべく挙行された王妃マルゴとナバル王アンリの政略結婚とその直後に発生した「サン・バルテルミの虐殺」を題材にしている。 宗教戦争と王家の権謀術策を扱っているので、ある程度の流血場面は予想していたが、常識を越えた血なまぐさい場面の連続には辟易させられた。国王シャルルがヒ素を盛られて血の汗を流すが、ありえないことだ。陰影に富んだ絢爛な映像が見られるだけに残念だ。 史実では、結婚時の年齢はマルゴ19歳、アンリ18歳で、役者の実年齢と大きく隔たる。史実に忠実に描くのではなく、小説「王妃マルゴ」に忠実に描くという姿勢だ。 現代と中世では倫理観が違うのは承知だが、あまりに乱れているので感情移入ができない。最終場面はマルゴが、処刑された恋人ラ・モールの首を抱えて馬車に乗り込むという哀切凄愴たる場面だ。だが向かう先は夫の元なのだ。マルゴは性的に奔放で、新婚初夜に夫を避けて恋人ギーズ公アンリを寝床に呼ぶが去られ、ほてった体を持て余して町に出て男を漁る。その相手がラ・モールだ。他に愛人は沢山おり、兄弟達とも近親相姦の関係にある。「淫婦マルゴ」を強調しすぎている。そんなマルゴとラ・モールの関係を純愛として描いても純愛には見えない。ラ・モールの売った本が偶然に母后の手に渡り、暗殺の道具として使わるなど偶然すぎる。 同じく新婚初夜に、男爵夫人シャルロットがアンリを誘惑するなど、理解に苦しむ行動が多い。主要登場人物の誰もが異常といっていい。倫理や正義の中核となって他者を鏡として映し出す人物が不在なのだ。だから外国のゆがんだ夢物語としか思えず、現実感がないのだ。描く視点が定まっていない映画では感情浄化が得られない。 [DVD(字幕)] 6点(2014-12-05 03:21:31)《改行有》

4.  春夏秋冬そして春 《ネタバレ》 水中から樹が生える不思議な山の湖に浮かぶ寺院舞台に、人生を四季になぞらえて描いた仏教説話。小坊主がいたずらで、魚と蛙と蛇に石を括りつけて苛める。老僧は懲罰として小坊主の体に重石を巻き、いじめた動物を助けに行き、一匹でも死んでいたら、お前は心の中に石を抱えて生涯を生きると予言する。魚と蛇が死んでいた。少年僧となった小坊主は、少女との愛欲に溺れて寺を出奔、その十数年後に妻を殺して舞い戻る。老僧は、男が自死しようとするのを諌め、般若心経を彫らせることで精神の安らぎを与える。男が刑事に連行されるのを見送った老僧は焼身往生を遂げる。男は服役を終えて帰門し、老僧の衣鉢を継ぐ。ある日、覆面の女が赤子を捨てて去ろうとするが、事故で死ぬ。女の菩提を弔う為、男は苦労して仏像を山上に安置する。男が土台石を引きずる姿は、かつて男に苛められた小動物の姿そっくりだった。赤子は成長し、動物をいじめ始める。過ちと償いが繰り返えされ、かくて人生は流転する。人は、いたずら、執着、愛欲等で過ちを犯すが、どのような棘の道、艱難辛苦であろうとも、最後には安らぎを得るという有難い教え。予定調和な仏教説話の範疇を出ておらず、あくの強いこの監督の作品としては物足りない。奇跡を示現するような作品がふさわしい。水は神聖と浄化の象徴で、水上の寺院は超俗と孤絶を表わす。壁のない扉は見えない戒律。蛙が生き残ったのは偶然だが、神の視点では偶然も必然。男が仏像を持ち去ったのは絶ち切れぬ仏教への愛執。鶏を持ち出したのは、閉塞の象徴の鶏を自由にすること。老僧の超能力めいた力は、金剛密教の修行の成果。焼身往生するのは、入滅の時期を悟り、最後の功徳を積むため。男が氷った舟から掘り出したのは聖者の遺骨こと舎利で、それを氷仏像の白毫に入れ、最後は溶けて自然に還る。女が布で顔を隠すのは、最初から子を捨てる目論みだったのと、女は特定の誰かではなく、あなたかもしれないという示唆。「閉」の字で目鼻を覆い、般若心経を彫るのは、文字に聖なる力が宿ると信じているから。猫の尻尾で経を書くのは、他に太い筆が無いことと、何事にも自然に臨機応変に対応する老僧の才覚の表現。老僧が蛇に変身するのは、蛇が神秘の象徴だから。残念な点。老僧が自由に舟を操れるなら、舟を戻すのに紐付鶏を利用する必要はない。仏像を据えた山上に雪が無かった。裸での冬季登山は難しかったのか。[DVD(字幕)] 7点(2014-10-31 19:22:03)

5.  アレキサンダー 《ネタバレ》 アレキサンダーの幼少からその死までを丁寧に描き、知られた挿話をほとんど盛り込み、大王の足跡を辿るだけでなく、心の内面にまで迫ろうという姿勢には好感が持てる。CGによりガウガメラの戦い、バビロンの街並み、インドでの密林戦などが見れただけでも満足で溜飲が下がる。特に鷹の目線を交えて大俯瞰で描いたガウガメラの戦いは見応えがあった。しかしながら人物像に関しては違和感があった。大王の言動があまりにも現代的過ぎるのだ。「自由、人種の融合」など理屈っぽい上に、よくしゃべり、よく悩み、よく泣く。人物像の真に迫ろうとするあまり、表現に力みがあるように思える。新解釈で描きたいという気持ちは分るが、所詮古代の人物である。数少ない資料から人物像を掘り下げるのには限界がある。現代の価値観で解釈を加えたところで説得力に乏しい。両親の愛に餓え、腹心の裏切りに怯えるという英雄の弱みを強調するより、英雄は英雄らしく描いた方が受け入れられやすいのは自明の理だ。蛇信仰に熱中して夫を憎む母の狂気や暴力的な父に対する反抗心や男色趣味を殊更強調しても意味はほとんどなく、混乱をもたらすだけだ。大王の東征が「人種の融合と調和」なのか「征服と支配」なのかを映画の中で解釈する必要もない。東征の遠因を「母から逃れるため」「父を乗り越えるため」と精神分析的に捉えるのはよいが、それは示唆する程度に留めておけばよい。一義的な解釈を押しつけても反発されるだけだ。こういう人物だと決めつけても、畢竟詮無いことだ。曖昧模糊たる「アレキサンダー大王伝説」を多元的に描き、笑いを交えるくらいの余裕が欲しかった。描き方に余裕が無いので観ていて疲れる映画だ。事実を羅列するにとどめ、解釈は観客に委ねるのが好ましい。各地に築いたアレクサンドリアの様子や如何に統治したかが描かれていないのが不満だ。軍事面だけでなく政治面も描いて欲しかった。大王の妃やペルシャ王妃をわざわざ醜女に描く意図が不明だった。[DVD(字幕)] 8点(2014-09-03 05:09:43)(良:1票)

6.  アイガー北壁 《ネタバレ》 ドイツの山岳猟兵で登山家のトニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサーの二人が主人公。山岳猟兵とは山岳部の国土防衛隊。アイガー北壁は未登頂で、ナチスは国家の威信を誇示するため、登頂者にはオリンピックの金メダルの授与を約束、登頂争いはいやが上にも盛り上がる。アンディは楽観的で挑む気満々だが、トニーは悲観的で登頂は不可能と断定する。そこへルイーゼが登場して、二人を説得する。彼女はベルリンの新聞記者で、二人の幼馴染。トニーとの間に淡い恋があったようだ。トニーは最初は否定するが、最終的に挑戦を決断、「自分のために登る」と言い切る。ここにこの二人と、ライバルである二人のオーストリア人との登頂レースが開始される。登山の描写、殊にロック・クライミングの描写は圧倒的な迫力で、この映画の魅力はここに尽きる。過去の山岳映画を寄せ付けない、最高峰だ。現地ロケと大冷蔵庫を使用したスタジオ撮影の融合は観る者を惹き込む、実に見事な仕上がり。まるで自分が主人公になったかのような寒気を覚えた。自然の美しさと、人間に牙を剥いたときの残忍さとが対比。精も根も尽き果てて、宙吊りになって息絶えていく姿は悲劇の影そのもの。荘厳な気持ちにさせられた。映像力の勝利だ。 映画は登頂レースの他に、ルイーザとトニーの恋、ルイーザと上司の関係、命より話題を優先するマスコミ、登山レースを見学する観光客等を挿入し、登頂レースの意味を浮彫にし、文明批判めいた奥深さを出そうとしているが、成功していない。トニーとルイーザの過去の描写がほとんどなく、どんな関係だったか、想像するしかない。だから最後にルイーザが上司から冷たい言葉を言われて会社を去る決意をしても心に響かないし、彼女が一人で救出に向かうなどの無理な演出もマイナス要因だ。 もう一つ。登頂の最中に、ライバルであったオーストリア人との友情が芽生えるのだが、この演出もいただけない。オーストリア人は最初から雑魚扱いなのだ。彼等に対するリスペクトがあれば、名作の類になっていただろう。[DVD(字幕)] 8点(2013-11-24 17:32:07)《改行有》

7.  トト・ザ・ヒーロー 《ネタバレ》 複数の時間軸が並行して進行し、妄想と現実が交錯するという展開を見せるが、少しも混乱がない。冒頭に死んだ男が誰かという謎もある。監督の気遣いと手腕とに脱帽だ。トマは誕生の砌、病院の火事の混乱で他人と取り違えられたと信じている。取り違えの相手は、向いの家の同じ誕生日のアルフレッド(A)。トマは妄想が解けないまま老人となり、自分の理想像「英雄トト」として、Aを殺すことを夢見ている。Aを憎む理由は沢山ある。Aが経済的に恵まれている事、Aにいじめられた事、Aの父の仕事の依頼で飛行したパイロットの父が行方不明になった事、そのせいで母が狂った事、大好きな姉のアリスをAに取られた事、アリスがAの家に放火しようとして焼死した事、青年トマの愛した姉似のエヴリーヌの夫がAだった事。Aは金融事業に失敗して憎まれ、暗殺されそうになっている。トマは先を越されてなるものかとAを殺しに乗り込んでゆく。Aと対面したトマは衝撃を受ける。自分以上に老醜をさらしていたからだ。そして「何でも自由にやっていたお前が羨ましかった」という告白を受け、殺意を失くす。自分の不幸な人生の原因の全てをAの所為にして、Aに対する憎しみだけで生きてきたが、Aも又不幸な人生を歩んできたことを知り愕然となる。二人は双生児のように表裏一体たったのだ。すると霧が晴れたように、幸福な子供時代、恋人と愛し合った美しい日々が甦ってきだ。人生否定から人生肯定への価値の逆転だ。トマは「赤ん坊取り違え」のトラウマを解消するため、Aの身代わりとなって暗殺される道を選択する。そして幸福な死を迎えたのだった。死ぬ間際の人生の大逆転劇は感動的だが、納得出来ない点も多い。赤ん坊取り違えが事実かどうかは、両家人の血液を調べることである程度判明するのにそれをしない。Aの家が向いだったり、A家が父の死に関係したり、トマとAが同じ人を愛したりと偶然が多過ぎる。姉が死んだのはトマが放火を焚き付けたからであり、エヴリーヌを不幸にしたのはトマが置き去りにしたから。反省し、人生に責任を持たない限り、本当の幸福にはなれないのではないか。トマはAの身代わりで死んだつもりだが、トマとして死体処理された。その死に意義はなく、間違い殺人であり、一種の自殺だ。Aの暗殺の危機は去っていない。死後に陽気なシャンソンを歌うのはそぐわない気がする。トマは人生の意味を取り違えているようだ。[DVD(字幕)] 7点(2013-09-24 22:12:24)(良:1票)

8.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 シリーズのマンネリ化を防ぐためだろう、度肝を抜く演出、鑑賞者を驚かせて新鮮味を出そうという演出が顕著にみられる。 冒頭、いきなり前回からの続き、オスプレイ航空機部隊によるアルカイダ号襲撃が、スロー逆回転で始まる。 海に転落して気を失っていたアリスが意識を取り戻すと、別の人間に入れ替わっており、ゾンビに襲撃されて逃げ惑う。 実はクローンで別人だが、編集で錯誤させる。クローンが捕殺され意識が途切れると、今度は本物のアリスの意識が回復する。そこはアンブレラ社の実験施設内で、半裸衣装を着て床に横たわっていた。尋問されている途中で、メインコンピュータが再起動、その隙をついて部屋を脱出すると、そこは東京で、ゾンビに追いかけられる。別の部屋に逃げると、そこは中央制御室だが、奇妙なことにオペレータは全員射殺されていた。そkへ見知らぬ女が入ってきて、「私はウェスカーの仲間であなたを助けにきた。ウェスカーはアンブレラ社を裏切り、あなたと力を合わせて戦いたいと希望している」といった。こちらの頭も逆回転しそうな、意表をつく展開の連続だ。ここまでは面白かったが、後がいけない。銃を中心にしたアクションの連続で、目新しさはなく、飽きてしまった。観終わってみれば、進展はわずかで、実験施設から脱出するだけの話。そもそも物語は破綻しかけている。アンブレラ社は、人類がほぼ滅亡している状況なのに、人体実験を繰り返して化学兵器の開発に余念がない。とおもったら、今度は人類絶滅を目指すとか言い出す。ゾンビ感染ものから、マッドマックス風の荒涼世界、マトリックス風の仮想現実世界を経て、ターミネーター風のコンピュータ反乱世界へと変貌を遂げつつ、プリズン・ブレイク、エイリアン2の風味も加わって、最早統一感なしの世界観に堕してしまっている。観客を喜ばせようという努力は買うが、何でもありの荒唐無稽設定と中味のない物語では、いくら大金をかけたアクション娯楽大作でも限界がある。半裸も危険なアクションも厭わない主演女優の役者根性と相変わらずのキレのあるアクションには頭が下がる。次回作でいよいよ最終回。ゾンビ+クリーチャー+コンピュータ軍団と人間との壮絶な戦いが繰り広げられ、人間は苦戦し追い詰められるが主人公の捨て身戦法により、中央制御装置が爆破され、最終的に人間が勝利、ワクチンでゾンビが人間に戻る、といった内容と予想する。[DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 19:30:29)(良:1票) 《改行有》

9.  バイオハザードIV アフターライフ 《ネタバレ》 第一、冒頭の東京での戦闘場面。ヒロインのアリスとそのクローン達の襲撃により、悪の枢軸アンブレラ社の地下要塞は損壊を受け、機能不全に追い込まれる。非情なる議長ウェスカーは部下らを見棄て、ただ一人飛行機で脱出し、特殊爆弾による自爆装置を起動させ、部下もろとも地下要塞を爆発させる。だがアリスはいつの間にか飛行機に忍び込んでいた。アリスが銃を突きつけると、ウェスカーは振り向きざま、首に特殊遺伝子無効化ワクチンを注射する。飛行機が富士山に激突して爆発炎上するがアリスは奇跡的に助かる。 第二、アリスとウェスカーの最終対決場面。死闘の果て、アリスがウェスカーの口に銃弾を撃ち込み、勝利を収める。クリスとクレア兄妹がとどめを弾丸を撃ち込む。それでもウェスカーは復活し、またもや飛行機で脱出する。機上、アリスらの船の自爆装置を起動させるが爆弾は機内にあり、爆発する。アリスが予想して潜ませておいたのだ。上記2点に映画の制作方針が集約されている。安易な設定、強引な展開、御都合主義等の誹りはあえて甘受し、美女がゾンビや敵役をひたすら倒すアクション・シーンを魅力的に描くことに専念したのだ。もともとゾンビを倒すテレビゲームの映画化なので、堅いことは言いっこなしという暗黙の了解がある。ビジュアル重視なのでセクシー美女が多数登場し、ここぞという場面ではスーパー・スローモーションでじっくり鑑賞となる。ヒロインと敵役が超人的な能力を持つのに対し、ゾンビ共は弱弱しく、あっけなくなぎ倒される。テンポを速めるため、非主要人物の描写は記号的でしかなく、次々に消えてゆく。話題作りのためプリズン・ブレイクのパロディも取り入れる。ホラーや人間ドラマ要素を抑え、3Dアクションを気楽に楽しむ娯楽作品に徹したところに成功の要因があるだろう。印象的なアクション場面が2つ。飛行機が山に激突した瞬間にストップモーションとなり、そのままカメラが奥へパンする場面と、アリスが大勢のゾンビ共を引連れて屋上から飛び降り、縄伝いに垂直降下する場面。その適確な映像処理を讃えたい。難点は、スローモーション過多なこと。飽きさせては駄目。素早いカッティングとの併用で緩急をつけるのが肝要。大斧の巨大処刑人はギャグにしか見えず。「噴出する水」の演出のため、水道管の立並ぶ部屋が出てくるが、実際にあんな部屋があるか?必殺兵器の25セント硬貨弾は威力があるか?[DVD(吹替)] 6点(2013-06-19 11:35:34)(良:1票) 《改行有》

10.  天空の草原のナンサ 《ネタバレ》 モンゴル高原は標高が1000mもあるのに広大な空間が広がる。大地は満目緑に覆われ、空は無辺に開き雲は自在に変化する。まさに癒しの空間だ。そこで自然と共に暮らしてきた人達はどんな人達だろうか、暮そのらしぶりはどうか、そこに住んでみたい、想像や想いが次々とふくらんでくる。あたかも画面から爽やかな風が流れてくるような映画だ。 物語は民話「黄色い犬の洞穴」になぞらえるように進む。民話曰く。『長者の娘が重い病気になる。父が賢者に相談すると飼い犬を追放せよとの託宣。犬を洞穴に閉じ込めると、娘は快復した。実は娘に通う青年がいたが、犬が妨げとなっていたのだ。やがて二人は結婚し、子を授かる。子は犬の生まれ変わりという』主人公は寄宿学校から帰省した”高原の少女”ナンサ。洞穴から犬を見つけて連れ来るが、父から捨てるように命じられる。野犬が狼を呼ぶのを恐れてのことだ。少女は犬を隠す。あるとき犬を追って道に迷い、よそのゲルに泊めてもらったが、そこの老婆から黄色い犬の民話と輪廻転生の話を聞く。帰った少女は妹に過去世の記憶があると信じる。季節が移り、一家は引越すが、犬は杭につないで置き去りにする。移動途中で長男がいないことに気付く。父親が慌てて戻ってみると、犬は長男をハゲワシから守ってくれていた。こうして犬は家族として迎えられた。ここで冒頭場面に戻る。犬を丘に埋葬する父と娘。来世で人間に生まれるように願い、尻尾を頭に置く。そこには悲しみは無く、脈々と続く命と魂の営みがある 民話と輪廻転生思想は、モンゴルの古き伝統の象徴で、それが21世紀の少女にも受け継がれてゆく様子を詩情豊かに描く。作為を感じさせない演出と、子供達の自然な演技は賞賛に値する。文明社会の象徴たる選挙カーと引越しの家族が交錯するラストが印象的だ。未来の伝統の衰退を暗示している。 遊牧民の暮らしぶりが興味深い。チベット仏教の信仰。五人家族で、牛6頭、馬2頭、羊250頭も飼う。羊の種類の多さ。牛糞での積木遊び。6歳児が乗馬して放牧の手伝い。丹精込めたチーズ作り。手回しミシン!器用でないと使えなさそう。風力発電。野菜のない食事。近くに水辺があるので野菜は作れると思うが、事情が許さないのだろう。鑑賞後、この緑濃き高原も冬には酷寒の大地に変貌することを想像した。厳しい自然に堪えてこそ、伝統が守れるのだ。[DVD(字幕)] 7点(2013-06-17 15:56:59)《改行有》

11.  ナイロビの蜂 《ネタバレ》 アフリカを舞台に、製薬会社と国家による国際的陰謀を暴いた社会派作品で、不正を追及した外交官夫妻の愛と死を鮮烈に描く。妻テッサは、製薬会社の非人道的な治験を調査するうち、利権のためそれに加担する官僚社会の裏側を知る。そこには国家や企業が利権に群がり、アフリカを食い物にする構図が浮かび上がる。そのため闇社会により抹殺された。夫ジャスティンは何も知らなかったが、妻の死に疑問を持ち、やがて妻の追及していた陰謀を嗅ぎ付け、妻の死の真相と陰謀の解明をすることを決心する。夫の行動は分り易い。妻の真実と自分への深い愛を知り、一人蚊帳の外にいた自分を恥じ、贖罪のために妻の後を継ぐ。死に場所に選んだのは妻が死んだ場所。これが涙を誘う。残念なのは、不正に関する情報が不正者側方からもたらされること。わざわざ教えてきてくれるので、謎解きの妙がない。一方、妻の行動は分りづらい。そのバックグランドが描かれないからだ。どうして外交問題に興味を持つのか、どうしてスラム街の住民に同情的なのか、どうして死を賭してまで不正を追及するのか。それぞれが度を超えているのだ。二人の成り染めも不自然。外交官ジャスティンの講演会で、テッサが国の外交姿勢のを追及する。講演後ジャスティンが声をかけお茶に誘うが、何故かテッサの家に赴き、そのままベッドイン。ありえない。次にテッサが事務所に押しかけて、逆プロポーズ、即結婚、アフリカへ。端折りすぎ。不衛生な病院で出産しようとするのも理解しかねるし、流産した原因が問題の薬のせいなのかも曖昧なまま。夫を守るためとはいえ、国の不正を外交官たる夫に相談しないことがあるだろうか。性急すぎる行動と青い正義感が徒となった印象を招き、同情しにくい。彼女の殺害場面が描かれていれば違ったろうに。不正治験だが、副作用で死者や死産が頻出するようでは、先進国で認定されず、発売されたとしてもすぐに発売禁止になるだろう。製薬会社がそんな薬に固執するとは思えない。クライマックスで、アフリカ局長の不正への関与が暴かれる場面だが、劇場的効果を狙ったのはわかるが、一介の自殺した外交官の葬儀に大勢のマスコミが詰めかけているのに違和感をもった。時間軸を交錯させた前半部分は初見では混乱するので感心しない。黒人医者も殺されたが、あっさりとしか描かれず、テッサの扱いとの温度差が気になった。この主題でヌード・サービスは不要。[DVD(字幕)] 7点(2013-06-14 15:15:02)

12.  ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 探偵役は二人。社会派で温厚なジャーナリストのミカエルと天才ハッカーのリスベット嬢。彼女は過去のトラウマから人を愛せず、コミュニケーション障害者で攻撃的な性格という設定。この設定が十分活かされている。ミカエルは追っていた悪徳実業家の罠に嵌り、裁判で有罪となるが、リスベットが無実を証明するのが副主題。ミカエルはある大物実業家から40年前の少女失踪事件の調査依頼を受ける。少女とミカエルは実は顔見知りであるという設定が巧み。リスベットは仕事でミカエルの素行調査を行っており、彼に興味を持った。失踪事件のことを知り、彼に事件解明のヒントをメールする。こうして二人の交流が始める。失踪事件は謎が多く魅き込まれる。事故で交通止めの孤島、生死不明、一族の内部抗争、犯人らしき人物から送られる押し花、残された日記の暗号らしき名前と数字、これらから一気に未解明の連続殺人事件へと発展する様相は見ものだ。これに聖書、ナチス、ユダヤ人虐殺、性的虐待、父殺しといったおどろおどろしい要素が加わるのだから重厚さは増す。性的虐待と父殺しはリスベットとリンクする。女を嫌悪する犯人を男を嫌悪する女探偵が暴くという構図の妙もある。リスベットは交通転落事故の犯人を見殺しにする。そして最後のサプライズ。少女は生きていた!これで終わりではない。リスベットはミカエルを嵌めた悪徳実業家の悪事の証拠を突き止め、ミカエルの無実をはらし、隠し口座から大金を引き出すことに成功する。ダークヒロインとしての新鮮味。彼女は人を愛せなかったが、ミカエルとは心を通わせ、ベットを共にし、音信不通だった母との和解も果たした。彼女の従来の探偵役からかけ離れたぶっ飛びぶりと成長ぶりも見所。細部まで理詰めで練られた脚本には好感がもてた。だが不満もある。ミカエルは部屋を荒らされたり、ライフルで命を狙われたりしているのに、安閑としすぎている。緊張感が足りないのだ。真犯人は直球すぎる。もっとミス・ディレクションやレッド・へリングを配すれば老練なミステリー・ファンからも大喝采を受けただろう。それと聖書、ナチスは古臭くないか?いやしくも題名はミレニアムだ。少女は連続殺人事件の真相を知りながら何故放置しておいたのか?警察に匿名投書するくらいはできたはずである。毎年生花が贈られてきて、それが犯人からのものと思うか?リベリットの貧相なヌードは不要。[DVD(字幕)] 7点(2012-12-19 23:40:13)

13.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 登場人物中、最も頭脳明晰なのはドワーフ(小男)だろう。電波受信装置、遠隔操作装置、防御システムなど、新発明ふんだんの青酸ガス発生兵器を完成させている。シャクナゲ毒の擬死薬や銅と反応するしびれ薬、石を繋ぎ止めておけるが雨で流れる蜜の接着剤、無味無臭で発火性の強い粉末、青酸ガスの解毒剤(本当にあったら大発明)なども作っている。まさに天才。対してホームズは、拳銃の消音装置は失敗。首吊実験は自力で降りれない。せいぜい或音階で蝿が回転飛行する習性のを発見した程度。その蝿を捕まえるのに6時間もかけている。小男なら腐臭を利用するだろう。大人と子供で比較にならない。こんなに利用価値の高い男を殺してしまうブラック・ウッド卿は愚者です。◆19世紀のロンドンを再現したセットやCGは見る価値がある。ハイスピード撮影された連続爆破場面が最大のスペクタクルだった。アイリーンの立ち位置が秀抜。ホームズの元恋人で盗人、男勝りでやたらナイフや拳銃を取り出す、敵であり、味方であり、ある人物に恐喝されている。演出を次第でもっと活きた。裸で手錠はかんべん。ホームズはやんちゃで、ワトソンと別れたくない甘えん坊。二人は共依存。探偵ものだが、謎解きや推理要素は希薄。例えば絞首刑で死なないトリックは、フックと隠しベルトとかの小学生レベル。服を調べれば判ることで、関係者全員を買収しないかぎり無理。アクション重視の娯楽映画だ。そのアクションだが、屠殺場の機械でアイリーンが屠殺されそうになり悪戦苦闘するが、電源を切ることを思いつかない。大男と対決する造船所の場面が最も大仰で華やかなのに、タワー・ブリッジでの最終対決はスケール・ダウン。前半あれだけ強調されていた、ホームズの相手の行動を予測して打ち負かす戦闘能力が中盤後半失われるなど、ちぐはぐだ。さりとてテンポが早く映像もスタイリッシュなので退屈はしない。【気になった点】①メアリーの事を知っていた女手相見はホームズの仕込み?②ブラックウッド卿が父トマス卿から指輪を抜き取った理由。家督継承の意味?③ホームズが医者に化けてワトソンを治療する意味。医療技術あるの?変装がメアリーに見破られてる!④自分の血を垂らしてまで、悪魔の儀式を再現する理由。⑤ホームズがワトソンに贈った婚約指輪のダイヤは、アイリーンから奪ったブレスレット?⑥警察所の遺体を自宅アパートに運んで調べる?論外。[DVD(字幕)] 7点(2012-09-22 17:01:33)

14.  メトロポリス(1926) 《ネタバレ》 短縮版なので不明な点が多い。天才博士は実験の失敗が原因か、片腕が義手。人間のような姿で、人間のように働くロボットの制作をめざしているようだ。自らの保守のためには殺人も厭わない性格。一種のマッド・サイエンティストだ。資金は支配者から出ているのだろうか。支配者が博士に労働者弾圧の口実をつくるためマリアに似せたアンドロイドを使って労働者を扇動するように依頼する。資料によれば支配者と博士は元恋敵だそうだ。博士は依頼を受けながら、支配者への恋の恨みからか、アンドロイドに労働者を扇動して機械を破壊するように命じる。単純な労働者達は機械を壊し、自らの地下都市を水没させる。子供達が死んだことを知って怒りに駆り立てられた労働者達はマリアを火刑にする。火刑に処せられたマリアはその正体を現す。死んだと思った子供達は支配者の息子とマリアに助けられていた。息子を仲介として支配者と労働者代表が握手をする。◆脚本は単純で見るべきところはない。冷静に考えてみれば、支配者は労働者達に危険思想を吹き込むマリアを拘束すればよかっただけの話。それなのに解決を博士に委ね、博士が暴走した結果、雨降って地固まるという帰結に至った次第。もしこの映画に斬新なデザインのアンドロイドが登場しなければ、忘れられた存在になっていた可能性がある。あの美しいアンドロイドの造詣があればこそ、都市デザインや機械デザインも生きてくるというもの。ところで労働者達の仕事内容がよくわからないですね。ランプの灯ったところに大きな針を動かすことに何の意味があるのか?他の人も機械の前に立ってうろうろしているだけの軽作業。自動管理、自動運転という観念がなかったのでしょう。アンドロイド以外は先見の明が無く、SFとしては失格です。ともかくも労働者達は疲れ切っている。共産主義的考えでいえば、支配者に搾取されているわけです。マリアは預言者。仲介者は息子。ところで息子の仲介の動機は、労働者達に同情したというより、マリアに恋したことが大きかったように見受けられます。階級闘争も恋の力で解決というマルクスもびっくりのオチ。白眉のアンドロイドが数分しか登場しないのが惜しい。大衆から逃げ回り捕まる姿は惨め。◆あと見所はアンドロイドが踊って人間達を魅了する場面、大勢のエクストラを用いた場面でしょうか。洪水の場面は迫力がなく、不出来です。[地上波(字幕)] 7点(2011-10-28 12:18:11)

15.  ザ・アビス 首都沈没<TVM> 《ネタバレ》 エネルギー会社が廃坑の地下坑道を埋めなかったので、湖の水が一夜にして消失、道路や井戸が陥没するなどの事故が続いた。このことに真っ先に気づいた女(地質学者)は会社に直談判するが一笑される。女の計算によると24時間後に病院が陥没する。消防署の理解は得られない。仕方なく爆発によって空洞を埋め、陥没を阻止しようと女と女の父、女の元夫(爆発のプロ)を含む仲間数人が地下に潜ります。 そこでの作業で起こる様々な冒険、トラブルがメイン。いきなり落盤事故発生、殺人事件発生、疑心暗鬼での作業継続、空気が希薄になり混沌、仲間の墜落死、数年前の兄の坑道爆発事故死の真実、新たな大空洞発見、陥没するのは病院ではなくサッカースタジアム、ダイナマイト喪失、メタンガス発生、裏切り者の反乱など矢継ぎ早に事が起ります。これに女と元夫との和解、兄が死んだ坑道事故の真実発見、女の家族が観戦しているサッカー場の陥没危機などのサイドストーリーが同時進行する。ディザスター・パニックものとしては弱い、CGも普通レベル、無名の俳優陣、美人でないヒロイン、悪役の描き方がなおざり、などの減点ポイントもありますが、地中冒険ものとして脚本は良く練られています。◆詰め込み過ぎというか、時間の制約で展開が大急ぎなのが難。女が原因を探り当てるのが早すぎます。いきなり会社に潜り込んで必要書類を入手してますから。しかもそこで元夫と再会するという合理的展開。地上サポートなしで地下に潜る。いわばジェット・コースター・ムービーで飽きさせません。ディザスター場面が少ないとか、陥没する時間の計算はどうやってしたんだとか、先ずマスコミに知らせろとか、スタジアムで女の甥だけが陥没事故で死にそうになるとか、この甥は井戸でも死にそうになったとか、ツッコミどころはあります。脚本の最大の手柄は殺人事件を発生させ、サスペンス要素を盛り込んだところ。新しい発想ですね。それが兄の死の事故の原因にもつながってる。さらにそれが女と元夫の別れの遠因にもなっていたところが憎いです。真相が解明したところで二人は元の鞘に。恋愛要素も盛り込んだいますね。ある男の元妻が別の男の現妻という関係もあります。低予算で良く頑張っています。観て損はありません。そういえば開始早々若い女が脱ぐというサービスカットがありました。抜け目ない監督なのでしょうね。[DVD(字幕)] 7点(2011-09-18 17:37:16)《改行有》

16.  将軍の娘/エリザベス・キャンベル 《ネタバレ》 冒頭の謎の提示は見事。次期大統領を目指す大物将軍は退役間近。そんな折将軍の娘大尉が強姦され殺される事件が発生。将軍は犯罪捜査官にFBIが来る三日以内に犯人を挙げろと命令。いかにも怪しそうな目で威圧する副官。大きな陰謀が隠されているに違いないと思わせる演出。人間関係も込み入っていて、捜査官と娘、捜査官と将軍に接点がある。そして捜査官とその相棒が元恋人。◆事件の真相は誰にも想像できないものだった。なんと強姦は自作自演。理由はこうだ。士官学校に入った将軍の娘は優秀すぎるが故に男の嫉妬を買い、演習中に暴行、輪姦された。学校と父親は、学校の名誉と娘の将来のために事件をもみ消した。娘は父親に見放されたと思い、父親を憎んだ。そして精神を病み復讐を企てる。その方法は部隊中の男と寝て醜聞をまき散らすというもの。将軍は彼女に最後通牒をつきつけた。軍隊を辞めるか、治療を受けるか。娘は夜中に父親を呼び出して輪姦の場面を再現。「もみ消し」を取り消すことを迫った。だが将軍は立ち去った。そこへケント大佐が登場。彼は娘に片思いしていたので後をつけてきたのだ。娘は誰も愛せなかったので冷淡だった。罵倒された大佐は娘を絞殺。こうして奇妙な殺人現場が出来上がった。そこへ副官が登場。将軍が犯人と思い込み、事件の隠ぺいを図る。捜査が真相に近づくと、大佐は情報を握っている娘の上官ムーアを自殺に見せかけて殺した。◆唖然、茫然、驚愕。そりゃあないでしょうの連続。娘はどうして退学しなかったのか。仲間から暴行・輪姦され、性病を移され、子供を堕胎し、鬱病にかかった。それで学校にいられるわけがない。それに士官学校のエリートが将軍の娘を輪姦するというリスクを負うだろうか。発覚すれば身の破滅は間違いない。何より娘の反逆ぶりが度を越している。SM趣味、誰とでも寝る、強姦の再現。娘が精神に異常をきたしているとしても、捜査官に対して親切だったし、非常に知的であるという矛盾がある。娘は父にただ誤って欲しかったのか。犯人の行動も不審。誰とでも寝る女に「彼女に全てを捧げるつもりだった」などと片思いするだろうか?最後の行動も意味不明。捜査官を呼び出して、地雷があると警告し、自ら地雷を踏んで自殺。◆将軍が捜査官に捜査妨害で起訴されたのは痛快。殺人を示唆する血染めの猫の演出は見事。ところで娘の強姦現場再現を手伝ったのは誰?一人じゃ無理でしょ。[DVD(字幕)] 7点(2011-01-18 05:51:19)

17.  二重誘拐 《ネタバレ》 妻の行動がいちいち癇に障る。夫が誘拐たのにリフレッシュと称してのんきにプールで泳ぎ、孫の誕生日会を開く。夫の元愛人宅を訪れ、「夫はニューヨークが嫌い」「ファックならホテルですればいいのに」と嫌味を言い放つ。涙ひとつ見せない鉄面皮。夫の浮気の原因が分かる気がする。事件後、被害者遺族の家庭はむちゃくちゃになるが、この家庭は何事もなかったかのように暮らし始めるのじゃないか。夫妻が愛し合っていたとは思えない。それに犯人の車のナンバーくらいは覚えておけよな。 ◆犯人と誘拐された夫の登山が一日の出来事なのに、自宅では何日も経つ。少しくらいの時間軸の変更はいいけどこれはやり過ぎ。誘拐が新聞報道までされているのに、犯人が「FBIに知らせるな」は無いでしょう。犯人がぐずぐずしているから誘拐公開にまで踏み切ったわけだよね。 ◆犯人と夫の会話をメインに据えたいのが分るが、土台無理な事。誘拐という異常事態で、本当のことを言うとは限らない。夫は犯人の心を何とか開かせようとしているだけ。妙に落ち着いている。犯人もだらだらしゃべるが、無駄口に聞こえる。自分の過去、妻の事、高跳びの計画、そんなことを話して何になる?殺す予定だったのだからしゃべったのだろうが、本心とは限らず、こんなダメ犯人はいやだ。 ◆夫は成功者でプール付の家を持ち、家庭は円満、二人の子供は既に独立。犯人は貧困層、失業中で、婿養子。犯人は夫を個人的に知っており、誘拐を企み、実行。しかし夫から貧乏だったが皆から尊敬されたという父親の話を聞き、心がぐらつく。犯人は夫を殺害、金品奪取に成功したが、良心の呵責に苛まれ、実質的な自首。両者の違いを際立たせておいて、全く別の世界の住人のように見えても、実も同じ人間として心を通じ合わせることが出来る、という事がテーマなのだろう。完全に失敗である。妻は可愛くないし、夫もさほどの成功者とも見えない。何より犯人の家庭を僅かしか描いてないのが敗因。さほど貧乏には見えない。犯人の妻も登場せず、犯人がどれだけ追い詰められていたのか伝わらない。会話だけで共感は無理。 ◆「二重誘拐」の邦題は、誇大広告、違法広告の部類だろう。裁判を起こせば勝つと思うよ。どうせ誘拐するなら嘘邦題をつけてお金もうけをしている悪い奴らをターゲットにしてほしい。原題は犯人が犯罪を”清算”したという意味 ◆ダイヤと死体はどうなったんだ?[DVD(字幕)] 3点(2010-12-26 11:03:06)(良:1票) 《改行有》

18.  スモーク(1995) 《ネタバレ》 生きるということはタフなこと。若い頃は無茶もするし、心に傷を負い、大切なものを失うこともある。片目や片腕は人生で喪失したものの象徴だ。四千枚もの街角の定点写真は時間の象徴であり、あっという間に過ぎていったと感じられるものだが、じっくりと見返せば見えてくるものがある。人生をそんなに急がないで、時には煙草一服くゆらしながら、休憩してゆきなさい、という趣旨の映画。◆完璧な人生など無い。作家は最愛の妻を失っているし、黒人少年には両親がいないし、煙草屋は恋人と別れた心の傷を持つ。正直だけで生きられたら良いが、実際の人生はそうはいかず、時には嘘をついて相手を煙に巻くことも必要だ。嘘にも種類がある。自分の利益のために相手を騙す嘘、世間を乗り切るための処世術としての嘘、相手を思いやっての優しい嘘。害にもなれば薬にもなる。煙草も似たようなものだろうか。◆作家は生きる気力を失くしていたが、少年との関わり合いで世間との関わりを持つようになり、煙草屋の体験談を元に、作家として復帰する。少年は嘘の名人だったが、作家と出会い、作家に父のような感情を持ち、まじめに働くようになり、遂には実父との再会を果たす。煙草屋は、元恋人と再会し、実の?娘と会い、過去のわだかまりを捨てて、お金を渡す。が、小説のようにうまく収まったわけではない。作家の妻の喪失感は消えることは無いだろうし、少年と実父との関係もぎくしゃくしたままで、煙草屋の娘は悲惨な運命が待っていることが予想される。それでも一歩一歩、毎日を刻んでゆかなければならない。お互いに心を開けば、街角の交差点にように人生が交差し、物語が生まれる。素晴らしいことだ。◆最後のモノクロ場面は、作家の書いたクリスマス・ストーリーの映像化であり、回顧場面では無い。作家は煙草屋の語りがあまりに出来過ぎていたので、嘘と断じたようだが、真相は不明だ。煙草屋の「秘密を分かち合えないで友達とは言えない」の科白から推せば、真実と思われるが、何が真実かは重要では無い。真実と嘘の間には少しの違いしか無い。人生は重いが、同時に煙草の煙のように軽い。長く生きているとそういうことも分ってくる。そういうことをしみじみと感じさせてくれる大人の映画である。◆全員が煙草を吸うのは演出過多。自動車工が高価な葉巻を吸うだろうか?17歳に煙草を吸わせるのも疑問。娘に救いが無さすぎる。[DVD(字幕)] 8点(2010-12-10 18:45:13)

19.  ウォンテッド(2008) 《ネタバレ》 ◆一番凄いと思ったのは、ネズミを千匹も捕まえたことかな。実際やってみると大変だと思うよ。それに一匹、一匹に時限爆弾を仕掛けるのだから。 ◆一番不可解なのは、ウェズリーの父親クロスだ。息子を守るのなら、電話するとか、手紙出すとかしなさい。金銭的援助くらいしてやってよかったと思うよ。それに何故息子を轢き殺そうとしたり、実際に腕を撃ったりしたのか。呼び出したいのなら電話するか、弾丸を届ければよい。 ◆一番不思議なのは、貯金の残高が増えたり、減ったりするところ。 ◆一番驚いたのは、親爺の協力者(弾丸製作者)が、川に落ちたウェズリーを救出したところ。いったいどうやったらそんなことが出来たのか?病院に運ばれたのを連れ帰ったのか。 ◆一番がっかりしたのは、フォックス(アンジー)の360度回転同士撃ち+自殺弾。一人一人との対決が見どころになった筈なのに残念。 ◆一番知りたいのは、1000年も続く「運命の機織り機」の正体の謎。暗殺すべき人物の名前が暗号の二進法で織られて出てくるらしいが、同姓同名がいたらどうなるの?「Death Note」じゃないけど、名前を知られていなければセーフ? ◆一番疑問なのは、飛び杼を掴んだり、蝿の羽を撃ちぬいたり、弾丸を曲げることは訓練で可能としても、超ジャンプや超カー・アクションはどうやってできるようになったのかということ。 ◆一番ひっかかるのは、スローンはクロスを殺すのに息子を暗殺者に仕立てるという手の込んだやり方をし事た。普通に考えれば、息子を人質にとり、おびきよせればよかったのだ。 ◆一番バカバカしいと思ったのは、ウェズリー最初の暗殺方法。わざわざ走っている電車の屋根の上から会議室を狙うなんて。相手に近づいて撃てばいいじゃないか。 ◆一番欲しいと思ったのは、あのすぐに傷が回復する風呂。特許で食っていける。 ◆一番哀れなのは、ウェズリーに勘違いで射殺されたネズミ爆弾男。「流れ弾にやられた」なんてウェズリーを庇っている。[DVD(字幕)] 5点(2010-10-13 05:53:22)《改行有》

20.  ワルキューレ 《ネタバレ》 ノルマンディー上陸作戦の一月後、敗戦濃厚で、時期は熟していた。あれだけの人数が揃っているので、ヒットラー暗殺だけなら比較的容易に達成できたはず。しかし目的がクーデターであり、短時間による政府と軍の完全掌握を目指していたので、ヒムラーやゲッペルスなども同時に暗殺などと余計なことを考えて何度か機会を逃している。実行犯の大佐が新政府の要職に予定されていたため、爆発物セット後、すぐに逃げ出したが、これが最大の失敗。何をおいても、総統の生死を確認すべきだった。確認がないままクーデターを実行するのはお粗末。大佐は障害者なので、ボディチェックはほとんど受けなかった。いざとなれば総統もろとも自爆する覚悟があれば成功しただろう。カリスマ総統を倒しておけば後をヒムラーが後を継ごうが倒すのは容易である。二段構えの周到さがほしい。暗殺が失敗することは既知だが、サスペンス、緊迫感は十分伝わってきた。そこは評価できる。だが大佐の人間性の描き方が希薄だ。反ナチ思想を持つ経緯を描くべき。戦争の悲惨さも伝わらない。最後は家族の安否を心配するだけの弱い男になってしまっている。彼の兄も連座して処刑されたが描かれていない。夫人と五人の子供はどうやって生き延びたのか?他に関係者6~700人が粛清され、ロンメル元帥も自殺。これらの人の死に大佐たちは責任があるだろう。「計画は失敗したが、彼らの目的は戦争をやめることであり、命をかけた彼らは英雄である」という単純な考えはできないだろう。後半、総統が姿を見せないのは、サスペンスを重視した脚本構成の所為だが、史実を描きたいのなら、総統側の様子も見せるべきた。一方だけを描いても真実は伝わらない。総統のカリスマ性も対等に描くべきだろう。「史上最大の作戦」のように敵味方、両側を描けば、より見ごたえのある映画になった。大佐の人間ドラマをより深めれば「シンドラーのリスト」のような深みが出た。「暗殺=テロ」なので、現代人にとって彼らの行動を無条件に賛美することはできない。歴史の正当な評価は時代と共に変わる。そんなことを考えされられた。[DVD(字幕)] 6点(2010-05-09 23:17:34)(良:2票)

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