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プロフィール |
コメント数 |
195 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
誤読御免 |
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1. メランコリア
《ネタバレ》 冒頭に、堂々と結末が示されているにも拘わらず人間ならば誰もか抱いてしまう一縷の希望という物が、針金のワッカを覗き込むワンカットで見事に打ち砕かれてしまう瞬間が、さりげなく凄いです。 パニックに陥る街の様子なんて一切描かずに、細かな現象の積み重ねで想像させてしまう演出力には感動します。 永年仕えてきたであろう執事のおじさんが突然来なくなってしまう、なんていうのも人々の救いようのない事象を強く暗示していますし、1部と2部で描かれた相反する『絶望』と『調和』が、同じ点に向かって収束してゆくという構成も、とても思惑的です。 これがハッピーエンドと言うならば、こんなシニカルなハッピーエンドは見たことありません。 最も静かで、芸術的な気概に満ちたディザスタームービー。 もう四回見ました。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-09-07 18:00:37)(良:1票)
2. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 徐々に、しかも確実に視力が失われていく恐怖は想像を絶するものがあるだろう。 一人息子もまた、同じ運命をたどるとなれば、もう現実から逃げ出したくなってしまうのは良く分かる。 セルマは、そんな人生に対する不安や、息子ジーンに対する責任、果ては自分の気持ちまでも、貯めたお金とともにドロップの缶に封じ込めてしまったのだろう。 そしてその缶にしがみつくことで自分を納得させながら、自分だけの夢想の世界に入ってしまったのかもしれない。 彼女は「ミュージカルの最後の歌は聴きたくない」と言うが、これは「物事を締めくくらずに逃げる」という彼女の精神構造を表していて、実際作中でも、「ビルのついた嘘」から、「キャッシーの友情」から、「ジーンに対して親として生き抜く責任」すら放棄して逃げている。 どこかで逃げずに立ち止まっていれば、何かが変わっていたかもしれないのに・・・。 まだ終わりじゃないと言う結末も逃避的。 それが結果、そこで全て終わりなのだ。 セルマという女性の愚直な純粋さと現実とのずれが、取り戻すことの出来ない大きな歪みとなって重く心に突き刺さった。 繊細な彼女の精神世界には多くの感情を喚起され、揺さぶられた。 辛く苦しい作品だが、傑作だと思う。[DVD(字幕)] 9点(2006-06-17 03:05:54)(良:1票)
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