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プロフィール
コメント数 446
性別 男性
ホームページ http://onomichi.exblog.jp/
年齢 56歳
自己紹介 作品を観ることは個人的な体験ですが、それをレビューし、文章にすることには普遍さを求めようと思っています。但し、作品を悪し様にすることはしません。作品に対しては、その恣意性の中から多様性を汲み取るようにし、常に中立であり、素直でありたいと思っています。

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1.  私の少女 《ネタバレ》 ペ・ドゥナの姿。確かにずっと観ていられる。冒頭、道端の少女をじっと見つめる。夜、テーブルで一人酒を飲む。私たちはペ・ドゥナの姿、その表情を追いながら、彼女の中の何かを観ている。 彼女はソウルのエリート警視であったが、普通とは違う性的嗜好を問題視され、未来を閉ざされるように、田舎の警察署に左遷される。自らの嗜好を悪と見なされ、それを抑圧するしかない鬱屈した感情の中で生きている。毎晩、眠りにつく為に酒を飲む。 そこに現れた少女ドヒ(キム・セロン)。少女は家族や同級生から虐待され、現実逃避から妄想的な振る舞いを見せる。彼女は少女を保護する。少女に対する母性に似た感情に身を任せることで、自らの傷を癒す。それは優しさに餓えていた少女との共依存の関係となる。 その関係も途中で破綻しバラバラとなりかけるが、最後には収まる。但し、その場所は、既成の物語と明らかに違うのである。 「私の少女」とはどういうことだろうか?(この映画の原題は「도희야」(ドヒ)、英語題"A Girl at My Door"、邦題「私の少女」。珍しく邦題が最も作品の意図を象徴していると感じる) 現代人は、自らの人生を回収し安心できるような既成の物語を失っており、伝統的な精神分析で解釈し癒すことができない、つまり物語によって内面化され得ない「新しい傷」を負っている。 ペ・ドゥナ演じる警視も「新しい傷」を負って田舎の地に赴任してきた人物である。「新しい傷」を克服するのは「新しい物語」しかない。それが「私の少女という物語」であり、物語の可能性という、この映画の真の主題なのだと私は思っている。[インターネット(字幕)] 9点(2025-06-08 21:23:12)《改行有》

2.  チェイサー (2008) 《ネタバレ》 韓国ノワール気鋭の監督にして、今や韓国映画の巨匠の一人。ナ・ホンジン。彼はこの17年間に3本しか長編映画を撮っていない。『チェイサー』『哀しき獣』『哭声/コクソン』。どれも韓国ノワールの歴史的な作品と言える。 そして『チェイサー』。キム・ユンソク、ハ・ジョンウ。救いがたい残虐さ。どうしようもない悪。確かにそうだろう。それでも私は彼らの人間を観る。一人は他人を徹底的に毀損し、もう一人はそれを防ごうとする。まだ若い彼らの疾走、無意味であることの拒否、その生への必死さを感じた。それが映画になる。[インターネット(字幕)] 9点(2025-06-08 21:22:22)《改行有》

3.  悪魔を見た 《ネタバレ》 韓国ノワールの中でも最悪の胸クソ映画と言われる。そう言われると観たくなる。で、観て少し後悔する。 チェ・ミンシクに尽きる。『親切なクムジャさん』もそうだったけど、こういう見境なく人を殺し、人体を切り刻む、猟奇的殺人者を演じさせたら右に出るもの無し。以前、『ノーカントリー』の連続殺人鬼ハビエル・バルデムを「絶対的な悪」と書いた。本作のチェ・ミンシクはある意味で「純粋な悪」と捉えることが出来る。 絶対的な悪はその出自が人間(の罪)ながら、その人間に罰を与える為に共時的に現れる。その概念は神学的といえる。 純粋な悪は人間そのもの。人間が人間を毀損する、その根源的な欲求が肥大して表出する。個的故に世の中に不規則に現れる。 そういうモノとして映画を観れば、自分にはこんな残虐な欲求はないぞ、しぶといチェ・ミンシクをはやくどうにかしてくれ、と思いつつ、チェ・ミンシクを徹底的に痛めつけるイ・ビョンホンも大した悪なのだ。そう煩悶しながら、最後まで観た。そこに悪魔を見る。 これも韓国ノワールの「抗しがたい魅惑」と言える。悪に飲み込まれていくような、ただ悪が悪により救われていくかのような、そういう抗しがたい快感、、、なのかもしれない。[インターネット(字幕)] 8点(2025-06-08 21:21:32)《改行有》

4.  ハント(2022) 《ネタバレ》 イ・ジョンジェとチョン・ウソンの直接対決。1980年代の韓国、チョン・ドゥファン(全斗煥)政権下の国家安全企画部における海外部と国内部の争いを描く。そこに組織内の北のスパイ探しと大統領暗殺計画が絡む。韓国の現代史を紐解くというよりは、アクション・ミステリーがメインの純然たるエンターテイメント作品と言っていいだろう。 この映画は、イ・ジョンジェが脚本・監督・主演であり、実質的に彼の映画である。イ・ジョンジェは最近、Netflixで大ヒットしたイカゲームで少しだらしない中年男の役が意外としっくりきたように割りと演技の幅が広く、色んな役をこなせる。殺陣も巧く、アクションも切れる。ふざけた役も落ち着いた役も出来る。それに対して、チョン・ウソンは何をやってもチョン・ウソン。日本で言えば、東映時代の中村錦之助と高倉健に比するという感じか。 この映画の最後で、チョン・ウソンが最大の敵を追い詰めるが、『ソウルの春』と同じく、あと一歩のところで取り逃がす。チョン・ウソンはいつもそういう役回りなのかな。映画の中でよく死んじゃうし。[インターネット(字幕)] 8点(2025-06-08 21:20:25)《改行有》

5.  新しき世界 《ネタバレ》 本作は韓国ノワールの金字塔と言われる。チェ・ミンシク、イ・ジョンジェ、ファン・ジョンミン。役者が揃う。この3ショット、格好良すぎないか。監督は『悪魔を見た』の脚本家、パク・フンジョン。 マフィアへの潜入捜査ということでは、韓国版『インファナル・アフェア』或いは『ディパーテッド』なのだけど、その展開は全く違ってくる。それが韓国ノワールの世界、人間の悪=ダークサイドをめぐる物語となる。 警察とマフィアに出自を持ちながら、イ・ジョンジェ=イ・ジャソンとファン・ジョンミン=チョン・チョンは、血を分けた兄弟とも言うべき間柄。その微妙な関係性が後半に崩れていくことで、イ・ジョンジェの悪が表出してくる。人間が自らの悪に引き込まれる瞬間を描くことこそがこの映画の主題だろう。よって、主役はイ・ジョンジェなのであるが、ファン・ジョンミン演じる明るい悪のキャラクターの魅力が作品をさらに引き上げている。陰と陽。『新しき世界』は、韓国を代表する役者に二人を押し上げたアイコン的な作品とも言える。[DVD(字幕)] 10点(2025-06-08 21:19:29)《改行有》

6.  ただ悪より救いたまえ 《ネタバレ》 韓国ノワールの中でも、暴力描写が多いにも関わらず、とてもスタリッシュな印象を残す。それは主演の二人がとにかく格好良いからだろう。 ファン・ジョンミンとイ・ジョンジェ。『新しき世界』の義兄弟チョン・チョンとイ・ジャソンが因縁の殺し屋同士として対峙する。今回は性格も逆転。殺し屋ながら実直なファン・ジョンミンに対して、狂気と怪しさ全開のイ・ジョンジェ。 バンコクを舞台にした二人の肉弾戦。その迫力に戦慄する。肌が粟立ち、その恐怖にゾクゾクすると同時に対峙し決闘する二人の立ち姿に美しさを感じてしまう。戦慄、且つ美しい。 ここ数年、韓国ノワールを見続けているが、この作品には何とも言い難い「抗しがたい魅惑」がある。それは自分を縛っていたものがふわっと解け、悪に飲み込まれていくような、ただ悪が悪により救われていくかのような、そういう抗しがたい快感に似ている。但し、実際には、ドラァグクイーン、パク・ジョンミンの献身的な愛情によって引き戻され、救われる。商業映画としてはそれが正しい。[インターネット(字幕)] 10点(2025-06-08 21:18:24)《改行有》

7.  アシュラ(2016) 《ネタバレ》 登場人物全て悪。韓国版アウトレイジと言えば『アシュラ』。悪徳市長ファン・ジョンミンと汚職刑事チョン・ウソンの対決。そこに嫌らしさ満載の検事クァク・ドウォンと後輩刑事チュ・ジフン。ノワール常連チョン・マンシクも絡みますよ。 とにかくヒリヒリとした展開。人間の根源的な暴力への欲求を感じさせる映画。痛みすら超えて、一気に発散される暴力衝動、そのスピード感がすごい。ラストの壮絶さ、その地獄のような光景には唖然とするしかない。ここが韓国ノワール、バイオレンス描写のピーク。ちょっとやり過ぎかも。[インターネット(字幕)] 8点(2025-06-08 21:16:17)《改行有》

8.  スティール・レイン 《ネタバレ》 『鋼鉄の雨』に続くシリーズ第2弾。『鋼鉄の雨2:首脳会談(スティール・レイン)』は、ヤン・ウソクが前作同様に脚本・監督。主演も同じく、チョン・ウソン。そして、クァク・ドウォン。クァク・ドウォン、今回は得意の敵役をいつものように憎々しく演じている。 前回は北朝鮮の超人的元工作員だったチョン・ウソンは今回、韓国大統領役。よってアクションは無しだけど、政治家役もハマっている。韓国の良心とも言うべき良い人ぶりがその出で立ちと振る舞いに溢れている。こんな大統領がいたらいいだろうなと。現実味がないところもいい。 『鋼鉄の雨2:首脳会談(スティール・レイン)』は、2020年に韓国で公開され、470万人の観客動員を記録して、それなりにヒットした。日本でも公開したものの、当時も今もあまり知られていない。『鋼鉄の雨』の方は、2017年に韓国での公開後、すぐにNetflixで世界配信されていて、こちらの方は日本でもよく知られている。 北朝鮮の軍事クーデターに端を発するプロットの『鋼鉄の雨』1と2、チョン・ウソンの役柄は正反対ながら、どちらも同じように面白かった。そして、この映画が日本で流行らないのはよく分かる。それは日本が完全に敵役だから。竹島(独島)が舞台ともなっていて、その位置付けは当然ながら韓国寄り。日本人からすれば反日映画とも言える。そのプロットだけで映画を観ることが出来ない人達も多くいるだろう。私は全く気にならないが。 そもそも、不倫疑惑のある役者が出ていると、もう映画の内容が入ってこないとか、勉強が出来ない小学生の言い訳のようなことを言う人達がいるけど、それってあまりに勿体無い話なのではないか? この映画を反日だから観ないと言うのも同じく、映画を観るスタンスとしてあまりにも視野狭窄に私には思える。本来、映画芸術は、共感ではなく、違和感にこそ、その意義がある。世界と私の違和の気付き。そういう気付きのあるドラマこそ見応えがある。私=世界の共感頼みの既成の物語は、何も心に刺さらず、ただ通り過ぎていくだけでしかない。 本作のストーリーは前作同様にウェブ漫画原作の「何でもあり」故に、想像を超えて、そのトンデモ展開を結構楽しめた。米、韓国、北朝鮮のトップが北朝鮮内の軍事クーデターによって、原子力潜水艦の一つの部屋の中に監禁されるという。殆んどコントのような展開なのだけど、これがなかなか面白かった。トランプを模した米大統領のハチャメチャぶり。ユ・ヨンソク演じる格好良くて、英語ペラペラの通訳を兼ねる北朝鮮最高指導者。あり得ない展開と夢のようなラストシーン。映画はユートピアの表現でもあり、こういうのも悪くないと思える。[インターネット(字幕)] 8点(2025-06-08 21:14:59)《改行有》

9.  鋼鉄の雨 《ネタバレ》 『ソウルの春』『アシュラ』のチョン・ウソン主演。『鋼鉄の雨』(韓国公開2017年)は2018年にNetflixで配給されている。彼は私のお気に入りの俳優の一人なので出演している映画は観たくなる。 北朝鮮での軍事クーデター、総書記への銃撃、重体、韓国への逃亡、核戦争危機。その背景の現実味は薄いが、それがどのように起こり、どのように終結するか、ウェブ漫画原作の「何でもあり」故に、想像を超えて、そのトンデモ展開を結構楽しめた。本作は、監督・脚本のヤン・ウソクが原作漫画の著者で、殆んど彼の作品といってもいいのかも。(次の『鋼鉄の雨2』も同じく) チョン・ウソンは北朝鮮の元工作員で、イーサン・ハントばりの高い戦闘能力と状況判断力で、超人的な活躍をする。エージェントとしての精悍な出で立ちと振る舞いには全く違和感がなく、ひたすら格好良い。韓国側の行政官でバディとなるクァク・ドウォンも今回は珍しい正義漢の役柄を巧く演じている。 国家規模の展開ながら、政治的というより、善悪のハッキリとしたエンターテイメントに徹したサスペンス・アクション映画といえる。今や韓国の良心とも言うべきチョン・ウソンをじっくりと堪能できる良作。それに尽きるかな。[インターネット(字幕)] 8点(2025-06-08 21:14:06)《改行有》

10.  KCIA 南山の部長たち 《ネタバレ》 パク・チョンヒは、16年間の長きに渡り、韓国の大統領として軍事政権を掌握し、政敵を排除し続けてきた。信頼できる人間だけを側近として採用しながら、彼らを常に競わせ、緊張感を強いる。他人を信用せず、常に孤独と共にある。そんな冷徹且つ熱情的な振る舞い、孤独ゆえに疲弊した独裁者の様子をイ・ソンミンが見事に演じている。 暗殺者となるKCIA部長のキム・ギュピョンをイ・ビョンホンが演じる。キム・ギュピョンは、国内外の政治的ギャップに苛まれながら、大統領の側近として献身的に工作活動を指揮してきたが、警護室長との権力争いで水を開けられ、大統領の信頼を徐々に失っていくことになる。知りすぎた人間は排除されなければならない。因果応報というべきか、自分が消されるのではないかという思いに囚われることで、最後には大統領暗殺を計画するまで至る。 キム部長は、ある意味で追い詰められた人間の疑心暗鬼による極端な行動、その滑稽さを体現した役柄となっている。スタリッシュな外見で格好つけているけど、実は人間味があって少し格好悪い。その様は、他の作品でも観られる、イ・ビョンホンの特長であり、魅力のようにも思える。 イ・ソンミンとイ・ビョンホンの対決。私たちは結末を知っている。しかし、結末を想像できるがゆえに、その経緯、そのシーンに対して最大級の緊張感を味わうことが出来る。 そして、この物語は『ソウルの春』にそのまま繋がることになる。[インターネット(字幕)] 9点(2025-06-08 21:12:34)《改行有》

11.  別れる決心 《ネタバレ》 常に場面の意味、セリフ、色彩、アイテムを記憶に留めながら観ないと物語を理解し損ねる。観ることへの緊張感を自律的に強いる映画。観終わってからもラストの意味を暫く反芻せざるを得ない。その意味について思いを巡らし、それを確かめる為にもう一度観たくなる。誰でも容易に理解出来るエンタメ映画ではなく、様々な伏線回収とその解釈を要する難解な文芸ミステリー作品、、、でもないように思える。(敢えて一般的に語られるイメージを記してみた) この映画は、純粋に恋愛の本質を描こうとしている。ストーリーの中で彼らが何時、どの様にそれに囚われたかということ。恋愛感情が生まれ、気が付けばそれを中心に様々な状況が振り回される。そこにのみ思いを巡らし、彼らの目と表情と声の響き、手と脚の動きに注目していればそれでよいとも思える。そうすれば、何のことはない、とてもシンプルに恋愛を描いた物語だと分かる。恋愛は自意識の劇であり、鏡であること、そしてその究極には不可能性という可能性への期待があり、それが刹那に超越され、持続しない。 「彼は深くそして熱烈に恋している、これは明らかだ。それなのに、彼は最初の日からもう彼の恋愛を追憶する状態にある。つまり、彼の恋愛における関係は既に全く終わっているのである」(キルケゴール) お互いに芽生えた強迫観念ともなり得る恋愛という外部の力、にも関わらず自意識とも言える内なる感情。それを追っていくことで、ラストまで一直線に流れていく。ストーリーに一本筋の通った純粋な恋愛映画。胸にストンと落ちる。こう言って語弊がなければ、これは反世界、反共感の人間性、君と私が現代に生きる可能性を描いた作品なのです。ちなみに増村保造の『妻は告白する』との類似性も話題となっているが、ラストのタン・ウェイと若尾文子の選択に対する感情が決定的に違う。そこがまた面白いかも。[映画館(字幕)] 9点(2025-01-14 23:08:37)《改行有》

12.  ソウルの春 《ネタバレ》 韓国の現代史を描く超大作。1979年12.12粛軍クーデターの詳細を描ききっており、とにかく引き込まれた。ファン・ジョンミンとチョン・ウソンの電話や拡声器でのやり取りは演出も有るだろうが、殆どクーデターの駆動と抑制がこの2人に掛かっていたように進むドラマはフィクションとしても見応えがあった。 キム・ソンス監督『アシュラ』と同じく、ファン・ジョンミン vs チョン・ウソンが物語の軸となるが、今回は舞台が国家レベルとなる。ファン・ジョンミンが粛軍クーデターの首謀者、全斗煥(役名はチョン・ドゥグァン)、チョン・ウソンが反クーデター側の中心人物となる張泰玩(役名はイ・テシン)。そして、パク・ヘジュンが盧泰愚(役名はノ・テゴン)、イ・ソンミンがクーデターで逮捕される参謀総長鄭昇和(役名はチョン・サンホ)。イ・ソンミンは『KCIA 南山の部長たち』で朴正煕を演じていて、今度はその影を引きずりつつ、朴正煕暗殺共謀で逮捕される役となる。イ・ソンミン、政治家や実業家の超大物をやらせたら右に出る者なしというところか。 ファン・ジョンミン、とにかく私の好きな役者。『新しき世界』『工作』『ベテラン』『ただ悪より救いたまえ』、そして『ナルコの神』。ファン・ジョンミンは悪も正義も違和感なく演じられる。 チョン・ウソンといえば、『アシュラ』『ザ・キング』『鋼鉄の雨』。カッコ良くて、すごく痺れる役者です。2枚目なだけじゃない、声がすごくいい。今回の正義感役も声に迫力があって、ばっちりと嵌っている。 『息もできない』のチョン・マンシク、『夫婦の世界』のパク・ヘジュン。その他、韓国ドラマ・オールスターズの面々。『サバイバー』のソウル市長アン・ネサン、『ムービング』の怪力お父さんキム・ソンギュン、『梨泰院クラス』の秘書室長ホン・ソジュン、『サム、マイウェイ』のおでん屋台コーチのキム・ソンオ、『相続者たち』の財閥会長お父さんチョン・ドンファン、『W』の漫画家お父さんキム・ウィソン、『知ってるワイフ』の融資課チーム長パク・ウォンサン、『再婚ゲーム』の元カレのパク・フン、『秘密の森』の龍山警察署署長チェ・ビョンモ、同じく『秘密の森』のドンジェことイ・ジュニョク、『SKYキャッスル』の元神経外科長ユ・ソンジュ、『二十五、二十一』のペク・イジン叔父さんパク・ジョンピョ、そして、チョン・へイン。揃いも揃ったり、それも曲者ぞろいの名バイプレーヤーたち。韓国ドラマ好きには堪らない。それぞれにいい味を出している。 映画について。私達はプロットとなる粛軍クーデターの顛末、事件の結末を知っている。知っていても、最後の最後まで画面から目が離せなかった。行くも退くも自らを犠牲にする覚悟を決めた軍人チョン・ウソンの決意と涙に心を打たれた。自然と涙が溢れた。その後の彼(モデルとなった張泰玩)自身と家族の不幸を思うと本当にやるせない。つらい。 作品の描き方から、ファン・ジョンミンが悪、チョン・ウソンが善。今の視点ではどちらが正義か分りやすい作りとなっているが、当時、中堅層の軍人たちはクーデターの中で、どちらの側に付くか、1日の攻防の中で揺れに揺れたはず。結局は、政治における軍部の立ち位置や民主化の在り方という点ではなく、ハナか、非ハナか、派閥の勢力争い、出世争い、保身、韓国社会の人間関係の力学によって、勝敗は決したと言える。勝った方が正義であり、負けたらゼロに落ちる。どちらが強いか? 強さを化身した存在、ファン・ジョンミンのセリフにもあったが、そのアピールこそが粛軍クーデター成功のカギだった。 その後、新軍部の戒厳令下で軍が民間人を大量虐殺した光州事件があり、1980年9月、全斗煥は韓国大統領まで上り詰める。全斗煥政権下では、多くの民主活動家や学生の拷問、不審死が1987年の民主化宣言まで続く。しかし、政権は盧泰愚に引き継がれ、粛軍クーデター組織による政権支配が終わるのは盧泰愚失脚後の1993年になる。韓国初の文民政府である金泳三政権により組織が解体され軍から排除されるまで待たなければならなかった。彼らの韓国支配、強権政治は実質10年以上続いた。近年の韓国映画によって、私達はそれらの事実を漸くと知ることになる。 2017年、朴正煕の娘、朴槿恵が失脚して、堰を切ったように『タクシー運転手』や『1987、ある闘いの真実』が公開された。韓国現代史、軍事政権による様々な事件、その黒い霧は、映画によって明らかにされ、人々に共有されて、歴史地図がパズルのピースのように繋げられていると感じる。『ソウルの春』もこの流れ、韓国の民主化の不可逆的な流れの中に確実に位置付けられる。そう考えれば、この映画の大ヒットも韓国にとって歴史的必然だったのだろう。[映画館(字幕)] 10点(2024-09-16 23:57:21)(良:2票) 《改行有》

13.  TOKYO! 《ネタバレ》 池袋の新文芸坐で『トウキョウソナタ』(こっちが本命!)との2本立てで鑑賞。東京シリーズか。。 『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー、『ポンヌフの恋人』のレオス・カラックス、『グエムル/漢江の怪物』のポン・ジュノ。3人の作家が描くオムニバス形式のTOKYOの物語である。 人々の想像の裏側から描く東京というファンタジー。椅子女。下水道の怪人。ボタン少女。ある種の「東京奇譚集」だろうか。 予備知識がなかった分、それぞれに意外な展開が面白かった。唐突に椅子に変身し、そのことに充足し依存していく女の仄かな孤独。都市への安住を否定する存在、下水道の怪人メルド(糞)という潜在的恐怖とその捩れた存在の奇怪さへの戸惑いと怒り。そして、恋と地震によって揺りだされる引きこもり達の生への欲求と畏れ。 新しい東京物語は、現代的な心情が紡ぐ都市伝説とでも言うべきものだろうか。そこには悲壮感がそこはかとなく漂うのみで、全体的にアカルイ映像が印象的だった。[映画館(邦画)] 8点(2009-03-29 20:38:21)《改行有》

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