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プロフィール |
コメント数 |
170 |
性別 |
男性 |
年齢 |
44歳 |
自己紹介 |
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1. 10話
キアロスタミはイランのオズといってもいいかもしれない。映画スタイルこそ全く違うものの、登場人物へのやさしいまなざしは非常によく似ている。誰もが平凡でつまらないと感じる視点を一瞬で非凡の領域に変えてしまうところも。舞台は車だけ。若いイランの女性が運転する車の中で、彼女を中心とした人間模様がタイトル通り10話に区切られて進行する。映画をつくる方法としては、おそらく中学生でも出来るぐらいにシンプルだ。だって車の中にカメラを据えているだけだから。しかし、「こういう風」に撮ることは誰にもできないことがすぐ分かる。なんというか、演技とかそういう次元を超えている。例えドキュメンタリーでもこういうのは絶対に撮れないだろう。この映画に働いている力は一体何なのだろう。というよりもこれが映画になってしまうのなら、この世に溢れる大枚をはたいた凡百の作品って一体何なの?映画には大量のカネがつきものだが、そのカネとは、映画そのものにつぎ込まれているわけではない。ていうか多分映画そのものには金はかけられない。映画を飾る雑多な要素をほとんどそぎ落として映画としての最小単位を求めた結果、本作は車の中だけでイランの生活そのものを表現するという離れ業を成し遂げられたのかもしれない。だからといって観る側はイランという国の特殊性にばかり目が向かうのではなく、むしろ誰もが抱える生活への不安とか人間関係の難しさを感じ取ることになる。喜劇でも悲劇でもない、ただひたすらに優しくて暖かいまなざしがそこにはある。[映画館(字幕)] 10点(2005-04-11 10:28:18)
2. 友だちのうちはどこ?
《ネタバレ》 この監督ってどうしてこういう表情を撮れるんでしょうか?大人も子供も表情をほとんどピクリとも変えない。唯一泣きじゃくる子供がいましたがそれ以外は、特に子供は無表情といってもいいぐらい。主人公の男の子の表情なんて「こうこう、こうして」と教えてできるもんじゃないでしょう。「ミツバチのささやき」のアナという女の子の無表情もとても印象的なのですが、その時の印象とは全然違いますね。アナは、普通の子供が背負うことはないグロテスクなものを本人は気づくことなく背負っています。一方、この男の子は私達が小さい頃に持っていたかわいらしい悩みを、それこそ人生の一大事とばかりに背負い込んでいます(笑)話は単純です。というか、普通なら誰もこんな部分から映画へと着想させようとは思わないに違いありません。それが何でここまでの素晴らしい作品になってしまったのかは、未だにわかりません。なんというか、この子が走っているのをカメラが追うだけで、今まで見ていた世界が一変して急に懐かしい気持ちになってくるんです。世界が変わる、と言うよりは昔いた世界に戻る、と言った感じです。キアロスタミのまなざしの奥にはこの男の子のような子供がいまだに存在しているに違いないです。[映画館(字幕)] 9点(2004-12-25 03:34:08)
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