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プロフィール
コメント数 2257
性別 男性
ホームページ https://twitter.com/BM5HL61cMElwKbP
年齢 52歳
自己紹介 あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2024.1.1


※映画とは関係ない個人メモ
2024年12月31日までにBMI22を目指すぞ!!

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181.  夢売るふたり 《ネタバレ》 物語は主人公夫婦の市場での仕入れシーンから始まりました。そう、モノを売るためには、まず仕入れなければならないのです。それがままならぬモノならば、今手にしている分を手放すしかありません。タイトルは『夢売るふたり』。夫婦は自らの夢を切り売りしました。夢を叶えるためのお金を手に入れるために。この矛盾。鮮度の落ちた魚を調理したくないと言った主人公が、職人の命ともいえる包丁で、刺青魚を捌く羽目になる皮肉。清々しいほどの因果応報の物語でありました。大人のための寓話でした。主演を務めたのは、今や連ドラの主役も張るほどの人気者、阿部サダヲと、今最高に脂が乗っている映画女優、松たか子。人気実力を兼ねそろえた2人をキャスティングした時点で、本作の成功は5割以上約束されたようなもの。事実、期待通りの演技を披露してくれました。もっともこの成功を10割にまで引き上げたのは、やはり監督の手腕なのだと思います。これほど“手堅い”映画を観たのは久しぶりでした。それにしても『告白』といい、『ヴィヨンの妻』といい、ここ数年の松たか子の充実ぶりは驚異的です。今、怖い(そして強くて弱い)女を演らせたら、彼女の右に出る者はいないでしょう。黒目パワー恐るべし。以下余談。初めて札止め満員というものを体験しました。先に『鍵泥棒のメソッド』を観ていた自分は出足が遅く、自由席の前から2列目に。字幕でなかったのは助かりましたが、流石に疲れました。でもビッグなおっぱいはなかなかの迫力。これなら『ヘルタースケルター』も…[映画館(邦画)] 8点(2012-09-21 18:28:27)(笑:1票) (良:1票)

182.  大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇 《ネタバレ》 血の池も針の山も、あくまで空想の産物。さて、本物の地獄はどんな場所だったのか??地獄へのハネムーンという着想は実にユニーク。血の池じゃなくて、ビーフシチューの温泉。赤鬼も青鬼も角を切り落とすのが流行とは。この荒唐無稽なブラックコメディを成立させたのは、見事なキャスティングに拠るところ大かと。竹野内、水川コンビの力の抜け具合は絶妙でしたし、樹木、片桐、荒川の役作りは完璧でした(樹木希林なんて日野日出志の漫画のキャラクターそのまんま。)また最近大活躍の橋本愛も好印象。顔面真っ青でもその美少女ぶりが全くスポイルされないとは、いったいどれほど美人なんじゃい!物語に起伏があるわけでもなく、笑いも感動も大した事は無いですし、結構つくりは安普請だったりもするのですが、“この映画何となく好き”と言いたくなる不思議な魅力がありました。そうそう、音楽も気に入りました。本気でサウンドトラックを買いたくなったのは『嫌われ松子の一生』以来かも(注:サウンドトラック売ってないじゃん!)。本来の自分基準では6点が妥当なのですが、思い切って8点付けます。決して8点級の完成度ではありません。でも好きなものはしょうがないので、ご勘弁を。[DVD(邦画)] 8点(2012-08-22 18:15:12)(良:2票)

183.  アンノウン(2011) 《ネタバレ》 (ネタバレあります。未見の方はご注意ください)物語を味わう上でポイントとなる部分。それは、“何故主人公は危険を冒してまで、暗殺計画を止めようとしたのか?”だと考えます。そもそも自分が携わっていたミッション。阻止する必然性はありません。それに未だ口封じされる危険性が残る中、余計な事はせず速やかに雲隠れするが得策のはず。しかし、彼はそうしませんでした。其処に意味があると考えます。ジーナは言いました。「大事なのは、今何をするかよ」と。過去を捨てるため、新たなアイデンティティを獲得するため、マーティン・ハリスという名の男(=かつての自分自身)と決着をつける必要があった。果たして結果は爆発炎上。彼の過去も綺麗に吹き飛んだ様子。生まれ変わりを望む人間にとっては、これ以上ない結末でした。アイデンティティを失った男と、IDの無い女は、新たな人生を手に入れました。『96時間』のリーアム・ニーソン主演。“頼れる男”が本作では散々な目に合います。彼の枯れた風貌は、所謂アクション俳優に比べ親しみ易い。感情移入が必須となるサスペンスでは大切な要素です。オチに新鮮味はありませんが、よく練られた脚本が心地よい作品でした。シュワルツェネッガー主演の某SF映画と類似点が多くありますので、比較してみるのも面白そうです。[DVD(吹替)] 8点(2012-07-14 09:08:26)

184.  さや侍 《ネタバレ》 妻に先立たれた野見は、抜け殻でした。それは本身を持たない鞘と同じ。だから“さや”侍。辛い現実を耐えかねた男は、あらゆることから逃げ続けます。背中を斬られ、頭を撃たれ、首の骨をへし折られても、なお死ななかったのは、死という現実からも逃避していたから。しかし30日の業を終えた彼は、自分という刀を取り戻します。愛娘や門番たちと芸を考案し続けた日々。何かを生み出すパワーが、あるいは奇妙な友情が、親子の愛情が、男を甦えらせました。現実と向き合った侍が、逃げ続けた日々の清算をしようとするのは当然の流れ。斬られたら、撃たれたら、へし折られたら、死ぬ。その摂理に、遅ればせながら従います。切腹は必然でした(劇場版『クレヨンしんちゃん』の某作品と同じと理屈と考えると分かり易いです。あるいは『ジョジョ』のブチャラティ)。鞘は大切なものを守るためのもの。娘を守る父親は鞘と言えます。最期に父は、托鉢僧にメッセージを託しました。それは娘に対する全ての父親共通の願い。精一杯の恋文です。竹原坊主の歌声が沁みました。若君を笑わせるため、罪人に課された30日間に及ぶ1日1芸の笑い。大衆から日々新たな笑いを求められ続ける天才芸人・松本人志と、さや侍・野見の姿が否応も無く重なります。ポイントは、本作で要求されているのは爆笑ネタではないという事。かといってセンスが無ければ、観客から容赦ない批判を浴びてしまいます。監督松本が芸人松本に課したハードルはかくも高い。本作で披露された“決して笑わせてはいけないネタ”の数々、自分はお見事だと思いました。監督自らが主演をこなした前2作と体裁は違うものの、一貫しているモチーフは“笑い”です。本作では松本氏のお笑い構造論と観客論を窺うことが出来ました。何をしゃべってもOKな、完全に出来上がった空気の中、一言も口にせず果てた野見。そこに松本人志の求める笑いの美学が、あった気がします。[DVD(邦画)] 8点(2012-03-16 19:58:10)(良:2票)

185.  少女たちの羅針盤 話下手な人の話は、とかく長いものです。それは伝えたい事を全て語ろうとするから(自戒を込めて)。思いが強いと説明過多になってしまう心情は理解できますが、実際は逆効果です。相手の心に届けるためには、ポイントを絞り、相手に考えさせ、想像させる余裕を与えることが肝要と考えます。自身の思いを相手の心で再現してもらう余地を用意するのです。それは映画にも言えること。本作の脚本には、その心得が在りました。まるで程よい間隔の庭園の飛び石を踏む心地良さ。肝となるエピソードは丁寧に描きつつも、省略できる説明は大胆にカット。観客は見えない部分を、自身の頭で補足します。観客の想像力を信頼している良い脚本でした。ミステリーとしては真相部分が弱いものの、謎解きのヒント・伏線・ミスリードは存分に織り込まれているので不満は感じません。本格派ミステリーの風格でした。もっとも本作の見所はミステリーパートにあらず。少女たちの心の内を描いた青春ドラマにありました。対立、葛藤、混乱、そして模索…。彼女らは、その未熟な心と体で、もがき苦しみます。でもそれは何かを創造するために必要な痛み。自分の居場所を確保するための試練。決して無駄な苦しみではありません。現状維持に四苦八苦しているおじさんからすると、それはとても眩しく、羨ましい光景に思えました。人間、若いときに、動けるときに、行動しておかないと後悔しますね。忽那汐里や成海璃子ら実力派の若手女優の熱演が観る者の心を打つ、青春ミステリーの佳作でありました。[DVD(邦画)] 8点(2012-03-10 18:59:11)(良:1票)

186.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 監督の処女作『その男、凶暴につき』への原点回帰とも言える超バイオレンス映画を想像していたのですが、予想は大きく外れました。ブラックユーモアなんて生易しいものではなく、完全なるコメディでした。THE・ヤクザコント。口を開けば「バカヤローこのヤロー」って、お前ら荒井注か!って、何度ツッコんだことやら。今どき居るはずもないステレオタイプな旧式ヤクザを、オールスターキャストがノリノリで演じています。よくもこれだけ味わい深い顔の役者を揃えたものだと感心します。(何故寺島進ちゃんがいない?きっと出たかったでしょうに。)殺したり殺されたり(椎名の殺され方のみちょっとエグいので×ですが)みんな本当に楽しそう。大いに笑わせてもらいました。『みんな~やってるか!』より遥かに完成度の高い“笑い”があったと考えます。キャッチコピー『全員悪人』は勿論ブラフ。本当は『全員馬鹿』が正しい(あるいは『全員荒井注』)。これほどまでに、ヤクザを格好悪く描いた映画を自分は知りません。何なら、教育映画として不良高校生たちに見せたらいいと思います。自分達がいかに滑稽か気付く事でしょう。こんな変化球を投げてくるとは、さすが北野監督。素晴らし過ぎます。続編を作る気になったのも頷ける快作でありました。この出来なら大御所から人気俳優まで続編のキャスティングに困る事は無さそうですが、個人的には死んだはずのキャストを再度起用して欲しいです。それがコントの流儀。石橋蓮司のヘンテコマスクと國村隼のベロチョンパは天丼でお願いしたい。以上、皮肉でも冗談でもない、マジ感想でした。[DVD(邦画)] 8点(2012-02-09 19:28:22)(良:5票)

187.  必死剣 鳥刺し 《ネタバレ》 兼見と別家の対決、及び多数の家臣たちとの中庭での戦い。剣捌きの良し悪しは素人には判別できませんが、兼見の気迫は伝わってきました。執念が、兼見を家老の下まで辿り着かせたのだと思います。下げ尾を切り落とし、口に咥える演出も冴えていました。必死を表現し、かつ鞘も必要無いという覚悟の表れ。“鳥刺し”とは相手の柄に切先を差し込む技術をさし、“必死剣”とは自らの命と引き換えに相手を絶命せしめる剣と理解しました。兼見という捨て駒を上手く利用しようとした家老。キレ者です。思惑通りに兼見は別家を退けました。しかし家老は人間の心を軽んじ過ぎました。組織にとっては駒であろうと、一人の人間。その矜持の高を見誤ったが故に、家老自らも命を落すハメに。保科は言います。連子が居なくなっても藩政に改善はみられないと。連子を殺めた時点で兼見は命を捨てる覚悟だったのですから、最期に藩最大の癌を取り除く事が出来たと考えれば、救われるというものです。あとは無能な君主が早期に隠居することを祈るのみ。人の命を奪うという事は、自らも同じ事をされても構わないということ。その覚悟は必死剣の理念にも通じます。道理を無視した連子と家老は報いを受け、兼見は道理に従ったという結末でありました。気がかりは里尾。傍からみれば縁談を進めていた方が幸せだったように思えますが、果たしてそうでしょうか。幸せの価値は本人が決めることです。少なくとも里尾はその意思を持っている女。兼見が迎えに来るとの約束を果たせぬであろう事は、最初から分かっていたはずです。でもその思いが嬉しくて、でも切なくて、彼女は泣いたのだと思いました。兼見の忘れ形見と共に、彼女は生きていく。ただ願わくば、思い出の中を生きるのではなく、今を、これからを、生きて欲しい。兼見もそう願っているはずです。正直トヨエツがこれほどやるとは思っていませんでした。殺陣もさることながら、実直な侍役がよく似合っていたと思います。トヨエツは現代劇よりも時代劇の方が向いているのでは。鑑賞済みの藤沢周平原作映画の中では『たそがれ』以来久々に満足できた作品でした。[CS・衛星(邦画)] 8点(2012-01-25 18:59:04)

188.  カラフル(2010) 《ネタバレ》 『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』等の演出、監督で高い評価を得てきた原恵一監督。完成されたパッケージを離れて挑んだオリジナル作品『河童のクゥと夏休み』は、“原恵一とは何者か”が垣間見える映画ではありましたが、一作品としての完成度は十分なものではなかったと考えます。そこで本作。原作本はあるそうですが、冒頭に上げたシリーズ作品と比べれば制約は無いに等しい。“原恵一色”がどれほど出せるものか、興味を持って拝見しました。まず気付いたのは、作画部分が改善されたこと。アクの薄いキャラクターデザインという点では変わらないものの、洗練された印象を受けました。また、『クゥ』ではある種の苦味として認知されたリアルな描写(例:血飛沫など)が、本作では物語と遊離することなく表現出来ていたように思います。感心したのは真がひろかをラブホから連れ去る場面。2人が息つくまで、実に20回近くカットを割ります。それは長い。しつこい程に。でも、この長さは主人公が現実から逃げた距離。ちゃんと意味があります。そしてこれが原映画のリズム。“原恵一アニメのかたち”を本作でしっかりと打ち出せたことは、素晴らしいと思います。メインキャストに非声優を起用しながらも、違和感なく仕上げたキャスティングセンスも評価させてください。みんなオカシクて当たり前。いろんな自分が居ていいんだ。自身を肯定することが、生きる力になる。良い映画でした。[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-10-10 21:22:09)(良:2票)

189.  武士道シックスティーン 《ネタバレ》 皆が竹刀を振るう中、磯山が手にするのは木刀です。武蔵が巌流島で手にした櫂の木刀。少なくとも彼女の意識の中では。“試合”ではなく“死合”、“打つ”ではなく“斬る”なのだと思う。真剣勝負。遊びの剣道に負けられない。負けるはずが無い。その想いが彼女を支えています。一方、西荻が手にする竹刀はどうでしょう。彼女は勝ちたくないと言う。本気で勝負して負けるのが怖いと言う。相手に打ち込む気概の無い刀は、穂竹のように撓るばかり。剣士の刀ではありません。たった一度負けた相手に固執した磯山。一見して“嫌な奴”を慕う西荻。2人が惹かれ合ったのは、自分に欠けている“必要なもの”を相手の中に見つけたからだと思いました。父親の生き様に呪縛された者同士、何か通じるものがあったのでしょうか。まさに“縁”です。異なる価値観を取り入れることで、2人は新たな自分を発見しました。でもそれは楽しい事じゃない。一度獲得した自分の基準を崩すのは苦痛なもの。特に磯山にとっては、自らの生き方を否定しかねない危うい行為でした。事実、磯山の刀は一度折れましたし、西荻の剣は乱れに乱れました。でも乗り越えたからこそ、今の2人が在る。折れた磯山の刀は力強く再生し、西荻の刀には芯が入りました。16歳。青春真っ只中。この時期にどんな人と出会ったか、どんな経験をしたかで、その後の人生が大きく変わる。「私を見つけてくれてありがとう」そんな台詞が言える友と出会えた事は一生の宝物。「剣道をやっていればまた会える」やせ我慢で平静を装う磯山が切ないです。切ないけれど羨ましい。2人はきっと、素敵な大人になってくれることでしょう。[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-08-13 21:25:21)(良:3票)

190.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 一握りの天才や偉大な指導者のおかげで、私たちの文化文明は発展を遂げてきたのだと考えます。その他大勢はその恩恵を受けてきただけ。何か申し訳ない気がする。人は“社会の歯車”と称されますが、自分の存在などちっぽけ過ぎて、小さなビスにも満たないと思えます。たった今、自分が消えたって何の支障もなく世の中は回っていく。それが現実。生きている意味を考えた途端に、自己の存在価値を見失う。だから、売れないロックバンド『逆鱗』のたった1曲の歌が世界を救うという筋書きに、強く勇気付けられました。自分も生きている意味がある、そう思えることが本当に嬉しい。『フィッシュストーリー』という楽曲にスポットが当たっていますが、見方を変えれば実に多くの人たちが世界を救う役割を担っていたことに気付きます。原作を日本語訳したハーフ顔の男、その本を家に持って帰ったおばさん、正義の味方をコックに雇った汽船会社の人事担当、多部ちゃんに数学の楽しさを教えた先生…。“友達の友達はみな友達だ”ではないけれど、世界中全ての人が何かの役に立っている。こじ付けかもしれない。でも、こんなホラ話なら大歓迎です。ただ、物語の構成自体はテクニカルだとは思いませんし、『アヒルと鴨~』もそうでしたが、ストーリーに中弛みを感じるのは中村監督の短所だと思います。でもキャスティングの的確さとメッセージを伝える技量の高さがマイナスを十分に補っていると感じます。今後も原作伊坂+監督中村のコンビに期待します![DVD(邦画)] 8点(2011-03-30 21:05:33)(良:5票)

191.  のんちゃんのり弁 《ネタバレ》 弁当屋開業初日、支度中の主人公は何故泣き出したのでしょう。夢を叶えた達成感?納得の弁当を作れた充実感?それとも周りへの感謝の気持ち?どれも違うと思う。彼女が泣いたのは自分の責任を自覚したからだと感じました。小料理屋の主人いわく彼女の手は“子供の手”。それはすなわち“大人の手”ではないということ。無論“親の手”でもない。「そういうの何か嫌なんで」そんな理由で彼女は慰謝料も養育費も求めなかった。ただ働きも喜んでした。心意気は悪くない。でも彼女は自分が置かれた状況を判っていない。おそらくは“家を出た”“行き場所が見つかった”という状況の変化に酔っていたのだと思います。夢を追うのに必要なのは情熱のみ。それが許されるのは子供だけです。大人は違う。ましてや人の親ならば。まず考えるべきは生活の糧を得ること。子供を育てること。夢を追うのは次の話です。真っ当な大人は、間違っても恩人の店で暴れたりしない。子供の権利を放棄したりしない。日が昇る前から調理をはじめ、出来た弁当は20個ほどか。確かに美味しそう。でも採算は取れるのでしょうか。趣味の疲労は苦労にあらず。小遣い稼ぎも似たようなもの。でも家計を担う労働は身にこたえます。責任は重圧に変わり疲労を倍化させる。彼女は身をもって働くことの意味を知ったのだと思います。だから泣けた。価値のある涙でした。親子2人が暮らせる利益が出る弁当を作れて、初めて彼女は弁当屋になるのです。その道は易しくない。でも彼女は母親です。涙の向こうには子供の笑顔がある。頑張れるはずです。一日も早く大人の手を、いや親の手を、手に入れて欲しいと願います。身の程知らず、世間知らず、でも一生懸命だから応援したい。そんな微妙なスタンスのヒロインを小西真奈美は好演しました。演技は上手い。表情のみで魅せられる女優さんだと思います。岸辺も貫禄の存在感でした。小料理屋の主人のような大人になりたいものです。[DVD(邦画)] 8点(2011-03-17 18:28:41)(良:3票)

192.  南極料理人 《ネタバレ》 みんなの意見に従い、伊勢海老をフライにした西村くん。このエピソードが好きです。彼が持論を貫いて“正しく美味しい伊勢海老料理”を提供したとしても、満足してもらえなかったと思います。どんなご馳走も想像の味には適わない。“やっぱり刺身だったなと愚痴りつつ伊勢海老フライで我慢する”がこの場合の正解でした。ラーメンの在庫が底を尽いたと知り、落胆する一同。ここでの正解は唯一ラーメンのみ。うどんや蕎麦、スパゲティじゃダメなんです。それを知っていた主人公は、かんすいの代用法を聞くや否や駆け出しました。結果、彼の作った一杯のラーメンは、きたろうやバター男の病んだ心を救います。味は大事。栄養も重要。でもそれだけじゃありません。胸焼けする不味い唐揚げが、傷ついた心を癒したりもするのです。西村くんの料理は、本職のシェフに味では劣るかもしれません。でも、間違いなく良い料理です。料理には人柄が出るといいます。高級料理も素晴らしい。でも自分は、幸せな気分になれる料理を食べていきたいと思いました。愛すべき南極料理人を堺雅人が好演。彼独特の笑み(堺スマイルと勝手に命名)が、人の良さを物語ります。南極行きを上官から告げられ、「家族と、相談を、させて、ください。」を繰り返す半泣きの西村くんが、気の毒だけど可笑しくて。彼が困る度面白かったです。その他の面子も芸達者を揃え、手堅い布陣。ただし、きたろうの存在感が強過ぎて、シティーボーイズの舞台を観ているようでもありましたが。[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-02-18 18:16:08)(笑:1票) (良:1票)

193.  ルート225 《ネタバレ》 2人が迷い込んだ『A’』の世界とは何処でしょう。いや、より重要なのは、エリ子は“何者か”ということかもしれない。(以下妄想炸裂の個人的解釈です。未見の方は先入観なく鑑賞することをオススメします。ご注意ください。)本作を読み解く唯一のヒントはタイトルに在ると考えます。『ルート225』。225=15の2乗。言い換えるなら、15歳の少女の事情。本作は少女の身の上に起こった一大事。これが前提。エリ子は母に促され、弟を探すために国道225号線の歩道橋を渡ります。ここから彼女は異世界に。子が頼るべき父と母の居ない世界です。ポイントは、国道が何を意味するか。ルートを記号に直すと“√”。この形、何かに似ていませんか。2つ並べて右に90度回転。うち一つは鏡開きに反転。保健体育の教科書に載っている、女性の体にある2本の道。ズバリ国道225号線は“卵管”と推測します。卵管を通るのは、もちろん卵子。つまりこの物語は“初潮を迎えたエリ子の卵子が卵管を通り子宮に辿り着くまで”を描いたものではないかと。卵子初めての冒険。世界が違って見えて当然です。そう考えても、結構納得できる。エリ子ファーストカットの赤らんだ表情と気だるい雰囲気。突如現れた海は母性の象徴で、にわか雨は経水の暗示。傘はさしずめタンポンか。最初は上手く使えない。赤い花もね、そういう意味。成長した卵胞のうち、排卵される卵子は一つだけ。姉弟が離れ離れになるのも摂理です。そして何より結末が腑に落ちる。もう彼女は子供に戻れないのだから。この前提で物語を検証すると、あらゆるアイテムがメタファーに見えてくる。どのシーンも意味深。例えばバッティングセンター。バットでボールをパカパカ打つ友達と、かすりもしない主人公。ホワイトシチューの味見では顔をしかめて見せる多部ちゃん。無茶苦茶エロくないっすか。ないッスね。戯言妄想、失礼しました。少女の危さと強かさを多部未華子が好演。白木みのる2世、弟くんのキャラも愛おしい。高橋由伸や門@等の小ネタもツボ。笑えて切ない、でも爽やかな少女の成長物語でありました。続編を作るならぜひ男子版を。さぞかしドリーミングなエロパラダイスが展開されることでしょう。[DVD(邦画)] 8点(2011-02-06 00:56:31)(良:1票)

194.  秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3 ~http://鷹の爪.jp は永遠に~ 「俺たちは後世に残る名曲に興味はない。楽曲は使い捨てで結構」とは電気グルーヴの言葉(違ってたらゴメンナサイ)。自分はこの考えが好きです。鮨屋の心意気。この握り、今はご馳走だけど明日になったら生ごみよ。そんな潔さに痺れます。本来「笑い」(電気の場合は音楽だけど)の真髄は即時性にこそ在る。ですから、ギャグ漫画が短命なのも、お笑い芸人に一発屋が多いのも当たり前。時代は移ろうのだから。『鷹の爪』からは、廃れることを恐れない覚悟を感じる。徹底した話題づくり、劇中コマーシャルの浅ましさ。足の早い「もう中学生」ネタなんて、日持ちを考えたら使えない。刹那の笑いに全力を注ぐ姿は、愚地克巳VS花山薫、あるいはアイアン・マイケルVS柴千春を彷彿とさせます(byグラップラー刃牙)。凄まじくカッコイイ。たとえ数年後、本作が世間から忘れ去られたとしても、今この瞬間、心動かされた事実は決して消えません。それで十分なのです。本作は100%名作には成りえません。でも後世の人々を惑わす珍作にはなるかもしれない。生ゴミだって化石になればお宝です。ですから、遥か未来の人類に向けて、この映画を理解するためのヒントを残しておきたいと思います。★ジョン・ジョローリン…FOXドラマ『24』ジャック・バウワーのパロディ。★もう中学生…本当はもう大人。ダンボール業。★ばんどうえいじ…ゆで卵を主食とし、忘れた頃に野球の話をする。天敵はクロヤナギ。★ドウマリコ…堂真理子。テレ朝の女子アナ。8代目Mステ。右投げ右打ち。★スーザン・ボイル…歌の上手いおばさん。茹でられてはいない。★オババ大統領…オリジナルはオバマ。アメリカのジャイアン。アメリカは世界のジャイアン。[DVD(邦画)] 8点(2011-01-01 00:00:02)(良:2票)

195.  空気人形 《ネタバレ》 男は何故、のぞみにもう一度空気を抜いて欲しいとお願いしたのでしょう。空気が抜けることは、彼女にとっては死を意味します。彼は死に触れたかったのではないかと思うのです。「自分も君と同じようなものさ」空虚な心の内を見せる男。おそらくは、写真の中で微笑む女性が原因。彼女の死に際を彼が看取っていたとしたらどうか。写真の彼女にもう一度会うために、彼はのぞみを利用したと考えられます。のぞみはここでも代用品だった事になる。男の思惑など知らぬのぞみは、その息で恍惚の表情を浮かべます。それはそうでしょう。空気を吹き込まれるのは、命を注がれるのと同じなのだから。彼女にとっては、紛れも無い性交です。偽りの性器では得られぬ本物の悦びを感じる空気人形。自分と同じ幸せを相手に与えたいと思うのは当然のこと。それが愛です。男を“切った”のぞみは、何も悪くない。それにもし男が生きることを望んでいたのならば、助かることは容易だった。彼は自分の意思で死んだのです。何も知らぬ空気人形に多くのことを教えた男。潮の香り、ガラスのきらめき。美しいと感じる心、恋する楽しさと切なさ。限りある命の意味も伝えたのに、何故尊さを教えてやらなかったのか。あの男が憎いです。最後に男が教えたものは、愛する人を失う痛みでした。深い悲しみに耐える術を知らぬのぞみは、自ら男の後を追いました。方や燃えるゴミ、方や燃えないゴミ。2人の魂がこの先、交わることはあるのでしょうか。この作品はペ・ドュナに尽きます。外国人であるが故の“違和感”が良い方向に作用しました。役柄とは正反対、彼女の代わりになる役者は居ないと思わせます。本当に素晴らしかった。そのほかのキャストも概ね良好。ARATA、板尾、岩松、いいですね。ただ、星野真里の存在意義だけがイマイチ薄く、惜しいなあと。生と密接な関係にある“食”パートを担当した彼女が本筋にきっちり絡んできたら、より一層深みのある物語になった気がします。[DVD(邦画)] 8点(2010-12-21 20:58:26)(良:2票)

196.  罪とか罰とか 《ネタバレ》 ケラといえば『有頂天』世代の自分。氏の笑いの感性に初めて触れたのが日テレ系深夜バラエティ『ギグギャグゲリラ』でした。確か総合演出か何かをしていたと思う。今なお大ファンの伊集院光のテレビ初レギュラーだったので、随分熱心に観た覚えがあるのですが、正直まったく面白くなかった。高校生の自分にはハイブロー過ぎました。時は流れて20年。『グミ・チョコ~』と本作を鑑賞してみて、やっと氏のセンスを理解出来るようになった事に気づきました。面白かった。ばっちりハマったって訳じゃないけど、シンクロ率は69%。Ohエロい。初号機の舌でさくらんぼの茎が結べちゃうレベル。十分でしょう。それにテーマも明確に伝わってきました。罪と罰。いや、責任と覚悟。元カレ、グラビアアイドル、コンビニ強盗、雑誌編集者、警察署員全員(!)。主人公は元より、みんな見事に責任を放棄しています。当然、ペナルティを受ける覚悟もない。確かに面倒なことは誰かに「お任せ」できれば楽でしょう。でも、それじゃ人生の醍醐味は味わえない。だって、やりたいことがやれないんだから。意趣返しでムカつく奴らをブタ箱に放り込んだアヤメ署長。自分の行動に責任を持つ覚悟があれば、世界は変えられる。私のページ以外が全部逆さまだと言い切れる。気分爽快です。これからは大変な事も多いだろうけど、辛さの中にこそ本当の喜びがあるって、団鬼六先生も言ってましたよ(嘘。知らない)。アヤメは“笑わされている”ポスターの世界から飛び出しました。これからは、自分が笑いたい時に笑えばいい。それが“正しく”がんばった成果と言えるかどうかは別ですが。一方トラック男も結婚という罰を受ける覚悟を決めた様子。ひき逃げの罪を贖うくらいの盛大な罰を、どうぞ受けてください。[DVD(邦画)] 8点(2010-12-09 18:27:30)

197.  鬼畜 《ネタバレ》 他人を殺すのは何故いけないのでしょう。それは、自分が殺されたくないからです。殺人を認めると、自分が殺されても文句が言えない。では、どうして親が子を殺すのはいけないのでしょう。それは不利益だからです。遺伝子を残す事を宿命付けられた生物にとって、その逆ベクトルの行為など論外です。他人を殺すのと、子を殺すのとでは、同じ殺人でも意味が違うと考えます。子を傷つけるのは、自らを傷つけるのと変わらない。親が子を愛するのは、自分自身を愛することと同じとも言える。ですから、血の繋がった息子を手にかけたとき、宗吉は自分自身を殺したのだと受け取りました。一命を取り留めた息子を前にして、土下座して詫びる父。その胸中に渦巻いたものは何か。泣いて詫びたとき、宗吉は初めて人の親になれた気がします。もっとも、もし本当に子供を殺す気ならば、あの状況で仕損じは在り得ない。やっぱり彼は息子を殺したくなかったのだと思います。いや、そう思いたい。先に述べたように、生き物は自らの遺伝子を残す事に貪欲です。その為になら何だってする。あまりに合理的。清々しささえ感じる厳格な規律。しかし人間だけはこのルールに縛られません。他人を殺さないのは、殺したくないから。血の繋がらぬ子だって我が子のように愛おしい。動物と人間に差があるとすれば、この部分だと思う。ほんの僅かの差です。善人だって皮を一枚剥けば鬼か畜生が隠れているのではないか。自分の中に宗吉やお梅は居ないか。この映画を観て自問します。わたしは人間だろうか。わたしは人間だろうか。自らを疑っていられるうちは、自分は人の皮を脱がないでいられる気がします。[DVD(邦画)] 8点(2010-11-21 20:46:05)

198.  春との旅 《ネタバレ》 他人の家を覗き見る感覚のロングショットに、揺れる心と重なる手持ちカメラ。段落ごとに背景が変わるロードムービーの特性も相まって、視覚的に観客を退屈させません。さらに役者は芸達者を揃えました。しかもその起用法が凄いです。名優小林薫をチョイ役で、しかも顔を映しません。なんと贅沢でしょう。徳永えりの役作りも深かったです。見応え十分。細部まで創り込まれた良質な映画を堪能しました。ただ難点があるとすれば、演者の芝居が“立ち過ぎていた”こと。リアリティを欠いた気もします。しかし、その“嘘臭さ”に意味がある物語だったかもしれません。主人公は我が身の置き処を求めて親類宅を訪ね歩く老人とその孫娘。これまで人生の意義を問う旅でした。血を分けた兄弟間の確執は長年積み重ねてきた産物。誤魔化しが効きません。だから痛いのです。そして遠慮がありません。どの兄弟の言い分ももっともでしたが、中でも長女の説教が一番心に響きました。“春の人生を犠牲にするな”この言葉の重さを、2人はどれだけ理解していたのでしょう。自分の我侭を理解しつつも、甘えを止められない忠男。そんな祖父から離れられない春。情はあって当然です。2人には積み重ねてきた時間があります。でも“支え合い”ではなく“寄り掛かり”では何時か潰れてしまいます。望まないなら辛くない。もがかないから痛まない。「こんなもんだ」と諦めてしまえば、人生は確かに楽なのだと思います。でも忠男がそれを望むのは烏滸がましいですし、春が悟るのは早過ぎます。自立して自分の道を歩いてきた長女には、2人の生き方が歯痒かったのだと思います。ところで、あの結末は希望でしょうか、絶望でしょうか。ポックリ逝ければハッピーエンド。寝たきりコースならバッドエンドとの見立てが妥当でしょう。顛末が明かされぬ以上、観客は望む結末を選べば良い訳です。現実的で切実な題材だからこそ、逃げ道が必要でした。この結末は監督の優しさ。そう理解します。ただそうだとしても、死ぬのが幸せって何なんでしょう。自分は、長女にこき使われながら慣れぬ薪割りに精を出す忠男の姿を思い描きたいです。泣きべそかきながら自分の夢を探す春を見てみたいのです。夢物語かもしれません。でも“10年以上前に別れた義理の息子の後妻(しかも美人!)が、初対面の年寄りと一緒に暮らしたいと申し出るファンタジー”に比べれば、慎ましいお願いじゃないですか。[映画館(邦画)] 8点(2010-06-03 19:21:12)(良:1票)

199.  盲獣 《ネタバレ》 キャストは3人だけですが、みな見事に乱歩ワールドの住人を演じてくれました。船越のねっとりとした真正のマザコンぶりには寒気がしたし、千石規子のキチ母像にも説得力がありました。そして何より緑魔子。正気を失っていく演技もさることながら、脱ぎっぷりがお見事でした。役になりきる演劇人の姿。裸の出し惜しみをしている人気女優のみなさんは、彼女の爪の垢でも煎じて飲むといいでしょう。緑魔子の妖艶な肢体なくして、本作は成立しなかったと思います。素晴らしかった。エログロ描写のさじ加減も絶妙でした。過ぎては一部の好事家向けになってしまうし、手ぬるいアプローチでは乱歩の毒は伝わらない。強いアングラ色を発しながらも、大衆性を失わなかった事を賞賛したいです。例えば四肢の切断シーン。スプラッター映画なら、大量の血しぶきと共に捥がれた腕を見せたでしょう。でも提示してしまったらそれ以上でも以下でもなくなる。直接的な残虐描写が幅を利かせている昨今、観客の想像力を利用した演出の優位性を再認識しました。乱歩の世界観を味わう映画としては、ほぼ満点の出来。洗練されていない美術セットや褪せたフィルムの色味も含めて、映画の味だと感じます。もしかしたら公開当時より30年経った今の方が、より鮮烈な印象を与えてくれる映画かもしれません。[DVD(邦画)] 8点(2010-05-13 21:08:41)(良:1票)

200.  小森生活向上クラブ 《ネタバレ》 軽いけど深い、笑えるけどシャレにならんブラックコメディ。軽快なBGMが物語のトンデモぶりとよく合っています。キャスティングは豪華だし、人物造形も悪くなかった。上等な『世にも奇妙な物語』という感じでした。『タクシードライバー』のトラヴィスよろしく、正義の名において悪人に制裁を加えていく主人公。彼の下に集う信奉者たち。そのグループの名は小森生活向上クラブ(KSC)。初めは自身の正義で殺す相手を選んでいたのに、いつの間にかKSCの意思に動かされていく小森の姿は、恐ろしくも滑稽でした。法律という枷を脱いで楽になったと思ったら、また違う束縛を受ける羽目になる。結局、人はコミュニティから逃れられない。それに、“正義”という言葉を恥ずかし気も無く使う人間を信用してはいけないと、つくづく思いました。私の正義とあなたの正義が同じことなど在り得ない。多くの人間が妥協できる基準が、あえて言うなら正義だと思う。国際社会の正義、国家の正義、会社の正義、KSCの正義、そして私の正義。全部違う。どれが本物?どれも本物。利権という言葉とどう違う?その程度のもの。正義は振りかざした時点でその価値を失うと思う。宗教、権力、恋愛。何でもそう。強い力に身を委ねたくなるのは人情だけど、自分の頭を使わないのは危険で愚かなこと。KSCの会員は小森の正義を借りて、自らの欲望を満たしました。仮初めの自分がやったこと。だから現実味が無い。まるで栗山と忍成のキスシーンくらい、全てがニセモノの人生です。彼らを哀れみ軽蔑しつつも、栗山千明嬢の○兄弟にはなってみたいと思ったオレってダメ人間ですか。そうですか。自分の正義が借物だったと知り、小森の自我は崩壊しました。代りに登場したのが奥方のアイデンティティ御殿。これから小森は、その宮殿を間借りして生きていく。現実逃避の脳内引きこもり生活は、まだまだ終わらない。安心楽チン、めでたしめでたし…んなわきゃない!終幕の後日談は、入れたくなる気持ちは判るけど我慢して欲しかった。砂上の楼閣が崩れるのは当たり前ですから。[DVD(邦画)] 8点(2010-03-29 20:09:23)

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