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プロフィール
コメント数 3873
性別 男性
年齢 53歳

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21.  長屋紳士録 《ネタバレ》 迷子になったのか、それとも親に捨てられたのか、という少年。とある長屋に連れてこられ、よりによって、長屋でも一番コワそうなオバチャンが世話をする羽目になる。まさに、鬼ババアってヤツです。バカだの、汚い子だのと、まあボロクソ。そのやり取りが、何とも可笑しいんですが、見てるうちに何だかホロリと来ます。いやこれがホントに。 最終的に描かれるのは、やはり、別れ。一刻も早く出て行って欲しい時には別れられないのに、別れたく無くなったときには、別れざるを得ない。結局、家出後の再会も、動物園も、写真館も、すべては別れへの前奏曲だった、ということでしょうか。 少年の父親が突然現れ、形式的な挨拶をし、別れ自体は機械的に進められていく。ここでこれが、娘を嫁に出す笠智衆だったら、絶対に涙を見せず寂しい笑みを見せるところですが、そこは鬼ババアですから、鬼の目にも涙、ってヤツです。 戦後の混乱期、ならではのオハナシでもありました。 ところで、こうやって見ると、小津作品でもフォーカス送りって用いられてるんですね。茅ヶ崎から帰ってきた場面で、奥の人物からゆっくりと手前の人物へとピントが移動したり。手前の鉄瓶から奥の人物へとピントが移動したり。[インターネット(邦画)] 9点(2022-05-23 22:44:43)《改行有》

22.  馬を放つ 《ネタバレ》 主人公のオジサン。結構、普通のヒトなんですよね。ツケで茶を飲んで、ついでに店の女性と浮気寸前、なんとか踏みとどまったりして。ちょっとした事件もある、普通の日常。 一方でオジサンは、他人が飼ってる馬をこっそり逃がしてしまう、という妙なクセがある。もちろんこれは犯罪。しかし、その背景には、馬とともにノビノビと暮らしてきた、遊牧民としての民族性みたいなものが、オジサンの心の一角を占めている、というのがあって。 民族の誇り。それは別に、意味も無く自分たちを持ち上げて自慢することなんかじゃない(そこは勘違いしちゃいけない点)。先祖から受け継いだものに対する、責任感、とでも言えばよいか。 しかし、誰もが同じ責任感を共有している訳じゃなく、時代は変わり、価値観も変わり、揺らぎが生じる。オジサンはいささか、ラジカルに過ぎたのかもしれない。けれど、それをただ排除すればいいのか? オジサンの正体は、実はこの映画の監督さんで(笑)、やはり、祖国の美しい景色を、飾ることなく在るがまま、しかし真摯に映画へと焼き付けています。主人公が映写技師だったというエピソードもまた、映画愛の表れのようでもあり、フィルムに収められた「古き良き時代」(イヤでもここには「良き」が付いてしまう)に対する郷愁の表れのようでもあり。 ラストは一種の悲劇、ではありますが、イマイチ頼りない主人公の息子が、主人公の何かを受け取ったのかもしれない、ということを微かに感じさせて、映画を締めくくります。[インターネット(字幕)] 9点(2022-03-13 12:30:35)《改行有》

23.  天使のはらわた 赤い教室 《ネタバレ》 過激な性描写があってこそ描きうる、切なさ、虚無感、そして人間の業に潜む狂気と恐怖。まさにポルノというジャンルの真骨頂。 物語を額面通りに受け取れば、「かつてレイプの現場をブルーフィルム(死語かな)に撮られ、自殺未遂を犯し、今また自分の前に現れた不器用ながらも誠実そうな男に裏切られ、自己破壊的な道を辿る薄倖の女性」。ってことになるのかもしれないけれど、この作品、印象としては、その枠に収まらない「何か」があります。 上述の物語の概要は、あくまで主人公・村木の視点によるものに過ぎない訳で。いや、彼の見ていないところで我々が目撃する彼女の姿からも、「そうかも知れない」と思わせるものがあるのだけど、それはあくまで「かも知れない」に過ぎない訳で。 結局、村木は、そして我々は、自分たちが勝手に描いた幻想に囚われ、苦しんでいるだけなのかも知れない。悲しい運命に絡め取られた女性、という幻影に囚われた、囚われざるを得ない、男の悲しき滑稽さ。残酷なまでの滑稽さ。 中盤の10分以上にわたって繰り広げられる、凄絶なまでの濡れ場シーン。ほとんどホラー、なんだけど見てて切なくもなってくる、人間の弱さ。ラスト、2人の姿を遠くから捉えたショットは、前半の公園のシーンの変奏でもあり、それだけに、もう元には戻れないという感覚が。そして女は、揺らめく水面の幻影の中に消えていく・・・。[インターネット(邦画)] 9点(2022-01-29 09:43:14)(良:1票) 《改行有》

24.  仁義なき戦い 広島死闘篇 《ネタバレ》 間違いなく仁義なき戦いシリーズの一本、という位置づけの作品ではあるのですが、菅原文太は脇に回り、物語の中心にいるのは北大路欣也。しがない若者の哀しき生き様が描かれます。一方、ワルそのもの、といった印象の千葉真一も光っていて。 ラスト近くのザラついたような映像が、凄惨とも言えるような迫力を出しています。降り続く雨の絶望感。追い詰められて自ら命を絶つ北大路欣也の姿には、戦場の暗い壕の中で自決していった若き兵士たちの無念が重ねられているのでしょうか。[インターネット(邦画)] 9点(2021-12-05 21:30:12)《改行有》

25.  不良姐御伝 猪の鹿お蝶 という訳でこの作品。池玲子姐さんとクリスチーナ・リンドバーグ、まさに和ピンと洋ピン二大巨頭そろい踏み、といったところですね(スウェーデン人なのでホントはリンドベルイとでも読むのでしょうか)。 ほぼポルノ路線に近い作品なので、脱ぐシーンが多いですけれども、二人とも単なる脱ぎ要員ではなく、ヌードや濡れ場が作品の中で絶妙なスパイスになってます。そして時には、ハダカがそのまま凶器ともなり得て、お色気と殺気とが目まぐるしく入れ替わる。 見所の一つが、池玲子姐さん演じる猪の鹿お蝶がマッパのままで迫り来る刺客どもをメッタ斬りにする、凄まじい殺陣のシーン。スローモーションの中、姐さんの裸体が舞い、血しぶきが噴き上がる。映画の神が降臨した瞬間、と言わせてもらって、いいですか? 勿論お色気とバイオレンスばかりではなく、主演二人がポーカーで勝負するシーンの緊迫感なども、ゾクゾクさせるものがあって見逃せません。 こういう驚くべき作品が、プログラムピクチャーの一本として当たり前の様に生み出されていく不思議。[インターネット(邦画)] 9点(2021-11-07 13:35:15)(良:1票) 《改行有》

26.  資金源強奪 3人組が、組織の非合法資金強奪を企む。 となると、その準備の過程が映画のメインを占めて、クライマックスでいよいよ強奪実行、みたいな展開を想像するところですが、この映画はだいぶ趣向が異なります。 強奪計画は映画最初の方で首尾良く成功し、残りの時間はどうすんだよ、と思う間もなく、物語はむしろそこから、どんどん転がり始める。3人組を追う組織は、その仕事を捜査四課の悪徳刑事に依頼、ここからがホントの現金奪い合いに。 二転三転する物語のオモシロさ、ってのも勿論あるのですが、それ以上に、3億円以上の現金というものが周囲の重力場を狂わせ、人間たちを振り回すオモシロさ。簡単な物語の仕掛けが際限なく推進力を生み出していくその様が、オモシロさに繋がってます。現金の行方は、そして生き残るのは誰なのか。 ラストの飛行場のシーンで待ち受ける「ちょっとしたオチ」が、意外なまとまりを感じさせたりして、とにかく活きのいい、サービス精神溢れる作品になっています。[インターネット(邦画)] 9点(2021-10-17 20:42:56)《改行有》

27.  日本大侠客 《ネタバレ》 石炭積み出しに沸く明治の北九州・若松を舞台に、侠客・吉田磯吉の半生を描く。とは言っても、とても実話とは思えない点が多々あるのですが、フィクションで誇張された漢気が漲った、これぞ痛快娯楽作、という作品になってます。ユーモアもあれば悲壮感もあり、ホントに面白いんだ、これが。 磯吉オヤブンを演じるは、鶴田浩二。気が良くって無鉄砲、愛される存在ではあるけれど、身内からすれば頼りないことこの上ない。そんな彼の成長譚みたいなところもあって、いや、まあ、最後までずっと頼りないっちゃあ頼りないけれど、でも人間、こうやって周りから徐々に頼られるようになって、ジワっと成長していくもんだよね、というのが、よく出ています。 方言によるセリフがまた、何とも言えぬ人間味を感じさせるし、さまざまな人間が集まってくる港町らしく、さまざまな方言が入り混じる(関西訛りの役者たち)のも面白いところ。エキストラの動員により、町の雑多な感じや、殺伐とした争い、といったものも、映画によく表れています。 商売人としてはサッパリだけれど、舎弟たちに愛され、仲仕たちに愛され、大物オヤブンにも愛され、しかし藤純子演じるお竜との切ない関係があったりもして。その他、病弱なヒットマンとか、人が好さそうに見えて実は剣の達人のオッチャンとか、脇を固めるキャラクターも多彩で、それぞれが忘れ難い存在感を示しています。 そして、若松を牛耳ろうと企むハゲ親父・岩万こと内田朝雄との、深まる因縁。ラストはもう、殴り込みならぬ、討ち入り状態で、準備のために集結した主人公たちの姿が、どえらくカッコいい。激しい死闘、そして最後に鳴り響く銃声。シビレます。[CS・衛星(邦画)] 9点(2020-12-29 04:14:24)《改行有》

28.  天気の子 公開開始時には何も言ってなかった小学生の息子が今頃になって「見たい」と言い出したので、一緒に見に行ったのですが(むしろ当初興味を示していた娘は欠席)、映画が始まってみると、劇中に、最近息子が興味津々のオカルト雑誌『ムー』が登場(ホント、血は争えませぬ・・・)。さてはコレが息子の目当てであったかと、映画が終わって彼を問い詰めると「いや、まさか『ムー』が出てくるなんて、知らんかってん」とのこと。それだけならまだしも、続けて彼が言うには「でも、『君の名は。』にもちょっとだけ『ムー』出てきたで」。ってオイオイ、オマエはいつからそんなムー的都市伝説を語るようになったんだ? ⇒でもこれは事実なんです、ハイ。『君の名は。』にも、床に伏せて置かれた『ムー』誌が、一瞬だけ登場します。息子曰く、「見てたらたまたま見つけた」とのこと。トホホ。 前置き長くなりましたスミマセン。それにしても、前作に続いてまた、心をチクチクと刺すような映画を作ってきますねえ。災害にあうことなく生き続ける者たちは、災害にあって死んいった人々に対し、何ができるのか、同情だけはしつつも結局は忘れ去って日常を送るだけじゃないのか、という問いを前作では突きつけられたように感じたのですが、本作ではさらにストレートに、我々の原罪を糾弾しているかのようです。「今の我々のぬるま湯のような生活は、不公平の上に成り立ってるんじゃないのか、誰かの犠牲の上になりたっているんじゃないのか、それをみんな分かっていながらノホホンと分かってないフリをしてるんじゃないか」という、痛烈な問い。突き刺さるなあ。 作品は例によってスピード感があり、これは、間を省略したような断片的なシーンを積み重ねる構成によるもので、「もうちょっと間をとってじっくり描くシーンも見たいなあ」と感じなくもないんですけどね。でも、このやや軽い語り口であっても、登場人物たちを印象的に描くことでちゃんと物語を盛り上げていくし、クライマックスの主人公が走るシーンへと繋がっていくのが、いいんですねえ。ここはあくまで、走り「続ける」。その姿の持つ魅力。 舞台となっているのが、雨が降り続く東京の街。異常気象ってのは、騒ぎすぎるのもどうかと思いつつもやはり、我々にとって昨今の大きな不安となっていることは事実。その中で、雨、水、といったものがアニメーションの中で巧みに取り入れられていて(「風」はあまり出てこない作品ですが)、印象に残ります。その雨の中のネオンサイン、あるいは雲が切れて太陽が顔を出す、光の描写もまた印象的。一方、日が差さない「暗さ」をアニメでどう描くか、ってのは、少し難しいところがありますねえ。[映画館(邦画)] 9点(2019-09-28 00:25:51)(良:1票) 《改行有》

29.  この世界の片隅に(2016) 最近も吉村昭の「戦艦武蔵」を読んでたら、この巨大戦艦を建造するという計画が極秘中の極秘なもんで、造船所の方を見てたというだけで一般人が片っ端から連行されてしまった、みたいな話が出てきて、巨大戦艦建造という一大プロジェクトの前には、個々の人間の運命なんて芥子粒みたいなものなんですけれども(そしてその膨大なエネルギーが注がれたプロジェクトの、果敢無い顛末)。 で、本作でもやっぱり、主人公がうっかり港の絵を描いてしまったばかりにどえらく叱られる場面がありますけれども、本作から受ける印象って、真逆なんですよね。戦時下だろうが何だろうが、あくまで市井の人々が中心にいて、その一人であるにすぎない主人公の姿が描かれる。その喜怒哀楽こそが、重大事件な訳で。戦時下には戦時下の暮らしがあって、「たくましく生きている」と単純には言えない、つらさ、恐ろしさとも向き合わなければいけないんだけど、やっぱり生きている以上は、生活していくしかない。そのとめどなく続いていく日常、ってのは、やっぱりこれは「たくましさ」なんだよなあ、と。 でも、かけがえのないものを失う悲しさ。物語の前半に登場する「指さし」の仕草が、印象的で。[DVD(邦画)] 9点(2019-08-01 22:00:28)《改行有》

30.  昭和おんな博徒 《ネタバレ》 大映の江波杏子と、同じく大映に島流しにしたのに(?)帰ってきちゃった松方弘樹とで、任侠モノ。という、東映の苦しい事情が見え隠れする任侠映画末期の一本ですが、このキャスティングが、どういう訳だかピタリとハマってしまうのです。 とにかく主演の江波杏子が、魅力的ですね~。女の脆い弱さと、女のしなやかな強さとを、見事に表現してます。一見、冷たい表情にも見えるのですが、ちょうど能面が角度によって異なる表情を表すように、不思議な陰影を見せる。 一方の松方弘樹は、と言えば、どんなにガンバっても貫録が無くって、一見、物足りない印象なんですが、観てるとこれもまた妙に役にハマってくる。江波杏子を心ならずも、しかし結果的に任侠の道へと引きこんでしまう存在。しかも彼女が映画を通じて第一級の侠客となるためには、物語上、彼は死なねばならず、彼女の肥やしとならなきゃいかんワケで、ちょうど、この頃の彼のお坊っちゃん顔の持つ果敢無さと、絶妙にマッチしてます。 もちろん彼が舞台から去っても、ちゃんと天知茂という後釜がいるから大丈夫。彼のエキスも吸い取ってますますパワーアップする女主人公。それにしてもこの、天知茂の眉間のシワの深いこと深いこと。どうやったらあそこまで眉間にシワが寄るのか。これはもう、「シワ芸」と呼んでもよいでしょう。[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-05-26 05:08:52)《改行有》

31.  早春(1956) 戦後の復興という、おおきな社会の変化が背景にあって。 池部良演じる主人公は大会社に勤めていて、まさに戦後、新しく構築されつつある秩序の世界。若い社員たちが集まって休日にピクニックにいったりするのがいかにも現代感覚。その一方で、戦後まだ10年ちょっとという時代、主人公は従軍経験があって、戦友仲間という、一種旧時代的な人間関係も有している。実際、この戦友ってのが、これでもかという加東大介顔をしていて(そりゃ本人だもんな)、いかにも古くさ~い印象なんですな。 主人公本人は池部顔ですから、顔立ちは新時代的。新時代過ぎて、不倫なんかをやっちゃってる。 この不倫を、周りの友人たちが見とがめてやめさせようとするのが、今の目からみると、まだこれでも古い倫理観、という声が出るかもしれませんが、「不倫=うらやましい」という本音の部分は、これはいつの時代も変わらないようで。 はたまた一方では、せっかく戦後まで生きのびたにも関わらず、病に斃れる友人もいる。生きていくことの大切さ。 年長者は年長者で、皆、それぞれの立場から実にいいコメントをくれる。特に浦辺粂子、なんという貫録、なんという迫力、なんという説得力。 という中で、最後は「やっぱりなんだかんだ言っても、夫婦が基本でしょ」というベタな結論に落ち着くんですが、それをこれだけ自然に見せられると、なんか感動しちゃうんですねー。[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-10-14 16:17:19)《改行有》

32.  博奕打ち 総長賭博 若山富三郎演じる松田の単細胞ぶりが、もう素晴らしくって(笑)。 いや彼に限らず、登場人物みなそれぞれが素朴な信念のもとに行動し、見事なまでにスレ違い、ボタンの掛け違いを繰り返して、物語を織りなしていく。破滅という名の悲劇へ、悲劇という名のパラダイスへと、否応なく突き進み、観始めたらもうやめられません。 各自の行動が次々に皮肉を生み出していく流れは、出来過ぎと言えば出来過ぎで、危ういバランスの上に立っているとも言えるのですが、その流れをしっかりと支えているのはやはり、役者それぞれが持ち味として発揮している、芸、ですね。鶴田浩二しかり、若山富三郎しかり、名和宏しかり。しかし何と言っても桜町弘子ですね、ホント。藤純子は少しワリを食っちゃったかもしれません。それぞれが演技を通じて、自分の信念を体現して見せることで、物語は、単なる図式的なものではない、血肉の通ったものとなりました。金子信雄の独特の顔芸は、さておき・・・。[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-09-29 16:34:04)《改行有》

33.  スチームボーイ STEAM BOY 《ネタバレ》 あの圧倒的なアニメーションの可能性を我々に見せつけてくれた『AKIRA』でも、「煙」の描写だけは今ひとつ不自由さが残った感じがあったのですが、本作は蒸気機関をテーマに持ってきて、正面からこの「煙」の描写に挑戦しています。半透明でつかみどころの無い蒸気の描写があれば、迫りくる巨大な塊としての蒸気の描写もある。 本作のオハナシはというと、蒸気機関という科学技術を手にした人間たちが、戦争ごっこを始めちゃう、ってなところですが、もちろんこの蒸気機関は、現代における核エネルギーの比喩として捉えることもできるでしょう。しかし本作は、そういう単純な喩え話による文明批判には、決してとどまるものではありません。この上なく緻密な作画とアニメーションによって我々の前に示される、膨大なメカの数々。科学技術がひとつの美学に昇華された姿を、まざまざと見せつけられます。そして、その巨大な科学が崩壊していく、クライマックスの壮大なカタストロフも、イデオロギー云々抜きに、我々の心を強烈に揺さぶるスペクタクルとなっています。 主人公、その父、祖父、という親子三代の科学者が、誰が善で誰が悪ということなく、それぞれの立場を貫いているのも良い。一番自由な立場の主人公が、一番自由に空を飛び交って見せる。 そして、これでもかと続く破壊のアニメーションが、ぴたりと動きを止める、クライマックスでの動から静への転換。感動的ですらあります。[DVD(邦画)] 9点(2018-08-26 17:16:01)《改行有》

34.  座頭市物語 居合いの達人だと言われる座頭市、「見世物じゃねえや」とつぶやきつつノラリクラリとかわして、なかなかその凄腕を披露しない。披露しなければしないほど我々の期待も高まり、この後でしょぼい居合いシーンなんか見せられたら承知しないぞ、という気分になってくる、そんな中で、勝新がついに見せる、息を呑む早業。あらゆる期待をさらに上回っていて、もうこの時点でシリーズ化決定でしょう(笑)。 座頭市の盲目の眼の向こうにある彼の内面を、我々は決して推しはかることができない。ただその謎めいた横顔から滲み出る、かなーり胡散臭いヒロイズムに、我々は惹かれるんですな。病でこの先いくばくも無いであろう剣豪・天知茂も魅力的で、かつ彼の存在が、座頭市の謎の人物像の側面にスポットライトを当ててみせる。 クライマックスは、敵対する二つの組の間の一大抗争に発展。スピーディな展開がここに極まって、大いに盛り上がるのですが、同時にそれは、できれば避けたかったが決して避けられぬ、天知茂との対決の時でもある訳で。ここまでのゴタゴタをすべて超越した、神秘的ですらある、対決なんですね。ああ、シビレるシビレる、シビレまくり。ここに至り、ついに、あの座頭市からも一瞬、その内面があふれ出すのです。 映画中盤、夜の場面ではきっとそこに炎があり、その揺らめきや、光源の移動が、事細かに描写されたりして。大映らしいロケ撮影もあわせて、いい雰囲気を作ってます。[CS・衛星(邦画)] 9点(2017-05-01 11:03:22)《改行有》

35.  テルマエ・ロマエ もう、バカバカしくって楽しくって。風呂ネタ(一部トイレネタ)でここまで楽しませてくれるなんて、いやはや、想像を絶する世界ですよこれは。 古代ローマの設計技師ルシウスが、なぜか現代の日本にタイムスリップしてきて、騒動を巻き起こす前半。すべて一人合点で勘違いしまくってるのだけど、日本の爺さんたちも負けじと勘違いしまくってる楽しさ。究極のすれ違いの果てに、「おフロ最高!」というキーワードを接点にした奇妙な意気投合が垣間見える、アホらしさ。 ときどき現れる謎のオペラ歌手(歌ってるのはアイーダの第3幕終盤ですかね)。ははは、もうこれ以上、笑わせないでください。 そんでもって、中盤からは、上戸彩が「ラテン語を勉強してきた」とか言っていきなりペラペラと阿部寛演じるルシウスと話しだす。そんなアホな、と思うけど、しかし実際、ここで物語がギアチェンジしたような印象があり、グッと我々を引き込んでくれます。 で、ドラマチックな盛り上がりを見せたのち、最後は、前半で互いに勘違いしまくりだったルシウスと日本の爺さんたちとの、お風呂好きパワーが見事に融合するという大団円。 一体、何ちゅう作品なんでしょね。[DVD(邦画)] 9点(2016-10-25 12:59:38)(良:1票) 《改行有》

36.  ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う 《ネタバレ》 確かにエロさの面でも圧倒されるのですが(笑)、エロさ以上に、映画の中で展開される世界に圧倒される作品でした。 冒頭からいきなり凄惨な場面が登場し、もう先が思いやられるわい、トホホ、ってなもんですが、一方で登場するのは竹中直人演じる冴えない中年男の「何でも屋」。滑稽でもあり哀愁も漂わせていて好対照、さてこの2つの世界がどう交わっていくのか、と。 竹中直人は芸達者だから、一見冴えない・でも時に勘が鋭く・結局は自らの誠実さに負けていく男を熱演しているし、大竹しのぶも芸達者だから、壊れかけのオバチャンを熱演しているし、井上晴美はこれはもう持って生まれた意地の悪さがそのまんま出た適役(知らんけど多分そんな気がする)。そんな中で、佐藤寛子だけは、ニュートラルな、映画の中でどんな色にも染まりうる存在となっています。 いや、ニュートラルというのは違うかな。彼女は作中でこれでもかと脱ぎまくってますが、シャワー、主人公の妄想、事務所の夜、ラストの廃坑、4回あるハダカのそれぞれが、映画の節目になっているとともに、彼女の多面性を象徴する場面にもなっています。彼女は、誰よりも同情されるべき存在なのか、それとも3人の女の中でも飛び切りのワルなのか。最初の2つのハダカはそれぞれに対応しているようであり、3つ目の一番エロい(笑)場面は、彼女の二面性、いや存在の二重性をそのまま表している(だからこそ、この緊張感)。で、ラストで彼女は自らを一体化させようとし、しかしもはや、分裂していくしかない。おお、まさにエロの起承転結とはこれのこと。 それにしてもこのラストで舞台となる廃坑、スゴいですね。深海のような世界、まさに人外魔境。しかし、前半で竹中直人が彷徨う東京の街も、こんな風に底知れぬ闇を湛えていて、このラストシーンと呼応するものが感じられます。 異世界へのいざないに抗えず引き込まれて行ってしまう主人公を、かろうじてこの世界に引き留めうる存在・東風万智子、いつも、忘れた頃に絶妙のタイミングで姿を現すんです。ナイス。 いや、見事な作品でした。[DVD(邦画)] 9点(2016-10-18 12:13:21)《改行有》

37.  肉弾(1968) たぶん、軍国主義というもの自体が悪なのではなくって、人間の愚かさが、歴史のある場面では軍国主義と結びついて大きな悲劇を引き起こした、ということなんでしょう。人間の愚かさというものは消えることなく、今この瞬間にだって、大企業病なり、地方自治の腐敗なり、あらゆるところにあらゆる形で結びついて存在し続けている訳で。ただあの大戦では、それがどれだけ大きな喪失と悲劇をもたらしたことか。その大きさが、「平均寿命」という簡単な数字で示せてしまう皮肉。 軍国主義のせいと単純に割り切って、過去に封印してしまい、あえて忘れ去ってしまう、それもまた人間の愚かさ。何も変わっちゃいない。ドラム缶に閉じ込められたまま、人知れず波間を漂い続ける、やり場のない無念と怒り。 一方ではまた、人間の生のひたむきさというものがあり、ほんのちょっとした幸せというものがある。我慢した後の放尿のような、ちょっとした幸せ。 ちょっとシュールで(しかしそのシュールな世界は、人間の愚かさが実際に過去に生み出し、今後もいつ出現してもおかしくない世界でもある)、ひたむきな生を、寺田農がまさに身体の極限をつくして表現しきっており、圧倒されます。[CS・衛星(邦画)] 9点(2016-09-18 08:23:41)(良:1票) 《改行有》

38.  トラック野郎 一番星北へ帰る 新沼謙治はいい人オーラ出しまくってるし、黒沢年雄はキャラ立ちまくってるし(その英語交じりのセリフ、あんた地獄組のボスか?)、田中邦衛に至っては『コンボイ』のボーグナインの生霊が乗り移ってます。という、素晴らしき登場人物たちが脇を固めつつ、何かと事件が起こり、事件が起こればまたそこに、地域ならではのさまざまな風物が織り込まれる。そのテンポのよさ。 そんでもって、メインとなるのは、桃さんと、ある母子との交流。桃さんがいかにも朴訥としていて、それがかえって泣かせるではないですか。失恋した桃さんが最後に挑む大仕事、彼の表情たるや、桃さんここで死んじゃう気なんじゃないかと。まさかね。でもいつになくカーチェイスも激しいような。 というわけで、珠玉の一本です。[CS・衛星(邦画)] 9点(2016-04-13 22:36:39)《改行有》

39.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 これは、宮崎駿監督がニュー・シネマ・パラダイス(特に完全版の方)を作ったらこうなっちゃうよ、という作品でしょうかね。 向うが映画への愛なら、こちらは空への憧れ、いや、空を飛ぶ飛行機の「美しさ」への憧れ。それも、この作品の主人公たる二郎さん、トト君よりもかなりタチが悪い。トト君の場合、ベースとして幼少期以来の映画への愛があったとしても、そこにアルフレードさんとの交流があり、少女エレナとの恋愛がある。だけどこの二郎さん、基本的に飛行機のことしか頭にない。それでも女性には優しかったりして、それも別に打算がある訳じゃなく本当に優しくって、それでもやっぱり飛行機のことばかり考えている、こういうヒトが一番、罪作り。 終盤で、病の奥さんが最後に布団をかけてくれたことにも気づいていない。この場面で、奥さんが寝顔から眼鏡をはずすのが印象的でした。そういや作品自体も、子供時代の二郎さんが眠って夢を見ている場面から始まったんでしたっけ。このヒト、何かとよく寝てる。そして飛行機の夢ばかり見てる。 何よりこの二郎さん、最後にはすべてを失いながら、まるで後悔も反省もしている気配がない。ニュー・シネマ・パラダイスより、はるかにはるかに重症です。 これが宮崎駿というヒトの一面なんだろうなあ、と。ホントに怖いヒト、その怖さが、他人を感動させる。 という自覚症状に向き合い、それを描ききった、総決算のような作品、なんですかね、これは。[DVD(邦画)] 9点(2016-04-04 19:13:59)(良:1票) 《改行有》

40.  日本侠客伝 チャンバラ映画ではない、任侠映画。健さんを始めとする登場人物たちは、敵をバッサバッサと斬り倒しまくるスーパーマンじゃなくって、命がけで相手に立ち向かっていく、生身の人間なんですね。で、任侠映画であると同時に、いやそれ以上に、この作品は青春映画でもあります。片思いも含めた、幾組かの男女の物語。それぞれに、相手への想いがあり、テレみたいなものがあり、その一方で信念を貫くと言えば聞こえはいいけど要するに破滅の美学みたいなものがあって。こういうのこそ、ロマンチック、というのです。[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-10-06 21:38:58)

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