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プロフィール
コメント数 2255
性別 男性
ホームページ https://twitter.com/BM5HL61cMElwKbP
年齢 52歳
自己紹介 あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2024.1.1


※映画とは関係ない個人メモ
2024年12月31日までにBMI22を目指すぞ!!

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1.  宮松と山下 《ネタバレ》 香川照之が記憶喪失の役者というとまるっきり『鍵泥棒のメソッド』ですが、本作の場合コメディ要素は皆無です。淡々と綴られる日常。その全てが映画の中のよう。なぜ男は記憶を失ったのか。というより、なぜ記憶を失う必要があったのか。不意に、いやいや、訪れるべくして訪れた「宮松が山下を取り戻す瞬間」をどうぞ見逃さないでください。さすが名優香川照之の演技力。必見です。 ところで主人公の犯した「罪」の重さとは如何ほどでしょうか。法律というより倫理の領分。状況がいまいち不明ゆえ観客が審判を下すことは出来かねますが、少なくとも男にとってはリセットボタンを押したくなる程に罪の意識があったのは間違いないでしょう。記憶を失っていた12年はいわば懲役刑のようなものか。いや現状から逃げ出し自身の罪と向き合っていない以上罪を贖ったとは言えませんし、そもそも罪は消えません。そういう意味では12年の歳月は懲役ではなく執行猶予期間が正しいかもしれません。ただ、そうであったとしても12年は長い。誰かが「大抵の問題は時間が解決する」と言っていた気がしますが本当にそう。究極的には寿命が来ればご破算ですし。山下が言う「家族の問題」は兄が不在の間に自然と解決したように見えます。実際のところは分かりませんけども。ただ傍目からみる分にはこれで正解だと思いますし、宮松も納得している気がします。 それにしても記憶喪失で役者を志す思考回路が興味深い。消えたアイデンティティを探す感覚でしょうか。あるいは自分が無いから何者にでもなれる理屈でしょうか。正直宮松は役者としては三流ですが、過去を取り戻した今、一皮も二皮も剥ける可能性大かと。やはり土台があってこそ人は跳べるのです。[インターネット(邦画)] 7点(2024-05-21 20:15:05)★《新規》★《改行有》

2.  最強殺し屋伝説国岡 完全版 《ネタバレ》 これまた『ベイビーわるきゅーれ』ファン必見!と言いたいところですが、あまり関係ないかも。本作の主人公、最強の殺し屋こと国岡が『ベイビーわるきゅーれ』で瞬殺された殺し屋と同一人物という確証もないですし。 それにしても阪元裕吾監督作品を観ていくと、伊能昌幸さんが如何に重用されているかよく分かります。勿論それも納得。格闘アクションのキレは絶品です。さらに凄いのは喧嘩の強さが全身から滲み出ているところ。顔つきと身体がもう狩猟民族のそれ。グラップラー刃牙が実写化されたらキャスティングされること間違いなしでしょう。そんな阪元監督にとって重要な手駒である伊能さんを『ベイビーわるきゅーれ』では端役で使っているのが何とも贅沢な話であります。 ちなみに本作はモキュメンタリー。作品ジャンルは、クライムでもなければサスペンスでもなく「コメディ」となりますのでお気をつけください。クライマックスの格闘シーンも北斗百裂拳のパロディと捉えて問題ないでしょう。[インターネット(邦画)] 7点(2024-05-08 00:15:36)《改行有》

3.  ある用務員 《ネタバレ》 これは『ベイビーわるきゅーれ』ファン必見。そう、ちさと・まひろの殺し屋JKコンビは本作の登場キャラクターだったんですね。つまり『ベイビーわるきゅーれ』はもともとスピンオフに当たる作品であったと。いや役名が違う別の世界線ならスピンオフにはならないのかな。でも殺し屋の名前なんて有って無いようなものですし。このあたりの判断は観客に委ねられている気がしますが。少なくとも本作の二人は単なる殺され役に留まらぬ見せ場が用意されていましたし、何より監督が彼女らにスターの可能性を見出しているのがよく分かります。扱いが丁寧。ボス戦よりも中ボス戦の方が見応えありという『キル・ビル』の栗山千明的スタンスの二人でありました。ちさと・まひろ(本作の役名はリカ・シホ)の登場だけで十分価値のある作品ですが、それを差し引くと今ひとつという感じがしないでもありません。全体的にもう少しアクションシーンのボリュームが欲しかった気がします。[インターネット(邦画)] 6点(2024-05-04 07:26:03)

4.  黄龍の村 《ネタバレ》 前半は堤幸彦監督風エセ民俗ホラーの笑い無しバージョン。後半は『ベイビーわるきゅーれ』の瞬殺モブキャラ男が実質主役のハイパーアクション。まるで『フロム・ダスク・ティル・ドーン』ばりの前後半別物映画でした。主要キャラクターまで交代制というのが面白い。前半で溜まったフラストレーションを後半でスッキリ解消。『ベイビーわるきゅーれ』のアクションが好きな方なら本作を問題なく楽しめると思います。[インターネット(邦画)] 7点(2024-04-22 23:51:35)

5.  ある閉ざされた雪の山荘で 《ネタバレ》 ネタバレしています。ミステリー作品です。未見の方はご注意ください。 「何だ雪山が舞台じゃないのか」から始まり「ビデオカメラで犯人探すミステリーとかありなの?」と終始訝しんだものの観終えてみれば納得。物語の構造も凝っていますし決して悪くありません。ただ釈然としない部分も。ネタバレ厳禁なので詳細は伏せますが、そもそも設定に無理があるような。 例えば本作では久我(重岡大毅さん)が探偵役をしています。でも初期設定上、仕込み以外の人は全員探偵役を買って出なくてはいけないのでは。そういう趣向のオーディション。でも彼以外誰も探偵らしい動きなどせずモヤモヤ。てっきり『名探偵登場』(懐かしい!)みたいな名(迷)推理合戦が見られると思ったのに。それにそもそも久我をこの場に呼ぶ必要ありましたか?一般的にミステリーで探偵が登場するパターンは「偶然」か「犯人があえて呼んだ」のいずれか。わざわざ探偵(部外者)を犯行現場に呼ぶなら当然目的があって然るべし。「目撃者、証人として」あるいは「本心では犯行を暴いて欲しかった」など。本作の久我はどれにも当てはまりま・・・と、ここまで書いて私は思い違いをしている事に気付きました。そう、久我こそがこの計画に最も必要な人物、キーパーソンではなかったのかと。もし犯人の思惑通りコトが運んだとして誰が得をするのかという話。一時的にあの人を満足させたたとしても、騙し通せるはずありません。いずれ嘘はばれるでしょう。あの人の「心」を救えなければ意味がないのです。それにはむしろ久我のような第三者の力が必要だったのではないか。水滸の中の人ではなく、外の人だから出来ること。彼に真相を解き明かしてもらい、いやあの人の心を解きほぐしてもらい、初めて目的が達成される仕掛け。そういう意味では久我にガチで推理力を発揮して貰う必要はなく、彼も仕込みの一員で良かったかもしれません。しかし、この説は否定しておきましょう。何故なら久我にはそこまでの演技力が無いから(失礼)。今まで彼は水滸のオーディションに受かっていません。彼が今回キャスティングされたのは、演技力ではなく人間性を買われたから。久我には初期設定どおり本気で探偵役(オーディション)を引き受けて貰ったのだと思います。もし期待通りに探偵役が出来なければ「アドリブ」で種明かしすれば良い訳で。みんなその辺は得意でしょう。久我とあの人を除く全員がグル(演技者)の可能性さえあると考えます。となるとやっぱり本作は「ミステリーではない」が正しいのかもしれません。 さて最後に結末について。綺麗に纏まった、そして驚きもある感動的なフィナーレで文句はありません。そうきたかという感じ。ただ私だったら全員を立たせてカーテンコールを受けさせたと思います。性格悪いですか。[インターネット(邦画)] 7点(2024-04-16 17:19:55)《改行有》

6.  大河への道 《ネタバレ》 通常の時代劇ではなく「もし伊能忠敬を大河ドラマにするならこんなプロットにしてみては如何ですか」と提案形式にしたところがミソ。目先を変えることが目的ではなく「ね、伊能忠敬を主人公にしなかったら大河ドラマにならないでしょ」が言いたい訳で。そう、本作は伊能忠敬没後にその意思を継ぎ日本地図を完成させた者たちが主役でした。なんと伊能忠敬はキャスティングさえ無し。思い切ったものです。歴史に名が残らぬ「庶民」にスポットを当てた物語は確かに大河ドラマ的ではないものの、むしろ私たち「庶民」の胸を打つ感動の逸話でした。遂に日本地図が完成しお披露目の時。大広間に敷かれた「大日本沿海輿地全図」に圧倒されます。まさに百聞は一見にしかず。地図を一目見れば、地図製作に費やされた膨大な時間や途方もない労力が瞬時に分かるというもの。この偉業に敬意を評さぬ者など居るはずもなく。しかもお上を欺き命を賭してまで大業をやり遂げたのは偏にこの国の民の為。その理念、いや意地と執念に自然と頭が下がり目頭が熱くなりました。これは掛け値なしに良いお話。本当に劇中劇そのままで大河ドラマにして欲しいくらい。タイトルは『日本地図』あるいは『伊能忠敬』で何の問題もありません。 それにしてもこの手の人情喜劇をやらせたら中井貴一は本当に上手い。安心して観ていられます。[インターネット(邦画)] 8点(2024-04-12 21:37:19)《改行有》

7.  隣人X 疑惑の彼女 《ネタバレ》 「人種差別」と「週刊誌報道の是非」をテーマとしてたSFサスペンス。その主張やメッセージを否定する気はありませんが、この物語でそれを言うのは流石に無理筋かと。だって宇宙人Xを移民や外国人、あるいは被差別民に見立てるのは飛躍し過ぎで逆に失礼ですし、利益優先主義の週刊誌への批判も本件にあってはむしろ公益性が認められるケースかと。差別は憎むべき愚かな行為で間違いありませんが、未知なるものを怖れる感覚は生き物の自衛本能として当然です。宇宙人Xが、人間と見分けがつかないばかりでなく価値観を共有でき生殖も問題ないなんて、そんな都合の良い話を誰が信じるというのでしょう。仮にそれが真実だとしても、人間と異星人の交配を是とするのは種の尊厳に関わる重大案件であり当人が「知らなかった」はあってはならないこと。外国人との結婚や所謂「多様性を認める社会」等と同次元で語れる話ではありません。つまり主張が正しくとも、例示が適切でないため説得力を失ってしまうケースと感じました。喩えるならカレーライスを便器型の皿で提供するような。どんなに美味しくても台無しです。おっと、この喩えは下品かつ頓珍漢でしたか。 ところで日本政府のX容認政策は、某国のマリファナ合法化と同類であり「もうXを排除できないほど人類に溶け込み同化している」を意味していると考えられます。となれば前述の「種の尊厳」を問う段階はとうに過ぎており、好むと好まざるとに関わらずXを容認するより他に道がない状況と推測されます。労働力不足解消のため外国人技能実習生を受け入れまくっている何処かの国の現状と大差ないような。いやはやファンタジーにしては問題が切実過ぎて滅入ります。もっとも同種で殺し合いばかりしている地球人より、Xの性質を受け入れ平和に暮らせるならその方が幸せかもしれません。地球人として凄く負けた気がしますけども。 最後にキャスティングについて。久々に上野樹里さんを観た気がしますが大変素晴らしい。三十路半ばの独身女性の何処か寂しげな憂いの表現が絶品でした。一躍人気者となった「のだめ」当時も輝いていましたが、さらにステージが上がったようで大変好感が持てました。正直本作の上野さんであればXであろうとなかろうと関係なく、同じ「生き物」として一生を添い遂げたいと思えるほど魅力的だったと思います。おっと、妻帯者の不適切発言失礼いたしました。[インターネット(邦画)] 6点(2024-04-07 22:25:08)《改行有》

8.  嘘八百 なにわ夢の陣 《ネタバレ》 ネタバレしています。ご注意ください。 おそらく当初の骨董詐欺計画は、相対する2つの秀吉博どちらかから多額の金銭を騙し取ることだったと思われます。しかし波動画家から自身の作品との物々交換の申し出を受け入れた時点で、小池の中で品物はおろか詐欺の目的まですり替わった気がします。金銭による売買であろうと物々交換であろうと基本は同じ「等価交換」です。等価でないから詐欺というわけ。チームかわうそ堂が創り上げた鳳凰椀と、霊感商法の波動画家の絵画。どちらも同じ「紛い物」。あるいは実態のない幻。小池に下心(信者に画を高値で売りつける魂胆)が無かったとは言いませんが、この時点では全うな等価交換であり売買だったと考えます。小池、佐輔、波動画家それぞれの思惑に違いこそあれ、共通するのは「浪漫」でした。それは偽物を本物に、幻を実物に変えること。秀吉七品幻の鳳凰然り、まだ芽が出ぬ芸術家の人生然り。波動画家の方は一足早くその浪漫を現実のものとしました。次は佐輔の番。でも「今すぐに」という訳にはいかないため、物語の都合上波動画家の画を「適正価格」で手放す必要があったのでしょう。その額100万円。この売値は今現在の贋作作家・佐輔の値打ちとも言えます。佐輔が陶芸家として世間から認められた時、作品の値段は10倍いや100倍にも跳ね上がり、鳳凰椀も本物に変わるのだと思います。 元々本シリーズは『オーシャンズ11』や『コンフィデンスマンJP』と同カテゴリーに類される「営利目的の犯罪エンターテイメント」でした。しかし本作からは「営利目的」や「犯罪」の冠が取れた気がします。いや「実体が定かでない幻の品」を「世間に本物と偽った」から「犯罪」に違いはないのかな。歴史学ってそんなものだという気もしますが。いずれにせよ「胡散臭い骨董業界」の「丁々発止の騙し合いバトル」から「まだ世間から認められていない芸術家」であっても「創作へかける情熱に嘘はない」へ物語の焦点がシフトしました。この変化が『ルパン三世』シリーズにおける『カリオストロの城』にあたる「例外」なのか、あるいはギャグ漫画からバトル漫画へ路線変更した『キン肉マン』タイプの変化なのか、次作を観てみないことには判別がつきません。個人的には虚々実々の詐欺合戦の方が好みですが、前作の感想でも触れたとおり狭い骨董業界内で詐欺を繰り返すのはそもそも無理がある設定です。この路線変更は必然かもしれません。ドラえもんが秘密道具で、ハットリ君が忍法で困りごとを解決するように、小池・佐輔コンビは骨董詐欺で問題を解決する。面白いじゃないですか。大人のブラックファンタジー。願わくは、佐輔が贋作作家のまま終わりませんように。[インターネット(邦画)] 6点(2024-02-09 20:26:33)《改行有》

9.  さかなのこ 《ネタバレ》 世に数多存在するサクセスストーリーは「目標を掲げ」「弛まず努力し」「挫けず諦めず」「成功を勝ち取る」が基本です。その点本作は全く当てはまりません。好きな事を続けていたら人気者になれた話。メッセージは極めてシンプルで「好きなことをしよう」です。これは「自分らしく生きることのススメ」でもありました。『そんな綺麗事言ったって結局は成功者の自慢話じゃん』にならないのが素晴らしい。そのためにわざわざ本人(原作者)を登場させ「さかなクンが世に出なかった場合」もフォローしています。彼は不幸せに見えますか?人生の勝ち負けとは「お金」でもなければ「社会的地位」でもありません。楽しく生きた者勝ち。そこに出自や性別、健常性といった属性は関係ないのでしょう。とはいえ「お金は無くていい」「社会に認められなくていい」「好きなことだけすればいい」ではありません。ミー坊はきちんと報酬を受け取っていますし、魚の絵が評価されたのもTVで人気が出たのも社会のニーズと合致したから。よく伊集院光氏が師匠・三遊亭円楽の言葉として『好きなことに社会性を持たせろ。そうしたら食っていける』を紹介しますが、まさに本事例のこと。ただ残念なことに皆が実践できる生き方ではありません。「運」の要素は少なからずあります。実際ミー坊はついていました。彼の成功は「子の好きを肯定し続けた母親」と「よき理解者の助力」があったればこそ。とくに母親については(嫌な言葉ですが)「親ガチャ」と呼ぶくらい完全に運任せです。「あの母親にしてミー坊あり」なのは間違いありません。たぶん我が子の生まれ持った性質上「出来ないことを出来るようにする」は多大な苦しみが伴い幸せを遠ざけてしまう。それなら「好きなこと、やりたいことを全力で応援する」へ教育方針の舵を振り切ろう。そう決断したのだと思います。これは生半可な覚悟ではありません。「普通」を捨てることだから。もしかしたら離婚原因の一端では。そうだとしたら夫とお兄ちゃんは大変お気の毒ですが「腹を括る」とはこういうこと。母親はミー坊の幸せだけを願ったのです。その強い思いこそ「愛」であり、尊くもありますが恐ろしくもあります。 実は本編冒頭の「男か女かはどっちでもいい」でズッコケました。あぁ~しらきかと。そんな事は物語を通じて伝えればよい話で、わざわざ最初に断るなんて野暮もいいところ。あまり期待できないと感じました。ところがどっこい。もうずっと可笑しくて。本当に全部楽しかったです。それでいて寂しくなったり、辛くなったり、嬉しくなったり、グッときたり。大いに揺さぶられました。脚本が良いのは勿論ですが、それ以上にキャスティングが神懸っておりました。何といっても主演ののんさんが素晴らしい。ミー坊役がフィットする男性俳優さんなら沢山思いつきますし、雰囲気重視なら「もう中学生」もイケそう。それなのに、あえて役と性別が異なる女性俳優を選ぶとは。『福福荘の福ちゃん』じゃあるまいし。ある意味博打だった気がしますが、ジャンボ宝くじ1等級の大当たりじゃないですか。あえて「男か女かは~」と宣言した監督の気持ちも理解できるというもの。もう「のんミー坊」にゾッコンでした。自分のナイフは魚臭くなるから嫌だとか、ししゃもの種類で店員に酔って絡むとか、ミー坊が映る全シーン全カットに釘付けでした。破格の愛らしさとでも申しましょうか、人間性の「旨味」に溢れていたと思います。のんさん(能年玲奈も含む)主演作品は『海月姫』と『この世界の片隅で』を鑑賞済みでしたが、これほど魅力的な役者さんとは気づきませんでした。面目ない。替えが効かないオンリーワンな俳優さんだと思います。脇を固める皆さんも最高でした。友情厚い狂犬、実は気のいい総長、シャツの網目が広すぎるカミソリ籾、トホホなバタフライナイファー(そんな言葉はない)、胡散臭い成金?歯医者、憂い多きモモコさんに顔が優勝娘ちゃん、もちろん強くて優しいお母さんも。例外は先生(ドランクドラゴン鈴木)くらいかな。うそうそ冗談です。もう全員大好きです。やはりコメディはキャラクターが命。これだけ素敵な人を揃えられたら文句の一つも出てきません。奇を衒ったようにも見えますが、王道の人間賛歌であり愛の映画でありました。年明け早々こんなに長文になってしまい申し訳ありません。いつもはこの半分くらいを目安に感想を纏めるよう心掛けていますが今回ばかりは無理でした。それだけ「語りたくなる映画」という事でお許しください。本編も2時間20分もあることですし。[インターネット(邦画)] 10点(2024-01-01 00:00:00)(良:1票) 《改行有》

10.  アイの歌声を聴かせて 《ネタバレ》 令和の『鉄腕アトム』くらいのつもりで観たら、新訳『僕らの7日間戦争』いやいや別解『ターミネーター3』でしたか。嘘うそ。冗談です。とはいえ想像以上に考えさせられる物語で、本作をどのように捉えたらよいのか非常に迷うのは事実です。右脳(感情)で捉えるなら、シオンちゃんはウザくもありましたが親子愛の結晶として感じ入る点がありました。でも左脳(理性)を優先させると正直いって恐ろしい。取り返しのつかない事態に思えてなりません。そう「クマさん可愛いから森へ逃がしてあげようよ」案件と変わらない気がします。いや脅威レベルで言えばアンゴルモアの大王を天空に放ったようなものでは。下手すりゃ人類終わります。もっとも、現実世界でも何時だって終わりにする用意は出来ている訳で。そうか、もっと大局的にみる必要があるのかもしれません。世界大戦かウイルスか、はたまた巨大隕石か分かりませんが、いつか人類が滅びたときの後継者が誕生したハッピーバースデーと考えれば良いのかも。人類の意志を継いでいくのがシオンちゃんなら、それはそれで悪くない気がします。 以下余談。地元がロケ地になったとの噂を耳にし見覚えのある景色を探しましたが全く分からず。結局ネットで答え合わせをしましたが、流石にこれは分かる訳ありません。というか本当に其処で合ってますか?というレベル。島国日本ですから、海辺のロケーションは何処にだってありそう。もちろん聖地巡礼で来て頂くのは有り難い限り。地元唯一の映画館も盛況だったようで何よりです。ありがとうございます。[インターネット(邦画)] 7点(2023-12-29 18:21:48)《改行有》

11.  禁じられた遊び(2023) 《ネタバレ》 ネタバレしています。ご注意ください。 主演は橋本環奈さん。ジャパニーズホラーで今最も引く手あまたの女優さんでしょう。可愛らしい顔立ち、高すぎない身長、ほどよい演技力(皮肉ではなく褒めています)。ホラーで重宝されるのも頷けます。美しい顔が恐怖に歪む様は、楳図かずおの恐怖漫画から抜け出して来たかのよう。さらに言うなら本作の演技プランは今までになく「盛り盛り」でした。何と言いますか「やってんな」という感じ。本来なら過剰な演技はマイナスですが、本作のテイストには丁度いい。そうトンチキホラーには、これくらい癖が強くないと負けてしまいます。ファーストサマーウイカさん、シソンヌ長谷川さんらバラエティ畑で活躍されている役者さんの好演も本作のトンチキ加減に拍車をかけていました。みんな発注どおり「やってんな」と。それはそれで悪くありません。 超能力を拠り所とする心霊現象という点で中田監督の出世作『リング』と類似設定を有する本作。しかしながら受ける印象はまるで正反対です。片や本格ミステリーホラー。片やトンチキホラー。これは物語の骨格の違いによるものでしょう。「呪い」をアカデミックに解釈したかの作品に対し、本物語の災は「浮気疑惑の揉め事」と「子どもの我儘」に集約されました。程度が低く、かつ傍迷惑。これは聞き分けの無い子どもが悪いのではなく、諫めない、叱れない父親が悪い。子が母親に生きていて欲しいと願うのは当然の話で、のこのこ生き返ってくる母親が悪いのです。しかも子を心配するでもなく、夫の浮気疑惑に執着するなんて筋違いも甚だしい。潔く死になされ。これがホントのモンスターペアレントでした。 騒動に対するオチの付け方は詰まるところドリフの爆発オチと同義。エピローグの脈絡の無さや節操の無さも含めて、つくづくトンチキだなあ思う訳です。『事故物件 恐い間取り』『“それ”がいる森』そして本作と、ここまでトンチキホラーを連発されるとむしろ清々しく、逆にアリなんじゃないかと思えてくるのが不思議です。もはや中田流トンチキホラーとして確固たる一ジャンルを築いた感さえあります。これは皮肉ではなく、わりと本気で感心しています。[インターネット(邦画)] 4点(2023-12-13 22:26:59)《改行有》

12.  スイート・マイホーム 《ネタバレ》 ネタバレあります。ご注意ください。 主人公の兄が言う「あちらこちら(家の天井や床下)にいる害なすもの」とは何でしょう。自分(兄)には見えるが、お前(弟=主人公)には見えないもの。一般的には「ネズミかゴキブリ」を連想すると思いますが、本件では本当に天井と床下に「害人」が居ました。この真相には脱帽!ネズミかゴキブリと大差ない点にも唸らされます。更に言うなら害人から発せられる「悪意」も害なすものに含まれるのでしょう。「憎悪」「敵意」さらに「背信」も。これらは人の命を奪う脅威となり得る恐ろしいものでした。厄介なのは、一見して判別できないこと。あの人の悪意は「親しみ」に擬態しましたし、かの人の「気遣い」は「嫉妬」に読み違えられました。残念ながら人は見た目に騙され易い。本物の悪意を見抜けず裏をかかれた主人公は大切な家族を失いました。もっとも最後に待っていた悲劇は主人公の身から出た錆。見なくてはいけないものは見えないのに、見せたくないものは見えてしまう皮肉。いや主人公の場合は現実から目を背け続けてきたのですから、見えないのは当たり前。溜まりに溜まったツケを払わされる時に破滅を伴うのは世の常と言えましょう。 冷静になれば「そんなわけあるかい」な設定ばかりですが、なかなか言い訳が上手い。空調の集中管理システムがネズミの生息を可能にすると。多分裏設定に「忍者の末裔」も隠されていることでしょう。知らんけど。そもそも「そんなやつに接客させるな(怒)」とも思いますが、慢性的な人手不足や日本の雇用制度を考えれば「無い話では無い」かもしれません。あな恐ろしや。 最後にひとつ確認を。主人公の兄を刺したのは誰でしょう。劇中では「あの人」ということで事件処理されていますが、警察のいうように所詮は「死人に口なし」です。悪意を見抜ける兄(大の男)が不覚をとる相手と考えれば、おそらく真犯人は「あの方」でしょう。いや「あの方」を狂わせた元凶を突き詰めるならば、最も責められるべきは言わずもがな。裏テーマは「不倫。ダメ、ゼッタイ」です。[インターネット(邦画)] 8点(2023-12-12 18:29:34)《改行有》

13.  愛ちゃん物語 《ネタバレ》 成長に必要なこと。良質な栄養を適切なタイミングで摂取すること。多過ぎても少な過ぎてもいけませんし、タイミングを逸してもいけません。また有害物・阻害物を取り除くことも重要です。農作物の場合は主に「水」「肥料」「農薬」を用いて品質管理をしますが、人間の場合も変わりません。ほったらかしでは育たない。しかも「心」と「からだ」両方の面倒を見なくてはいけません。考えれば考えるほど子育ては「無理ゲー」だなと思うわけです。ですから愛ちゃんを「箱入り娘」にした父親の気持ちは理解できます。とりあえず悪い虫が付かなければ安心ですから。でもこれで万全でないのは言わずもがな。もし愛ちゃんが父の課したルールを従順に守り高校生活を終えていたらと考えると・・・。女子高生の成長に必要なのは「おしゃれ」「お化粧」「門限破り」「友達とカラオケに行くこと」で合っています。たぶん。とりわけ心の栄養は「経験を積むこと」「様々な価値観に触れること」で供給されます。もちろん「良いもの」だけを選べればベストですがそれは無理。そもそも何が「良い」かも分かりませんし。ですから「一般的なこと」を「しかるべきタイミングで」「きちんと経験しておくこと」が心の栄養のリスク管理的に適切と考えます。そういう意味で聖子さんとの出会いは僥倖でした。愛ちゃんは良きタイミングで箱から出られたと思います。亡きお母さんの愛情が、聖子さんを通じて愛ちゃんに届いたのかもしれません。 主演は坂ノ上茜さん。BS-TBS『町中華で飲ろうぜ』の『伝道師』としてお馴染みの元気娘。もちろん成人しており実年齢と役柄との年齢差は10歳程度かと。よく見れば成熟していますがこの程度なら許容範囲でしょう。顔立ちも可愛らしい童顔なので全く問題ありません。一方女装家の聖子さんを演じたのは黒住尚生さん。劇中の設定だと愛ちゃんの母親と同級生ですが全然そうは見えません。愛ちゃんより少し年上くらいでしょうか。実年齢は2歳差だそう。つまり坂ノ上さんは10歳若くサバを読み、黒住さんは20歳ほど老けサバを読んでいる計算になります。同年代の2人が同一方向へサバ読んでいるならいざ知らず、反対方向にサバを読んでいるため違和感が半端ありません。この年齢差は女装メイクで誤魔化せる範囲を超えていました。だから「キャスティングに難あり」と言うつもりはなく、聖子さんから「母親の同級生」という設定を無くせばいいだけだと思います。それで物語から深みが消えるわけでもありません。2人以外の役者さんについては「難あり」かな。あるいは「味」かな。演技がちょっと気になる人もいるかと思います。 ポジティブ且つライトな少女の成長物語。不穏な展開になる要素を孕みつつも、コメディテイストが強めに効いており終始心穏やかに観ることができました。最近ストレスフルな事ばかりだったので、今の私にとっては「丁度良い塩梅」の楽しい愛のお話でした。6点と7点の中間くらいですが、伝道師加点で繰り上げとします。[インターネット(邦画)] 7点(2023-12-09 18:59:17)《改行有》

14.  探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 《ネタバレ》 「朝から晩まで」あるいは「24時間」のお話かと思いきやさにあらず。また宇宙人捜索の依頼から始まる現在進行形の数日間の話でもなく。タイトル「最悪な1日」とは回想シーン(過去エピソード)の中に在りました。幼いマリコが父を手に掛けた日。この日を境にマリコの生き方が決定づけられたと考えます。心優しきニンジャのお陰で自死は免れたものの、ずっと金縛りの人生。いや自らに懲役刑を課したのかもしれません。歌舞伎町はマリコにとっての牢獄でした。多分本人はそれなりに愉しくやっているつもりでしょうが、傍から見ると不憫でなりません。もう罰は十二分に受けたでしょう。宇宙人の帰還は旅立ちの示唆。ニンジャの蘇生は「生まれ変わり」のススメ。マリコには好きな所で自由に生きて欲しい。私が親ならそう思います。 「探偵」と銘打つほど探偵業のシーンは多くはなく、専らマリコと周りの人々の悲喜交々、いや悲哀や惨事が描かれていました。一部コメディ風味ではあるものの、エグいエピソードの連続で正直居畳まれません。救いや希望があるわけでもなし。ブラックコメディというよりは、胸糞コメディ。これは大変に難しいジャンルです。例えば渥美清クラスの主役であれば「個の力」(カリスマ性)で『よく分からないけど結局いいお話だった気がする』マジック発動が期待できますが、伊藤沙莉さんにそれを望むのは酷というもの。そう、現時点では。将来的には樹木希林さんを凌ぐような怪優になって欲しいと密かに期待しておりますけども。 観る人を激しく選ぶ映画なのは間違いなく、伊藤沙莉さん&竹野内豊さんの好感度オバケコンビの楽しいコメディドラマを期待すると酷い目にあうのは間違いありません。どうぞご注意ください。[インターネット(邦画)] 6点(2023-11-04 22:53:42)《改行有》

15.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 正直「そこまでやるか!?」と思いましたが、これが山崎監督の出した『最適解』なのでしょう。傑作『シン・ゴジラ』の次という『貧乏くじ』を引き受けた監督の並々ならぬ覚悟というか自棄糞というか、兎に角凄い「心意気」をしかと受け取りました。ドラマチックはリアリティを凌駕する。大・大・大拍手です。ただ、オチの付け方に注文を。首筋のアレは個人的には必要なく、エンドクレジット前の数秒のシーンは絶対に要らないです。[映画館(邦画)] 9点(2023-11-04 12:20:00)(良:1票)

16.  沈黙のパレード 《ネタバレ》 ネタバレあります。ご注意ください。 黙秘を貫き通し無罪となった過去を持つ犯人へ「沈黙」を武器とした報復を。宮沢麻耶の台詞「沈黙は罪になるのですか」が意図するのはこれ。またタイトルが意味するところでもあります。共謀者全員が「知らぬ存ぜぬ」を突き通せたなら、仮説と状況証拠だけでの犯罪立証は難しかったのでは。ですから団結して口を閉ざす人々の心をどう開かせるかが物語の焦点・・・のはずだったのですが、一人があっさり自供して腰砕け。そう、身も蓋もない言い方ですが犯人への恨みの度合いは人それぞれ。いみじくも戸島修作が言った「悔しさの次元が違う」は関係者全員に当てはまりました。「殺してやりたいくらい憎い」と「殺す」とでは天と地ほども差があるということ。「覚悟」の違いとも言えます。現代日本において仇討ちを(自身の心の内であっても)正当化するのは難しい。それだけ多様な価値観が認められ、遵法精神が浸透した成熟した社会という事なのかもしれませんが。 もっとも本件の場合、純粋な復讐劇ではありません。入り口は復讐でも出口は怨恨。実行犯は私的な事情で犯行に及んだ事が判明しました。殺害動機の裏に「隠された真実」あり。ところがこの隠された真実とやらがどうにもお粗末で。「本当は殺してないのに殺してしまったと思い込む」は理解できます。錯乱していれば尚更です。しかし今回のケースは無理があり過ぎました。あれで死ぬなら、私は今までに3回は死んでいます。せめて傍から見て「そう思い込んでも仕方がない」くらいにはリアリティが欲しいわけです。突き飛ばした場面はあくまで回想の中の出来事。尖った岩や遊具の角に頭をぶつけたと事実を誤認(記憶を改ざん)してください。それで初めて「髪留めからは血痕が検出されず」という「事実」が「実は殺していなかった」という「真実」に変わるのですから。 映画化もされているアガサ・クリスティの某有名ミステリーと同じ集団復讐。ポイントは「私人による復讐は許されるか」ではなく「真実を知って目を瞑ることは許されるか」です。共謀者たちには「黙秘権」が認められているので当然に可。しかし黙秘権は草薙刑事には及びません。望まぬ真実であろうとも追及し詳らかにするのが職業倫理でしょう。問題は湯川先生。事件に関与していない湯川先生に「黙秘権」は発生しませんが「沈黙」が罪になる訳でもありません。でも気づいてしまった事実を知らなかった事にするのは性分的に無理でしょう。それが研究者の性だと思います。今回真実を暴いた清算はいかほどか。自分が人殺しだと思い込んでいたあの人は救われました。実行犯のあの人の罪は重くなりました。その他の関係者は概ね罪が軽くなりました。言い方はあれですが関係者全体の損得勘定で言えばプラス査定と言えそうです。 殺人方法は奇想天外でもなければ、専門家以外扱えない特殊な技術も必要ありませんでした。その為かお約束の「湯川先生の数式推理シーン」は無し。久々のガリレオシリーズ、しかも劇場版と考えれば些か寂しい気もしますが、TVドラマ版ファーストシリーズのレギュラーをキャスティングした功績により不問とします。やはりオリジナルメンバーというのは良いものです。ただ、ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても平坦な印象で「見応え」があったとは言えず、本作に対する評価は「キャスティングがいい」「KOH+の新曲が聴けて嬉しかった」に集約されてしまいます。[インターネット(邦画)] 5点(2023-10-17 18:17:51)《改行有》

17.  宇宙人のあいつ 《ネタバレ》 ネタバレあります。ご注意ください。 主要登場人物それぞれに「課題」が設定されていました。長男・夢二は「結婚」、長女・想乃は「未婚の妊娠」、三男・詩文は「元級友からの復讐」、そして次男・日出男こと土星人トロピカルは「故郷に誰を連れて帰るか」。長男の件は兎も角も、残り3人の課題はかなりシリアスな部類。どう決着をつけるのかと固唾を呑んで見守っておりましたが肩透かしを食らいました。三男は何故和解できたのか謎ですし、長女の案件についても対応が的外れ。戦っているようで、実は全然戦っていません。極めつけはメインストーリーである次男の課題。物語冒頭で「結果」が開示されていました。『コロンボ』『古畑』スタイルのミステリーならいざ知らず、いきなりネタバレとはこれ如何に。このケースで考えられるのは「意外な真相」パターン。てっきりビッグ鰻を家族として連れて帰るものと予想していましたが大外れでした(そういう伏線ありましたよね)。つまり日出男ことトロピカルの課題は何も解決していません。振り返れば長女だって本当にそれでいいの?という決着。そう、本作の課題解決スタイルは「問題に正面から向き合わない」でした。細かいエピソードなら「サイドミラー破壊事件」、大きな括りなら「家族のかたち」にもこの法則が当てはまります。大人4人が食卓を囲み、何かあれば家族会議。微笑ましいと感じる一方、どうにも心がざわつきます。日出男が抜け、想乃の子が加入する未来。この「家族のかたち」を維持していくのが本当に幸せなのでしょうか。家族に縛られていたら自分の人生を生きられないのでは。特に心配なのが長男・夢二です。両親を亡くしてからは家業を継ぎ、大黒柱として一家を支えてきました。それが彼のアイデンティティ。「家族のかたち」は「幸せのかたち」でもあります。でも20年、30年先を見据えたらどうでしょう。いつかリセットボタンを押す日が来るかもしれない。その時、夢二は何歳ですか。勉学、恋愛、就職、結婚、出産、育児。かつては半ば「義務」であったこれら人生の課題には「適齢期」があり「家族」の形式維持に必要でした。その点、現代日本で必修課題は無くなりました。何をして、何をしないか「自由」です。ただしその結果は引き受けなくてはいけません。まさにトロピカルには自身の選択に対する清算が待っている訳ですが。私は当初夢二の課題を軽視しましたが、本当は一番真剣に取り組まなければならない、切羽詰まった課題なのかもしれません。 役者の皆さん芸達者揃い。キャラクター造形も素敵ですしファミリードラマ&SFコメディとして上質だったと思います。構造は「古き良き日本の家族、その愛と絆に笑いを添えて」が包皮、「日本人の価値観変化と社会が抱える課題」が中身と判断します。外側は口触りが良く楽しいので、そこだけ食して気分よく終わるもよし、丸ごと噛み砕いて芯に隠された苦みまで味わい尽くすもよし。公式HPをみると前者推奨のような気もしますが、監督としては当然後者を望んでいるはず。違いますかね?伏線未回収や問題解決のポイントずらしは故意としか思えず、私は監督を「一筋縄ではいかない曲者」とお見受けしました。でも「考えすぎ」も否定できません。いずれにせよ私の力量では本作のみで監督の正体を見極めるのは困難であり、予想外に「難しい映画」だったという評価です。[インターネット(邦画)] 7点(2023-10-04 18:55:56)《改行有》

18.  岸辺露伴 ルーヴルへ行く 《ネタバレ》 『デビルマン』や『北斗の拳』を引き合いに出すまでもなく、ファンタジー漫画やアニメの実写化が難しいのは衆知の事実です。爆死必至の禁断のジャンルにあって、TVドラマ版『岸部露伴は動かない』は稀有な成功例のひとつと言えましょう。成功の要因は、ひとえに実写作品に必要な「リアリティ」を担保した事と考えます。奇しくも岸部露伴が好きな言葉。パッケージの再現に気を取られることなく「作品の本質=魅力の源泉」に注目した制作姿勢が功を奏しました。一度かみ砕いてからエッセンス・旨味成分を抽出し現実にフィットさせる手法は、原作、いや荒木飛呂彦ワールドに対する深い理解と敬意が成せる業でありました。本作はそんなTVドラマ版のキャスト・スタッフが再集結した映画だそう。TVドラマ版のファンであれば違和感なく楽しめる作品であったと感じます。 以下ネタバレを含みます。ご注意ください。気になった点を2か所ほど記載します(ちなみにジョジョは6部までコミックを所有、岸部露伴シリーズは本作を含め未読多数)。まずキーパーソン「奈々瀬」について。彼女の正体は絵師・山村仁左衛門の妻でありました。つまり青年露伴が出会ったのも、ルーブルで助けてくれたのも幽霊ということ。ここで疑問。何故彼女は和服ではないのでしょう。理由の一つは観客に死者であることを悟らせないため。いわゆるミスリードです。だとすればアンフェアな表現では。いえ、これはセーフ。露伴が見たのは「奈々瀬」の魂。有形ではありません。露伴の固定観念や先入観、あるいは理想等が反映されていたとしても不思議ではありません。もっともこれは考察から辿り着く仮説であり、和服であればより納得感はあったと思いますが。次に物語の構成について。サスペンスとしてはルーブル地下決戦で終了しています。そこにエピローグ「実はこんな裏話がありました」が20分。重要な種明かしであり蛇足ではないものの、流石に長い。ジョジョ5部の最終エピソードもこんな感じでしたし原作どおりかもしれませんが、仁左衛門との戦いの中に組み込んだ方がすっきりした気がします。いや、それだと間延びしてしまうのかな。巨人の星と比べれば可愛いものだという気もしますけども。 相変わらず高橋一生さんの露伴は素晴らしい。キャラクターを自分のモノにしています。だからコスプレ感がありません。飯豊まりえさん映じる泉京香も実に愛らしい。黒い絵の呪いにかからないのは鈍感なのか、あるいは無垢なる魂ゆえでしょうか。2人のコンビネーションは鉄板の面白さでした。映画でもTVでも構いませんが続編を強く希望します。[インターネット(邦画)] 7点(2023-09-26 19:30:01)(良:1票) 《改行有》

19.  母性 《ネタバレ》 ①女性には2種類の人間がいる。一つは母親で、一つは娘である。子どもができたら娘は自動的に母親に移行するのではなく、娘で居続けようとする者もいる。②母性は最初から備わっている、あるいは子どもができると自然に湧き上がる感情ではなく、学習し習得するものである。清佳(永野芽郁)の持論は、彼女から見た母ルミ子(戸田恵梨香)に対する人物評でもありました。この見解に異議はありません。そういう人もいるでしょうし、勿論そうではない人もいるでしょう。いずれにせよ親には子を産んだ責任があります。子が親に求める責任とは「愛して欲しい」それだけです。「無償の愛」なんて言いません。愛する分だけ愛して欲しい。ですから母の言葉「子どもはまた産めばいい」はどんなに残酷なことか。清佳の記憶から消去されたのも無理からぬ話です。こんな呪いを抱えたまま生きていけるはずなどありません。一方、華恵(大地真央)にとってもルミ子の発言は衝撃だったでしょう。愛する娘に母性が備わっていないとは痛恨の極み。彼女は自らの命を賭して「親の愛とは何か」を娘に伝えようとしたのだと思います。 幼少期~思春期にかけ、清佳は本当に苦しんだことでしょう。親の機嫌を察知できないのも困りものですが、親の顔色ばかり窺っているのは不幸です。「愛情」という「心の栄養」を満足に受け取れなかった影響は如何ばかりか。よくぞまっすぐに育ったと感心します。いや「曲がる事さえ許されなかった」でしょうか。その結果「遊びのない」娘が出来上がりました。真面目と言えば聞こえは良いですが「受け流せない」は危険です。いつかポッキリ折れるかもしれない。事実彼女は一度自死しかけました。強い風には適度に曲がり、時には流され、逆風への耐性を付ける事が肝要であります。 物語のラストは、清佳自身が娘から母へ立場を変え、両親へのわだかまり解消を口にする大変前向きなもの。この心境変化は彼女の中に芽生えた「母性」による効果でしょうか、あるいは結婚や出産時に発現する「はっちゃけ」の類でしょうか。私が清佳なら絶縁以外の選択肢はありませんけども。ここで注意が必要なのは、彼女が抱えるリスク「遊びがない」が解消されていないこと。居酒屋での言動をみると大変不安になります。子育ては思い通りに行かない事だらけ。そんな時重要になるのがサポート体制であります。義理の父母そして夫。いや夫はサポートする側ではなく、育児の当事者ですね。そもそも父親がきちんと機能していれば、清佳がこんなに苦しむ事もなかった訳ですが。ちなみに華恵(大地真央)-ルミ子(戸田)-清佳(永野)の母娘関係がメインであったうちは「母性のありか」「愛情の行方」に物語の焦点が合っていた気がしますが、華恵退場後は「嫁いじめ」が強烈過ぎてそちらに気を取られてしまいました。父の浮気やその浮気相手の言い分も胸糞でしたし、後半はややメインテーマと物語の軸がブレたかもしれません。 最後にミステリーパート「母と娘、それぞれの真実」について。これは『ミステリと言う勿かれ』で整くんが述べているように、事実はひとつ。でも真実は人の数だけあるが正解だと思います。「弁当が落ちた」という事実に対して、母は「ショックのあまり手が滑った」娘は「腹立ち紛れに叩きつけた」と認識していていますが、この程度の解釈の違いはあって当然です。ただ自殺未遂直前の行為についてはどうでしょう。「抱きしめた」と「首に手をかけた」では違い過ぎます。これはどちらかが(あるいはどちらとも)事実を改変している事を意味しました。ここからは完全に推測ですが「首に手をかけた」が事実と思われます。現実に耐えられなかった娘は自ら首にロープを巻くことで「事実を上書きしようとした」が真相ではないかと。何と不憫な自殺理由でしょうか。本当に娘を殺す気があったとは思えませんが、ルミ子が錯乱していたのは間違いありません。精神的に極めて追い込まれた状態であり、すぐに入院治療が必要なレベルかと。ですからその後ルミ子が適切な治療を受けていないとすれば、状況は悪化こそすれ好転などしていないはずです。娘の妊娠報告をうける場面。ルミ子がそっと閉めた扉の向こうには要介護の姑がいたはず。何やら寒気がするのは、気のせいであって欲しいのですが。[インターネット(邦画)] 6点(2023-09-19 18:54:50)(良:1票) 《改行有》

20.  コンビニエンス・ストーリー 《ネタバレ》 三木聡監督待望のファンタジーコメディ。いや「ホラー」ですよね。さらに「ミステリー」でもある。複雑怪奇な味わいですが、これが三木聡節です。万人に勧められる映画ではありませんが「好きな人にはたまらない」のも間違いありません。それでは私なりの解釈を。誤読、思い込み、頓珍漢、ご容赦ください。 大筋は以下のとおり。主人公は自動車事故がキッカケで、あの世の手前にあるコンビニ(リソーマート)に辿り着きました。刺青がある店主の南雲(六角精児)は物の怪の類。閻魔大王の配下でしょうか。その妻である恵子(前田敦子)は、大量殺人事件・通称「江場土事件」の生き残りとのこと。しかしこれは南雲の作り話。あの世へ行くはずだった恵子を南雲が見初め引き止めたのです。立場的には「捕獲されたムカデ」と同じ。ちなみに彼女はガソリンを使って殺されたのかもしれません。囚われの恵子は、迷い込んできた脚本家・加藤(成田凌)を利用して南雲の元から逃れようと画策しました。一方そのころ加藤の恋人ジグザグ(片山友希)は、彼があの世の手前で彷徨っていると看破します。彼女には霊感あり。メガネ男(おそらく裏社会の霊能力者)に冥界への出張捜索を依頼しますが、南雲の手にかかり殺されます。恵子の手助けもあり再び現世に戻ってきた加藤ですが、そこは自動車事故に遭う直前の世界。運命は変えられませんでしたとさ。ちなみに自動車事故以降の出来事は、全て加藤が執筆していた幻の「コンビニ物語」との見立ても可能と考えますが、やや解釈としてはつまらない。コンビニを題材とした物語を執筆中にコンビニで事故死したからコンビニへの執着が強く、その結果♪あの世のコンビニ・リソーマート(ファミマっぽく歌おう)に迷い込んだとの見立てが適切ではないでしょうか。以上です。 最大の謎(関心事)は、結局加藤はどうなったのかということ。自動車事故の直前、レジで恵子は何やら囁きます。唇の動きをみるに『ふりかえらないで』。あの世から加藤を送り出す際にも口にしていた台詞。“起きてしまった事は悔いても仕方がない”という意味ならば、今度はすんなりあの世へ行って欲しいということでしょう。それは恵子自身に向けられた言葉でもあった気がします。 三木聡監督のファンである私でさえ、ほぼ毎回「なんだこりゃ」と戸惑うのがお約束。今回も観終えた直後の満足度は高くありませんでした。コメディとして分かりやすく笑える箇所もありませんし。しかし、1時間、半日、3日と時間が経つごとに自分の中で熟成されました。これは本サイトに「感想を書く」ための脳内反芻の効果でもあります。考えれば考えるほど「良く出来ている」事に気づかされました。例えば劇中最大の嘘「自動車に撥ねられても無傷」を何の違和感もなく差し込む手際の良さ。加藤の不思議体験を「太陽光の喩え」を用いて補足説明する抜かりなさ。只事ではないでしょう。「面白い」とも少し違う「よくわからないけど好き」という感情で溢れています。ちなみに「好き」には、キャスティングが大きく影響していました。これは毎度の話ですけども。常連の芸達者さんたちが「旨い」のは言うまでもありませんが、主要キャストの皆さんが素晴らしい。成田さんの力みない佇まいは霊体にピッタリでしたし、六角さんは説明不要で物の怪でした。片山さんの「エロス」は「生」の象徴であり死者の世界を際立たせます。そして何より前田敦子さん。醸し出される「憂い」が絶品!演技の良し悪しはわかりませんが純粋に凄いと思いました。「旅のおわり世界のはじまり」も良かったですが、また一皮剥けたのではないでしょうか。残念だったのは、松重豊さんが不在であったこと。やはり三木映画では、岩松了さん、ふせえりさん、松重豊さんの3人が揃わないと寂しいです。[インターネット(邦画)] 8点(2023-09-14 18:22:24)(良:1票) 《改行有》

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