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1. 天地明察
《ネタバレ》 原作未読。歴史物が好きで、劇場に行たいと思いつつ時間がなかったので、DVDにて鑑賞。結果、行かなくて良かった。
題材は非情に興味深く面白いのに、いろんな意味で残念な作品でした。
先の方が書かれていたように、当時の政治・経済・文化面からの改暦の必然性を訴える描写・説明が薄く、武家対公家の短絡的な対立構図に終始していた感あり。公家の描写もあまりにステロタイプで、画策したり暗躍する登場人物もおらず、人間ドラマが薄い。そもそも綱吉の時代になってまで、あれほど朝廷の権力が強いのか、というのもやや疑問(不勉強ならご容赦を)。
京言葉のイントネーションも微妙におかしかった。
これは歴史物のどの映画やドラマにも共通してありがちなので、作品の質が高ければさほど気にならない。それが気になるぐらい脚本と俳優陣の演技力が甘かったということでしょう。
特に岡田さんはキャスティングミス。温厚で人柄が良さそうだという印象付けのせいかもしれないが、恩師達や関との交流も友情物語レベルで、周囲が彼を推挙する動機づけが弱い。時系列の描写が淡々と過ぎて行くので、己の自説を強調できるほど学者ならではの信念や頑固さが伝わって来ず、そのため後半、光圀へ暴言を吐き、自決を決意する場面が生きてこなかった。
個人的に宮崎さんは好きだが、江戸時代にしては「自己主張が強く風変わりな」女性らしからぬ、それこそ「可愛い妻」でしかない存在。夫を支える毅然としたところも、反して糠みその妻的献身も描写不足。
終盤は予定調和が読めてしまい、感動に至らず、つまらなかった。
機会があれば、じっくり原作を読もうと思います。[DVD(邦画)] 3点(2013-03-19 09:56:22)《改行有》
2. ジャージの二人
《ネタバレ》 原作未読。
最近、原作小説の映画化に落胆することがままあったので、今回は予備知識なしで鑑賞。
登場人物が少なく、台詞も最小限。特にこれといったドラマティックな展開も大きな事件に遭遇することもなく、まさしく「スローライフ」そのものの内容。だが、全体を通じて巧くまとめられており、どこか切なく温かい気持ちになった。
他の方が書いておられたように、父子の距離感が絶妙。
自分が女性だからかもしれないが、一般的に母と娘の関係は感情的な会話が中心。女性同士は往々にして「なぜ?」「どうして?」と相手を追求したがるものだが、この父と息子の互いに詮索しすぎない、短い会話の関係性が非情に面白く、男同士ってそんなものなんだろうな…と興味深く、納得した。
古着のジャージを面白がって着るところ、山中でジョンとヨーコを見たことがあるという話題。これは離れて暮らしていても、この父子の価値観が通じていることを物語っている。浮気妻や妹はそれを着ようとしないが、こういう価値観の対比は面白い。
わけありの父子が、それぞれの鬱屈した気持ちにケリをつけたラストに爽快感があった。
鮎川さんは、昔ドラマの端役に出演されていたのを拝見したことがあったが、「ま、本業はミュージシャンだから」と良い意味で苦笑いできるレベル(笑)。しかし本作ではその個性がよく生かされていると思った。
原作既読の方が、キャスティングは成功と書かれているのを読んで、なるほどと頷いた。
[DVD(邦画)] 8点(2012-11-12 23:20:35)《改行有》
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