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1. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
《ネタバレ》 見知らぬ駅のホームに降り、混雑する大人たちの隙間に紛れ、その間を縫って進む主人公の少年。
少年の身長に合わせたカメラと喧噪が、異世界に戸惑う彼の心細く不安な心情を表している。
カルカッタ駅から路上生活者が屯する街路へ、そして橋、河へ。
ロケーションを活かした街の猥雑な雰囲気は、主人公の暮らしていた村の素朴な風情ともよく対比され、
冒頭とラストの自然光にあふれた故郷のノスタルジックな情景を引き立てる。
故郷を再訪した主人公を、地元の男性が黙って案内する。通りの向うから現れる女性たち。
再会した実母と妹の奥ゆかしい表情が涙を誘う。そして抱き合う彼らを周囲の人々が笑顔で祝福するシーンもただただ美しい。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-12 20:49:47)《改行有》
2. リアル・スティール
《ネタバレ》 ヒュー・ジャックマンのシャドーボクシングや、ダコタ・ゴヨのダンスにピタリと同調してみせるロボットの運動リズムに視線がシンクロしていく快楽と官能性。
小津『父ありき』の川釣りシーンでの父子の運動や、『東京物語』でバスに揺れる乗客たちの同調運動の快感を思い出しても良い。
ロボットが二通りのトレースをする根拠は映画の中盤とラストで少年の口からはっきりと説明されているとおりであるが、そうした説話上の合理的根拠付けもしっかりと行いながら、その使い分けが各ショットにおいて同調運動の官能性をより高める形で選択されている事こそ重要である。
向かい合う少年の動きに合わせ同方向に小首をかしげてみせるロボットの、機械的であると同時に人間的でもある動き。ブルーの眼の輝き。ロボット側頭部で回っているファンのレトロなモーター音。その静かなショットに流れる繊細な情感がいい。
雨の上がった朝方の街道で、手押し車でロボットを運んできたダコタ・ゴヨがヒュー・ジャックマンに無言で殴りかかるショットの構図や距離感など、地味にいいショットも随所に散りばめられている。
そして最終ラウンド前のインターバル。音声認識を失ったロボットへの台詞「Watch Me」の響きとともに「見ること」の主題が立ち上がる。
リングサイドで三者の視線の交錯がスローで連なっていくリズムが断然素晴らしい。
視覚の交流。やはりスピルバーグの映画である。
[映画館(字幕)] 8点(2011-12-30 23:09:16)《改行有》
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