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1. 10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス
私はジム・ジャームッシュ監督のがお目当て(劇場で観たことないし)だったんですが、他のも良くて得した気分。本命のジム・ジャームッシュの『女優のブレイクタイム』は撮影中の女優の休憩時間を切り取ったもの。モノクロなんだけど画面も質感も何か滑らか、まろやかで他のと違った。
他に特に劇場で観てよかったと思ったのはヴィム・ヴェンダースの『トローナからの12マイル』という作品で、誤ってドラッグを過剰摂取してしまった男が病院へ向かう道中の十分間を描いたもの。一緒にバッドトリップを体験しつつ、車で病院(どこにあるか分からない)を目指しましょうーもう間に合わないかも!という緊迫感の十分。
他、『失われた一万年』も一番、時の重さと時という観念自体の意義を考えさせられます。『夢幻百華』ーこれは北京の都市開発計画により、周辺の小さな村、農家には何とも簡単に「拆」の字が書き込まれ解体が決まる。そして数ヶ月内には新しいビルがそこに立ち並ぶのだ。中国の中心的都市においてはよく見られる光景。その痛み。
人に平等に降る10分の質の差、心理的長さ。のんびりとシートに背を預ける映画マニア達に、緊迫した10分や鳥瞰するような10分、いろいろな10分間を与え、彼らに降る“時の長さ”を変える。これってすごいと思う。7点(2004-02-06 17:10:39)(良:3票) 《改行有》
2. ガウディアフタヌーン
主人公はごく普通の地味な女性。彼女が巻き込まれたのは単なる事件、のはずが、不思議の国に迷い込んだアリスのようになってしまう。
まず映像からして、ガウディ建築の曲線が活かされて非現実の世界に迷いこんだかようだ。エッシャーのだまし絵かキリコの描く街でも見ているかのような幻想的な気分になる。大人の童話といった感じ。
このストーリーは、主人公が自分の、満たされないままのコドモの心に、悲しい寂しいと感じ続けてきた心に、気づき、向き合っていく、癒しのストーリーでもある。
周囲の世界に振り回され、知らず知らず事件に首を突っ込んでいくうちに、彼女の硬直していた感情は動き始める。“事件”はまったくの嵐のように通りすぎ、後には、カサンドラの素の心が無力にぽつんと残る。それが強く印象に残った。8点(2004-01-27 10:43:15)《改行有》
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