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1. 海を飛ぶ夢
《ネタバレ》 一度観ただけでは、おそらく尊厳死という「社会問題」に頭をめぐらせて終わってしまう。しかし、そういう類の映画ではない。この映画は、尊厳死一般を論評しようという行為自体を拒んでいるし、ラモン・サンペドロ自身の持つ「尊厳」に対する考え方に対して、批判を加えようという映画の見方自体を拒んでいる。(冒頭のロサが行った批判のように。)尊厳というものがごく個人的な問題であることを理解したうえで、改めて映画として純粋な目で観賞してこそ、この映画の真の価値を評価し得ると思う。この映画は、純粋に「生と死のあり方」と、それをめぐる「愛情のあり方」を味わうための映画として非常に作り込まれた作品であると感じる。登場人物一人一人のラモンに対する愛情のあり方の異なりが、それぞれ印象的に描かれている点は秀逸である。個人的には、ラモンが他人の「手」を借りる必要からロサとの間で形成した「愛情」のかたちに、ラモンの境遇のリアリティが持つ絶望的な切なさを感じさせられた。最後、ラモンと運命を分かったフリアのもとへラモンの届かぬ詞が伝えられ、想いが魂となって海へと帰していくラストは見事だと思う。[DVD(字幕)] 10点(2008-01-06 16:01:48)(良:5票)
2. 蝶の舌
《ネタバレ》 一見余計と思われるエピソードが含まれているものの、それらは少年であるモンチョの視点から見た、戦争と同様の理解しにくい「大人の事柄」の一つ一つなのであろう。(そして戦争は、大人でも理解しにくいものといえるであろう。)とにかくモンチョとマエストロとの心温まる関係に引き込まれるがゆえ、終盤での衝撃も大きい。胸が引き裂かれるような思いというものを、これほど映画で経験したことはなかった。時代や歴史が人間を翻弄する非情さと、そうした全ての過去を経て安穏としていられる現在があるという事実の対比を、重く感じずにはいられない。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2006-04-16 23:34:41)《改行有》
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