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【製作国 : ポーランド 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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2. 孤島の王 《ネタバレ》 映画としてはありがちなテーマだし、内容に捻りがあるわけでもないのですが、それでも十分に面白い映画だと感じました。非ハリウッドならではの荒削りな演出が作品全体の空気感に貢献しているし、少年たちのギラついた眼光が物語に説得力を与えています。本作のプロダクションについて詳しくは調べていないのですが、それでも、映画を見れば相当厳しい環境下での撮影を強いられたことが十分に伝わってきます。俳優達は皆、本物の顔になっているのです。。。 本作の舞台は刑務所ではなく矯正学校、登場する少年達は囚人ではなく生徒という設定がミソで、映画の大半を占めるのは『カッコーの巣の上で』をも超える不条理劇です。刑務所ならばお勤めを果たせばお役御免なのですが、学校が舞台となると、卒業の要件を充たすまでは島を出ることができません。少年たちには教師や寮長に対する絶対の服従が要求されるわけですが、その不快指数といったらハンパなものではありません。少年たちに行き過ぎた倫理観を押し付けながら、自分たちの身の汚さには無自覚な大人たちの下品なこと!言いっ放しが許される環境に置かれた権力は必ず腐敗すると言いますが、まさにそれを地で行く内容となっています。前半部分で描かれる抑圧があまりに酷かった分、ついに少年たちがブチ切れる後半パートには、大変なカタルシスが待っています。本作は、観る者の感情を大きく揺さぶる、非常にアクティブなドラマであると言えます。[DVD(字幕)] 8点(2012-11-24 23:08:34)《改行有》 3. エッセンシャル・キリング 日米の予告を見る限りではソリッドなサバイバルアクションをイメージしたのですが、その内容はサスペンスアクションというよりも微妙なアート映画。”言いたいことは分かるんだけど、ねぇ…”という、「シン・レッド・ライン」を見た時と同じような印象を持ちました。主人公は名前も明かされず(エンドクレジットでようやく「ムハンマド」という名前が確認できる程度)、その人生も仄めかされる程度で、話の発端となる峡谷にいた理由も不明。会話をさせると観客にバックボーンを推測されてしまうという監督の判断からセリフは一切なく、それどころか性格すら持たされていません。ただ「生き延びる」という本能だけを持った真っ白な存在として描写されており、映画からはドラマ性が完全に排除されています。「ランボー」を彷彿とさせる前半部分にはそれなりの緊張感や視覚的な刺激があるのですが、追手の姿が見えなくなり、主人公の生存に的が絞られる後半部分にはとにかく退屈しました。この作品の言いたいことは”Essential Killing(必要不可欠な殺し)”というタイトルですべて片が付いています。「主人公は善人ではないし、惨い殺しもやるが、すべて生存のために必要な行為だった。君らは彼の行為を否定できないだろ?”生きる”ってのはそういうことなんだよ」、こういうことなのでしょうが、映画としてのサービスがあまりに欠けているため、ちっとも面白くありません。。。なお、本作はヴェネツィア映画祭で審査員特別賞を受賞しているのですが、「各部門につき受賞作品は一作のみ」というルールを曲げ、審査員長だったタランティーノの一存で与えられた受賞であることは明記しておくべきでしょう。「オールド・ボーイ」のカンヌ映画祭審査員特別グランプリ受賞もそうでしたが、自分の好きなジャンルに極端に肩入れして何か賞を与えようとするタランティーノは、映画祭の審査員には不向きな人であるように思います。[DVD(字幕)] 4点(2012-01-28 19:53:06)(良:1票) 4. 戦場のピアニスト 本作は必然的に「シンドラーのリスト」との比較にさらされる作品ですが、スピルバーグお得意の映像的ショックが鑑賞後の印象のほとんどを占め、ラストはベタベタの人情劇に終わってしまった「シンドラーのリスト」と比較すると、本作の方が映画としての完成度は上だと思います。「シンドラーのリスト」はホロコーストにおける凄惨なイベントを数珠つなぎにして披露する作品でしたが(これはこれで、ホロコーストの非人道性を伝えるためには有効な表現でした)、一方で本作においては、ホロコースト真っただ中の生活が克明に描かれます。特徴的なのが死の表現方法で、スピルバーグが「殺される過程」を見せることにこだわったのに対し、本作は「街に転がる死体」によってこれを描いており、このことからも、両者のアプローチが根本的に異なっていることがわかります。また、本作はゲットー内で利益を得ていたユダヤ人や、同胞を裏切ってドイツ人の側に付くことで自己保身を図っていたユダヤ人が少なからずいたことも暴露してしまいます。この視点には驚いたし、ここまで思いきった内容にできたのは、自身がホロコーストの経験者でもあるポランスキーならでは。言い方は悪いのですが、同じユダヤ人であってもアメリカでぬくぬくと育ったスピルバーグでは手の出せない領域だったと思います。さらには、主人公とドイツ軍将校との関わり合いの中で、滅びゆく者の憐れまでを描いている守備範囲の広さ。本当にすごい映画だと思います。。。そして最も印象に残ったのが、シュピルマンがドイツ人将校の前で演奏を披露した後、声を出して涙するシーンです(ほんの数秒のカットだったので、気付かれていない方もいらっしゃると思いますが)。安全な隠れ場所と食糧を探すことのみに集中し、もはや人とは言えない状態にまで自己を追いこんでいた彼が、ピアノを弾くことによって人格を取り戻し、長い間押し殺してきた家族や同胞への思いが一気に噴出したのか?それとも、いつも空想の中でのみ演奏していたピアノをようやく弾くことができたが、その念願の演奏は、よりによってドイツ人のために披露したものだった。芸術家としての最後のプライドまでを自己のサバイバルの道具としてしまった自分が許せなかったのか?なかなか解釈が難しいのですが、たったワンシーンにおいても解釈に幅を持たせたことも、この作品の奥の深さ、懐の広さのひとつの証明だと思います。[DVD(吹替)] 9点(2010-06-27 19:27:51)(良:1票)
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