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プロフィール |
コメント数 |
16 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
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1. 第三の男
《ネタバレ》 サスペンス映画として古典的で、古色蒼然とした雰囲気は現代の観賞者からすると、とても退屈な映画に写るものなのかもしれない。だけど、この映画の持っている情感と猥雑な時代感に、私はとても逆らうことが出来ない魅力を感じる。
ストーリーはともかく、映画の舞台となるウィーンという街・・・音楽や美術などヨーロッパの文化の中心都市のひとつであり、かつてのオーストリア帝国、ハプスブルク家をはじめとした宮廷文化の華やかで優雅なイメージ。
しかし内面は一筋縄ではいかない老獪さに保守主義や地元指向、地元文化に対する異常なプライドの高さ。それ故に連合国軍に統治されているというとてつもない屈辱。また、かつてオーストリアが併合、影響力を及ぼした国々、例えばルーマニア人、ハンガリーなどの人々が入り込んできている人種的な複雑さ。
こうしたウィーンという街の背後が到るところに盛り込まれていて、その中で人間関係に立ち入っていくのは、アメリカやイギリスといった英語文化圏の人々には伏魔殿のようなところであるという雰囲気を、私はこの映画を見るたびに感じる。
ジョセフ・コットン扮するアメリカの三文作家・・・いかにも純粋な人間で、良心的アメリカ人の典型?として描かれていて、老獪なウィーンでは彼の存在はとても浮いて見える。あれではアリダ・ヴァリをエスコートするには役不足であると思うのだけれど。オーソン・ウェルズのような怪物なればこそ、まさに伏魔殿的なウィーンの闇社会で暗躍できたのであり、男性二人の対照的な描写は実に面白く鮮やかだ。
そのオーソン・ウェルズのセリフ「ボルジア家の圧政の下、イタリアはルネッサンス文化を生んだ。では永世中立国のスイスは?ハト時計だけさ!」は印象的であり、自らを偉大な芸術の産物者に喩える不遜なセリフが、私の中で最も印象に残っているシーン。しかしジョセフ・コットンに自分の命を託すかのように・・・ウィーン人のような老獪さのない人間だから信用していたのだろう。
最後になるが・・・やはり音楽が素晴らしい。オーストリアの民族楽器ツィターの味わいは、まるでホイリゲンに居合わせるかのような錯覚に陥らせてくれる。軽妙で人生の機微に触れるかのような味わいを持つのは、名手アントン・カラスの腕によるものだろうが・・・彼は仕上がった映画を見ながら、ほぼ即興的に音楽を付けていったのだと言うから、余計に恐れ入る。[DVD(字幕)] 10点(2010-12-29 15:14:49)(良:1票) 《改行有》
2. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 もう何度見たことか・・・初めて見たのは今から四半世紀前、まだ19歳だった頃で、三軒茶屋の自主映画館で見た。原爆投下された広島の出身者でもあったせいか、映画の真意が理解出来ず、当初はこの映画を見て怒ってしまった・・・今から思えば自分がいかに未熟な子供だったかを思い知らせてくれる。
今ではキューブリックで最も好きな作品でもあり・・・何度見てもコワいけれど、イカレまくっている狂気の世界に魅せられてしまう。やはりストレンジ・ラヴ博士が自分にとっての最大のヤマ!性的不能者(インポテンツ?)と右手の不可解な動きは自慰行為もままならない?などなどと想起させてナンセンスであり、キノコ雲の描写に到ってはカタルシスが頂点に達した表現とでも言えそうな異様さ&不謹慎さ?
ストレンジ・ラヴの演説の内容がナチス・ドイツそのものであり、最後の立ち上がるシーンはナチスの復活を宣言する部分としてもコワイけれど、性的表現とのダブル・イメージを考えれば考えるほど、震撼させられてしまうのだった[DVD(字幕)] 10点(2010-12-14 12:35:57)《改行有》
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