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1. エレニの帰郷
『カサブランカ』や『嘆きの天使』などは少々サービス過剰かとも思う。
米国マーケット他をかなり意識したのか、どうか。
濃霧の中、抱き合うイレーヌ・ジャコブとウィレム・デフォーの周囲を
旋回しかけるデ・パルマまがいのカメラなどには冷や冷やしてしまいそうになる。
被写体サイズの大きさも有名俳優起用によるものだろうが、
そうした大御所俳優らを配しながらも曇天への妥協の無さは一貫している。
ブルーノ・ガンツの乗った船が橋梁をくぐると、彼に影が落ちスッとシルエット可する
ショット。その黒と彼を包む曇天の鈍い白が異様な迫力で迫ってくる。
夜の国境検問所、暗闇とそこに浮かびあがる人物に当たる照明の加減も素晴らしい。
シベリヤの工場群の吐きだす白煙、ジグザグ階段の造形などもアンゲロプロス
ならではの壮観であり、ロングテイク内での転調(パイプオルガンの演奏、
警官隊の突入など)も驚きこそないが、楽しめる。
[DVD(字幕)] 7点(2014-09-12 16:06:54)《改行有》
2. ラストミッション
西部劇への目配せからしてヘイリー・スタインフェルドを抱き上げる
ケヴィン・コスナーはなるほどナタリー・ウッドを抱き上げるジョン・ウェインなの
だが、スーツ姿への衣装変化と故ホイットニー・ヒューストンを抱え上げた
『ボディガード』も経由して重ね合せるなど、ポイントごとに
映画的感慨を刺激してくるのも悪くない。
父娘が『明日に向かって撃て』的に自転車を二人乗りする坂道や、
ラストの白い崖と入り江の別荘に至るまで
勾配や高低をドラマに活かしたロケーションの数々が印象的であり、とりわけ
父が娘に自転車を教えるシーンは高台から見下ろす街並みの景観と自然光あっての
情趣だ。
そして開始早々は彼女が主役かと思いこまされる、アンバー・ハード。
以降、思い出したように登場するのみでありながら、それでいて彼女の放つ妖しさ・
クールビューティぶりも鮮烈だ。
携帯の着信音のギャグなど、何とか携帯電話を映画的に活用しようとする意欲も買う。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-08-21 23:46:22)《改行有》
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