|
1. ダンケルク(2017)
《ネタバレ》 明らかにアンリ・ヴェルヌイユ版のオープニングを踏まえたのだろう
ビラの舞い落ちる街を進むトラッキングのショットから、構図は奥行きを意識し、
そこに描写されるのは誤射も飛び交う敵味方不明の銃弾、爆撃の恐怖である。
ビーチに突っ伏した主人公を手前に、画面奥から順々に着弾・爆発していくショットなどはなかなかの緊迫感だ。
が、担架を運び桟橋を渡って船に乗り込もうとするシーンなどで距離感やタイムリミットの提示に難があるのは毎度の事である。
あるいはこの距離感と計時感覚の失調こそがねらいかもしれないが。
三者それぞれの状況を音響などをブリッジさせることでクロスカットさせていくわけだが、
曇天・晴天、日の傾きまで編集で徹底出来ないなかでの時間軸の帳尻合わせは単に無謀である。
シーンの緊張を途切れさせて散漫にしている箇所も数知れない。
また評判の良いハンス・ジマーの劇伴だが、ほぼ全編というのもやり過ぎ。
サスペンスを阻害し、民間船舶集結シーンのヒロイズム煽情も過剰に思える。[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2017-09-09 22:10:14)《改行有》
2. トウキョウソナタ
映画の基調色となる緑が印象深い。ハローワークの階段の壁に貼られた無機質な表示や小泉今日子を拘束するガムテープ、清掃する香川照之の前で子供がこぼすメロンソーダらしき液体、井之脇海が拘置される警察署地下のホラー風アクセント照明、あるいは小柳友が仲間とチラシを投げ捨てる橋のライティングなど等、闇や陰影が控えめとなった替わりに多様なグリーンが画面を彩る。香川と小泉の断絶の提示が画面上で決定的になるのは、居間とダイニングの段差がもたらす立位置のみならず二間を分けるグリーンとオレンジの照明の分断にもよるだろう。地平線に立つ女性主人公を照らす光と大気と風と、時刻の変化が示す奇跡的な瞬間の感動は、個人的にはロメールの『緑の光線』や『レネットとミラベルの四つの冒険』の一遍(『青い時間』)に通じる映画感覚である。随所に散りばめられた色彩効果によって、最期の演奏場面のシンプルな白い光線の揺れが一層引き立ち、輝きを増している。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-19 16:08:59)
|