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コメント数 3872
性別 男性
年齢 53歳

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41.  大いなる幻影(1937) 《ネタバレ》 こんな歴史的名作を、私ごときが今さらもっともらしくアレコレ誉めても、大変に嘘クサイし、第一、それは多分私の役目じゃない(ははは)。でもやっぱり、こりゃスゴイ映画だと思うので書いちゃう。やっぱり各シーンが生きてます。1ショットに、空間的時間的動きが収められる手腕、全く時代を感じさせません(ってか、その後ウン十年の映画の「進歩」って、何なんでしょね?)。しかしこれ見よがしの「映像美」大安売りには決して陥らず、おかげで最後はまさに「とっておきのラストシーン」が光っています。そういや後半の、エルザがランプ片手に歩くシーン、横からスポットライトを照射して撮影してるので、後ろの壁面への影の出来方が明らかにヘンなんですけどね。でもこれも一つの映画的効果、やはり「暗闇の中で灯を持つエルザ」というモチーフのための必然性すら感じてしまう(気のせいだろうけどな)。 ま、それはさておき、ストーリー的には、作品世界自体が「大いなる幻影」である---ってオイ↓【しったか偽善者】様のレビューをパクるなっての。いや私も全く同感、いざ書こうとしたら、ずでにお書きになってた! 現実にはありえないでしょ、と思える程に人間関係が和やかで、肯定的な描き方。が、これはイコール現状肯定、という訳ではなく、「でもコッチの方がよくないかい?」みたいな感じで、そっと平和と人間讃歌を謳い上げています。だからこそ「幻影」が効果的なのでしょう。、一見、幾つかのエピソードに分かれたストーリー、しかし主題は確かに掘り進められていく。演芸会の途中で、ドゥオーモン奪還の一方が入り、舞台は中断されてラ・マルセイエーズの合唱となる。私は正直、舞台の続きが見たかった。そんな愛国心丸出しの国歌で楽しい舞台が中断されたのが残念だったのだ。フランス人が私と同じ感想を持つとは思えんけど。ま、どっちみち、前半で描かれた大脱走計画は頓挫、盛り上がったエネルギーは不発に終わる。そして、所長とボアルディエとの国境を超えた友情・敬意、それは最終的に、脱出する二人とそれを匿うエルザとの関係に託され、花開く。彼らとて、帰国しても待ってるのは軍隊生活、しかし今や新しい希望出来たのだ。雪の山岳地帯に消えていく彼らと、それを「すでに国境を超えたから」と見逃すドイツ兵。二人は自分達が「見逃されている」事に気づいたかどうか・・・。溜息の出るラストシーンであります。9点(2004-02-14 23:00:59)(良:2票)

42.  戦場のピアニスト 《ネタバレ》 シュピルマンというピアニスト、知らなかった(というか日本では無名「だった」)のですが、この映画をきっかけに、ドキュメンタリー番組が放送され、CDもリリースされて有名になりました。その彼の驚くべき体験が、むしろ淡々と描かれています。エイドリアン・ブロディ演じる主人公シュピルマン、箸より重いものは生まれてこの方持った事がないというタイプ、少し惚けたような飄々とした感じですが、その彼も否応なく戦争の波に飲まれていきます。ナチスの残虐行為、激しい戦闘シーンも、彼の目を通しているかのように敢えてロングショットで描かれているのが、不気味なまでのリアリティがあります。隠れ家を転々とする彼が、久しぶりにピアノと対面するシーン、非常にあっさり描かれていますがそれでも感動的です。実際に音を立てて演奏する事はできない。しかしその音楽は彼の中で確かに鳴り響いている。後半、ワルシャワ蜂起以降の描写は圧巻です。絶望的な逃避行。ついにドイツ将校に見つかってしまった時のシュピルマンの姿は、髪もヒゲもボサボサの、そりゃまあヒドイ状態(と本人もTV番組のインタビューで言ってましたが)。自分の職業をピアニスト「だった」(「です」を「だった」と言い直してましたね)と答えた彼に対し、ドイツ将校は、何か弾いてくれと言う。何年かぶりにピアノ演奏に取り掛かるシュピルマンのボロ姿、これも決して大袈裟には描かれていないのに、何と神々しく見えたことか! 戦火の中で右往左往するだけだった彼の中には、確かに「芸術」という不変の魂が息づいていた。そう、どんな状態に陥っても、人間の精神は不滅。その精神とは、ある人にとってそれは民族の精神でもあろう。シュピルマンにとってはそれはたまたま音楽、特にポーランド人の魂とも言えるショパンの音楽だったわけである。あのシーンはそういう不屈の魂を象徴したシーンと言えるでしょう。(ところで余談ですが、当代髄一のチェリスト、ミッシャ・マイスキーも、チェロを全く弾く事の出来ない不幸な収容所生活を経験した後、今や屈指のチェリストとして活躍している。演奏家にとっては、練習のみならず、体験もまた、音楽の糧となりうるのです。)9点(2004-01-11 01:38:09)(良:1票)

43.  3人の逃亡者/銀行ギャングは天使を連れて これはもう、本当に愛すべき映画。お約束ギャグ、不条理ギャグ、何でも取り揃えて笑いの連続、可笑しくてしょうがない。しかし観てるうちに何とも言えない理由不明の涙が込み上げてきます。設定にしろストーリー展開にしろ実に秀逸で、もう一本別の映画が作れそうな程、アイデアが凝らされています。この映画の日本での扱い、ヴェベール監督自身による米国リメイク版に比べて悪いようですが、何故でしょうね。ストーリーはほぼ同じ、どちらも間違い無く面白いと思いますが、大きな違いはラストシーン。味があります。雄大なアルプスの山々を背景としたドジ親父の姿、何となくジュリー・アンドリュースをすら彷佛とさせます(そんなバカな)。あと、アメリカ映画を見慣れてしまっているせいかもしれませんが、こういうコメディ、フランス語の方がよりユーモラスに感じられるし、パトカーのサイレン音すら、フランス警察の方がコメディにマッチしてる気がしてくるんですよね。というわけで、この原典版とリメイク版、どちらが上ということはないのですが、個人的に思い入れがより強いのは、やはりこちらですかねえ。9点(2003-12-29 20:14:41)(良:1票)

44.  スズメバチ ハイそうですね、これはカーペンターの『要塞警察』です。ラストの方なんか、そのまんまやんけ!と言いたくなるけど、ま、いいじゃないですか。カーペンター氏だって当時お金があったらこの位ド派手にやりたかったんだよきっと、だから代わりにやってあげましたよ、と言わんばかり。アメリカ人よ、フランス人に任せといていいのか? 最初の方、やたら断片的な描写で、うーん、これから何が起るんだろワクワクするなあ、という期待も殆ど萎えかけた頃、ようやく展開が見えてくる(この辺も要塞警察っぽいなあ)。わ。こんな面白い映画だったのか、と、後はもう釘付け。無数の敵に包囲され、孤立無援の攻防戦、これはもはやパニック映画の領域。何かに火をつけるなりなんなり、SOSを発信する努力をもう少ししてもよさそうだけど、あまりしないのはナゼ?でも気にしない気にしない。クライマックスの怒涛の攻撃には、もう観ててアドレナリン全開。やったね有難う。最近アメリカ人はこういうのあんまり作ってくれないんだ。この喜びを一言で表すと「いっそ9点でいかがでしょう」9点(2003-11-30 15:42:49)(良:1票)

45.  アザーズ 周囲でも、某作品を観てたから展開読めちゃった、との声を聞きます。みんなすごいね。私はビックリ仰天したんですけど。まず途中のサスペンス感覚は、その某作品よりもずっと上だと感じました。かなり夢中になって観てたので、真相が見えてきた時にはもう、心臓ドキドキもの。と思ったら、それは真相の端緒に過ぎず・・・。いやあ、かなり楽しませてもらいました。9点(2003-10-12 08:32:31)

46.  彼方へ ヴェルナー・ヘルツォーク監督作品ですが、製作にも脚本にも名を連ねてません。だもんで本作でのヘルツォークの立場はどのようなものか判りませんが、やはり人間と自然の対立みたいなものがテーマになってるようです。ストーリーの方はまったくのメロドラマ、ではあるのですが、やっぱり登攀シーンのモノ凄さが強烈な印象を残します。「普通のシーンに暴風の音を足してるだけやんけ」という気もしますが、持ち前の強引な撮影は健在、ラストシーンは神々しささえ感じられ、ひとつの奇跡を観たような心持ちです。9点(2003-10-11 21:22:42)

47.  さよなら子供たち 子供たちの友情が淡々と描かれる中で、森の中を子供とともにカメラが駆け抜けるシーンが幻想的で、印象に残ります。で、その日々は、突然、ナチスによって断ち切られちゃいます。その瞬間は直接理解できない程深い衝撃。戦争を含めた、人生における不条理さに対する怒りみたいなものが、かなり抑えられた表現ですが、よく感じられます。オールヴォアール、レザンファン、仏語知らない私でも、さすがにこれは判る。グッときます。9点(2003-08-24 12:01:05)

48.  ル・ブレ いや~コレだよコレ!こんな映画を待っていた!こんなアタマ悪い映画作れるのは並みの天才じゃないね。観覧車のシーンは『A.I.』を意識してた?そんな訳ないよね。忘れた頃にやってくるギャグが最高。観てる間もう楽しくてしょうがなかったよ、コレは。9点(2003-07-21 16:10:10)(良:2票)

49.   私の周りにもこの映画に批判的な意見の人が多くて、まあ図星だな、と私も思うだけにつらいものはあります。中学の頃親に連れられて観に行った本作が最初の黒澤体験でして、鮮烈な印象を受けた(特にラストシーン!)のが忘れられません。当時の私は何をトチ狂ったか、たまたまシェイクスピアばかり読んでたんですが、『リア王』のスケールのデカさは、この映画にも感じることができました(ちなみにワタシの能力では、『リア王』はスケールがデカ過ぎて一読では理解できなかった。トホホ。今ではとても好きだけど)。まあ、実際には、『リア王』ではなく「三本の矢の教え」が映画の発想の原点だそうですが。とにかく雑なところも目立つ映画ですが、やっぱり圧倒的な存在感のある貴重な映画には違いないと思います。あと、武満徹という作曲家を知ったのも、この映画がきっかけで、何となくイイなあ、と思ってたんですが、あまり打楽器を好まなかった武満さんにとっては異色の試みでもあったんですね。9点(2003-07-05 20:54:45)(良:1票)

50.  夜と霧 アウシュビッツの「現在」と「当時」を織りまぜて、淡々と進みます。で、その同じ流れのまま、映像は突然、凄絶な死体の山を映し出し、やっぱり静かに映画は終わっていきます。衝撃的です。事件自体は「過去」に起きたものであっても、その記憶は「現在進行形」、なんですね。かつてナチに抵抗した作曲家アイスラーが音楽を担当しています。9点(2003-06-06 17:05:08)

51.  パリは燃えているか 乱暴な感想ですが、こういう映画、やっぱりこの「約3時間」という長さが、いいなあ、と思っちゃいます。描いても描いても描き切れない、という、この長さ。 で、また、この「市街戦」というやつに、惹かれてしまう。日常であるはずの街の風景が、戦場と化す。大規模な破壊シーンなどは出てきませんけど、パリでのロケ撮影をこれだけやったのだから、やっぱり大したもの。かつて戦場となったこの街、あわや灰燼となり果てかねなかったこの街で、その戦いを描いて見せる。街の歴史、歴史を抱えた街。その歴史があってこそ、今の街がある。 不足を言えばキリがないだろうけれど、充分に堪能させられる、約3時間でした。 とは言えやっぱり、セリフは各国語でやって欲しかったなあ。[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-01-29 20:40:04)《改行有》

52.  5時から7時までのクレオ 自分はガンなのではないか、と不安を感じている女性歌手の、診断結果ご出るまでのひと時。 冒頭、占いで悪い相が出たもんで不安になっちゃいました、ってんだから、カルメンじゃあるまいし。イマイチ深刻さもなく、階段を降りる姿からは早くも不安の影が薄れてきて。 しかし機嫌良さそうにしてるのか、と思うと、何かにつけて縁起のよろしくないものを目撃し、またへコんでしまう。カエルを飲む人間ポンプのオジサン(←ヘタクソ)も、縁起が良くない部類に入るんですかねー。 本人は不安なんでしょうが、見てて何となく、笑ってしまう。ご愁傷さま。 さまざまな街の光景、人の姿が脈絡無く登場し、そうは言っても本人にとってはカウントダウンの真っ最中。というほどの切実さも無いのだけれど、些細な事物や出来事が画面に次々と現れるうちに、気がつくと時間が迫ってきて。 都会の生活って、こんなもんでしょ、、、?[インターネット(字幕)] 8点(2022-01-29 12:26:18)(良:1票) 《改行有》

53.  氷の微笑 《ネタバレ》 映画における濡れ場というものは、個人的には「お金のかからないスペクタクル」だと思っており、こういう大作枠の作品がやるのはズルくないかい?とも思うのですが、別に反対はしません、ハイ。ついでに言うと濡れ場というものは、新人女優がやればご褒美に新人賞の候補になるし、くすぶっている中堅女優がやれば「これで大女優の仲間入り」という自信だけは持つことができる、という利点もあって。そういう意味では、一見似てないとは言え、シャロン・ストーンと川島なお美にはどこか共通点を感じてしまうし、それどころかマイケル・ダグラスと古谷一行に何か近いものを感じてしまうのは、これは一体どうしたことか。 それはともかく。シャロン・ストーンの謎めいた感じは、ズバリ、イイと思います。真相の意外性よりも過程の意外性、それが作品の魅力。 結局、この映画に言わんとしていることは要するに、「人間誰しも、今日はたまたまアイスピックで刺されなかったけど、明日はわからんよ」ということですかね。[インターネット(字幕)] 8点(2021-12-04 14:45:55)《改行有》

54.  フランティック 公開当時、本作について「医者のくせにフランス語が何一つわからないなんておかしい」と批判する記事を読んだ記憶があり、それがおかしなことなのかどうか私にはわかりませんけれども。 ただ、映画にツッコミを入れること自体は私も嫌いではないですが、あくまでそれは、そこに「思わぬものを見た」からであって、だから作品自体がダメだとは、できれば言いたくない(たまに言っちゃうけど)。映画の中の矛盾は、しばしば映画の作為でもあるのだから。 その意味で、本作は、言葉の違う異国で、何の前触れもなく、まるで神隠しのように妻が失踪してしまい、取り付く島がない、というオハナシ。それで十分。もし問題があるとしたら、所詮、英語はどこでもある程度通じちゃうので、まだまだ主人公の孤立感としては甘いんじゃないか、とか(英語の苦手な人間のヒガミですスミマセン)。主人公が医者にしてはやたらガタイが良く、やや過剰な手ぶり身ぶりをやってみせ、これでは医者じゃなくってハリソン・フォードそのものじゃないか、とか。 でも何の特徴もない主人公よりは、この方が、いい。ハリソン・フォードもこの頃は、ピーター・ウィアー作品に続けて出演してクセのある役をやったりして、模索していた時期かもしれない。 で、彼の演じる主人公のもとから妻が忽然と消え、何をどうしてよいのやら、主人公も、それを見てる我々も、全くわからない、という魅惑的な謎。 試行錯誤が続くようで、意外にトントン拍子に謎に迫っているようでもあり、このあたりが、ジックリ感とサスペンス感の、さじ加減。映画の進行はやや地味なところもありますが、その中に、屋根の上という不安定な舞台を取り入れ、アクセントをつけています。さしずめ、「巴里の屋根の上」といったところでしょうか。屋根の斜面を自由落下のごとく無制御に滑り落ちる、品物の数々。どこまでが演出かわからない、映画の外にまで滲み出てくるような不安定感。 オハナシ自体は何だか、最後まで、大したことないような気もするのですが(笑)、ラストではちゃんと余韻を残していて。多少地味ですが、サスペンスの佳品、と言ってよいのではないでしょうか。[インターネット(字幕)] 8点(2021-04-11 10:10:11)《改行有》

55.  アルゲリッチ 私こそ、音楽! かつて天才少女と呼ばれたアルゲリッチだけど、このドキュメンタリ作品の「撮り手」である彼女の娘にしてみれば、そんなのは自分の生まれるずっと前の話。若き日のアルゲリッチがプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番をガシガシ弾いてる映像が挿入される。一方では、すっかり貫禄満点にお成り遊ばした今のアルゲリッチがリハーサルでショパンのピアノ協奏曲第1番を弾いてて、これまでさんざん弾いてきて隅から隅まで知り尽くした曲だろうに、まだ何かを模索して「わからんわからん」を連発してる。 娘にとって、どちらが、アルゲリッチの姿、なのか。 おそらくはどちらもがアルゲリッチであって、しかしそれ以上に、「自分の母」としてのアルゲリッチの顔が、そこにある。実の娘でないとなかなか撮れないような、私的な表情の数々が、印象的。 なので、本作、音楽ドキュメンタリというよりも、家族の姿を映像として気まぐれに切り取ったような、個人的な感触の作品となってます。ただ、自分の母親が、特殊な立場の人間であった、というだけ。だから馴染み深い母でもあり、どこか不可思議な面を持つ母でもあり。 別府アルゲリッチ音楽祭に招聘され、新幹線の車内でチラシ寿司をパクつくのも母なら、和風の宿で思い出を語るのも母、そして演奏前にナーバスになっているのも、母の姿。 特殊と言えば、3人姉妹がみな、父親が違っていて。母娘4人が揃うと確かに皆、それなりに顔立ちは似てるけど、長女は明らかに東洋系の血を引いているし、次女はむしろシャルル・デュトワに気の毒なくらいソックリだし(笑)。三女が一番、母親の若い頃に似てますかね。そしてこの3人娘の中心に、かのアルゲリッチが、居る。 奔放な母の姿の一方では、いかにも生真面目な父・コヴァセヴィッチの姿もそこにあって。この組み合わせがこれまた、不思議なんですな。 音楽を聴く我々からすればどこか、演奏家ってのは演奏するために生きてるんだ、みたいな無意識の思い込みがあるんだけど、でもこうやって、通常人とはいささか異なれど、彼らには彼らの生活があり人生があり、家族がいる、というアタリマエの事を見せられると、なーんか、しみじみとしてしまいます。 ところでアルゲリッチと言えば、私にとっては、学生の頃に買ったバッハのCD(トッカータ ハ短調、パルティータ第2番、イギリス組曲第2番)が、今もって愛聴盤でして、彼女らしい録音ともバッハらしい録音とも言えるのかどうか、と思いつつ、やっぱりこの演奏の魅力には逆らえず、名演奏だと思っております。とか言ってると、本作の最後にもバッハが流れるのですが、演奏は彼女ではなくコヴァセヴィッチなのでした。ははは。[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-11 21:56:35)《改行有》

56.  夜の訪問者 チャールズ・ブロンソンの役どころは、妻と娘との3人で仲睦まじく暮らす平凡なバカボンパパ。じゃなかった、平凡なパパ(似てるもんでつい・・・)。なのだ。 と思いきや、彼には隠された過去があって、不審な電話により、それが明らかになる。ってか、身に覚えがないような事をいいながら、実際には思いっきり身に覚えがあるであろうその電話の内容を、正直にそのまんま妻に伝える、ってどういうことよ? ホントに過去を隠す気があるのか? でもこうやってムダに正直なお陰で、テンポよくオハナシが進んでいきます。 ただ、テンポがいいのはいいけれど、エピソード同士がマトモにつながっていないというか何というか、展開がメチャクチャ。さっきのエピソードがまるで無かったかのように次のエピソードが始まり、敵の一味がブロンソンに何でこんなことをさせるのか(させたいのか)もよくわからないし、妻と娘を人質にとられたブロンソンもまた、トチ狂ったとした思えない行動に走るし、ふと気づいたら敵の一味の人間関係も妙なコトになっちゃってるし。 どうして一本の映画の中で物語がこうもあっちゃこっちゃ行ってしまうのか、ワケがわからないんですけれども、本作の素晴らしさは、そのバラバラのエピソードひとつひとつを、やたら一生懸命に描いていることで。アクション、サスペンス、すべてに全力投球(ただし暴投あり)。例えば、なんでこんなカーチェイスやってるんだか、これもワケわからんのですが(ストーリー上は、無くても一向にかまわない気がするのですが)、しかしそのカーチェイスが、やたら気合が入っててやたらとしつこくって。 ツジツマ合ってるけど面白くないよりは、面白くするためにデタラメやった方が、そりゃ当然、面白い訳です。[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-05-16 15:51:56)(笑:1票) 《改行有》

57.  レッドタートル ある島の物語 「セリフ無し」ってのが、挑戦的なようでもあり、映画の宣伝用のギミックのようでもあり、では実際のところどうなのかというと、やっぱりこれは、セリフ無しでならではの世界、ですね。セリフが無いことによる距離感が、このファンタジー世界をむしろ支えていて、また何事も断定することなく「解釈のブレ」も許容している。セリフが無いからこそ受け止めやすく、これ、もしもセリフ入りだと逆にちょっとキツかったりして。 登場人物の顔は極端に簡略化されて(目はただの点で、白目もない)表情が奪われており、その分、全身の動きが精密なアニメーションによって描きこまれています。 物語は、ツルの恩返しならぬカメの恩返し、みたいなところがありますが、別に「恩返し」という訳でもないし、上述のように映画の中では何も断定していない分、色々な受け止め方ができると思います。私は、手塚治虫の「火の鳥」の世界観に似たものを、ここに感じました。 あのカニたちは、男が島に流れ着くずっとまえからそこにいて、この先も未来永劫、ここに住み続けるんですよね、きっと。[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2019-09-15 10:09:37)(良:2票) 《改行有》

58.  影の軍隊(1969) 《ネタバレ》 フランスのレジスタンスを描いた作品ですが、地味系スパイ映画、といった感じ、そして何ともやり切れない虚しさ。 『史上最大の作戦』なんかを観てるとレジスタンス大活躍、なんですが、本作はまだそこに至らないホントの地下活動。リノ・ヴァンチュラが収容所で脱走とレジスタンスへの参加を持ちかけられるところから始まるけれど、劇中で最初に描かれるレジスタンス活動が、密告者である仲間の粛清である、ってのがまずやり切れない。これが現実。 そんな中で、シモーヌ・シニョレ演じる女性活動家の存在が、レジスタンス仲間にとって、また観てる我々にとっても、希望となるのですが、彼女にもどうにもならないことだってある。 彼女が最期にみせる曖昧な表情が、安易な納得感を拒絶し、誰もが等しく消耗品とならざるを得ない現実の厳しさと矛盾を、我々に突きつけます。 曇天の下、ひたすら閉塞感がたちこめて、そのまま終わってしまう。レジスタンス活動が最後にどう報われたか、なんて、テロップですらも示さないんです。[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-07-07 08:50:53)《改行有》

59.  仁義 《ネタバレ》 片や、刑務所長から何やら良からぬコトを吹き込まれて出所する男がいて、片や、何やら良からぬコトをして捕まり護送中に逃亡する男がいて。で、その二人が出会って意気投合、と言うにはあまりに静かな出会いなんですけれども、ここでアラン・ドロンがタバコとライターを投げてよこすシーンが、闇雲にカッコいい。まるで相手の手元に吸い込まれるように投げ渡されるもんだから、この後じゃ、そりゃ拳銃だって何だって簡単に投げ渡そうってなもの。 後半はこの二人にイブ・モンタンも加わって、何をするかと思えばコソ泥なんですけれど、ただでもセリフが抑えられたこの映画の中で、さらにセリフが無くなって、ただその宝石泥棒の一部始終が、静かに、緻密に描かれていきます。 突如、警報が鳴り響き、計画は一巻の終わり。逃げ行く彼らの背景には、風の音。シビれますね~。[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-13 15:11:45)《改行有》

60.  山猫 観てて、「斜陽」という言葉が脳裏に浮かびます。時代の流れの中で徐々に滅びゆくものたちの、最後の輝き。。バート・ランカスターはガッシリしてるし、アラン・ドロンは若々しいし、クラウディア・カルディナーレはキャピキャピしてるんだけど、ここに描かれている「旧時代の貴族社会」そのものが年老いてて、もう、先は無いんだなあ、という想いが湧いてきます。 そもそも舞台がシチリア島で、屋内には確かに豪奢な貴族社会があるけれど、一歩外に出て見りゃ、ハッキリ言って、 ド田舎 なワケです。しかしそのド田舎にも、時代の移り変わりの不穏な動きが、徐々に伝わってくる。こんなところに兵士の死体が。 映画後半に展開される舞踏会。貴族らしい豪華さはあるけれど、何やら老朽感めいたものも散見されます。冒頭の昼のシーンでは窓が開けられカーテンが優雅に揺れていたけれど、夜の舞踏会では窓が閉められ、その中でバート・ランカスターやアラン・ドロンが汗だくになっている。その姿が、何やら病人めいたものすらも感じさせて、あーこりゃもう先は長くないなあ、と。 ラストで去り行くバート・ランカスターの姿が何とも寂しくって、本作と言い、『カサンドラ・クロス』と言い、こういうのが似合う人ですなあ。[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-07 09:15:48)《改行有》

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