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プロフィール
コメント数 3876
性別 男性
年齢 53歳

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101.  パリの灯は遠く 私も、カフカを思い起こしました。ドイツ占領下のフランスで、自分と同姓同名の人間の行方を追い求める主人公。なぜその人間を探すことにそこまで執念を燃やすのか、その理由は語られず、ただその姿が克明に描かれている点、そしてそれが徒労に終始する点、はたまた、残されたかすかな希望が絶望の裏返しである点、カフカの不条理世界に通じるものがあります。しかし、理由がはっきり語られない「同姓同名探し」が、必ずしも不条理なばかりではなく、不気味さを伴いつつもどこか切実さをも感じさせるのは、それがまるで「自分自身の影を追い求めている」ような行為として描かれているからでしょう。その点、つげ義春の『ゲンセンカン主人』のもつ怖さをふと思い出したりもします。舞台で歌われるマーラー「亡き児をしのぶ歌」と観客たちの空疎な笑い。この無責任で乾いた笑いは、ユダヤ人への弾圧という悲劇の時代における、醜悪な一場面ではあるけれども(そういやマーラーもユダヤ人だった)、それと同時に、人の生死があまりにも理不尽に、紙一重の差で決められてしまう、という滑稽さと恐ろしさに対する引きつった笑いのようにも思えてきたり。キザ過ぎる邦題とは無縁の、絶望と不安の映画です。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-22 21:32:28)

102.  追想(1975) 舞台は第2次大戦、占領下のフランス。フィリップ・ノワレ演じる医者は、占領国になびく訳でもなく、さりとて過激なレジスタンス活動をする訳でもなく、あくまで医者という立場でヒューマニズムを貫いている。街にはドイツ兵が溢れ、不穏な空気が漂っており、医者という立場上、日々、人々の死を前にしているものの、家に帰れば妻子が待つ優しい父親でもある。しかしその彼にも、容赦なく戦争の牙が襲いかかる。疎開させた妻子に会いに向った彼は、惨殺された村人たち、そして彼の妻子の遺体をそこに見出すことになる。彼は散弾銃を手にし、妻子を殺害したドイツ兵たちへの復讐を開始する――という、なかなかに刺激的なオハナシ。妻子の遺体を目撃し、嗚咽をかみ殺すシーン、そして殺戮を前にしていながら助けの手を差し伸べようとしなかった神に決別しキリスト像を破壊するシーン。これらにおいて感情を発露させた後は、映画は主人公の感情を押し殺し、ただ淡々とゲリラ活動に打ち込む姿を描く。後半は、そのたった一人の戦いと、ふとした時によぎる過去の記憶が、交互に、容赦なくぶつかりあうように描かれていく。過去に向けられた血のにじむ傷口をさらしながら、今を生きるしかない。主人公の感情を殊更に描かなくとも、何もかもが過去へと繋がり、苦しみへと繋がる今、ひたすらに描かれる主人公の復讐する姿、そのディテールの描写が、胸に突き刺さる。―――ところで、ここで突然、どうでもいい話ですが、①上記の主人公嗚咽のシーン、「司令部に連絡しろ」と言われたドイツ兵が、日本語で「スミマセン!」と叫んだように聞こえたのですが、空耳ですかね? ②ラスト近く、水責めにあうドイツ兵が、日本語で「タスケテ!」と叫んだような気がしたのですが、やっぱり空耳ですかね?[DVD(字幕)] 10点(2013-03-24 00:55:25)

103.  この愛のために撃て 《ネタバレ》 巻き込まれ型サスペンス。主人公はどっちかというと冴えない感じのオッチャン看護師、ひょんなことから、臨月の妻を誘拐され、犯罪に巻き込まれていくのですが、緩急織り交ぜつつ短い尺の中で畳み掛けていくのが、なかなかのもの。アドレナリン注射イッパツで、こん睡状態の患者も一気に蘇り、映画全体にもアドレナリンが充満してフル回転。特に中盤の地下鉄構内での追跡劇が素晴らしく、そこでのオッチャン看護師の奮闘ぶりには、否が応でも引き込まれます。最後の付け足しのような後日談、一見蛇足のようですが、ラストの「もう自分たちには関係ない」と言わんばかりの主人公の笑顔が印象的で、蛇足どころか、やっぱりいいシーンなんですね、これが。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-03-15 19:34:07)(良:1票)

104.  ラバー 「映画において“意味が無いのは良いことだ」という“意味”を映画で語ってしまう愚。単なるタイヤが殺人鬼と化す。しかし殺人鬼らしい神出鬼没さは全くなく、むしろタイヤを一人称で語ってしまうのがツマラナイ。理由が無いどころか、むしろ本来無いはずの動機をわざわざ浮かび上がらせようとしているかのような。メタな構成も説明的で、完全に逆行している。13金のジェイソンの方が、このタイヤよりもよほど中身が無くて、志が高かったと思う。それに、タイヤの本分は、転がること、踏みつぶすこと、でしょうが。念力なんか使っても、まったく盛り上がらない。この映画、「意味が無いこと」と「バカバカしいこと」との区別が、ついてないんじゃないでしょうか。フォーカスを妙なところに合わせる映像なんぞ、まるで興ざめ。およそ、タイヤをひっぱるヒモが写らないようにボカしてるんだろ、と邪推してしまうだけ。[DVD(字幕)] 1点(2013-03-06 04:36:58)(良:1票)

105.  96時間 疎遠になろうと父親は父親、旅先で出会ったチャラ男なんぞよりよっぽど信用できる、という映画。実にスバラシイ。さらに、中盤のカーチェイスあたりで嬉しくなってくるのは、このデタラメさ、強引さ。カーチェイスなり銃撃戦なりを盛り込むことが第一優先で、物語の自然さなど二の次になってるのは、これ、まさに木曜洋画劇場テイストで、今となっては懐かしさすら感じさせます。惜しむらくは、アクションシーンが何やってるのやらバラバラでわかりにくいこと。あとリーアム・ニーソンみたいなイカツいオッサンが走るシーン、というと個人的にはワクワクする、はずのシーンなんけど、イマイチ盛り上がらなかったこと(もっとなりふり構わないド迫力の走りを期待しちゃうのです)。[地上波(吹替)] 7点(2013-02-17 09:14:37)

106.  ダンケルク(1964) 《ネタバレ》 被占領国ならではの戦争映画、ともいうべきシニカルさ。舞台は、ドイツ軍に追われた連合軍が撤退しようとしているダンケルク。戦争映画らしいスペクタクルな要素は、破壊された街、立ち上る黒煙、打ち捨てられた無数の車両、背景に常にうごめく無数の兵士の行進、などに表れていて、いかにも大作らしい風格があるのですが、だからと言って英雄的で派手な戦闘シーンが繰り広げられるようなタイプの作品ではありません。どこからともなく飛んでくる砲弾や、間歇的に襲ってくる戦闘機の銃弾や爆撃の下、兵士たちはただひたすら身をかがめ地面に伏して攻撃がやむのを待つのみ。中には機関銃で撃ち返すヤツもいるけれど、この映画では、戦火を交えるという意味での戦闘は描かれません。攻撃がやめば、兵士たちの目は日常を見る目に戻ります。何しろ被占領国、戦場と民間人の日常が同居している訳ですから。主人公も、大量の味方兵士の死の直後にはもうオネーチャンのところにシケこんだり。日常と死が紙一重。不発弾を悪戯っぽくしかし命がけで処理してみせたり。発見した敵兵士と撃ちあいになることもあれば、味方兵士と殺しあう場面もあったり(ベルモンド自身による階段落ち!)。ユーモアもあり、皮肉にも満ちた、少々ヒネクレた戦争映画なんですが、ここに描かれた非英雄的で等身大の兵士の姿こそ、ホントウの人間の姿であるように感じられ、その対照として戦争のもつ非人間性が浮き彫りになります。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-02-02 18:17:14)(良:1票)

107.  花咲ける騎士道(1952) 騎士道のキの字も感じられない、軽~いノリのアクション映画。しっかしノリは軽くてもアイデア満載、本当によく出来てます。アホらしいのについ手に汗握ってしまったり(ファンファン達の処刑の場面とか)、ひたすら楽しく、楽しすぎて、映画が終わるのが寂しくなるくらい。文句なしにオススメ。[CS・衛星(字幕)] 10点(2012-11-12 10:50:21)

108.  太陽が知っている これは確かに、まさしくひと夏の「プール」を舞台にした映画。肌も露わな、官能と隣り合わせの開放的な世界(普段着で露出があまりに多いとドキリとするもんだけど、水着さえ着ていれば、誰しも肌の露出を厭わない)。そのプール付きの別荘において、男女4人が織りなすサスペンス、ってのが本作な訳でして、愛し合う男女と、そこに闖入し二人の関係を微妙に狂わせるオッサンとその娘の存在。プールで展開される、アヤシゲな男女関係の駆け引き、ライバル同士の火花、そして事件……。ただ、もうひとつツカミどころが無いと言いますか、焦燥感や緊張感みたいなものが感じられなくて。そもそも中心軸たるアラン・ドロンとロミー・シュナイダーの関係が、結婚前の男女というより、不倫関係にしか見えない(この異常な仲の良さは、不倫でしかあり得ないよね、ははは…)。という、もともと危うい印象のある二人のところに、いまいちインパクトの薄いオッサンが闖入してきても、だからどうなのよ、という感じ。娘の方もさほど挑発的な印象もなく。なんだか、アラン・ドロン演じる主人公の一人相撲ですなあ。後半、刑事がもうひと押し頑張ってくれると、また別の方向で盛り上がったのだけど。[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-10-21 08:18:24)

109.  ミッション:8ミニッツ 《ネタバレ》 8分に一回死ぬ。死んでまた生き返り、同じ状況を繰り返す。少しずつ変奏しながら。ここには、「終わらないこと」「終わりが見えないこと」への絶望、焦りがある。しかし実際の世界では実は、死なないどころか、すでに事実上「死んでいた」ということ。終わらない絶望と、すでに終わっている絶望が、交差する。で、ラストでは「終わらないこと」が「希望」として提示され、ちょーっと甘口過ぎるんじゃないですかぁ、とか思いつつも、ある意味意表をつく、夢のあるファンタジーでございました。このせわしない展開の後に、こういう世界が待っている、素敵ではないですか。ちょっと気になったのは、「現実世界」では刻々とタイムリミットが迫っている設定なのに、イマイチ実時間の進行が充分描かれていないのがピンと来ないところでもあるのですが、逆に実時間のカウントダウンをあえて描かないことで、主人公があがき続ける悪夢世界の「終わりの無さ」が印象付けられる訳でして、またその悪夢の連鎖から抜け出て新たな世界へと向うラストも感慨深いものとなる。いやはや、結構ではないですか。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-10-10 22:22:26)

110.  レオン/完全版 《ネタバレ》 完全版ってのは今回初めて観ましたが、意外にも完全版の方がイイじゃないですか。しっかりと変態映画になっていて。うん、この映画はやっぱし、「ひとりの男が、少女に人生を狂わされていくオハナシ」なんです。変態映画なんです。完全版こそ変態映画。男は殺し屋、ってことになってるんだけど、また実際、滅法強いという設定になっているんだけど、どう見たって「虫も殺せない」タイプ(だいたい、観葉植物を愛でたり牛乳飲んだりする描写こそ頻出すれど、殺し屋としての殺害シーンは実にアッサリしている)。一方の少女はと言えば、これはもう小悪魔というか、魔性の女というか、よっぽど彼女の方が人殺ししそうなタイプ。いやもちろん、ここで映画が表面的に語っている物語は、そういうオハナシじゃないんだけど、その「語られる物語」と「見た目」との間に、どうにもギャップがあるのよね。そしてラストにおいては、「見た目」の方に凱歌が上がる。この映画の白眉は、警官隊との戦いを切り抜け、ようやく死地を脱したかと光の方へ彷徨い出ようとする時の、レオンのマヌケヅラにあるんじゃなかろうか。ここで彼を狙っているのはもはや、背後のゲイリー・オールドマンですら無く、ここでのレオンはいわば、マチルダというメスカマキリに食われようとしているオスカマキリなんですな。大の男が、少女に食われちゃう、食われてもいいと思う、そこに切ないまでの、倒錯した陶酔がある。そして少女は成長し、物語は『ニキータ』へと繋がるのでした…?[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-08-11 01:32:01)(笑:1票)

111.  ウディ・アレンの夢と犯罪 《ネタバレ》 実にウマく、映画を作ってますよね。ウマく作られてて、感心させられて、でもちょっとイヤミに感じたりもする訳で。叔父に頼んだ金策の代償として、殺人の依頼をされた兄弟。通常ならひとりの人間が内部に抱えるであろう葛藤を、いかにも映画らしく、兄弟二人の間の葛藤として描いて見せる。ウマいよね。2時間弱の映画、どのあたりで殺人を行わせるか、バランスを考えてタイミングも計算通り、ってな感じ。あとは殺人にいたる過程、人間模様、追いつめられていく姿を、着々と脚本に盛り込んでいく。そうそう、一度は未遂に終わるシチュエーションも入れて、ハラハラさせないとね、と。結末は、虚しさを漂わせたりなんかしちゃったり、そういうところがオトナなんだよね、と。いや実に見事なストーリー・テリングなのですな。そんでもって、やっぱりこれは映画なのだから、キメるシーンはしっかりキメて撮ってみせよう、と。ではこれは文句なしに楽しめる作品なのか、と言うと、どうもモヤモヤする。きれいにまとまり過ぎたものの持つ、物足りなさ。なーんか、計算し過ぎなんじゃ、ないのかなーー。もう少し、イビツでいいんじゃないのかなーー。痛烈さが弱い、皮肉が皮肉になり切れていない、そんな感じがするんですけれども、そういうケチをつけるのは、贅沢なんですかねえ。ところで、映画の最後、兄弟に何が起こったかを知らずにいる姿を描かれるのは……パートナーの女性たちなんですね、なんかコレもピンと来ない。やっぱりここで登場すべきは、“親”じゃないのかな~と思っちゃうのは日本人の発想ですかねえ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-20 17:58:10)(良:1票) 《改行有》

112.  アンノウン(2011) いやー実に実に面白かった、興奮しました。謎に満ちた発端がイイですね。テンポよく挿入されるアクションがイイですね。待ち受けているのは思わぬ展開(そりゃま、似たアイデアの作品は過去にあったけど、この程度の類似を見咎めて楽しまないのでは、日頃からミステリ小説なんて読んでいられない(笑))。そして何より、このサスペンスの雰囲気がイイですね。ミステリってのは、単なる「こんなトリック思いつきました」という報告書じゃなくて、本分は、そのトリックをいかに「語る」か、にある訳で。本作は、まずはその「語り」に徹している、その丁寧さに非常に好感が持てます。一体何が起こっているのか。誰が敵で誰が味方なのか。単純にプロットやトリックという意味での物語ではなく、それらを含めた、サスペンスの流れとしての「物語」、それをいかに「語る」か、どのようなカットを積み上げていくか。例えば“主人公が電話帳のページを破る前に辺りを確かめる視線”、などというレベルから、省略せずに描写をひたすら紡いでいく。この映画には「適当に色々撮って、後で編集で何としよう」みたいな発想は無く(そんないい加減な映画があるのかどうか知らんけど)、どのようなシーンにも強い意思が感じられて、しかもそれが、意思のための意思じゃあない、あくまでサスペンスを盛り上げ、映画を面白く「語ろう」とする意思であるのが、実に嬉しいじゃないですか。強いて文句をつけるなら……このタイトルはもうちょっと考えてつけてもよいのでは(こんなタイトル、どんな映画にもついちゃうよね)。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-05-20 08:34:54)(良:2票)

113.  Mr.ビーン カンヌで大迷惑?! Mr.ビーンって、たまたまNHKつけたらやっててラッキー!というような状況で見るのがイイんですな。そういやずいぶん以前、某国内線でTV版を上映してるのにバッタリ出くわし、もう笑いこらえるのに必死。どうして他の乗客たちは皆、平然としてられるんだろうか・・・。という訳で、“偶然の出会いが一番笑える”ってのがそもそも映画化に向いてないんでしょうかねえ。ってか、映画みたいに作り込んだりせず、Mr.ビーンの暴走ぶりを作為なくテレビで垂れ流す方が、笑えるんでしょうなあ。ってか、『ビーン』を作った時点で「やっぱ映画にしちゃダメだな」って気付かなかったんですかねえ。でもでもでも、セリフに頼らず表情と仕草で表現する、古き良きサイレントパフォーマーのMr.ビーンが、カンヌに行って“映画”に殴り込み、ナレーション過多のエセ芸術映画を茶化しまくる。これって、悪くないと思う。[地上波(字幕)] 4点(2012-04-24 00:36:52)(良:2票)

114.  突然炎のごとく(1961) 《ネタバレ》 この映画って、「3人の男女が織りなす自由な恋愛劇、進歩的でロマンチックよねえ」とか言ってウットリ観なければいけないんだろうか。あるいは「最後は死んじゃって可哀そうねえ」とか言って泣かなきゃいけないんだろうか。いやいやいやいやいやまさかまさか。この作品は、これはもう、“コメディ”でしょ。だってだって、こんなに楽しいんだから。そりゃま、ゲラゲラ笑うようなギャグはありませんけど、映画そのものに仕組まれたたくらみ、イタズラ心が、イヤミとならず、驚きと楽しさとなって活き活きと伝わってくる。なんでこんな場面で、空撮なのか、とか。男女が会話している場面で、背景の別の男女がチューしまくってるのが気になって、肝心の会話の字幕も読めん、とか。この作品こそまさしく、撮る楽しみと観る楽しみの幸せな一致。ただし、もしかしたら、「これならオレにも撮れちゃうかも」と大勢の映画志望青年を勘違いさせてしまった作品かもしれませんが(もしかしたら大勢の俳優志望青年が川に飛び込んだのかも知れぬ)。[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-04-22 08:10:44)

115.  エル・スール お父っつぁんには秘密がある。そりゃあるさ。例えばどっかのサイトに映画の感想文モドキを書き込んでるとか(はい、実は家族には内緒なのです。今のところは)。かつて小さかった娘、聖体拝受式で社会への一歩を踏み出した(自分の手から離れ始めた)娘。娘が成長するに従い、親父の存在も相対的に小さくなってしまう。そして。映画がダウジングのペンダントへと回帰したところで、ペンダントが小さなケースにスッと吸い込まれるように収まるシーンに、グッときます。コレ、日本人の感覚で言いますと何だか、故人の体が火葬後に小さな骨壷に収まってしまう、あの感覚を思い起こさせます……。しかしラストは、まるで暗かった音楽が最後に突然転調して主題(=“南”)を明るく提示して終わるように、希望によって締めくくられます。ま、はっきり言いまして、「実は途中までしか映画化できなかった作品」なんてことは露知らず、この唐突なラストの意外性に感激していた訳でして。我ながら、またピンボケの感想を持ってしまったのかも知れぬ。だから家族には内緒なのです。[CS・衛星(字幕)] 10点(2012-04-14 12:32:02)

116.  バベル 《ネタバレ》 このオハナシは要するに、「ツタンカーメンの呪い」とか「ホープダイヤモンドの呪い」とかの一種ですね。名付けて「ライフル銃の呪い」。とあるライフル銃に関わった者たちは皆不幸に襲われる。ライフル銃の元の持ち主である日本人は、妻が自殺し、娘は色情魔に!――ライフル銃の次の持ち主であるモロッコの男性は、お巡りさんにヒドイ目に合わされ!(自業自得ですが) ――さらにその次の持ち主である少年は、所構わずライフルを乱射(?)、偶然通りがかったバスに乗っていたアメリカ人女性が撃たれる! しかもその後、銃撃戦の末に少年の兄の命が奪われ! ――さらには何と、ライフルで撃たれたアメリカ人夫婦の子供まで、メキシコ国境で何だかややこしいことに! ………と言う訳で、「呪い」なんぞと呼ばれているものが、およそコジツケばかりであることが、よくわかりますね。   あ、「呪い」がテーマの映画ではなかったんですか。  それにしても、この映画、あまりパッとしない。舞台がモロッコ、日本、メキシコと、要するに「辺境」ばかり(日本の描かれ方は、確かに都会は登場するけれども、好奇の視点でヘンテコワールドとして描かれた、明らかな「辺境」の扱い)。そりゃ複数の「辺境」を混ぜこぜに描いて、ホレ互いに通じ合わない世界だ、まさにバベルだ、と言われても、そりゃそうでしょ、としか言いようがない。バラバラなものをバラバラに描いても、ねえ(せめて「呪い」ででもいいから、繋がってりゃ)。モロッコの少年は兄を失ったが、撃った女性は九死に一生を得て、彼は殺人者の汚名を着ることからは守られた、ってか。いささか安直な“救い”ではないかな(中盤の大騒ぎに比べて)。はたまた、日本の女子高生(って言っても、バレーボールのシーンはママさんバレーにしか見えなかったが)は、男性(特に年上の)に色目使いまくりだったが、実際に彼女が求めていたのは「異性」としての男性ではなく、「父」としての男性であったのだ、最後は父に守られ、あわやというところで彼女の純潔は守られたのだ、ってか。どうでもいいやんか、そんなの(それに実際、若い男からは自分で逃げてるしね。デスパレートなように見せて、ちゃんと自分で自分を守ってる。あと、メキシコのエピソードも、最後は平凡なところに落ち着くし。この映画、社会問題みたいなことも色々取り上げているのに、何だか“安全弁”が多すぎませんか?[CS・衛星(字幕)] 4点(2012-03-13 16:57:05)

117.  その男ヴァン・ダム その男●●。この●●に入るべき名前が“ヴァン・ダム”で本当にいいんだろうか。ちょっとシャレになってないんじゃないだろうか。大きなお世話です。でも心配。冒頭の長廻し、普通なら肉体派の身体能力の見せどころ、それを逆に、「ああキツイ」とオチをつける。本当にキツそう。もっともこの作品、ヴァン・ダムがヴァン・ダム役で出ているとは言え、時間が行ったり来たり、視点が代わり、場合によっては顛末まで差し替わってしまう、そういう作り込んだ構成が、フィクションであることを念押ししています。しかし完全なフィクションとも言え無さそうなトホホなところが、この作品の魅力でもある訳ですが。ただ、構成を作り込んだ割に、撮り方はちょっと雑なのでは? 長廻しが、単なる「あのスター、ヴァン・ダムなんだから、うまく演技するでしょ、まかせとこ」みたいな。前半は結構笑って観てられたんですけど、後半、ズルズル行ってしまった感が。[CS・衛星(字幕)] 5点(2012-02-25 18:49:02)

118.  サクリファイス この作品のオチは要するに、「親は無くとも子は育つ」ってヤツですね。口を聞くことができなかった子供が、植えたばかりの木の下で、新しい世界の始まりを宣言する。そしてダメ押しのように、タルコフスキー監督から息子への献呈とメッセージが。「自分の人生は失敗だったと思わないか」「以前はそう思ったが、子供が生まれてからはそう思わなくなった」。自分の人生が自分だけの人生でなくなり、「子育て」という形で、他の人生のために費やされる。自分に子供が出来た時から始まる、自己犠牲。しかしそれは本当の意味の「犠牲」なのか? 一種の自己満足に過ぎないのではないのか? 口のきけない子供、声なき子供、その一方で、大人たちが始めてしまった戦争の影が、いつ明けるとも知れぬ夜の闇とともに、映画の中盤を覆い尽くす。挿入される戦争のイメージ、恐怖のイメージ。そして、その家に集まる大人たちの間にも渦巻くのもまた、結局のところは大人のエゴではなかったか。取り返しのつかない戦争。過去を取り戻すためならすべてを捨ててもよいという言葉、それは結局のところ、単なるノスタルジーであり、自分自身のための祈りではなかったか。そしてマリアの元へ向う主人公が求めていたものもまた、自分自身への慰めではなかったか。やがて明るい朝が来て、主人公の行った行為。それこそが、過去としての自己の否定と、次世代への無限の信頼、すなわち真の自己犠牲であったと思うワケです。[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-01-29 08:32:17)

119.  ジャッカル うわめっちゃオモロイやん。以前観た時はなぜつまらんと思ったのだろうか。ってそりゃ、映画『ジャッカルの日』のオモシロさ、さらには小説『ジャッカルの日』の面白さ(ホントに興奮したなあ)があったからに決まってるんですけどね。大体この『ジャッカル』、原作が「ケネス・ロスの脚本」(フォーサイスの小説ではなくて)とせざるを得なかったところがすでにトホホなんですけれども。しかしその逆境にもめげず、よくぞ製作してくれました。もうこれ、オリジナル作品です、『ジャッカルの日』との関連なんて、事前に試射してみるシーンくらいのもんでしょ。優秀な殺し屋が、よりにもよって暗殺にあんな大砲みたいなヤツを使うなんていう発想が素敵です。前半は、ケガとカツラが似合う男、ブルース・ウィリスが、カツラまたカツラのファッションショー、神出鬼没とばかりに様々な場所に現れる。髪型と背景がひたすら変化し続ける、というのが面白く、自動車のペインティングなどを着々とこなしていく描写も面白い。要するにこの怪人ぶり。ギア様はちょっと存在感が薄く、だもんで、ギア様関連の背景も薄くなってしまった感があるのが惜しい(ってか致命的かも)点ですけど、地下鉄での追跡劇などは、今回観てて本当にシビれました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-04 09:44:38)(笑:1票)

120.  大列車作戦 「大列車作戦」って、語感が悪いですね~。「大スパイ作戦」では視聴率伸びないでしょ。さて本作。占領下のフランスから、ナチスドイツが大量の美術品を運び出そうとする。それをレジスタンスたちが、列車を利用したあの手この手で、阻止しようとするお話。やってることは小細工というか単なるイヤガラセというか、結構チマチマしているのですが、これを実際の機関車使ってダイナミックに演出されてしまうと、これはもう映画として圧巻。さらには、バート・ランカスターの身のこなしがこれまた凄い。梯子を滑り降りて機関車に飛び乗る一連の動き、機関車のパーツを流れるように作る一連の動き。これらのダイナミックなアクションの一方で、美術品のために人命が失われて行ってしまうという矛盾が描かれ、そこから生じる虚無感の漂う作品ともなっております。[DVD(字幕)] 8点(2012-01-03 14:11:22)

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