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1. ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
《ネタバレ》 アイルランドの神話をモチーフに使っているけれど、これは家族関係のなかで傷ついている子供たちに向けた物語。
日本で「子供向けアニメ」というと、無意識に「両親と連れ立って映画館にお出かけしてアニメを見る幸せな子供たち」が想定されているけど、海外の児童文学には家族との死別や両親の離婚などで傷ついた子供のためのグリーフケアに目を据えた作品も多い。これもそのひとつ。
登場する全員が、親や妹や残された家族を愛したいし愛しているし笑い合って過ごしたいけど、妻を・母を・嫁を失った悲しみがそれを妨げる。父親の悲しみや祖母の悲しみも、大人の観客にはよく伝わるよう描写されている。
問題児になってしまった主人公は、唯一すなおに愛し愛されている犬に再会するために、おばあちゃんの家から我が家に帰ろうとする。
その中で悪い魔女に妹をさらわれてしまうが、その妹を助けるハロウィーンの冒険は、瀕死の妖精たちを助けると同時に、大好きだった母との「ただしい別れ」につながり、やがて残された家族の再生につながる。
連れのリクエストで吹き替えで見たため、音楽にも重きを置いたこの作品の真価を捉えているか微妙だけれど、吹き替えの歌もよかった。
重く切ない話を、絵本のようにシンプルで装飾的な絵柄と美しい色彩でくるんだ、とても魅力的な話だった。[DVD(吹替)] 8点(2019-02-13 00:28:06)《改行有》
2. ロード・オブ・ウォー
《ネタバレ》 武器商人についての話などお目にかからないので興味深く見た。
ここでのレビューも、テーマや人物像をめぐっての話が多くなっているけど、映像は端正でとても美しい。これが大前提。
ソビエト崩壊のあたりのエピソードも良かったが、アフリカ(リベリア)の描写は強烈。
カラシニコフは扱う上で特別な訓練や熟練の技術が必要がない……ので、拉致してきた少年兵たちに持たせることが容易。
景気づけに沿道の人々に機関銃を乱射したり部下を射殺したりする指導者層、無抵抗のキャンプに対して虐殺を行う独立軍、彼らが武器の代金に支払うのは地獄のような搾取で掘り出されたダイヤモンド。なかなか強烈。
弟や妻子のファミリーやインターポール捜査官とのエピソードがあることで、主人公が金のみで動く商人や冷血ピカレスクといったテンプレート化から免れていると思う。憧れの女性との幸福な生活を願い、合理的で決断力はあるが、殺人や暴力は望まない、冷静なビジネスマンという感じが、かえって異質性を浮き立たせている。ラストのどんでん返しも含めて、いい映画を見たと思えた。[インターネット(字幕)] 7点(2017-07-01 03:06:27)(良:1票) 《改行有》
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