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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 私がやりました 《ネタバレ》 有名映画プロデューサーが殺された――。豪華な自宅で無残な射殺体となって発見された男。容疑者として逮捕されたのは、売れない若手女優マドレーヌだった。同居人で駆け出しの弁護士であるポーリーヌとともに裁判闘争を開始した彼女は、自分は正当防衛であるという主張を打ち出すのだった。役者志望である自分に大きな役を与えるという餌をちらつかせ、肉体関係を迫ってきた彼を誤って射殺したのがことの真相だというのだ。目撃証言も決定的な証拠もほとんどなかったが、世論を味方につけたマドレーヌたちは瞬く間に無罪を勝ち取ってしまう。そればかりかこの裁判をきっかけに、マドレーヌは一躍人気女優に、ポーリーヌは新進気鋭の若手弁護士としての地位まで手に入れるのだった――。途端に有頂天となる2人。だが、そんな彼女たちの前に真犯人を名乗る旬を過ぎた大物女優が現れる。プロデューサーを殺したのは自分で、無罪を勝ち取り本来有名になるはずだったのは自分だと。地位と名声のために自分が真犯人だと主張する彼女たちのどろどろの戦いが幕をあげる。果たして事件の真相とは?という、ミュージカル映画の名作『シカゴ』をフランスでリメイクしたかのような内容の本作、これがいかにもおフランスって感じのウィットとエスプリに富んだオッシャレ~な内容に仕上がってましたね。ここら辺がアメリカとフランスの文化の違いって感じなんでしょうか。パステル調の色調も何処か舞台のような画作りも飄々と進むスラップスティックなストーリーも、とにかくおしゃれ!何処か百合っぽい主人公女性2人の関係性も見ていて微笑ましい限り(2人でお風呂に入ってるシーンなんてなんともキュートで大変グッド!)。ただ可愛いだけのそんな2人の前に現れる、酸いも甘いも嚙み分けたベテラン女優イザベル・ユペールもさすがの貫禄で見応え充分(てかこれって演技じゃなくて地だったり?笑)。とは言えストーリーに特段驚きのようなものもなく、最後まであまりに軽すぎるしで個人的にそこまで嵌まらなかったですが、なかなか楽しいお話でございました。[DVD(字幕)] 6点(2025-04-08 11:21:56) 2. ポトフ 美食家と料理人 《ネタバレ》 19世紀末のフランスを舞台に、ひたすらストイックに料理に向き合う一人の美食家と料理人である彼の妻との静かな生活を淡々と描いたヒューマンドラマ。最後までまったく音楽を流さず、主要登場人物も3、4人だけ、映画のほぼ7割くらいは自宅でひたすら料理を作っているか食しているだけという、なかなかに挑戦的な内容なのにも関わらず、最後まで淡々と見せ切るこの監督の手腕はさすがと言うしかない。小鳥の囀りや虫の鳴き声、そよ風に揺れる森の樹木が奏でる葉音、そして食材を切ったり煮込んだりする調理音の中で交わされる知的でウィットに富んだ会話劇。出来上がってくる料理がどれも馴染みがないにもかかわらず、全て美味しそうに見えるのもこの監督のセンスがなせる技なのだろう。20年の時を経て、晴れて夫婦となった主人公2人を襲う悲劇も必要以上にドラマティックに描かなかったところも好印象だ。ただその反面、最後まであまりに淡々と綴られるこの2人の物語にはおそらく賛否が分かれるだろう。自分は少々退屈に感じてしまった。ユーラシア皇太子からの依頼にフランスの代表的庶民料理であるポトフで勝負するという最後の重要な場面が、何故か曖昧なまま終わってしまったのもいかがなものか。全編に漂う気品に満ちた雰囲気やストイックなまでに料理に拘った画作りなどはすこぶる良かっただけに、惜しい。[DVD(字幕)] 6点(2025-03-29 19:32:31) 3. ポッド・ジェネレーション 《ネタバレ》 様々な科学技術が発展した近未来。大手企業でバリバリと働くキャリアウーマン、レイチェルは植物学者である夫とともに充実した日々を送っていた。仕事も順調、豪華な高層マンションでの暮らしも快適、夫との関係も良好。でも最近、彼女は何か物足りないものを感じていた。そろそろ子供をつくるべきなんじゃないか――。不意にそう思い立つレイチェル。だが、今の仕事から離れたくはない。そんな折、彼女はベンチャー企業が新しくはじめた画期的なサービスを知るのだった。それは、体外受精した胎児を卵型のポットの中で10ヵ月間育てるというもの。これなら産休も取らなくてすむし、出産のリスクを負わなくてもいい。さっそく話を聴きにいくレイチェル。でも、豊かな自然を愛する植物学者の夫はそんな出産は摂理に反すると反対してきて……。卵型のハイテクポッドの中で胎児を育て出産することを決意したある夫婦の葛藤の日々を軽妙に描いたSFコメディ。アイデアはなかなか良かったと思うんですよ、これ。近い将来、本当にこんなサービスが出来るんじゃないかと言うリアルな部分に目をつけたところがなかなか秀逸。出産のリスクや面倒を何故女ばかりが負わなきゃならないの?というフェミニズムな視点もそこまで押しつけがましくなくて好印象。目玉をモチーフにしたAIなど一見シュールなのにどこまでもポップな描写も、この監督の品の良いセンスが感じられて大変グッド。ただ、問題は肝心のお話の方。アイデアは良かったのに、それがアイデアのまま終わってしまってるんですよね~、残念ながら。普通、こーゆー画期的なアイデアを基に脚本を書くなら、そこから起こるであろう様々な問題や展開を拡げてお話をどんどん面白くしてゆくもの。例えば、胎児の取り違えが起こったり、人身売買など闇組織に利用されたり、生まれてきた子供に愛情が芽生えないなどの副作用が発覚したり……。でも、この映画はそーならない。ただ、ハイテクポッドで子供をつくって産みましたってだけ。最後、何故かハイテク企業の手を逃れ自分たちだけで胎児をとり上げようとする主人公夫婦もその理由付けが弱く、いまいち盛り上がりに欠ける。かといって前述したフェミニズムなテーマもサラっと流してるだけで深みはなく、アート系映画としても弱い。なんかもっと面白くなりそうなのに、すごく勿体ないなぁという感想を僕は持ってしまいました。洗練されたポップな映像やマジカルな世界観はけっこう良かっただけに、残念![DVD(字幕)] 5点(2025-03-06 09:57:31)(良:1票) 4. DOGMAN ドッグマン(2023) 《ネタバレ》 不幸な者のいるところ、あまねく神は犬を遣わされる――。ある夜、冷たい雨が降り注ぐ大都会の片隅で、謎の男が警察に逮捕される。派手なメイクを施し、頭にはゴージャスなかつら、何故かボロボロになったドレスを身に纏った彼は、全身傷だらけの酷い状態だった。そして、彼が運転するトラックの荷台には十数頭にもおよぶたくさんの犬が乗せられていた。明らかに異常な事態。果たして彼は何者なのか?真相を探るため、警察はすぐさま優秀な精神科医デッカーを呼ぶことに。そうして始まった彼とデッカーとの二人きりのカウンセリング。ダグラスと名乗る彼は、煙草を吸いながらこれまでの自身の半生を語り始める。それは、にわかには信じがたい血と暴力に満ちた壮絶な生い立ちと何よりも深い彼と犬たちとの絆だった……。社会から疎外され孤独に生きてきたある一人の男と犬たちとの壮絶なドラマを濃厚に描いたピカレスク・ロマン。監督は、軽いノリのエンタメ映画を量産するリュック・ベッソン。これってアレですよね、数年前にその反社会的な内容にもかかわらず大ヒットし社会現象にもなった問題作『ジョーカー』のドッグブリーダー版ですよね。暗い部屋の一室で主人公が、派手な衣装を身に纏いながら奇抜なメイクをするシーンなんてまんまじゃん。ここまでおんなじ雰囲気&世界観だとさすがに二番煎じ感が拭えない。んで、本作の感想なのですが正直僕はさっぱり嵌まれませんでした。『ジョーカー』と比べて、良くも悪くも軽いんですよね、内容が。主人公が犬小屋に閉じ込められて育った幼い頃のシーンとか、確かにあまりに壮絶なんですけど、その後助けられてからは普通に施設で暮らして恋なんかしちゃってるし。んで、その後フラれて職も失い犬たちと暮らし始める青年期も、なんか知らん間に犬たちが人間の言葉を解するくらい優秀になっちゃってるし。自分を見捨てた社会に復讐するかのように、ほとんど虐待に近いくらいの勢いで犬たちを調教するシーンとかがあればもっと僕の心に響いたと思うんですけど……。自分を裏切り疎外しどん底へと突き落とした社会を心底憎むあまり、奇矯なメイクと怪しげなスーツを身に纏うことで悪のカリスマへと変貌する、あの『ジョーカー』の主人公が宿していた圧倒的な凄みと比べるとあまりに軽い。こればかりは好みの問題なのかもしれませんね。[DVD(字幕)] 4点(2025-01-24 10:48:54) 5. シック・オブ・マイセルフ 《ネタバレ》 芸術家を目指し、都会で長い下積み生活を送る若い女性シグマ。だが思うような結果が残せず、いまだカフェでバイトしながらただぼんやりと毎日をやり過ごしていた。周りを見れば友達誰もがみんな楽しそうで、SNSでは充実した毎日を送る人がそんな自分を見せびらかしている。同棲している同じく芸術家である彼氏も、近々個展を開くことが決定している。自分だけ、どうしてこんなにも上手くいかないんだろう――。そんな思いに捉われた彼女はある日ネットで、副作用から皮膚に強い疾患が起こるという違法薬物を目にするのだった。原因不明の皮膚病を発症したもののそれでも困難に負けず活動する若手アーティスト。そんな自分をSNSで発信すれば、自分はもっと注目を集めるかもしれない。そう直感したシグマは、誰にも内緒でその違法薬物を手に入れ、密かに服用し始めるのだった……。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、いやはや、なんとも人をイヤ~~~な気持ちにさせる映画でしたね、これ。映像はすごくキレイで洗練されていてクラシカルな音楽も品が良いのに、語られるエピソードはどれも不快感マックスなものばかり。そのギャップが人をなんとも言えない気持ちにさせる。なんなんですか、この感じ(笑)。色んなとこからモノを盗んできてそれを勝手に作品にして芸術だと言い張る彼氏も意味不明だし、犬に噛まれた人を助けた時の返り血を浴びたままバスに乗って帰る主人公も訳わかんない。人から注目集めるためだけに顔中できものだらけになった主人公が嬉々としてネットに画像をアップしまくり、後で反応を確かめてうっとりするとかシュール過ぎて…。この監督、そうやって人を不快にさせながらも何故か人を惹き付ける絶妙なラインの画作り、お話作りがすごく上手い。彼女と専属契約する障碍者専門のモデル事務所の社長が、あえて雇った目の見えない秘書をこき使うシーンなんて、そーゆーことに最近やたらうるさいポリコレ信者を爽快にぶっ飛ばしてます(笑)。んで後半、いよいよ顔面が崩壊し、もはや周りがドン引きしてるのにそれでもまだ認めてもらいたいと嘘を重ねる主人公。アホやなと思いながらも、どこかちょっと気持ちが分かるように描いてるのも良いセンスしてる。そんな中、主人公が夢見る理想の自分をときどき妄想で描くのも、このイヤ~~な感じをますます増幅してますね。この監督、性格悪すぎだわ。でも、このキレイな映像と胸糞なお話のギャップがクセになって、最後はもはや心地良くなってる自分がいました。監督はこの後、同じく胸糞映画界の俊英アリ・アスターに見出され、ニコラス・ケイジ主演でハリウッドデビューを果たしたとのこと。今度はどこまで嫌な気持ちにさせてくれるやら。胸糞映画界の新たなる才能の出現を素直に喜びたいと思います。[DVD(字幕)] 8点(2024-11-12 11:12:16) 6. ダンサー イン Paris 《ネタバレ》 怪我が原因で引退を余儀なくされたバレエダンサーが、療養で訪れた田舎町で様々な人々と接してゆくうちに次第に立ち直ってゆく姿を瑞々しく描いたヒューマン・ドラマ。何の予備知識もなく今回鑑賞したのですが、いやー、いかにもフランスって感じのオッシャレーな映画でしたね、これ。湿っぽい部分なんて一切なし、知的でエレガントな人々が繰り広げるお洒落で洗練された生活を終始キレイな映像とお上品な音楽で彩った内容。確かに、ここまで洗練された世界観を構築できるのは凄いことだと思います。この監督のセンスの良さが随所に光っていて、自分は最後まで心地よく観ることが出来ました。まぁ、誰も彼もがそれなりに幸せになって終わる最後は若干腹立つくらいでしたけど(笑)。[DVD(字幕)] 6点(2024-10-26 11:22:39) 7. CLOSE/クロース(2022) 《ネタバレ》 13歳になったばかりのレオと近所に住む同い年の少年レミは、子供のころからいつでも一緒にいる大の親友同士。ヒマさえあれば互いの家に行き来し、食事や寝る時も遊ぶ時も親の仕事を手伝う時もいつも一緒、お互いの親同士ももはや家族同然と言ってもいいくらい仲の良い2人だった。レオはアイスホッケー、レミはクラリネット演奏と趣味はまったく違うもののそれでも2人はお互いに応援し合い満たされた日々を過ごしている。きっと僕たちの友情は永遠に続くんだろう。そう信じきっていた。あの日を迎えるまでは――。中学校に入ってクラスメイトから掛けられた何気ない一言、「君たち、実は付き合ってるの?」。その言葉がレオの心を酷く動揺させる。休み時間に素っ気ない態度を取ったり、何も言わずわざと先に帰ったり、レオは何気なくレミと距離を取ろうとするのだった。途端にギクシャクしてゆく2人。納得いかないレミはある日、レオと大喧嘩してしまう。そして、2人の関係はその後、取り返しのつかない事態に陥ってしまうのだった……。とにかく文句なしに映像が美しい作品でした。色とりどりの花が咲き乱れるキレイな花畑をキラキラとした陽光を浴びながら駆けてゆく美しい少年たち……。イエローを基調とした映像のその吸い込まれそうな美しさに、僕は終始目が釘付けでした。主演を務めた2人の少年のもう本当の親友同士なのではとも思える等身大の魅力も素晴らしい。監督の豊かな色彩感覚と詩情溢れる映像センス、繊細で気品に満ちた音楽も相俟って、この世界に永遠に浸っていたいとさえ思えてくる。ただ、物語はそれとは真逆のとても哀しい顛末を辿ります。思春期特有の誰もが体験したであろう些細な行き違いと喧嘩。結果、それが最悪の悲劇を招いてしまう。誰が悪いわけでもない。でも、レオはまだ経験しなくてもいいような心の負荷を負わされ、互いの家族を巻き込んでどんどんと追い詰められてゆく。正直、観ればみるほど気分が沈んでゆくお話なのですが、主人公をはじめとするこの家族たちのひたむきさに心打たれます。特に、圧倒的な悲劇を体験しながらそれでも前向きに生きようとするレミのお母さんの凛とした佇まいに、僕は思わず涙してしまいました。誰の気持ちも痛いほど分かる丁寧で繊細な心理描写、そんな中でこの監督の人に対する暖かな視線が光ります。映画としてもう少しドラマティックな展開があればなお良かったとも思いますが、それは好みの問題なのでしょう。思春期に誰もが経験する切ない思いを瑞々しく切り取った、まるで宝石のように美しい物語でした。[DVD(字幕)] 7点(2024-09-27 09:08:03) 8. The Son/息子 《ネタバレ》 彼の名は、ピーター。大手法律事務所で様々な企業案件をこなすエリート弁護士だ。経営陣からの信頼も篤く、最近では有力政治家から選挙対策の責任者として働いてほしいというオファーまで舞い込むほど。再婚した現在の妻との間にはまだ生まれたばかりの赤ん坊もいる。そんな公私ともに順風満帆な彼だったが、ただ一つ気になることがあった。それは別れた前妻と暮らしている息子ニコラスのこと。息子はもう長いこと高校に行っておらず、その理由も一切語らないらしいのだ。直接息子に会ったピーターは、彼の願いによりしばらく今の家で一緒に暮らすことに――。幼子を抱え最初は戸惑っていた今の妻もピーターのためにと精一杯の優しさで迎え入れ、ニコラスもまた人が変わったように学校に通い始める。当初の懸念も忘れ、次第に息子との生活に喜びを見出すようになっていたピーター。たが、息子が抱えている心の闇は思った以上に深く……。監督は、前作『ファーザー』でアカデミー賞を受賞した劇作家でもあるフロリアン・ゼレール。前作同様、この監督の丁寧な演出と気品に満ちた美しい映像、なにより全ての登場人物に対する深い洞察力は素晴らしいですね。決して楽しい物語ではないし、最後まで暗い展開が続くので人によってはあからさまな拒否反応を示すことも多いと思う。でも、自分は最後まで惹き込まれて見入ってしまったし、最後は涙が止まらなかった。これは家族愛という幻想を全て取り払った後に残る、永遠に分かり合うことの出来ない人間の切なさを冷徹なまでに見つめた哀切極まりない物語なんだと思う。物語の終盤、息子を診察した精神科医が語る「愛だけでは力不足だ」という言葉を聞いて、自分は昔読んだ、夜回り先生として名高い水谷修氏の著書を思い出してしまった。定時制高校の教師として様々な問題を抱える生徒たちと向き合ってきた氏が、重度の薬物依存に苦しむ生徒がまた薬に手を出したとき、「俺はお前を絶対見捨てない。何があろうとお前と一緒に頑張るつもりだ。なのにお前はまだ甘えてる」と叱咤した直後、その生徒が自殺してしまったのです。このことに深く傷ついた氏は、「薬物依存や精神疾患はれっきとした病気なのです。それなのに自分が愛してるから治れというのは、風邪や肺炎で苦しむ人に周りが愛してるのだから自力で治れと言うようなもの」と述べておられました。本作の哀しい結末はまさにそれ。この親子には愛があった。それも深い深い愛が。愛は人を救うこともあるし、傷つけることもある。そして人を殺すことも。きっと最後、息子は「今が死ぬのに最適な時だ」と思ったのだろう。両親が昔のように愛情を取り戻し、自分も親から深い愛情を感じ、そして自分も両親に「愛してる」と心から伝えた。人生で一番幸せな瞬間、このまま終わればきっとこの時間は永遠になる――。愛に傷つき愛に裏切られボロボロになりながらも、それでも人は愛に縋りついて生きてゆく。そんな人間の切なさと美しさを冷酷なまでに見つめた傑作だと自分は思う。[DVD(字幕)] 9点(2024-07-28 15:01:07) 9. あのこと 《ネタバレ》 まだ中絶が違法とされていた1960年代フランスを舞台に、予期せぬ妊娠が発覚し、自らの将来を守るためにどうしても中絶しようともがくある女子大生の苦難の遍歴を淡々と綴ったヒューマン・ドラマ。まぁ確かに言いたいことは分かるし、これまで社会がいかに女性に厳しく無関心であったかを告発するという意義も分かるんですけど、一本の映画としてはちょっと微妙な印象。あまりにも淡々とストーリーが進行していくし、暗いだけで魅力に乏しい主人公にもいまいち感情移入できないし、何より全体的に画が薄暗くて見辛いところが自分の好みとしては致命的でした。数年前にカンヌでパルムドールを受賞した『4ヶ月、3週と2日』と同じく、訴えたいテーマには共感できるのだけど映画としてはいまいち面白くなかったというのが率直な感想です。最後に流産した胎児の映像を見せるのも不快感しか残らず、そこを敢えて映すところも似てます。この時代、女と言うだけでここまで不自由な生活を余儀なくされた多くの女性の人生に光を当てようというその思いには好感が持てるだけに、映画としてのクオリティももっと大事にしてほしかった。惜しい。[DVD(字幕)] 5点(2024-03-30 08:39:35) 10. ベネデッタ 《ネタバレ》 ペストの脅威にさらされる17世紀イタリアのとある修道院を舞台に、聖痕を受け聖者とされたある一人の修道女ベネデッタの数奇な運命を赤裸々に描いた歴史サスペンス。監督はそのどぎついエログロ描写で常にスキャンダラスな話題を振りまいてきた巨匠ポール・バーホーベン。と言う訳で、長年彼の大ファンである自分としては、けっこう期待して今回鑑賞。そんな僕の高まった期待をまったく裏切らない完成度の高い作品でしたね、これ。主人公ベネデッタはこの時代には最大のタブーとされていた、いわゆるレズビアン。そんな彼女がお気にの侍女を自らの寝室に囲んで夜な夜な破廉恥行為に耽るなんて、もはや日活ロマンポルノ(古い!)のノリ。母親から貰った木彫りの聖母マリア像の下半身を削って、震えないバ〇ブにしちゃうとかどんな発想やねん(笑)。夢に現れた磔のイエス様と裸と裸で身体を合わせちゃうなんて不謹慎にもほどがある!でも、そんなかなりお下劣一歩手前?な内容なのに、それでもちゃんと芸術作品として成立しているのが凄い。とにかく画がどれもキレイでお話の展開にも一切無駄がなく、なにより物語として明確な主題が首尾一貫して通っているのが素晴らしいですね。これは、キリスト教的倫理観でがんじがらめに縛られた窮屈な時代に、自由に生きようと願いそして実行したある少女の物語。聖痕が全て彼女の自作自演であったのかや、宗教的な葛藤、そして最愛の人バルトロメアとの愛と嫉妬と欲望が渦巻く関係性など、観終わった後にいろいろと考察したくなるところなどなかなか深い。カトリック教会上層部や地元有力者などに振り回される修道院長や、いかにも俗物でございと言わんばかりのローマ教皇大使など印象的な人物が多く登場するのもこの作品の魅力の一つ。最後、なにもかもを捨てて街を飛び出した2人が素っ裸で燃え上がる街並みを見上げるシーンなど、エロを通り越して神々しくさえありました。そして2人が下したそれぞれの決断……。歴史の巨大なうねりの中で必死に自分らしく生きようともがいたある女性の生涯を、極めて変態チックに描いたポール・バーホーベンの秀作でありました。[DVD(字幕)] 8点(2024-03-23 10:17:19) 11. ヴィーガンズ・ハム 《ネタバレ》 ヴィーガン――。それは完全なる菜食主義者。動物の肉や魚はもちろん、動物由来である食品、例えば卵や牛乳やはちみつまで徹底的に食べることを拒否する人々のことだ。同じ生き物である動物たちの命を自らの欲望を満たすため、ましてや金儲けのために利用するなんて残酷極まりない。そんな思想を持つ人々にとって、町のお肉屋さんは何の罪もない動物の命を奪いその死肉を売り捌くという、とんでもない存在。彼らは日夜、そんな罪人たちを懲らしめるため、店舗を襲撃しては正義の鉄槌をくだしている――。長年片田舎で小さなお肉屋さんを営むヴィンセントとソフィ―夫婦もまた、そんなヴィーガンの活動に頭を悩ませていた。そんなある日、車を運転していたヴィンセントは自分の店を襲ったヴィーガンを見つけると思わず轢き殺してしまうのだった。自らの店に死体を持ち帰ったヴィンセント夫妻。食肉のように処理して証拠隠滅しようとした夫妻は、ふと思いついてその肉を食べてしまう。「なんと美味しんだ」。動物を食べない生活を送る彼らの肉はとってもヘルシーで、ほっぺたが落ちそうになるほど美味だった。希少なイラン豚と称してヴィーガンの肉を売り始めるヴィンセント夫妻。その味が評判を呼び毎日行列が出来るようになると、夫妻は肉を安定的に手に入れるため、ヴィーガン狩りを開始する……。いかにもフランスらしい、そんなシュールでウィットに富んだブラックコメディ。野菜しか喰ってないヴィーガンの肉をハムにするととってもヘルシーで旨かった!ってどんな発想やねん(笑)。でもこのぶっ飛んだ発想はなかなか面白かった。「確かにちょっと美味しそうかも」と思えてしまう、妙に説得力があるこの絶妙の設定が良いですね~。夫婦の娘の彼氏がゴリゴリのヴィーガンで、何の罪もない動物の肉を喰う人間がいかに最低かをひたすら屁理屈をこねくり回して捲し立てる、ちょーウザいキャラだったのが個人的にツボ。「早くこいつをハムにして喰ってまえ!」って何度も思っちゃったし(笑)。後半、肉を調達するためにヴィーガン狩りを開始する夫婦が肉屋らしく、ちゃんと旨そうなやつを品定めするところもナイス。ただ、そのぶっ飛んだ設定のわりにストーリーが若干振り切れていなかったのが惜しい。狩りを開始するまでが割と退屈で、もう少し前半から飛ばしてくれたらもっと良かったんですけどね。とは言え、全体的には程よく纏まっていてグロさもそこまでではないし、気軽に見る分にはけっこう楽しめます。『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師』のライト版ともいうべき、愛すべき小品コメディでした。[DVD(字幕)] 6点(2024-03-09 07:37:21) 12. TITANE/チタン 《ネタバレ》 幼少期、父親の運転する車が交通事故を起こし、頭部にチタン製の金属部品を埋め込まれたとある女性。成長しダンサーとなった彼女がある日体験する悪夢のような出来事を暴力的なまでの映像で描いたシュルレアリスム劇。カンヌでパルムドールを取ったということで今回鑑賞してみたんですが、正直、僕にはその良さがさっっっぱり分かりませんでした。最初から最後まで、とにかくばっちい映像と痛々しい描写と下品なエロシーンの雨あられ。肝心のストーリーの方も独り善がりでつまんないし。久々に、最後まで観るのがこんなにも苦痛な映画と出会ってしまいました。まぁ人をここまで不快にさせる映画を撮れるのも一つの才能なのかなと思わんでもないですが……。自分の率直な感想は、「こんなつまんない映画に最高賞を与えるカンヌも落ちたものだ」でした。終わり。[DVD(字幕)] 4点(2023-12-18 08:37:36) 13. アクトレス ~女たちの舞台~ 《ネタバレ》 人気と実力を兼ね備えたベテラン女優マリア・エンダースは、私生活の方も任せっぱなしの女性マネージャーとともに充実した毎日を送っていた。そんなある日、彼女はとある舞台の出演依頼を受ける。それは彼女の映画デビュー作である『マローヤのヘビ』のリメイク。若く美しい少女がお堅い中年女性をその美貌で翻弄し破滅させるという役柄で自分は一躍有名となったのだ。だが、その役は当然かつての美少女ではなく、なんと破滅させられるお堅い中年女性の方だった――。時の流れの残酷さをひしひしと感じ当初は断ろうとしたマリアだったが、恩師である映画監督の急死を機に前向きに検討することに。そんな彼女を献身的に支えてくれるマネージャーから知らされた、かつて自分が演じた美少女役に抜擢されたという若手女優ジョアン。ネットで調べてみた彼女はまさに自分が演じた役にぴったりのスキャンダラスな若く美しい女の子だった。彼女の存在に心を搔き乱されたマリアは、出演依頼を承諾することを決意するのだが……。確かに題材は良かったと思うんですよ、これ。かつてその悪魔的な美貌で一人の中年女性を破滅させるという役で一世を風靡した女優が、今度は逆に破滅させられる役を演じるというのはなかなかに興味をそそられるお話。しかも演じるのはジュリエット・ビノシュとクロエ・グレース・モレッツという、これ以上ないくらいのまさに嵌まり役な2人。そこにクリステン・スチュワートが絡んで三角関係のような心理劇となるなんて、どう考えても面白くなりそうな脚本なのに、これが一向にそうならない。何故なんでしょう?それはやはり監督の演出が終始、見事なまでに的外れだからじゃないですかね。観客が観たいのはそこじゃないだろ!!と突っ込みたくなるほど、どうでもいいシーンの雨あられ。主人公の女優と女性マネージャーが山にピクニックに行くシーンなどやたら長いうえにはっきり言ってつまらない。恐らく監督は、この2人の友情以上恋愛未満なシスターフッド的関係をこそ描きたかったのだろうけど、いかんせん深みが足らないせいで観ていて退屈でしかなかったです。また、肝心のクロエちゃんが出てくるのが映画も中盤を過ぎてからって明らかに遅すぎ!ようやくクロエちゃんが出てきたと思ったら、ここまで破天荒キャラで引っ張っておきながら実物は驚くほど優等生な女の子。ユーチューブの映像で散々お騒がせセレブキャラみたいに煽っておいて、これはアカンでしょ。物語の焦点となるはずの最後の舞台劇もまるで取ってつけたようで肩透かし感が半端なかったです。この3人の嘘とプライドが複雑に交錯する心理劇をこそ掘り下げて描くべきだった。華のある人気女優たちの豪華共演に+1点!![DVD(字幕)] 4点(2023-11-06 02:51:42) 14. わたしは最悪。 《ネタバレ》 彼女の名は、ユリヤ。今年で30歳。高校卒業後、何となく進学した医学部を自分のやりたいこととは違うと途中で退学、新たに心理学を学びカウンセラーを目指すも相変わらずの詰め込み教育に嫌気がさし、これまた途中で退学。書店員をしながら今は直感的に向いていると感じた写真家への道を目指している。彼氏もその場のノリと勢いで付き合ったために上手くいかないことばかりですぐに破局。今は偶然知り合った漫画家の彼氏と何となく同棲している。それでも子供が欲しい彼とまだいらない自分との意見の違いから揉め、最近はなんだかギクシャク。何もかも中途半端に人生をぼんやりとやり過ごしていたら、気づけばもはや30歳。自分はいったいどうなってしまうのだろう――。本作は、そんな何処にもでいるような拗らせアラサー女子の日常を、序章と終章、そして12章からなる短い断片で切り取ったポートレートだ。とにかくこの主人公ユリヤのトホホ感に満ちた日常が魅力的でした。変に美化するわけでもなく、極端に自虐的にみせるわけでもない、彼女の生活を一歩引いたところから見つめるスタンスがなんとも心地良い。偶然紛れ込んだ知らない家のパーティーで出会う、のちの彼氏とのエピソードもすんごくトホホ感満載。お互い一線を超える勇気はないけれどそれでも酒で気が大きくなって思わずしたこと、それはお互いのおしっこしている姿を見せあうことでした。「これって浮気じゃないよね」って、いやそんなん浮気以前に人としてアカンやろ(笑)。そんなどうしようもないリアルな日常を延々描いていたかと思ったら、まさかの世界の一時停止!人々が動きを止めた街で惹かれている男に会いに行くシーンはもうこの監督のセンス爆発!空想の世界で彼とのデートを堪能し、そして元の彼氏との日常へ戻るところは大人の女心を繊細に描いていてすんごく良かったです。その後、彼氏に別れを告げるシーンはリアルで切なく、お互いの気持ちが分かる分、自分は過去の色んな思い出が蘇ってきて思わず泣きそうになっちゃいました。そして後半に明かされる元彼の現在……。実は末期癌に犯されていたという普通の映画だとお涙頂戴展開になりそうなところを、あくまでそうしなかった監督の絶妙な匙加減が素晴らしい。そんな場合じゃないのに、過去の浮気の真相を聞こうとする元彼の心理が何ともリアルでシニカル。最後、そんな2人が迎える切なくも哀しい別れ。でも、主人公の日常は続いてゆく…。1人の女性の人生を通して、生きることの辛さと幸せを優しく見つめた、なかなかの良品だったと思います。[DVD(字幕)] 8点(2023-10-02 09:08:12)(良:1票) 15. インフル病みのペトロフ家 《ネタバレ》 ソ連崩壊後のロシアを舞台に、インフルエンザに犯されたある一人の男の妄想とも現実ともつかない世界をシュールに描いた不条理劇。最初から最後までなんかよー分かりまへんでしたわ、これ。一つ一つのエピソードはけっこう強烈で印象に残るんですけど、全体的なストーリーが正直言って意味不明。でも、画面の隅々にまで文字通り妙な熱気が感じられて、最後まで普通に観ていられたのは事実なんですけどね。なので嵌まる人には嵌まるんじゃないでしょうか。[DVD(字幕)] 5点(2023-09-28 23:45:56) 16. オフィサー・アンド・スパイ 《ネタバレ》 19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件を元に、巨大な権力に立ち向かったあるスパイの闘いをリアルに描いた歴史サスペンス。監督は、数々の賞に輝く名匠ロマン・ポランスキー。さすがベテラン監督だけあって、その円熟味を増した演出はもはや匠の技。非常に複雑でしかも基本地味なお話なのに最後まで観客を惹き付けてやまないストーリーテリングの巧みさは素晴らしいと言うほかありません。DNA鑑定はもちろん、指紋鑑定すらない時代に、ただひたすら破られて捨てられた機密文書を入手し気の遠くなるような手間と労力をかけて再現してゆくところなんて凄いとしか言いようがない。んで、肝心の証拠となるのは、専門家とは言え一人の人間が行う筆跡鑑定のみ……。そりゃ冤罪も生まれますわーー。でも、主人公はただ社会正義の為にそしてかつての教え子の冤罪を晴らすために孤軍奮闘してゆく。保身に走る上層部、主人公を陥れようという同僚たち、そして明らかとなる主人公の不倫スキャンダル……。それらのドラマが後半になるにしたがって加速度的に盛り上がっていくところはもはや圧巻。背景にある、根強いユダヤ人差別の問題にもちゃんと目を向ける監督の目線の鋭さにも感心させられます。そして迎えるほろ苦い結末。歴史の巨大なうねりの中で今はもう忘れられてしまった無名の人々の人生に改めて光を当てるこの物語の深い余韻に、自分はしばらく浸っておりました。最後まで充分見応えのある歴史ドラマの秀作、お薦めです。[DVD(字幕)] 8点(2023-09-06 09:35:24) 17. ザ・ディープ・ハウス 《ネタバレ》 「幽霊屋敷 in 池の底」。それ以上でもそれ以下でもないお話(笑)。物語は、再生数を稼ぐことしか頭にないユーチューバーカップルが、より刺激的な映像を求めて、森の奥深くにある湖の底に眠っているいわくつきの廃墟へと侵入するってだけの内容です。でも……、この水の中という舞台設定が技あり!!こんなにベタベタな内容なのに、これが湖の底というだけでこんなに面白くなるなんて意外でした!気持ちの悪い魚が不気味に泳ぐ水の底で誰もいない廃墟へと入ってゆくシーンがとにかく怖い。家具や食器がゆらゆら漂ってるリビングとか今にも何かが飛び出てきそうでヤバかった。そして地下室で明らかに拷問を受けたであろう死体を発見する主人公カップル。でも、彼らは何か違和感を感じてふと呟く。「どうしてこの死体はこんなキレイなままなの?まるでさっきまで生きていたみたい……」。ここからラストまでもうヒィィィって感じで見入っちゃってました。ゆらゆらとゆっくり近づいてくる水死体がこんなに怖いとは。ここに酸素ボンベの残量が残り僅かだという水中ならではの要素も加わって、最後は普通に手に汗握っちゃってたし。何気に色んなゴミとか藻屑が漂う水の中なのに画面がずっとキレイで見やすかったのもポイント高い。アイデア一発勝負ながら、なかなか面白かった!ビール片手に真夏の熱帯夜に観るのに最適な映画、お薦めです。[DVD(字幕)] 7点(2023-09-06 08:31:19) 18. 僕とロボと不思議な惑星 《ネタバレ》 広大な宇宙を旅するとある冒険家家族。様々な惑星に降り立ち、未知の生物を調査して廻ってこれから地球へと帰ろうとしていた矢先、彼らは突然の流星群に襲われるのだった。瞬く間に宇宙船は崩壊、一人息子のウィリアムはたった一人、救命艇に乗って難を逃れることに。何日も宇宙を漂流した末にウィリアムが辿り着いたのは、今まで見たことがないような謎の惑星だった――。別の救命艇で逃れた両親が自分を見つけてくれるのはいつになるか分からない。ウィリアムは、救命艇に乗っていったロボットのバックとともに救助を待つことに。だが、この星は未知なる謎の生物がいたるところに跋扈する危険な惑星だった……。両親とはぐれ、謎の惑星へと漂着した一人の少年のサバイバルをファンタジックに描いたCGアニメーション。というあまりにもベタな内容だったのだけど、フランスで制作されたということで、もしかしたらほのかに毒の効かせたウィットなストーリーやオリジナリティあふれるキャラクター、あるいはセンスのいい映像などで魅せる内容なのかなと今回鑑賞。感想は……、ビックリするくらいベタベタな子供向けアニメでした。とても芸術の国フランスで制作されたとは思えない、アメリカンな内容。しかもピクサーやドリームワークスといった一流どころではなく、2番手くらいの制作会社が作ったんじゃないかというくらいのクオリティ。王道中の王道ストーリーにどこかで見たようなキャラクターのてんこ盛り。新しい部分など1ミリもありません。まあそーゆーもんだと割り切って観れば、CGはそこそこよく出来ていたし、ストーリーのテンポも良かったしで最後までぼちぼち楽しめると思います。でもまぁ自分のようなおっさんが夜中に一人で観るもんではありませんでした(笑)。[DVD(字幕)] 6点(2023-09-04 08:26:20) 19. ニューオーダー 《ネタバレ》 娘の結婚披露パーティーを開催中のとある富裕層家族。強固なセキュリティに守られ、政財界の大物を多数招待したパーティーが佳境に差し掛かっていたまさにその時、彼らを予想もしなかった悲劇が襲う。拡がり続ける格差に不満を募らせた貧困層が暴徒化、鉈や拳銃を手に屋敷に雪崩れ込んできたのだ。示し合わせたかのように各地で勃発する暴動に警察の手も追い付かず、高価な財産はことごとく略奪、泣き叫ぶ家族も容赦なく皆殺しにされてしまう。豪邸内は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだった――。パーティーの主役である花嫁マリアンは、突然の事態に戸惑うばかり。だが、根が純粋で世間知らずのマリアンは、難病を患う妻を病院に連れていきたいと願うかつての使用人を助けるために街に出てきてしまう。暴れまわる暴徒や軍隊によって大混乱へと陥る中、マリアンは高級車で街を彷徨うことに。何とかして元使用人の元へと辿り着いたマリアンだったが、それもむなしく彼女は軍を裏切った兵士によって誘拐されてしまう。多くの人質とともに劣悪な牢獄へと監禁されるマリアン。果たして彼女の運命は?政情不安に揺れる中南米を舞台に、突如として殺戮と略奪に巻き込まれる一人の女性の運命を終始冷徹に見つめたサバイバル・ドラマ。あくまでリアルに徹した、この殺伐とした空気感は凄かった。まるで戦場カメラマンが現地で撮った映像を繋ぎ合わせたかのようなリアリティで、この息詰まるような世界に終始圧倒されっぱなし。誰が生き残り誰が死ぬのか、全く先の読めない展開はこの世の不条理を容赦なく暴きだしている。ただ、それが映画としての面白さに繋がっているかというと、自分は正直「否」と言わざるを得なかった。ひたすらこの主人公マリアンが不幸な事態に巻き込まれ、何も悪いことをしていない無辜の民がことごとく悲惨な最後を迎えてゆく。そして最後も慈悲などなくただ淡々と……。これが目を背けてはならない現実だと言うのは分かるのだが、映画としてはやはり優れたフィクションの力で観客を魅了して欲しかった。映像や世界観の作り込みは素晴らしかっただけに、惜しい。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 05:02:20) 20. キャメラを止めるな! 《ネタバレ》 低予算ながら類い稀なるアイデアと優れた脚本の力で日本で大ヒットを飛ばしたゾンビコメディ映画『カメラを止めるな』。そんな大ブームを巻き起こした作品がまさかのフランスでリメイク!しかも監督は、『アーティスト』でアカデミー賞の栄誉に輝くミシェル・アザナヴィシウス。と言う訳で今回鑑賞。世間ではいまいち評判が良くないみたいですけど、自分はこれはこれでけっこう面白いと感じました。オリジナルはとにかくコメディ全振りで最後の方なんて大笑いしながら観てましたけど、こちらはけっこうブラックな皮肉が効いていて思わずニヤリとしてしまう感じですかね。ここらへん、日本とフランスの国民性の違いなのかな。最近の行き過ぎたポリコレを揶揄するようなきわどいネタをサラっとぶっこんでくるとこなんてナイス!冒頭、ゾンビ映画の主人公たちがバリバリ西洋人なのに何故かみな日本名という不自然さの理由が明らかにされたとこなんて普通に笑っちゃったし。なるほど、パール・ハーバーですか(苦笑)。ただ惜しいのは、肝心のそのワンカットゾンビ映画のクオリティが明らかにレベルが低くなってしまっているところ。キレの良さとかテンションの高さとかはやはりオリジナルの方が圧倒的に上ですね。あとこれは好みの問題なのかも知れませんが、主人公の女性が致命的なほどタンクトップとホットパンツが似合ってないのはひじょーーーに残念!!とは言え、オリジナルを忠実に再現しながらも独自のセンスを織り込んだ本作、僕はそんなに嫌いじゃなかったです。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 03:38:28)
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