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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 桜桃の味 《ネタバレ》 キアロスタミの最高傑作だろう。この終わり方にする理由もわかる。 これがフェイクであることを明示することが、却ってその真実性を硬くする構図をきちんと形成できていた。 つまりこれは具体的な事象であるというよりも、普遍的な事象であるということを表現し得ていた。 逆に言えばこの映画を見れば、他のキアロスタミの作品は見なくていい。それだけ芯を捉えている作品だ。 (ただしユニークな会話劇については「風が吹くまま」のほうが上だ。)[DVD(字幕)] 9点(2019-03-28 22:27:23)《改行有》 2. 美しき諍い女 文字通りの大茶番。「真実の芸術」というものの存在を四時間かけて偽証する。 作品内で「これが真の芸術ですよ」と説明さえすればその存在を証明したことになるのだろうか? ジャック・リヴェットとカンヌ映画祭とが己の浅はかさを露呈した記念碑的映画である。 この程度の思考力の者にでも「芸術」は、形だけなら行えるという教訓として大きな価値を持つ。 つまり芸術というものがどれだけ「それらしい」ところで行われているかということの訴えとしては満点に近い。 この作品の主張が、「芸術を行うものが芸術に幻想を抱いていてはいけない」という身を挺した警告だったならば10点を付けている。[DVD(字幕)] 0点(2019-03-28 00:40:27)《改行有》 3. リュミエールと仲間たち 《ネタバレ》 巨匠たちの60秒などと言いながら、どれだけ説得力のあるものが撮れていたのか、疑問である。 せめてキアロスタミが見せてくれた程度の質のものが40本並ぶくらいでないと駄目なのでは? 吉田喜重など発想から幼稚でがっかりである。 インタビュー映像がいちいち挟まるのも野暮ったい。本編と分けるべきだった。 「巨匠たち」の実際がこの程度であるという批判的視点においては成功しているだろう。[DVD(字幕)] 3点(2019-03-25 12:45:59)《改行有》 4. パピヨン(1973) うだるほど長いという感覚とその時間がきちんと充実していたという感覚を併せて味わえる映画。だが、どうしようもなくエンターテインメント映画であって、観たからどうということもない。[DVD(字幕)] 5点(2019-03-25 10:09:25) 5. サクリファイス 《ネタバレ》 この映画での表現に対して時間が短すぎ、駆け足の感があった。超越的なものと世俗的なものの接触点について、ノスタルジアでは恥ずかしくなるような甘い表現もあったが、本作では硬く締まっていた。ラストシーンで唐突に挿入されるBGMを除いては。[DVD(字幕)] 10点(2019-03-25 08:22:14) 6. 抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より 切り詰められたエンターテインメント映画。[DVD(字幕)] 5点(2019-03-24 18:18:24) 7. スリ(1959) 淡々と進んでいく手法に、映画の方法論としての感銘は受けたが、内容はイマイチである。 いや、実際のところ方法論はかなり気に入った。[DVD(字幕)] 5点(2019-03-22 19:12:05)《改行有》 8. 風が吹くまま 《ネタバレ》 エンターテインメント作品を期待すると、何も起こらないシュールな作品だということになるらしい。 アーティスティックな描写もなく、美しさが現れるときでも、常にリアリスティックではあるが、一流の芸術作品の水準に置かれた上質の映画である。 この映画にはいかなる失策も存在しない。それはエンターテインメント映画が多様な失策によって観客の注意を引くことの対極である。 ユニークな場面も、シリアスな場面も、ナンセンスな場面も、全てがひとつに調和している。 このお喋りな映画が、どれほどの「芳醇な静かさ」を醸し出しているか。 ありふれているように見えるのだろうか、私は普段暮らしている中で、こういった「温かい上品さ」には稀にしか触れることができないように思う。[DVD(字幕)] 8点(2019-03-12 02:44:08)《改行有》 9. エコール 《ネタバレ》 ロリコンだとか美少女などという物差しで映画を量る限りではこの作品の美しさは見えてこない。 はっきり言って、この映画がそういった見方で愚弄されるのにはいい加減うんざりである。 フェミニストのように、「性的にばかり見ないで」という切実な言い方を取りたくなる。 公平に言って、この映画から観客がどのような主張を嗅ぎ出そうが、この作品自体には性的な意味での主張はない。 どのような不気味さもなければ、意味深さもなく、讃美もなければ非難もない。 この映画のタイトル(原題)がINNOCENCEであることを一度省みてほしい。 「とある場の存在」自体のイノセンスが、それを解釈するものによって汚される構図を見ることが確かに可能であるという点で、私はこの映画を高く評価する。 あのラストシーンを、何かへの讃美でもなければ非難でもない、ただ「それ自体」のシーンとしてもう一度観直してみてもらいたい。もしそう捉えることが可能ならば、そこに現れる「失われていくもの」への想いがあくまで純粋な形で訪れるだろう。 そして、この映画全体が、そのように見直されるべきだと切に思っている。 そこには窓辺に置かれたガラス製水差しのような純真さがあった。[DVD(字幕)] 7点(2019-03-12 02:29:53)《改行有》 10. ブリキの太鼓 《ネタバレ》 長所と短所が狙い通りくっきり彫り出された傑作であり、長所は面白いことであり、短所は下品なことだ。 下品というのは、何も性的にばかり下品だと言っているのではない。 面白おかしく作られていることを含めたこの映画の全てが下品であり、人の心を荒ませるような醜い映画だ。 もし「客観的に」採点しなくても良いなら、この映画は観るべきでないという意味で躊躇いなく0点をつけたいところなのだが、映画の面白さを採点の基準に据えるこのサイトへ敬意を払い、常識的な点数(とはいえどうしても嫌いな映画であるがゆえに低めになってはしまうが)を付けることとする。[DVD(字幕)] 5点(2019-03-12 02:16:28)(良:1票) 《改行有》 11. エル・スール 《ネタバレ》 シンプルなシナリオであり、諸手を挙げて喜ぶような映画ではないが、とにかくこの作品に流れる静謐さ、というのか、上品さがずしりと心に響いた。 雪解けのように、謎がきちんと解けていく展開も上品だ。陶器のように、ずっしり重たい作品である。[DVD(字幕)] 9点(2019-03-12 01:57:55)《改行有》 12. ニーチェの馬 《ネタバレ》 たとえば、トリノの広場での「ニーチェと馬のエピソード」の描写が、続く「ただ馬が嵐の中を突き進むシーン」と響き、尋常でない迫力を生み出している。そのような各シーンの響きが最後まで途切れずに続いていった。 正直なところ、この映画のシナリオにはつまらない発想が多い。じゃがいもを食べる量が減っているだとか、酒を飲む量が増えるなどといった方法で反復性からの脱却を示唆するのはあまりに勿体無い。このことは映画の中核を担う「終末への過程」についても同じように言える。反復性というのはそれ自体が幻想なのだから、一見変化のない生活であっても絶対的な意味で全く違ったものなのだ、という地点で看破されるべきだ。そうでなければ「ニーチェと馬」のエピソードを引用した意味がない。 ただし確かにこの映画に描かれた中には無為な生活を不満も言わず繰り返す父娘というイメージがはっきり描かれており(枯れた井戸を見て「ちくしょう」と呟き面倒臭そうにきっぱり移住の準備をしては、結局諦めて戻ってきたり、突然世界が暗闇に包まれても寝ようと呟きベッドに潜り込んだり)それがある意味で終末をも、終末と感じさせないところで本監督の意図したかもしれない結末とは違った奇跡的な「永劫性」を導き出したように思う。それにはこの監督特有の「長回し」の効果も大きく加担しており、欠点を持ちながらも「人は死んでも生き続けるんじゃないか」といったイメージを観たものへ刷り込むような、凄まじい作品に成っている。[DVD(字幕)] 10点(2019-03-12 01:46:42)《改行有》
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