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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. リンダはチキンがたべたい! 《ネタバレ》 主人公が8歳の女の子ってアニメだというコトからも、後半のコメディはごく子供向けっぽいハチャメチャ&ドタバタって感じの質感で、また全体に対する割合的にはその子供向けな辺りがメインだなコレ…と言ってもいい作品かとは思われます。が同時に主人公と周囲の人々の背景にチャンとドラマが在るのも十分に察せるトコロではありますし、もっと言えばアニメなのに何となく彼らの生活がごく高度に「侭ならない」感じであるコトには最近のフランス映画に多く見られる社会的テーマみたいなトコロも感じられますし、何よりも、手書きアニメとして相当にユニークな表現を実験的と言って好いレベルで貫き通しているコトからだって、子供向けアニメの枠に嵌り切らない色々な美味しさが(76分に)凝縮されていた…と言うべき作品なのかとも(大いに)思われます。かなり評判の好い作品だったと(⇒本国でも世界でも日本でも)記憶しているのですが、確かに十分に見ドコロの在る映画だと感じました。興味があれば。[インターネット(字幕)] 6点(2025-04-01 07:23:49)(良:1票) 2. ギャベ 《ネタバレ》 ここ数年、東京だと渋谷のユーロスペースで毎年開催されている「イスラーム映画祭」という催しにて鑑賞したものです。まずは「幻想的・詩情的」とか「ファンタジック」とかって言葉で紹介されることの多い作品である様なのですが、確かに、展開運びにせよ・個々の演出や演技にせよ、通常の劇映画とはかなり異質な…と言うか、一言で言うと「夢でも見てる」かの様な、という意味でのイリュージョンチックな感覚が(ド初っ端から最後まで)感じられて居りましたですね。もう少しダケ、細かく分解して申し上げるならば、話の展開の部分については(パッと思い付くモノで例えると)『ツィゴイネルワイゼン』みたいな硬質な浮遊感が在った様に思えたのと、他方で演出の部分については、中東・中央アジア的な荒涼とした種々の風景をふんだんに利用しつつ+ソコに(却って)正に極彩色!と言っても好い様な鮮やかな色彩を散りばめた画づくりからは、件のパラジャーノフ作品にも似通った様な極めて高度な芸術的感覚までをも覚えられたのですよね。 しかし、その上で、そんな夢の如くに揺蕩う様な序盤~中盤を越えていった時に、終盤にかけては意外なまでに監督の設定した(であろう)テーマが強固に・見事に形づくられて語られてゆくと言うか、今作もまた、後にイラン政府から上映禁止処分を受けた…ということが(ソコでは)容易に実感できるホドに、実に清々しく(因習的な抑圧や社会的不条理からの)一つの「解放」を描いている映画だ…というコトがヴィヴィッドに理解できてしまったのですよね。芸術性とテーマ性の両立という意味では、思いがけずも確実に、古今東西でも最上位レベルの傑作だと思いますよコレ。やはり、中東でも特にイラン映画は全く以て侮れない…との思いを新たにしましたですね。[映画館(字幕)] 8点(2025-02-24 01:37:32)《改行有》 3. エマニュエル(2024) 《ネタバレ》 まずは唯々、一皮剥けばそれしか頭に無い…という様な・というダケの映画、であると思われてしまうのが否めない。何故か、どれもワザとらしく耳元で囁かれる様なまだるっこしい台詞の一つ一つとて、或いは、逆に空虚な程にエレガントを極めた高級ホテルのアレやコレやに至るまで、要は全てが「前戯」=その先に来る「本番」無しには到底成立しないモノでしかない、と思われてしまうのだ。勿論それは、如何にも現代風なキャリアウーマン然とした今作のエマニュエル=ノエミ・メルランを以てしても、そういった代物が実際に確かに、見映え程に大層なる価値など持たない人生の「虚飾」でしかないコトの証左(たる表現)なのかも知れない。しかし、であるのならばこの映画は一体、最後にドコに=どういう類のその本番(・絶頂 ・解放)に辿り着いて終わった積りになっているのだろうか、というコトだ。自分には無いモノ・自分とは違うナニか、に対するある種の無意識な「勘」に従って、主人公はあの奇妙な男の懐に遂に飛び込んだ…とそれはそれでも好かろう。が、端的にどうにも、その結果としてのクライマックスにさえも、我々&肝心な彼女でさえ、が期待した様なドラスティックで鮮烈なナニか、というのが一切描かれていなかったという様にしか見えて来ず……重ねて、これだけの空虚さで以てこれだけ我々を焦らしに焦らして、なのに最後にまたこんな空虚を一杯に喰わせてそのまま終わる…という、コリャあ中々にムゴい映画だな~と思ってしまいましたよね。原作や先行作を観ずとも、これは決して出来の好い映画化ではない…とは確信できる程度の作品かなと。 それでも一つダケ、肝心な=私が今作を観たトコロの最大の理由たる、主演のメルラン女史の出来自体は、好いか悪いかで言えば前者だったかとは思うのですね。件のキャリアウーマン=また内外に「パワー」の漲る様子のキマリ具合とかだって率直に中々のモノだったと思いますし、一方で、劇中終始あんまし表情が大きくは変わらない・崩れない、のは、それはやはり(前述のキャラの通りに)確固たる「自信」を常に抱いているコトの様にもチャンと見える…一方で、同時にまた常に「満たされて居ない」コトを示している様にも見える…それはそれで、作品に対して実に適切に「艶めかしい」コトである様にも見えたりもして、結論的には全体としても、彼女についてはハマり役はハマり役だったのではねーか…とは十分に思えるのですよね。でも、寧ろだからこそ他方で一つ例えば、ラス前に今のこの仕事を結局辞める羽目になったトコロで、じゃあそれが彼女の人生に(望むべく)ドラスティックな意味を持つだろう…とは中々見えて来ないのも再び確からしくも思えますし、もう一つやはり、確実に敢えて「取り繕った」表情を一貫している…というのが重ね重ね、オーラスでもイマイチ「ハッチャケられなかった」という結末にも無理なく繋がってってしまってる様にも思えてしまうのでして……何と言うか総じて、完成度は何処も彼処も低くない(=コンセプトに則って纏まっては居る)のだケド、そもそもコンセプト自体(=彼女をこんな感じで起用したコトも含め)が非常に根っこの部分でちょっとイケてなかった…という様な、実に残念なレイヤーにおける残念な感じが在って至極残念…みたいなコトなのかも知れませんかね。[映画館(字幕)] 5点(2025-01-25 17:44:13)《改行有》 4. ポンヌフの恋人 《ネタバレ》 三部作の共通テーマ…的な部分はともかく、お話の内容そのものとしてはかなりシンプルでオーソドックスな、所謂「純愛」もの、だと言ってしまって好い作品だとも思うのです⇒更にその意味では、男女ふたりが出会って別れてまた出会うのがズバリ「橋」だってのも、また殊更にオーソドックスだって気もしますですかね。ただ、他方で作品の空気感について述べるなら、三部作の中でも+パリの市街を舞台にした現代劇(の純愛もの)としても、だいぶ風変わりでやや異質…な様にも思えたのですよね。その状況に陥る経緯そのものについてはまた普通…(だからそこからの純愛…とゆーの自体もまた月並…)だとは思えども、端的になんかちょっと文明世界に見えないって位に荒廃してるとゆーか、もはや妙に「終末世界」感みたいなモノまでが感じ取れるって有様で、私にはそもそも、それ自体も「橋」と言うよりはもはや「城」⇒欄干が城壁で河が堀で…みたいに+んでその城にふたりが「立て籠もってる」て話みたいにも思えて居たのですよね。先に、やや議論を醸したというグッドな方の終い方についても、私もココには(ほんの少しダケ)しっくり来ないモノを覚えてしまったってコトも含めて(⇒やっぱバッド・エンドの方が合うよな~と)何を語るかよりは「どう語るか」=映画的な表現技法の方に観るべきモノがある、という作品には見えています。その面の素晴らしさ・ユニークさについては、私が今更加えて語る様なトコロは無く、なので全体の評価としてもこの位の点数とさせて頂ければと。三部作なので、なるべくなら前後関係を(高度に私の個人的な好みに由来するモノだとしても)付けておく方が好いかな~と思ったってコトだとご理解下さい。以上。[DVD(字幕)] 7点(2025-01-21 17:27:39) 5. ボーイ・ミーツ・ガール 《ネタバレ》 先に『汚れた血』から観てしまいましたが+コッチと『ポンヌフの恋人』は両方観た後でレビュー書いてますが、終盤のふたりの長い会話シーンなんかには三部作の共通性とゆーか共通テーマ・共通の表現技法なんかも見て取れるって感じかと思います、が、作品全体の雰囲気自体は(2作品と比べると)ややマイルド=絶望や緊迫、よりは憂鬱・不安・焦燥、の様な青春の有様が映し出されて居る様に見えますかね。その、比較的淡々と静かな…という意味でも、モノクロの画面は効果的だったと思いますし、そのモノクロの「黒」を巧みに使った様な「暗闇」の在る構図が特に綺麗だった・絵画的だったなと思います。ヒロインは、今作ではジュリエット・ビノシュではなくてミレーユ・ペリエという女優さんなのですが、中々どーしてま~た超・美形でま~た超・アンニュイなイイ~感じなのですよね~見惚れてしまいましたよね!やや、シャレオツなのは好いんだけど脈絡がチンプンカンプン&ちょっと淡々とし過ぎてる、みたいな時間帯も在ったかとは思いますが、全然最後まで興味深く観切れました。80年代っぽさも大いに在ったかとは思いますが、これぞフランス映画…的な醍醐味もしっかりと感じられましたし、良作かと。[DVD(字幕)] 6点(2025-01-21 16:26:11) 6. 汚れた血 《ネタバレ》 SF的な風味付けもされてるにはされてると思いますが、大枠は彼の国伝統のノワール的な構造(オッサン・オッサン・美女+感情移入がし易そうな若造の主人公、な~んて建付けも含めて)を大々的に有している…と当初は見えているのです。が、最後まで観終わると、ソレがそうっぽいのはワリとごく最初と最後ダケで、中盤は全然(全っ然)ノワールでもナンでもなかったな…とゆーか、んで私も正直そこんトコロ自体は=観てる真っ最中は結構モノ凄~く違和感を覚えながら観てたなっちゅーか、それ自体は率直にネガティブな感想としてまずは伝えて置きたいのですね。やっぱ私、ノワールのノワールたる「ニヒル」な世界観って、実際にこの世界が正に「虚無である」ってコトそのモノの抽象だと思ってる⇒そこに、ヒトのヒトたる「虚無でないナニか」を控え目にもごく明確に主張してゆく…というさりげなさこそがノワールの最大の醍醐味だと、比較的強力にそー思ってしまってるので在りますのよね。 がしかし、違和感を覚え…と言いつつも、その中盤の長い長いマロいふたりのシーンのクオリティ自体は実に素晴らしくシャレオツだったとも思いますし、冒頭からもな~んか妙に「リズムの好い」映画だな…と思って居たりもして(音は大して鳴らずとも⇒これは確かに「音楽」なのだ、と)加えて言うならばジュリエット・ビノシュの類稀な可憐さその他諸々といい(⇒今作のこのジュリー・デルピーをも全く寄せ付けないってのはスゴすぎる)てゆーか今作のビノシュは中々に=映画史に残るべきってレベルに実に卓越した仕事を成し遂げるな~と思うのですよね。若いのに、否、その若さも含めて、且つは思いっ切り年上&年下のふたりの男の狭間に揺蕩うっちゅうモロ出しの二面性の見事な表現も含めて、個人的にはあの『レオン』のマチルダ=ナタリー・ポートマンを少し思い出しちゃったりもしましたよね⇒作品としてはコッチの方がフツーに先行ですケドも。 んで結局、中盤で結構(個人的には)盛り下がったりもしたものの、最終的には=コレはたぶん(少なくとも単なる)ノワールじゃない…と悟った上で最後まで観終わった暁には、好い~映画ジャ~ン!!と完全に思い直すに至りました。前述した(私の思う)ノワールとは違って、もっと青臭く・もっとプリミティブに・プリミティブなナニかを叩きつけて来る様な=ある種の「叫び」の様な映画だ、とは思いつつも、その絶叫の内容自体には結構思いっ切り共感できちゃった、と言うしかないのです。最終手段として、男って「格好好く死ねればソレで好い(⇒多くは、愛する人の為になら)」という選択肢を最後まで捨てるべきじゃねーんだよな…とゆーか、とか言いつつも(再び)もうそんな価値観の青春映画がつくられる時代なんて二度と来ねーわ!(否、来るべきですらねーわ!)とゆーか、書いてて思いますケド私も中々こーいうトコロのアップデートが侭ならない人間なんすよね………結論、もう一点加えようかを少しダケ迷ったコトを潔く告白しつつ、やっぱ中盤は長ーよ、と思ったコトを言い訳にこの点数に留めておきます。追伸、三部作らしいので他のも観ます。[DVD(字幕)] 8点(2024-11-17 15:51:37)《改行有》 7. シシリアン(1969) 《ネタバレ》 時代的なトコロもあるのでしょーが、特に中盤が(かなり長いコト)サスペンスとしては&ノワールとしたって、ごく非常にマロいのですよね(=ちょっと眠い)。序盤にはドロンが(半裸で)走り回る様なシーンもあったり、またオーラスの辺りは(急激に)テンポもかなり好くなってったりもするのですケド、その辺も含めて多少「時代」を感じざるを得ない…みたいな感じではありますかね。 だから正直中盤は、名優3人の演技をボ~っと眺める位しかやるコトがねーのですケド(女優も今作では個人的には今一つパッとしない様な気もするし…)ドロンとヴァンチュラはともかく、ギャバン御大はちょっとあんなに老け役につくり込む必要はあったんすか?と思ってしまいますかね⇒隠居間近のマフィアのドンという役回り+実年齢も60半ばだし…とは言え。。そもそもストーリー自体もやや焦点が絞り切れて居ない様な感じで、ボ~っと眺めてる分には宝石強奪のトコロなんかはまずまず鮮やかな仕業!にも思えたのですケド、そっから先はクライマックスの盛上りもイマイチだし…と、ストーリーにも(率直に)そこまでの面白みは無かったかも知れない…とは思ってしまいますよね。 しかし、再び個人的には、終わり方(とゆーかその「呆気無さ」)には、中々に味わい深いフレンチ・ノワールの真髄を感じられたという気もするのですね。この話って結局のトコロは、あの時あの瞬間にテレビにあのシーンが映らなかったら…という、実に些細なコトを切っ掛けに最後は皆が破滅する…というお話だと思えて居り、それはその「悪が栄えるコトを許さない」という意味でもごく正しいノワールの終い方だと思うのですし、それもまた全体のアンニュイさ(+例のモリコーネの気怠い音楽)にも適合していたと思うのですよね。まあ、再々度、その破滅をもたらした最大の元凶は?と少し掘り下げるならば、ドロンの色ボケと、そしてギャバンの「家族」というモノに係る頑固さ+嫁ごときを御しきれなかったという少しバカリの(しかし致命的な)油断、という、これまた些か気の抜けてしまう様な人間臭さ、だと思ったりもしますケドね。[DVD(字幕)] 7点(2024-10-13 01:30:06)《改行有》 8. 殺しが静かにやって来る 《ネタバレ》 モリコーネ氏の例のドキュメンタリを観てコッチも観たくなっちゃった第一弾!なのですが、内容自体は典型的なるマカロニ・ウエスタンで、かつ件の氏の音楽も(多くの部分では)オーソドックスな氏のマカロニ系だとも思います…が、まずはそのお話が全編通して白銀世界の中で繰り広げられるというコト、マカロニの中でも相っ当なハードボイルドって方であるコト、加えて、肝心なシーンでは氏の手になる音楽もまた実に高尚なっちゅーか本格的なっちゅう風情に溢れまくっていて(クラシック=純粋音楽ぽい曲も方々に多々あったりで)トランティニャンが主役だからってダケなワケではねーものの⇒その高度な芸術性&風格を鑑みるならごくハイレベルな方のフレンチ・ノワール的だった…みたいな質感すらも感じられてしまいましたよね。個人的にはその辺はズバリ、ドンピシャに好みだったと言えます。 しかし………確かに、このラストは、衝撃的とゆーか驚愕とゆーか、でも驚愕とゆーても「え、こんな終い方してもーて好いと思てんの?」みたいな悪い意味での意外性だとゆーか…(殊に前述どおり、内容そのものは結構オーソドックスな方なんだから…)百歩譲って、トランティニャン以下があーなるのは(私としても)涙を呑んで善しとした…しても、それでもどーしたって(あのレベルで極悪!って)クラウス・キンスキーがああ為って(=ああも為らずに)終わるとゆーのは、コレは私としてもちょっとどーにも腑には落ち切らないのですよね。その点を考慮して、この評価としておきます(⇒ハッピーエンド版も流布してるってコトみたいですが、どーでも好いって出来なよーなので観ずにおこうと思います)。[インターネット(字幕)] 5点(2024-10-05 23:52:47)《改行有》 9. ダンサー イン Paris 《ネタバレ》 内容自体は、極めて非常に典型的なる「挫折からの立ち直り・カムバック」系の青春映画で、主人公はダンサーの女性ってヤツです。バレエを頑張ってたケド怪我をしてしまって⇒コンテンポラリーダンスの面白さに目覚める…的なトコロで、その筋書き自体ですらも探せば一作品くらい全く同じって映画もあんじゃネ?みたいなヤツかなと。プラス、フランス映画ってコトで芸術性&モダンな雰囲気とかって方面の諸々は確かにどれも高度ではあるのですケド、それでも(悪い意味での)気取った感じ・近寄り難さマデは(やや珍しく)あんまし無くって、個人的には正直「フランス映画っぽくねーな…」てレベルで素直に観易いって方の映画だったって感覚も在ります。 ただし、やはり芸術家の若者を描いた青春映画(フランス産)ってコトで、前述どおりやっぱし描かれる「芸術そのもの」のクオリティには拘り捲っている…とゆーのが、結局のトコロは今作の作品全体としてのオーソドックス且つユニークなる「ウリ」というコトなのかとは思います。今作はまず、女優さんにダンスを仕込んでる…というヤツではなくって(逆に)ガチのモノホンのプロバレリーナに演技に挑戦してもらってる…(+バレエのみならずコンテンポラリーダンスにしても、実はその道の超一流がクオリティをつくり込んでいる…)という方の作品なのですね。だから、そのダンスの出来ってのは確かに相当に凄いってモノには見えます(⇒私、そっちの方面にそんなに詳しくねーので、完全には理解できてないかも知れませんケドも)。冒頭にはバレエ&オーラスにコンテンポラリーダンスをかなりの長尺で思いっ切り配していて、前述どおり確かにソコには非常な観応えが在ったと思いましたよ。全体的な観易さに加えて、その部分のクオリティの(ある種の)分り易さも含めて、意外に広くオススメし易いという作品に思えます。再度、シンプルにポジティブに楽しく観れるって方の作品なのは確実かと思いますので、お好きなら是非。[DVD(字幕)] 7点(2024-08-10 01:36:17)《改行有》 10. シャーク・ド・フランス 《ネタバレ》 実は、最近のサメ映画には「サメが(あんまり)出て来ない」という系統がある様に思えてまして、とは言えそーいうのって基本的には変化球的な受け狙い=コメディとしての仕掛け、であるコトが多いとは思うのですね。今作は、いちおうコメディではあると思うのですが(⇒とゆーかコメディだって聞いてたのですが)実際に観てみるとド直球にそーいう感じでもなくって、寧ろもうチョイ「志」が在るとゆーか彼の『ジョーズ』を思いっ切りオマージュしつつ(⇒特に真ん中チョイ過ぎまでは、マイナーチェンジは在れどもメインプロットは完全に同一ながら)ソレをより純粋なる主人公の「人間の物語」として再構築した…みたいなモノに思えたのですよね(⇒だから今作に関しては、サメが大して出て来ない…のはもはや必然なのだ、と)。 今作の成功は、その「志」の高さも然るコトながら、ソコにマリナ・フォイスという非常に優れた俳優さんを充てられた、というコトに尽きるかと思います。こないだ『ヴィーガンズ・ハム』を観た時にも何とな~く感じたコトではありましたが、元々はコメディエンヌ…という人らしいのですケドそーいうの関係無く実に素晴らしい女優さんですね!(⇒もうすぐ多分、天下取れそうな気がしますよね)。思えばやや低俗にも思える邦題とか・単にコメディだとかって前評判の辺りを総じて抜いてしまって少し背筋を正して観て頂きたい…とすら思います⇒ただしそーすると、ちょっと逆に『ジョーズ』に寄せ過ぎた(意外性に乏しい)クライマックス辺りが、思ったよりも締まらなかったかな…みたいな感覚も少なからず覚えられてはしまうのですケドも……(ソコだけはチョイ物足りない……)[DVD(字幕)] 6点(2024-08-10 01:31:44)《改行有》 11. ヴィーガンズ・ハム 《ネタバレ》 カニバリズムをホラーとして描く…てのはふた昔位前の流行りかな~とも思われますが、人肉を「旨そうに」食う、とゆーのはシンプルにかなり恐ろしいホラー的描写になり得るかと(⇒物理的にも概念的にも)。今作でも、ハムは確かに旨そうでしたよね。ただ個人的には今作は、強いて言うなら(ワリと大半が)キツめのブラック・コメディの方でしかなかったかな…とは見えていて、それはまたとにかく感情移入可能なキャラが全編で全く出て来ないからなのですよね⇒そーするとどーしたって完全に「外から」見てるしか無いから、ホラー的なトコロとしての怖さもナニも無いのですよ。 アイデアとしては、今作にも描かれる様な過激な(イカレ)ヴィーガンってのが確かに実在している以上は、そいつ等をブッ殺して旨そうに喰らい尽くす!とゆーのに(一般人でも尚)感情移入の取っ掛かりが存在しちゃう…てトコロを除けば、そのモノ自体はごく陳腐だな~とは思います(⇒私は実際、例の『地獄のモーテル』の現代版…的なコトにしか見えなかった)。かと言って超ゲラゲラ笑い倒せる…な~んてコメディのクオリティでもねーとも思いますし、あと全体として終始ごくノリが軽い(軽すぎる)んで結局のトコロ突き抜けてホラー or コメディ or ご立派な社会批判、の何れにもなり切れても居ないという、その意味では、映画としてはシンプルに中途半端でやや残念…みたいな感じなのですよね⇒やっぱ、どのジャンルにも見えて来ない映画ってのは、ジェネラルにあんまし好い映画とは言えないんじゃねーか…とも。 しかし、一点ダケ、文句無しに褒めておきたいモノがあるとしたら、それは嫁さん役の女優さんの演技ですね。この中途半端な映画に対して絶妙に諸々と「奥ゆかしい」とゆーか、この方の様子に注目するなら幾通りもの美味しさを兼ね備えているとゆーか、結構見事な仕事だったと思うのですよね。ソコを踏まえて、評点も一点ダケ加点しておきます。以上。[インターネット(字幕)] 5点(2024-06-11 22:10:48)(良:1票) 《改行有》 12. 夜ごとの美女 《ネタバレ》 小品だとは思いますが、全編思いのほかヒジョーに心地好いのですよね。ジェラール・フィリップが作曲家・音楽家(⇒実際はしがない音楽教師)であるコトを踏まえて、そこかしこに何かしら「歌う」シーンが入ってて、その上でお気楽・お気軽なコメディであるのでソレこそオペレッタみたいな風情が高度に感じられるのです。がしかし、歌はともかくジェラール・フィリップ自身はこーいう軽~いコメディにも全然順応してるな…とゆーか、かなりノリノリで楽しそうに演ってくれてるって感じでソレがイチバン好かったと思うのですね。女優陣も相変わらずかなりの美形揃いですし、暇潰しにせよ何にせよ今なお全然有用な作品だと思いますよね。時間が余ってれば是非。 一点、暢気なコメディ&音楽に包まれた夢のシーンがこの通り心地好く微笑ましいのは、ソレと対比される主人公の侭ならない喧しい現実の生活が(観てるダケのコッチとしても)ごく高度に忌々しく思えるモノだからだ、と感じるのですよね。なんつーか、ソコの忌々しさってまた中々にリアルだったな…とゆーか、この頃のパリってたぶん実際に騒音公害とか酷かったんだろーな…と思ってはしまいましたよね(こないだ、ピエール・エテックスのこーいうヤツを観てた時も思ったコトではありますケド)。まあ、ソレ自体は世界中ドコでも別に変わらないコトだった⇒なんなら昨今の東京だって大して変わらん、てなコトなのだとも思うのですケドね。[インターネット(字幕)] 7点(2024-06-11 17:45:14)《改行有》 13. 灼熱の魂 《ネタバレ》 元々、小説でも『人間の証明』は大好きで、で映画でも『飢餓海峡』とか『砂の器』とかってやっぱ凄く面白く観れるのですよね。こーいうのってとにかく「動機」の部分に対する体重の乗り方が(娯楽サスペンスとは)比較にならないってゆーか、だからこそ最後まで=この謎は解かずば今日は眠れない!みたいに成れるのだと思うのですよ。その意味では今作も、まず起こった「事象」そのモノってのが既にド級に(歴史的・政治的に)衝撃的!てヤツだとは思うのです、が、前述のその部分の勘所もまた決して外していない、これ以上無い程にソコにも体重の乗ったヒューマン・サスペンスだったとは思うのですよね⇒即ち、母は何故、あの様な奇妙な遺言を残して、あの様に奇妙に死んでいったのか、という。正直、途中からは完全に観入ってしまってましたよね。 だから、私にとっては(まずは)今作はサスペンスである…のですケドも(⇒それをワザワザ明言したのは、一方で今作って十二分に優れた社会派もの・歴史ものだとも思えるからなのですケドね)そーするとどーしたって、結末も含めて全体的に余りにも「無理筋」ではないかな…と思われてしまったってのが、結論的には少~し、ワタシ的に(再び明確に)許容範囲外だったという痛恨事なのですね。。観る前から、戯曲の映画化だとは把握しては居たのですケド、なんつーか然も在りなん…としか言えない…ですし、すると更には、それに依って(今度は)サスペンスのみならず、前述の社会派的な映画の価値すら少なからず毀損されてしまってる気すらするのですよ。もう少し、もう少しダケ、ソコって何とかならんかったんか…と。。(⇒個人的には特に、ニハドが「洗脳された」ってナンやねん!と。。) 結論、個人的には、非常に評価の難しい作品…だとしか言い様が無いのですが、それでも最初に述べたとおり、この手のサスペンスとしての「ヒトの中にある謎」の部分の展開&結末の部分に関しては非常にしっかりと「筋が通っていた」と思えたコト、加えて、重ね重ね事象は衝撃的ながら、全編で非常に落ち着いた抑制的でハイソな演出+それが醸し出す雰囲気と、また映像のハイソぶりも実に見事だったと思えたコトを踏まえて、かなり迷いつつもこれ位の評価にしておこうかと思います。サスペンスとして、端的なラストの「衝撃度」みたいなモノに関しては、確かに最高レベルで高度だって映画だとは思いますね。[インターネット(字幕)] 7点(2024-06-08 22:46:04)《改行有》 14. 離愁(1973) 《ネタバレ》 ロミー・シュナイダーって、実はシモーヌ・シニョレにソックリなんですね。華やかなイメージとゆーか、勝手に明るい髪型の印象を持っちゃってたので気付きませんでした。しかし、やっぱ色気も昼より夜とゆーか、今作ではひっつめた髪型に黒い服で、かつ終始静かな表情…だからこそ、ココぞの場面のソレと来たら、最近結構エロティック系の映画を観まくってる私でも「おおお…」と思わず呻いてしまうかの様な鮮烈な匂立つ様な妖艶な、と言いましょーか。中盤、夜も走り続ける汽車の中で、音も無く抱き合って、また一つの言葉も漏らさずに幾度か唯々仰け反るシーン、なんて、私も流石にアレはもう堪らなかったですよね。 映画全体のつくりとしたって、諸々と「今後はもうこんなん無理だな…」とゆーか、最近の戦争映画じゃあ既に許されないだろ!みたいな勢いで、シリアス最高潮な状況で(それそっちのけで)全力全開で恋愛(不倫)映画やってくれてるのですよね。でも、だからこそソレこそが人間の性であって、なので(ある意味)より一層真実に近いソレだとも思うのですし、それ故にそのオーラスだって、逆にコレはもうそーいう次元を疾うに越えてしまったソレなんだ…と心底から納得できたのですよね。映画を沢山観ていると偶に、逆にこーいうのを現代の価値観・倫理観(主に製作者としての)でどーやって越えてゆくんだ…みたいな感覚に陥るコトがあるのですが、今作は正にそーいう作品だったのですし、だからこそまた紛うコト無き傑作だ、と思うのですね。[インターネット(字幕)] 8点(2024-03-13 12:51:23)《改行有》 15. DOGMAN ドッグマン(2023) 《ネタバレ》 リュック・ベッソン監督作ですし、冒頭の主人公の「見た感じ」なんかからも、観始めた時点では引き続き流行のヴィジランテものと、先般の『ジョーカー』のミックスアイデア的なヤツかな~と思ったのですよね。ただ、その主人公がいったん捕まる冒頭から精神科医との対話という形式で始まる彼の「自分語り」の内容としては、そこまでアクションに振れ切っているワケでもないドラマ要素強めの時間が結構続いてゆくコトもあって、観終わってみると、私がさっき言った様なカテゴライズし易い単なるジャンル映画ってワケではなくって、もうちょっとつくり込まれた作品かな…という感覚には、私の認識もチャンと変わって居たかとは思いますね。 ポイントはまず、その自分語りの中で語られるエピソードがごく奇抜かつ意外とヴァリエーションに富んでいるコト、加えて何より「犬たち」の存在のユニークさ、ではありましょーかね(⇒後者は、より物理的描写の面におけるユニークさとして作中に結実しているとも思われますが)。なので、まず特にその奇抜さの存在ゆえに、全編ごく物珍しさを持ち続けて全く退屈なぞせずに観てゆけた…という気はしておりまして、娯楽作としてはフツーにワリと満足感は高かったと思うのです。難点があるとしたら、その登場する「奇抜な要素」の幾つかは、ドラマ・キャラクター上の必然性よりは要素そのものの奇抜さを作中に持ち込むコトを重視している…的な感じではありまして、だからやや「流れに沿ってない」と言うか作品が総体として統合されているか、という点については少しダケ違和感には成っているかな…とも思いましたかね(⇒特に要は、主人公は「犬使い」としての異能を既に備えている一方で、ピアフやディートリッヒを生き写しに出来るなんて類稀なドラァグクイーンでもある、そのコト自体は流石に「ご都合主義だ」とも思えるってコトですよね)。 ただその上に、前述の作品としての「統合」という意味では、上で書いたコトよりも更に重要なのは正にキャラそのもの=演者の演技のクオリティ(説得力)にあるとも思うのですね。そしてその面では、今作の主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズのその面の仕事とゆーのは、率直にコレは実に申し分ないモノだったと(また)思うのです⇒個人的には別に、あの『ジョーカー』のホアキン・フェニックスのソレにだってそこまで全然引けを取る様なモノではない…と。なので、心置きなく一点加点した上で、更にプラス、監督のファンで彼のアクションが好きって方には全力でオススメしておきたいと思います(正直、少なくとも『レオン』後の彼の作品の中でだったら、個人的には現時点で圧倒的に一押しでありますね)。[映画館(字幕)] 7点(2024-03-10 09:05:39)(良:1票) 《改行有》 16. カビリアの夜 《ネタバレ》 『道』はマイベストと言って好い作品なのですが、主演のジュリエッタ・マシーナの魅力の引き出し方、とゆーか彼女の本来のキャラに合っているという感じ自体は、今作の方が上回るかな、という気もします。元々が小柄なので、やはり若くも見えるものの、演者の実年齢として30台中盤~後半…というコトも含め、今作中の役柄としても20代後半~30凸凹という感じでありましょーかね。娼婦役として多少「酸いも甘いも」といった世慣れた感じ(だいぶまろやかな言い方をしてる気もしますが)も踏まえて、やはり役柄としては今作の方が、名優ジュリエッタの「本来の魅力」とゆーのをより大いに感じ取るに十分だったとも思うのです。改めて観直すと、驚くほどに・稀代のコメディエンヌだと言っても好いほどに、優れた喜劇俳優だったのだな…と思いましたよね。口調や表情、所作に至るまでどれも実にコミカルで、本当にどこを切り取ってもホッコリとクスクスと微笑ましく眺めてゆける作品でありました。それで居て、今作は(同時に)高度なネオレアリズモ作品であって、その微笑ましさを取り巻く環境・境遇というのはごく「悲惨」だと言っても好いモノでもある、でもそれ等をまた、このレベルまでの正統なる「コメディ」に仕上げられる・引き上げられるというのが(それこそ)フェリーニの技術と、そして重ねてジュリエッタの素晴らしさだと再認識できたのですね。やはり、紛うコト無き傑作だと思いますね。 時世がら、或いは時代の流れに依るトコロもあるかも知れませんが、ジャンル作品のみならず、最近はこーいう「社会を映す鏡」としてのドラマ作品なんかですら、特にネガティブな状況における描写の「ネガティブさ・過激さ」とゆーのは唯々エスカレートしてゆく一方だ…という気もしたりしてます。それはそれで大いに意味の有るコトではあるのでしょーが、こと劇映画に限るなら、私はやはり今作の方が(質感として)単純に好みですし、何より本質的にアプローチとしてもポジティブである、と思って已まないトコロではありますね。[インターネット(字幕)] 8点(2024-02-10 10:00:58)《改行有》 17. わたしは最悪。 《ネタバレ》 コ~レは確かに……人に依っては受け付けない、という位に、この女の人の諸々自体がまァ「最悪」って感じだと言っても全然OKだとは思うのですよね。でも、私自身は比較的それでも彼女には共感できた方だとゆーか、定見無くフラフラ迷いまくってる様に見えつつも、それでもコレは多分「必要なコト」だったとは思うのですよ⇒必要とゆーか、どちらかとゆーと「避けられない」と言った方が近いかも知れませんケド。結局、乗りたくなったトコロで今どき確実な「レール」なんてモ~世の中に存在してないですからね。この大学に入れば・この職に就けば大丈夫、なんて選択肢は既に失われてしまったのであって、だから今や自分のキャリアとゆーのは自分自身でどーにかこーにか積み上げてゆく必要が在る、その競争の場において自分自身の「思い・意思=モチベーション」とゆーのを(また)持ち合わせて居ないってのは、どーにもやっぱし「分が悪い」と思うのですよ⇒何事につけても、好きでやってる人には絶対に勝てないと思うのであって。んで更に、殊この分野に於いては自分は自分自身には絶対に嘘なんかつけないですからね(⇒意思・意欲の問題ですから)。まァ、だから彼女も納得ゆくまでのたうち回るしかねーのかな~とは思ってしまいますよね。。 ※コレも正直、あまり気にしてなかったのですがこの主演女優さんって、よく見るとメッチャ美人(とゆーか非常にオーソドックスに超・整った顔立ち)なんすよね。。そーいうコトだモンだから私感情移入できちゃいました!とかゆーと、キョウビは多分ルッキズム扱いになってしまう様な気もするのですが、コレはけなしてるワケではないからギリセーフなんでしたっけ? 色々と、近頃(とゆーてもチョイ前)だと例えば『フランシス・ハ』なんかにも似通った雰囲気・質感があったかな~とも思うのですが、ソッチと比べても描かれる女性の(ある種の)「エキセントリックさ」とゆーのは更に「過激化」してる様にも見えていて、その意味では今作も確実に勃興するフェミニズム映画の範疇だとは言えるでしょーかね(=その「過激さ」を描くコト自体が映画の目的の一つだとは思える)。それ故に、意外なマデに「下品」なシーンが多いってのは一つの注意点だとも思いますが、ソコについても主演女優さんは頑張ってたというコトだとは思えますし、他にもチョイチョイ入ってくる風変わりな特殊演出も含めて、シンプルなヒューマン系・ウーマン系人間ドラマよりは目新しいトコロも多々在って(個人的には)好かったのではねーかな…と思いました。以上。[インターネット(字幕)] 6点(2024-01-31 23:21:44)《改行有》 18. ヨーヨー 《ネタバレ》 コッチが長編第2作とのコトで、かつカンヌやらナンやらで激賞された…という隠れた傑作みたいなコトらしーです。内容は、確かにまずはコメディではあるのですが、(作品中でも明らかに仄めかされて居る様に)そのコメディとしてもフェリーニを多分に意識した様なズバリの作風に加えて、ソコで単なるコメディではなくって大恐慌~大戦~テレビの普及~みたいな社会的カタストロフィを立続けに被る芸事の世界の移り変わり…的なストーリーを軸に据えた、ちょっと社会的な要素を含んだドラマにもチャンと成っているって作品なのですよね。 冒頭、トーキー以前の時代の描写はキチンと(この映画としても)サイレントとして描かれてたり、諸々と表現の部分にも全く手を抜いてないし⇒だからドラマとしても率直にかなり好く出来ていると思いました。がしかし、コメディとしては(少なくとも当然に)ソコまでコメディに徹しているワケではないとも(やはり)思えてしまいましたし、んで他方のドラマとしたって終盤はややトーンダウン・大人し目に終わってってしまうという(多少残念な)感じも覚えたりもしたのです。個人的にそれこそフェリーニのこの手の作品ってかなり好きなのでして、だから似てる今作もまた興味深く観るコト自体は出来たケド⇒アッチより(諸々と)上かってゆーと…みたいな感じは否めませんかね(理由もまた諸々ではありますが)。プラスしてもう一点ダケ、コメディとしては今作までの短編2作+前作『恋する男』とも率直にかなり似通った質感(ボケ質)なので、それを立て続けに観たから…てコトも影響してる気はします。重ねてそれでも悪い作品ではないかと思いますので、お暇なら。[インターネット(字幕)] 6点(2024-01-25 01:06:48)《改行有》 19. 恋する男(1962) 《ネタバレ》 短編2作品に続く長編としての初監督作だそーで、主演はまた監督自身が務められてますね。恋愛に奥手な男性が両親に発破をかけられた結果、むしろドンドン酷い有様に大暴走してゆく…というお話で、短編2作品でも見られた様な「やるコトなすコト上手くいかず困り果てる」だとか「ココロ1mmも此処に在らず」みたいなごく間抜けな様子が(またまた)演じられてゆく…のですケドも、例えば本作のハイライト⇒歌手ステラに一目惚れして部屋中を写真で埋め尽くす…とか、或いは中盤に出て来る泥酔女の醜態全開なトコロなんかも、コレってたぶん当時は現在よりも大幅に衝撃的な大ボケだったのだろう、と思ってしまったりもして⇒でも正直今今じゃあそこまででもねーかな…という感覚がやっぱありまして、ですね。。一点、結構コテコテに古典的なコメディだとは思うのですが、コレもやっぱし中々どーしてフランス映画的に女優さんが揃ってメッチャ美形なのです⇒特にラスボスのステラなんてモ~芸術レベル!みたいな感じで。だから再度、コテコテなコメディであるにも関わらずどーしたって何処か品格とゆーか文芸的な趣きみたいなモノも感じられてしまうのですよね(個人的には、コメディだろーとナンだろーとフランス映画は斯く在るべし…と思ってますケドも)。[インターネット(字幕)] 5点(2024-01-25 01:00:15) 20. 乱 《ネタバレ》 それこそ、30年くらい前に初めて観て(僭越ながら)こんなの今まで観たコト無いな…と思った記憶がありますね。それは特に「時代劇としては」という意味だったのですが、今だに強烈に印象に残ってるのは(中で)とにかく「血の表現」だったと思います⇒最高レベルってのはココまでやるのか…と。でも、今今に観直すとコレって、別に全然「リアルな血」ではないよな…とも思うのですね⇒あんなに河みたいにドロドロ流れないだろ…と。で、そもそもこの映画、よく観ると何処も彼処も全然「リアル」ではないとも思うのですよ。狂い果てた幽鬼の如き仲代達矢の有様(or メイク)と言い、諸々の地形もチャンと観るとなんか変なトコばっかですし、異様に煌びやかな衣装や具足・それも含めて全体的にも隅々まで「画が綺麗すぎる」とだって思ったりします(単にリアルな時代劇だってなら尚更に)。 何より、今回観たらコレ、時代劇は疎かドラマにだって皆目成ってないな…て思っちゃったとゆーか、登場人物も総じて全然リアルな人間には描かれてないのですよね⇒前述の仲代達矢や狂阿彌は勿論、息子三人だって一人として血の通ったキャラには全く見えて来ない。ある種、私原田美枝子さんって大好きなんですケド、今作にのみ関して言うなら寧ろ彼女ダケがひとり「間違えている」という風にすら見えます⇒「人間」過ぎる・「人間」としての感情をリアルに+ハッキリと表し過ぎている…と。結局、私が思うトコロの一番に来るコトとしては、見た目の印象やごく重々しい・重苦しい特大の見応えとは全く裏腹に、実に抽象的な表現で抽象的なモノを描こうとしている映画だ、と⇒だからやっぱり(私が他に観たコトあるモノの中では)何より「能」に一番近い…と思わずには居られないと言いますかね(ココまで表現が「ある意味で」抽象的だと、コジツケぽく思われるのは(私も)重々承知ですがモ~致し方無いかな…と)。 とは言え、そりゃ映画なんだから当然、本来の能よりは全然(全っ然)分かり易いとは思うのですよ。でも、逆にコレくらいはしてあげないと現代人には(最早)伝わらないんだよ!てコトにだって思えたりするのですよね⇒ソレはもう、現代人が「想像力」を致命的なまでに喪失してしまって居るからだ…と。今作で言えば、鶴丸が笛を唯々奏でる(というテイで笛の音が唯々流れる)中盤とオーラスの2シーンとゆーのが、私にとってはその「抽象的なモノを抽象的に伝える」シーンとして極致に到っていた…と感じられたのですね。小林正樹監督の『怪談』で、平家琵琶のシーンを観た時にもその様に感じられたコトではありますが、重ねて、嘗ての人々にとっては音曲・舞踊ダケでも伝わっていたソレとゆーのが、今や即物的に為り過ぎ&心の瞳を失い&退化し切った現代人にはこの程度の映画(映像)表現でアシストしてやらないと伝わらないのだろう…と(率直に)思われるのです。そして、今作もまたその意味では、そーいう古のテーマを古の技法に(部分的にも)則って垣間見るコトが出来るという点で、実に日本的で、そして優れた映画だったと思うのですね。傑作だと思います。[ブルーレイ(邦画)] 9点(2023-12-31 23:26:20)《改行有》
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