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プロフィール |
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981 |
性別 |
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自己紹介 |
ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。 「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。 映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。 目指せ1000本! |
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1. キー・トゥ・ザ・ハート
《ネタバレ》 フィリピン映画は珍しい。
近年では寓話的なラヴ・ディアスと社会派のブリランテ・メンドーサが日本でも知られるようになったが、
それでも日本公開作は果てしなく少ない。
そんな中、ネットフリックスでひっそり配信されていた本作は、先述の二人のような敷居の高さは感じられない。
いわゆる"キング・オブ・ベタ"を地で行くような感動的なメロドラマだからだ。
幼少期から孤独で職を追われた元ボクサー、生き別れで余命いくばくもない母親、
重度の自閉症を抱えながら絶対音感で天才的なピアノ演奏能力を持つ異父弟、
同居することになったチグハグな3人の家族愛と再生と奮起劇を、分かり切ったハッピーエンド一直線で突っ走る潔さ。
同時に自閉症を取り巻くトラブルに当事者には身近に感じられたし、
主人公の暗い過去とどん詰まりっぷりにフィリピンならではのリアリティがあるものの、
徐々に増えていく応援してくれる善意ある人々に救われる。
審査会の「熊蜂の飛行」の演奏で周囲の空気が変わっていく様はまんま『シャイン』だったけど。
弟役の熱演には見入ったし、『逆転のトライアングル』のシーンスティラーだったドリー・デ・レオンも安定感たっぷりの好演。
イ・ビョンホン主演のオリジナルの素地が良かったかもしれないが、100分のコンパクトさで気軽に見られる佳作だ。[インターネット(字幕)] 7点(2025-04-29 23:57:21)《新規》《改行有》
2. ボーン・レガシー
《ネタバレ》 ジェイソン・ボーン3部作は既に視聴済み(ただし中身は覚えていない)。
それを踏まえてのスピンオフなのに、その3部作の設定が全く活かされておらず、序盤はガチャガチャに煩雑にしただけ。
中盤から大きく話が動き出しても、重要機密を知る主人公が追手をかわしながらワクチンを手に入れて逃げるだけという。
ワクチンの在りかを知っているヒロインはおまけ程度で、
宿敵との対決もないまま終わりでは消化不良にも程がある(ヒット次第で続編も考えていたのだろう)。
アクションとしてはそれなりに楽しめるが、せめて単品として完結可能な作りにして欲しかった。
トニー・ギルロイが自分の脚本を即興で改変しまくるポール・グリーングラスとひと悶着あり、
監督も兼ねて本作が製作されたようで、むしろグリーングラスの手腕の確かさを証明してしまった。[地上波(字幕)] 4点(2024-03-01 23:37:38)《改行有》
3. 立ち去った女
《ネタバレ》 4時間に及ぶ上映時間に、コントラストの強い鮮明なモノクロ映像を固定カメラの長回しで綴る。敢えて劇的な展開を排除し、ゆったりとしたテンポで下手したら何も起こらないまま終わるため、この地点でハリウッドのフォーマットに毒されている人は脱落するだろう。同監督の作品でも5時間~10時間は当たり前で長編ではかなり短い方だが、必要以上の情報量を制限した平易な作りが観る者に思考の余裕を与え、ホラシアの行く末を見届ける。弱き貧者たちに無償の施しを与え、情報源から復讐のチャンスを伺う様はさしずめ『親切なクムジャさん』に近いものを感じる。しかし前述した通り、復讐劇の顛末はあっけない形で幕を閉じ、貧者たちも住む場所を失う。そう、フィリピンの非情な格差社会への怒りと、神なき世界でも失わない人間の尊厳がテーマなのだろう。冒頭と終盤に朗読シーンがあり、ペドラは良心の呵責から声を詰まらせ、ホラシアはその先の希望を求めて去っていく。息子が見つかるとは限らない。地面に散らばった捜索届のように、行き場のない想いを抱えながらも、それでも人生は続く。その失われた時間が重くのしかかる228分。不条理でどうしようもない虚しさが募る一方、貧者との交流を見る限り決して絶望ではないだろう。[DVD(字幕)] 6点(2019-05-16 19:22:46)(良:1票)
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