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【製作国 : イタリア 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  ジョン・ウィック:チャプター2 《ネタバレ》 危険な階段落ちや車両との接触、ミラールームの活用など、様々に工夫を凝らして 見せ場をつくっている。 単に発砲数やアクションの手数をインフレ化するのではなく、 静から動へ切り替わる瞬間に向けてのテンションの高まりが重視されていること(特にメトロでのモブ乗降シーン)や、 一貫して科白がごく短く切り詰めているのがいい。 中盤で標的として狙われ始めるシーンの時系列弄り等はただ混乱を招くだけで紛らわしい。[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-08-31 00:02:09)《改行有》

2.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 ドラマの流れは篠田正浩版(1971)同様、ほぼ原作に忠実だが、冒頭のポルトガルの場面やエピローグの「切支丹屋敷役人日記」の章が映像化されたことで 長尺となっている。特にスコセッシ流の解釈が施されたラストの十字架のショットは映画独自の表現となって印象深い。 1600年代を再現するランドスケープも厳選されており71年版に引けを取らないし、波音をはじめとする環境音の演出も充実している。 浅野忠信、塚本晋也らも安定の好演だが、イッセ―尾形はエキセントリックすぎて嫌味な印象だ。 岡田英次のほうが、穏やかな凄みがあった。 原作のクライマックスシーンは現国の教科書にも採用される有名な箇所だが、 その文章のもつドラマティックな迫力は、「白い朝の光が流れこんだ。」「朝方のうすあかりの中に」「黎明のほのかな光」「鶏が遠くで鳴いた。」などの 極めて映画的描写の充実にもよる。 篠田版は宮川一夫を撮影に起用してそれらの光を忠実に導入し、壁の「LAUDATE EUM」の文字を、踏み絵の図柄を、ロドリゴのシルエットを崇高に浮かび上がらせた。 遠藤周作が強く意識して描写しただろうその肝心な「夜明け」の光をなぜかスコセッシは映像化しない。 その代わりに、篠田版が賢明にも省略した「あの人」の声を聴かせてしまうという、この辺の感覚は違和感を抱かざるを得ない。 あるいは、スコセッシがあえてそのように処理して安易な審美性を拒んだというのは、現在の世界は未だ夜明けには至らないという諦念ゆえだろうか。 溝口的な、濃霧の中に浮かぶ小舟のショット。その視界不良で不穏な様も、全編を覆う曇天とともに何やら現実世界を連想させて、ぞくっとさせる。 異教と民族を巡る分断と排他主義が拡がる現在、時宜を得た公開ではある。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-22 11:29:49)《改行有》

3.  キプールの記憶 《ネタバレ》 朝方、非常事態宣言下にある無人のイスラエルの街。陽の光の滲む地平線から姿を現すヘリ。 土地の空気を的確に掬い取るレナート・ベルタの撮影がやはり素晴らしい。 本物の雨なので雨滴は画面に映らないが、雨の質感と湿潤の感覚ははっきりと伝わってくる。 ヘリからの圧巻の空撮がある。戦車が残した無数の轍がぬかるみとなって緑の平原に延々と広がっている。 冒頭の絵の具塗りたくりにも相通ずる、緑と茶の網目状模様とその堆積が、戦乱の激しさとともに歴史をも意識させる。 あるいは、数人がかりで負傷者を運ぼうとするがなかなか捗らない様。そのもどかしい時間の重みこそ アモス・ギタイの伝えんとするものだ。[DVD(字幕)] 7点(2015-11-18 23:56:11)《改行有》

4.  大列車作戦 《ネタバレ》 線路上で爆薬を仕掛けるバート・ランカスタ-。その奥に列車が小さく現れ、手前方向に迫って来る。 操車場のドイツ軍大佐(ポール・スコフィールド)。その奥の空に戦闘機が小さく現れ、手前方向に向かって飛行して来る。 いずれのショットも、遠方のアクションと近景のアクションとを同時進行させながらいずれの対象にも 焦点を合わせて一つの画面の中におさめたものだ。 航空機や車両が進行する方向と速度とタイミング。大量のモブ(群衆)の動き。さらには主要キャストの芝居。 それを的確に統制し、的確な構図で捉える労苦は計り知れない。 そこに、物語レベルに留まらないサスペンスが生まれる。 そうした奥行きの深さを活かしたスケールと難度の高いアクションシーンが満載だ。 少年が階段を登って屋根上へと移動するカメラの移動。 ランカスタ-が梯子を滑り降り、列車を追いつつ飛び乗るアクション。 同じく彼が傷ついた身体で山の勾配を登り下りする走り。 いずれも身体性と持続性、空間の垂直性と平行性を一体としてショットを形作っているのが素晴らしいのである。 オープニングの、無言の兵士たちが美術品をパッキングしていく具体的描写のリズム感。 360度方向のセットと密度の高いエキストラの間を縦横無尽に動くカメラ移動からして一気にドラマに引き込まれる。[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-07-15 00:01:52)《改行有》

5.  グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 《ネタバレ》 延々と続く路上の移動風景が画面右からのワイプで切れたかと一瞬錯覚するが、 それは実は撮影スタジオ内で映写されているスクリーンプロセスの裏側からの 回り込みの映像であり、カメラはそのまま、撮影を終え祝福されながら スタジオを出て行く女優の後ろ姿を捉える。 付き人を伴い、控え室へと戻る彼女をカメラは延々と追う。 控え室の中には部屋一杯の花束があり、そこにグレース・ケリーの ロイヤルウェディングを伝えるラジオ音声が被る。 女優からの転身を出だしのワンショットで語るその簡潔さや 103分のコンパクトな上映時間は好ましいのだが、 その間ニコール・キッドマンの表情を 何度も「異常接近」レベルでクロースアップするカメラは相当にクドい。 シネスコで何ゆえにそこまで、何故その場面で、という寄り方を クライマックスのスピーチに至るまで延々と繰り返していくので、 次第に印象が悪くなっていく。 ヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)との通話も、 わざわざ画面分割してみせたりと、結局は要領が悪いのではないか。 アナモルフィック・レンズによる画面の感触は良好で、衣装と調度品はよく映えている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2014-10-20 22:36:34)《改行有》

6.  エレニの帰郷 『カサブランカ』や『嘆きの天使』などは少々サービス過剰かとも思う。 米国マーケット他をかなり意識したのか、どうか。 濃霧の中、抱き合うイレーヌ・ジャコブとウィレム・デフォーの周囲を 旋回しかけるデ・パルマまがいのカメラなどには冷や冷やしてしまいそうになる。 被写体サイズの大きさも有名俳優起用によるものだろうが、 そうした大御所俳優らを配しながらも曇天への妥協の無さは一貫している。 ブルーノ・ガンツの乗った船が橋梁をくぐると、彼に影が落ちスッとシルエット可する ショット。その黒と彼を包む曇天の鈍い白が異様な迫力で迫ってくる。 夜の国境検問所、暗闇とそこに浮かびあがる人物に当たる照明の加減も素晴らしい。 シベリヤの工場群の吐きだす白煙、ジグザグ階段の造形などもアンゲロプロス ならではの壮観であり、ロングテイク内での転調(パイプオルガンの演奏、 警官隊の突入など)も驚きこそないが、楽しめる。 [DVD(字幕)] 7点(2014-09-12 16:06:54)《改行有》

7.  バレット(2012) 運転席と助手席での対話が多く、その深度のない構図の反復も単調。 ならば、流れる背景だとか車内に入射する街燈の光などで画面に変化をつけて欲しい。 クライマックスの発電所廃屋も、三者それぞれの位置関係の提示が不出来。 音の反響で繋ぐなり、縦構図を利用するなり、現場機具をもっと活用するなり、 もう少し空間を活かして欲しい。 湯気に煙るプールでの乱闘も、『イースタン・プロミス』の後ではいささか物足りない。 が、数々のアクションをこなしてきたシルヴェスター・スタローンの 武骨で年季の入った面構えと、彼の発する低音の響きは非常に渋く印象深い。 『スペシャリスト』以上に、彼の声の魅力がよく引き出されている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2013-06-09 23:44:06)《改行有》

8.  ゴモラ 映し出される登場人物と同等以上の存在感をもって、 独特な構造をもった居住空間や街の景観が、深いパースペクティブを活かした 画面の中に印象深く捉えられている。 被写体をひたすら粘り強く追っていくハンディカメラによって、 画面の中の都市空間はより立体性を増して迫ってくる。 その中で、突発的に起こる銃撃のバイオレンスが幾度か繰り返されることで、 何気ない日常のシーンがそれだけで張り詰めたものとなっていく。 罠に嵌って郊外へとおびき出される青年たちのバイクの迷走を 後方から見下ろすように追うカメラ。 それだけで、ただならない不穏と緊張が漲らせている。 さらに、凄惨なシーンに被さる軽快な音楽も対位的に効いており巧い。 防弾着で銃弾を受ける度胸試しの順番を待つ少年たちの、 演技には見えぬ迫真の表情などは忘れ難い。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-22 23:52:43)《改行有》

9.  ヨーロッパ一九五一年 ネオリアリスモの作品においては、 単に荒廃した街のロケーションが映し出されるだけではなく、 そうした光景を目撃する人々もまた映し出されているということを喝破したのが、 ジル・ドゥルーズ。 目撃する者が写し込まれているからこそ、 その映画の情景はより生々しく強度を帯びるという分析である。 この映画でも、 無機質な工場のラインを、川辺の貧困家庭を、低所得者の安アパートを 目撃するイングリッド・バーグマンの表情が写し込まれることで、 彼女の視線に擬えて捉えられた情景はより印象深く、迫真のものとなる。 そして映画のラストにおいて、 バーグマンもまた子供たちの見上げる視線によって目撃の対象となることで、 その表情のクロースアップは一段と映える。 ノワール風の夜の照明も含め、全体のムードはペシミズムを漂わせながらも、 ラストの微笑の聖性と、ジュリエッタ・マシーナの快活さ、そして子供達の純真さに ロッセリーニのオプティミズムが滲む。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-22 23:58:33)《改行有》

10.  地獄のバスターズ 中盤の城砦戦では城壁の垂直空間を駆使したアクション、そしてクライマックスは鉄橋の高低と列車の水平運動と、火薬量だけでなく空間的広がりも充実した活劇である。 ペキンパー・オマージュのスローモーションもジョン・ウーのような見境無しではなく、節度とメリハリがあっていい。 マイケル・ペルゴラーニの駆るオートバイが立てる水飛沫。爆発による火炎と土埃と、爆風で投げ出されるゲリラなど。しかるべき使いどころが心得られており、効果的にディティールと情感を伝達している。 列車アクションでは、フレッド・ウィリアムソンによる高架から列車天井への飛び降りや、ピーター・フートンによる列車から監視塔への乗り移りなど、俳優の実演をワンカットで捉える気概が頼もしい。 そうしたアクションの素晴らしさもさることながらそれ以上に、キャラクターの多国籍性と言語コミュニケーションの不全がもたらす悲喜劇の妙味を活かした脚本が魅力だ。 タランティーノが惚れたのもそこだろう。 実際、『イングロリアス・バスターズ』で主として活かされるのはこの言語の不自由性という設定のみといっても良い。 ドイツ女性軍人の水浴びシーンや、ボー・スヴェンソンらがドイツ軍用列車に公然と乗り込むシーン等での「言語」をめぐる緊張とユーモアの同居が絶妙だ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-11-14 20:57:47)《改行有》

11.  モラン神父 モノローグのナレーションを活かし、男女の機微を静かに見つめる作風は、デビュー作『海の沈黙』の趣向と非常に似通う。 様々な対話の劇によって映画は進行するが、神父(ジャン=ポール・ベルモンド)とベルニー(エマニュエル・リヴァ)の対話においては、古典的な「心を通わす」切り返し編集は抑制され、距離を置いて二人をツーショットで捉える構図を中心に展開される。(告解室の二人の構図が特徴的だ。) 「切り返しの排除」あるいは不徹底と、そして特に神父側の心理を表象させない自制的な人物造形(表情と仕草とリアクション)によって、悲恋を予感させながら緊張感を呼び込んでいく。 そして、結部のシーンの静かな情感の高ぶりが素晴らしい。 階段上にある神父の部屋。風が窓を震わせ、戸を揺らしている。向かい合う二人の対話。アンリ・ドカエのカメラは二人をどのように捉え、どう切り返すのか。正面中央に大きく据えられる神父と、距離を置いて中心からずらされるベルニー。その非対称の視線劇がせつなく印象深い。 ※バルニーの娘役で、マリエルとパトリシアのゴッジ姉妹が共演。幼少期と少女期をそれぞれ愛らしく演じている。 [DVD(字幕)] 9点(2011-07-09 22:09:20)《改行有》

12.  新・七つの大罪 1952年のオムニバス『七つの大罪』から10年後、「新しい波」の面々が撮る『新・七つの大罪』。 第一部の『憤怒の罪』は、アルジェリアからベトナムへと続いていく動乱の60年代を予見するような展開だが、ナレーションもフォローするように、以降は軽快な作品が続く。 いずれも、街路の往来を捉えるキャメラが新鮮だ。 『貪欲の罪』に映し出される夜のパリの繁華街。『大食の罪』の長閑な一本道。『怠惰の罪』の車窓を流れていく街路の光景。 中でも『淫乱の罪』で、ガールハントしながら街中をぶらつくローラン・テルズィエフを軽快に追いかけていくアンリ・ドカの縦横無尽なキャメラがいい。人波と陽光の出入りが開放的で若々しい。 (『憤怒の罪』の往来は少々作為が露でつまらない。) そして短編集はやはり、キャストの魅力も要だ。 『傲慢の罪』での髪形の変化が艶めかしいマリナ・ヴラディ。 『怠惰の罪』で運転席のエディ・コンスタンティーヌをさり気なく誘惑するキュートなニコール・ミレル。 そして、取りを努める『貪欲の罪』の高慢風なダニエル・バロー。 彼女が、初心なJ・C・ブリアリに対して最後に見せる嬉しそうな笑顔が実に素敵だ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-05-31 21:31:54)《改行有》

13.  ジャン・ルノワールの小劇場<TVM> フル・セットの河岸の美術と照明が素晴らしい第一話「最後のクリスマス・イヴ」。 富者と貧者の残酷な対置があり、第四話の開放的なロケーションと対照する。 第二話「電気床磨き機」は悲劇と喜劇の融合の究極をいく。きれいに磨かれた床に滑って唐突に死んでしまう夫。生者と死者の語らいが対となり、寒色系を配された人工的な都会の姿もまた、第四話とコントラストになる。 ドレスを着たジャンヌ・モローがシャンソンを歌う第三話「愛が死に絶えるとき」。 ジャンヌ・モローの全身ショットから、顔へのクロース・アップへと移行し、またフル・ショットへと引いていく。 彼女の歌唱を一挙に捉える最もシンプルで最良のワンシーン=ワンカット。 そして、第一・第二話の「死」と対比される第四話「イヴトーの王様」には明るい自然光が溢れ、エロスというルノワール的な主題も浮かび上がらせながら「生」が賛歌される。 ルノワールの父オーギュストも愛した南仏ののどかな田園風景は『ピクニック』(1936)、『草の上の昼食』(1959)以来かわらぬ光と風と色彩でフェルナン・サルドゥーの絶望のみならず視聴者をも癒してくれる。 そして映画は、登場人物すべてが笑い出し、キャメラに向かって整列してお辞儀する、最も幸福で至高の大団円を迎える。 ルノワールが最後の作品で説いたのは、『トレランス』(寛容)だった。 [DVD(字幕)] 10点(2011-04-16 22:48:45)《改行有》

14.  トスカーナの贋作 検閲の厳しいイランを離れ、イタリア・ルネサンスの地で表現される女性のエロティシズム。 それをジュリエット・ビノシュが艶めかしく体現する。 車のフロントガラスを流れていく街並みと空、そこに重なる車内の男女の像。ガラスや鏡を介した複写の主題も、レストランの窓ガラスや化粧室の鏡から、オートバイのミラーへの反射に到る細部まで手が込んでおり、迷宮感すら催す。 ウィリアム・シメルが登ってゆくホテルの階段の深い暗がりと、窓から差し込んでくる微かな陽光の推移など、光に対する感性あふれる画面にも魅了される。 画面奥の空間を示唆する多層的遠近感の演出も、ルネサンス絵画技法の映画版というべきか。 そして、雷鳴・風音・鳥の羽音・鐘の音色がもたらす豊かな空気の震えも聞き逃せない。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-05 21:51:41)《改行有》

15.  パリの灯は遠く カメラは『召使』のように部屋の間を不穏な感覚を伴って移動しながら、深度の深いパンフォーカスで的確に構図を決めていく。画面奥を動く人物、室内の調度品や絵画類、衣装といった情報密度の高い背景と細部は説話とも密接に連携し、ショットの持続が生む緊張感と相俟って最後まで映画は弛緩することがない。二人のクラインを駅ホームの前景・後景で重ね合わせる構図取りの見事さ、鏡や窓への主人公の映り込みや等身大の影(虚像)を多用した主題の視覚的提示等々、あらゆるショットが細心に設計されている。市街を走り周る黒塗り車の動きの異様な不気味さ、鋭角的なパースをもって強調される駅構内やゲットーの威容(美術:アレクサンドル・トローネル)も圧巻である。随所に深い「緑」を配した渋い色調設計も終始徹底され、夜の路地や移送列車のシーンの、闇の深みも素晴らしい。DVD版の画面は少し明るすぎの感あり。ビデオ版の濃厚な暗さのほうが本来志向された画調のように思われる。[DVD(字幕)] 9点(2010-05-19 19:59:39)

16.  NINE(2009) 《ネタバレ》 冒頭の暗いスタジオ内、パパラッチの追跡を撒いた後の噴水の場面、マリオン・コティヤールの眠る寝室の場面など、ナイトシーンの落ち着いたブルーの画調などは見栄えするが、肝心のミュージカルシーンの細切れ編集はあまりに反射運動的で欲求不満が溜まる。編集効果に寄りかかったまやかしの躍動感はその場限りで、ダンスの画面としては印象に残らない。また構成的にも、中盤の「シネマ・イタリアーノ」などは妻との不和のシーンに前後を挟まれるなど興奮が持続しない。ラストのスタジオ内セットも、舞台的な横位置の構図で奥行きを欠く。縦構図のスペクタクルであった『8 1/2』とは大違いだ。時間表現も不満。寄せる波で二年の空白を表現するが、ダニエル・デイ=ルイスは絶えず画面に映りっぱなしのため、キャラクターの変化が効果的に見えてこない。多少なりとも成長や変化を描くドラマをみせる場合、不在の時間をつくるのが鉄則だと思うが。このため、ドラマはメリハリがなく、映画はエンディングナンバーに到ってようやく高揚する。ラストの掛け声(『ホワイトハンター ブラックハート』だね。)と共にスタートする二度目の「シネマ・イタリアーノ」。劇中では神妙で悲しげな表情ばかりだった女優たちのリハーサルのショットがインサートされ、その本番外の魅力的な笑顔と音楽の融合にようやくほっと出来る。[映画館(字幕)] 5点(2010-04-30 21:45:50)

17.  アデュー・フィリピーヌ 《ネタバレ》 冒頭のテレビショー収録現場の活気に満ちた描写から始まり、全編がひたすら新鮮味あふれるショットの連続。開放的なロケーションの中で横へ横へ、奥へ奥へとカメラが自由奔放に進み行く快感。二人の女性が披露する、演技の枠を超えたナチュラルな表情や身振りの圧倒的な素晴らしさ。ダンス場面での謎めくようなカメラ目線、微妙な嫉妬心を覗かせる硬い表情、港へと走る車の後部座席でみせる純真そのものの破顔一笑などなど、他愛ない仕草の中に浮かび上がる人間味が劇の進行と共に魅力を増す。埠頭での別離の場面は、最高潮の情感に満ちた素晴らしいロングショットの連らなりに揺さぶられずにいられない。船上と対岸に別れた三者を、船上の位置から交互に収めていくカメラの距離の見事さ。前半ではアフレコが効果的に使われているが、ここでは逆に現場録音と思われる雑踏の喧騒と汽笛によって彼らの別れの台詞は聞こえない。それだけに表情と視線が雄弁さを増す。防波堤を駆け登り、手を振りながら走る二人の姿が最高に美しい。[映画館(字幕)] 10点(2008-10-13 19:45:46)

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