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1. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 何遍観ても色褪せることのないサスペンスの名画である。主人公の不遇の生い立ちと、内に秘めたギラギラした野望は、まさにアラン・ドロンの実人生が投影されているかのようである。理不尽な社会の格差に抗い、おのれを解放する意味でもあった殺人劇。富と美女を手に入れ、完全犯罪を成し遂げて美酒に酔う主人公を待ち受ける大どんでん返し。とにかく、欲深さと繊細さが入り混じって、いろんな意味で危険度いっぱいのドロンの魅力あっての作品であり、男でもドロンの虜になること請け合いである。[DVD(字幕)] 10点(2021-01-24 19:41:25)(良:1票)
2. 地獄に堕ちた勇者ども
《ネタバレ》 ナチズムと戦時体制における人間の狂気と退廃をさまざまなキャラクターを通して毒々しく描き出す。権謀術数の果てに繁栄を掴み取ったかに見えた「勇者」たちが、ふとした運命のいたずらであっけなく「地獄」に堕ちていく。そのひとつひとつの破滅の姿が美しく映えれば映えるほど、そこに人間の底なしの愚かさがさらけ出されるという、ヴィスコンティの美学が凝縮されている作品である。
事実上の主人公といってよい、ヘルムート・バーガー演じるマルチンの一貫した狂いっぷりが見事としかいいようがない。この、およそ天下国家などよりおのれの欲望にしか関心を向けない人間が権力を握ってしまうところにナチズムの恐怖と悲劇があったのではないか。[DVD(字幕)] 10点(2020-08-10 19:07:42)《改行有》
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