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【製作国 : ニュージーランド 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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2. 戦場のメリークリスマス 《ネタバレ》 奇妙な味わいの映画だ。捕虜体験者で原作者の分身たるロレンスよりも、セリアズの心理描写に重きが置かれている。彼は障害者の弟を学校のいじめから守ってやれずに見棄てたという罪悪感に苦しんでいた。美しい声を持つ弟は歌を唄わなくなってしまった。それで結婚もせず、戦争が始まると志願し、積極的に危険な任務に身を投じてきた。一方、所長の与野井も同志と誓った226事件の蹶起に参加できず、仲間を裏切ったという負い目に苛まれていた。主義も主張も立場も文化も違うが、共に心の暗渠を持ち、死に場所を求めていた二人が戦場で邂逅した時、やがて惹かれあうのは当然のことだった。魅かれあうのにもう一つ男色という要素もある。共に美青年なのだ。映画冒頭に発生する朝鮮人軍属の男色騒動がそれを示唆している。 俘虜が与野井に殺されそうになったとき、セリアズは彼に接吻して錯乱させ、結果的に俘虜を救った。セリアズは弟は救えなかったが、俘虜を救えたことに満悦し、夢の中で弟の歌を聞きつつ、矜持のうちに死んでいった。与野井はセリアズへの愛憐に堪えず、密かに形見として髪を持ち帰る。そんな与野井も戦後、処刑場の露と消える運命だった。 原軍曹は蒙昧で粗暴な男だが、諧謔を解し、どこか憎めないところがある。自らをサンタクロースになぞらえ、窮地のロレンスとセリアズを救ったことがあった。戦後、戦犯となり、明日処刑という日、ロレンスが訪ねて来た。「あなたは犠牲者だ」と慰めるロレンスに原は、「あのクリスマスのことを覚えているか?」と尋ね、「メリークリスマス、ミスター・ロレンス」と笑顔で言った。彼は訴追に対する弁解は一切せず、苛酷な運命を受忍した。ロレンスは原の死を超越した、凛とした人間性に感動を覚える。軍人としての皮を剥けば、人間味あふれる人物なのだ。戦争がなければ良き友人であったものを。 戦場で憎しみ合う敵同士でありながら、原とローレンスの間に芽生えた友情こそが奇跡なのだ。セリアズと与野井の敵同士で交した接吻こそが奇跡なのだ。それが人間の本来の美しい姿なのだ。神様のくれた奇跡、それが戦場のメリークリスマスだ。戦闘場面を一切描かずに、戦争の愚かさと人間の尊厳と愛と死を審美的に謳いあげた小粋な作品である。演技に難があるのが残念。[映画館(邦画)] 7点(2015-01-30 03:46:40)(良:2票) 《改行有》 3. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 《ネタバレ》 CGによる特撮効果の長所・美点が遺憾なく発揮されたファンタジーの最高峰。 単純な戦記ものに留まらず、独自の世界観が具現され、複雑な人間ドラマ・心理ドラマを基底に展開し、人間の本質に迫る重厚で深みのある作品となっている。これを越える作品は当分現れないだろう。あえて穿った見方をしてみる。 ◆最大の疑問は、闇の冥王サウロンと指輪の関係。「指輪が破壊されるとサウロンも滅びる」のはどうしてか?あっけなさすぎるではないか。且つ、王国の城と土地まで崩壊、地下に埋没してしまうという理由が説明されていない。指輪にはサウロンの魂(生命力)が宿っているが、サウロンの魂は指輪なしでも復活したはず。両者が同時に滅びるほどの強い絆を持つ運命共同体であるならば、サウロンは指輪のありかを常に知り得るはずだ。誰かが指輪をしたときだけ知り得るとしても、ゴラムもバギンズも何度か指輪をはめたはずである。どうして存在と場所を知られずにすんだのか。指輪の方ではサウロンに近づくと重くなることから、確実にサウロンの居場所を把握しているのに。また指輪が滅びの火口に近づいているのを知りながら、どうして防御を固めないのか。危機管理がなっていない。 ◆ゴラムは、指輪をホビットのバギンズに盗まれたとどうして知ったのか?知りながら、どうして60年間もほうっておいたのか。 ◆魔法使いガンドルフが大鷲(鷲の王)を使えるのならば、最初から指輪運びに利用すればよいものを。運び人は欲望の少ないホビットでないと務まらないので、彼を大鷲に乗せて火口近くまで運べば、ことは速やかに進んだと思われる。もし発見されたとしても戦闘能力は龍よりも上なので、安心はできる。少なくとも道に不案内なホビットが徒歩でいくより確実な方法だろう。 ◆悪の賢者サルマンは、戦闘要員として、何万ものウルク=ハイ(新種のオーク)を土中から製造する。進退極まったアラゴルンが援助を求めたのが「死者の軍団」。これらは「限りある生命」を超越した存在なので、彼らが活躍しようが、戦死しようが感情移入しにくい。「限りある生命」の大切さを教える物語であってほしい。 ◆サルマンは、手下に塔から突き落とされて串刺し死するが、あっけなさすぎである。 ◆樹木の精「エント」の造形がかっこよくない。ここだけ、まるで安っぽい漫画だ。[DVD(字幕)] 10点(2012-11-11 15:39:27)《改行有》 4. 紀元前1万年 《ネタバレ》 時代考証:①巨大ピラミッド建造はBC2000年頃。大船建造も同様。②トウモロコシの原産は南米でアフリカには16世紀頃伝わる。寒冷地では育たない。③唐辛子の原産は南米で、コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰る。④巨鳥モアはニュージーランドに生息。⑤金属ナイフ製造はBC3500年頃。⑥馬の家畜化はBC4000年頃のウクライナ地方。⑦最古の文明はBC3500年頃のシュメール文明(メソポタミア)。その萌芽はBC9000年。⑧象限儀(天体測量の道具)、アストロラーベの発明はBC150年頃。⑨車輪の発明はBC5000年のメソポタミア。 失望:①伝説を解説するナレーションは、冒険が成功することがわかってしまうので不要。②巫女はいらない。③主人公デレーに野性味がなく、顔も身体も弱々しい。どこが伝説の男だ!ヘタレキャラである。④剣歯虎とマンモスが人を襲わない。⑤剣歯虎を助けた「優しさ」が武器となる思っていたが、単なる力業だけの男だった。⑥デレーってラッキーなだけの男。⑦中ボスが女に執着するのが中途半端。⑧父のエピソードが希薄。⑨軽装で氷山越え、砂漠越え。⑩女は目が青いだけで取り柄なし。 ツッコミ:①ラスボス弱すぎ。カリスマ性ゼロ。悪知恵が働くか、最強でなきゃだめしょ。②ラストの敵の軍隊弱すぎ。それまでは強かったのに。③遠くに投げた槍が当たりすぎ。ラスボス少しは避けろよ。④ラスボスは何故オリオンの印をもつ者を恐れるのか?⑤青い目の女が一度死んで再生したのは、巫女の呪術のおかげ?⑥「砂漠を越えて先回りする」と言っていたけど、先回りしてない。敵より後に着いてる。⑦敵城の周囲が砂漠で、樹木がほとんどない。あれではピラミッドの建造できないし、マンモスの餌もない。⑧マンモス倒すのに網はないでしょ。沼地に追い込むか、槍攻撃。⑨戦い終わって敵民族はどうなったの?改心?おとがめなし?⑨牙と対話?ハアー? 感想:マンモス、巨鳥、ピラミッド、騎馬戦闘、恋愛、神話など詰め込みすぎ。男が成長する物語になっていないので感動できず。「恐竜100万年」のように会話のない、骨太の物語ならよかった。あるいはマンモス、剣歯虎を仲間にした冒険活劇ファンタジーとか。とにかくノリが悪い、映画作りの”熱さ”がない。監督は何を伝えたかったのか?多くの謎を残したまま終了。ああ、つまんなかった。[DVD(字幕)] 5点(2010-05-13 17:27:01)(良:1票) 《改行有》 5. キング・コング(2005) 《ネタバレ》 ハリウッドの超娯楽大作のお手本のようなもの。次々と映し出されるスペクタクルに心奪われ、息つく暇もありません。主題はコングとアンの心の交流。コングがアンに惹かれてゆく様子は丁寧に描かれています。このときの表情豊かなコングは必見。アンも何度もコングに助けられた経験から感情移入してゆきます。つかの間のスケートの場面は実に見事な演出です。悲劇で終ることを知っていますから、泣けますね。島で一緒に眺める夕焼けとニューヨークで見る朝焼けは二人の愛の象徴で、本当に美しい。映像の美的センスが随所に光ってます。コングが町であばれているのを知ったアンが自らコングの前に姿を現すのは、コングを留められるのは自分しかいないことを自覚しているから。コングが最後にアンを降ろすのは、死を覚悟したから。よく出来ていますが、アンがもっとコングに語りかけた方が、より感動的になったでしょう。また、コングがアンを助けるために暴れだす脚本にすればもっとよかったでしょう。さて人間ドラマの方ですが、こちらは中途半端です。アンとドリスコルの愛が微妙。なのでドリスコルが生命をかけてアンを救出に向かう坑道に説得力がありません。元来この俳優は表情が乏しい上に生気がなく、愛とか冒険とかに向いていません。完全にミスキャストです。その点カールの表情の豊かさはどうでしょうか。欲望にとりつかれた現代人を憎いほど自然に演じていますね。バクスターはもっと悪者キャラにすれば物語にメリハリができました。ヘイズとジミーの友情はカットできます。原住民の扱いがひどいですね。孤島に住んでいれば争いがなく、平和に暮らすはずですが。途中から出なくなるのもマイナス。そもそもあんな恐竜や巨大昆虫、蝙蝠などが大量にいては人間は絶滅すること間違いありません。いくらなんでもやり過ぎです。登場するのはTレックスだけで十分です。他にも岩がコングの顔になっているとか、バクスターのポスターがいたずら書きされるとか、不要なものがある。あの船でコングをどうやって運んだか?大事なとこがカットされてましたね。普通ならコングの他に、原住民、巨大な骨、恐竜、昆虫などどれかを運ぶでしょう。どれもこれも大発見ですから。コングの島での暴れようがすごすぎたので、ニューヨークの場面では、スケールダウンの感が否めません。[DVD(字幕)] 9点(2009-09-10 04:12:31)
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