みんなのシネマレビュー
よーちーさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 101
性別
自己紹介

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

評価順12

1.  ブラック・スワン 《ネタバレ》 終始何かに怯えた表情のニナが、凛とした余裕の表情を浮かべるラストシーンで、ようやくナタリー・ポートマンの顔になったことが印象的。私は鑑賞前、ストーリーはおろか監督すら把握してなかった(後から知って納得した)。前評判から何となく想定していたのは、主人公が役を奪い取るために色々策をめぐらしていく、舞台裏での黒鳥への変貌を追ったという物語。おかげで良い意味で裏切られた。とはいえ、無垢な存在のニナが自分を黒く染めていったのは私が想定した部分と重なる。ただ、母を裏切ったり、悪い遊びを覚えたり、突き刺したり、対象はライバルではなく、全て自分。「自分との戦い」というのはありふれた言葉だが、真実そうなのだろう。だが、それは高いところに到達した人にしか噛み締められない言葉である。プレッシャーや孤独に耐え、自分のなかの弱い部分を削ぎ落とす過程はライバルを蹴落とすことより苦しいはずだ。自分はどこまでも自分に添うものだから。だからこそ、自分に打ち勝ち「perfect」を手に入れたとき、何物にも代えがたい恍惚感を得る。当たり前のことだが、あの美しい表情はニナの表情であり、それを演じた、成功者ナタリー・ポートマンの表情でもある。俳優陣の名演は言うまでもないが、客観的にみたらベタな成功者の物語を、主人公の内面に肉薄することで下手なホラーよりよほど恐ろしく、禍々しい演出で描き、観客の感情をわしづかみにする監督のセンスはさすが。近年稀にみる大傑作だと個人的に思う。[映画館(字幕)] 10点(2011-06-13 12:48:21)(良:5票)

2.  重力ピエロ 《ネタバレ》 映像化不可能と謳われていたらしい原作のほうを、本作の鑑賞後にぱらぱらと読んでみた。小説でも漫画でも実写化によって劣化する作品が多いと個人的には思うのだが、この作品に関しては映画版のほうが断然良い。原作で随所に挿入される文化的な薀蓄が私には少し煩かったのだが、映画では大幅にカットされていて、かなりさっぱりまとまっている。森淳一の作品はこれまで「TOYD」しか観たことはなかったが、この冷たさを含んだ透明感は持ち味なんだろうなあ。そして、本作のいちばんの見所はキャスティング。こんなにそっくりな子役を使った回想シーンは今まで見たことがない。加えて、泉水も春もどちらもそれぞれの親に似ていることがびっくり。起用する役者のチョイスによってこんなにリアリティーを醸し出す作品はちょっと珍しい。 [試写会(邦画)] 8点(2009-05-14 14:38:36)(良:2票) 《改行有》

3.  ドグマ この映画を観た人の、この映画に対する評価は、実は観る前から既にほぼ決まっていると思う。ポイントはこの映画を観ようと思った理由。監督で決めた人は満足するだろうが、マット・ディモンやベン・アフレックが目的で観たならば不満が残るに違いない(以上、皆様のレビューをちら読みしてからの勝手な推理)。私は前者の立場なので、とてもいい映画だと思っている。「生」や「死」や「宗教」は考え出すと妙な不安に襲われるため、なるべく避けたい話題であり、私のなかでは結構なタブーである。しかしこの映画においては、神聖なものを前にしても相変わらずのジェイとボブのキャラクターが、見事に私の恐怖感を打ち壊してくれている。ケヴィン・スミスはお馬鹿の鎧を纏ったかなりの知恵者に違いないと確信した。ところで、どうせ最初にテロップを出すなら、このB級っぽさに対しても注意書きを入れたら良かったかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-05-23 20:31:23)(良:2票) 《改行有》

4.  ハチミツとクローバー 《ネタバレ》 鑑賞自体はだいぶ前だけど、評価がしょっぱい感じなので思わず投稿。私は好きです。原作も読んでいないし、そもそもこういう甘酸っぱい系のラブストーリーなんざまるで興味はないんだけど、「興味ない」っていうのも私にとってはポーズでしかないのかな、と悔しいけれど認めてしまった作品。はぐ森田竹本の三角関係は正直共感しにくく、そんなでもないんですが(笑)、個人的にあゆ→真山のエピソードは、これだけでご飯三杯いける感じです。あんなに美人でいい女のあゆが、ストーカー真山に一途に恋し、報われないもどかしさ。そこでお互いが「身体だけでも…」って流れで爛れた関係になっちゃうのが現実ってやつなのかもしれないけども、この二人もこのまま煎じ詰めればそうなっちゃうのかもしれないけども、その生臭さに到達する以前の、片思いが片思いらしくある一瞬のイノセンスといいますか…たとえば真山があゆをおんぶする場面で、急接近してしまった片思いの人の背中で思わず「真山、好き」と涙ながらに呟く乙女の姿のせつなさ、苦しさの美しいことといったら!!そして礼を言うしかない真山。一度でも恋したことがある(orされたことある)人なら多分ノスタルジーを伴いつつ共感できるこのシーン、かなりときめきますわ。観るときいつも画面の前で口開けてます。このワンシーンに片思いの全てが詰め込まれていると私は見るのです。。…と、何だか熱くなってしまったけど、まあ恋愛云々抜きにしても、個人的に芸術系の大学に憧れがあったので、その生活が垣間見えるところが良いなあと。ファッションも凝っていて、見ていて飽きないし。でも全く同じ脚本・監督でキャスティングが違っていたらこの点数はないかな。ラストあたりの蒼井優のあの笑顔は、神がかりです。女の私でも「惚れてまうやろ!」と叫ぶレベル。作品としてどうなんだと問われると確かに完成度は高くないのかもしれませんが、見所は大いにあり。中古で特典つきDVDを購入した私ですが、まったく損したとは思いません(中古だからか?)。コメンタリーの伊勢谷さんの激しい俺様っぷり(たぶん他の役者さんちょっと引いていると思われる…)が作中の森田と被り、なかなか笑える点もオススメです。[DVD(邦画)] 7点(2009-07-10 02:22:58)(良:2票)

5.  レザボア・ドッグス 《ネタバレ》 とにかくもう、オープニングにしびれた。タランティーノ作品は実はそんなに観ていない自分も、彼のファンが多いのには妙に納得させられたこの映画。シリアスながらも何となくおかしみのある会話やシチュエーションに、スタイリッシュな音楽、グロ。Mrホワイトの口癖で字幕に何度も出る「大殺りく」の文字、血がジャンジャン流れて人が死にまくっているのに、その言葉選びのセンスに思わず笑ってしまった。これはタランテーィノが悪趣味なのか、自分が悪趣味なのか(っていうか、普通に考えたら翻訳者が悪趣味か)。時間軸がぐちゃぐちゃだけどつぎはぎも上手でなんかもうお見事としか言えない。私はバイオレンス系の作品が正直苦手なので、この映画も食わず嫌いというか何となく避けてきたが、実際に観てみると、流血と暴力は飾りで、本質は人間ドラマというか群像劇的な部分なんだなと感じた。ハーヴェイ・カイテルとティム・ロスの友情?、Mrブロンドのサイコっぷりと意外な忠誠心、そしてやっぱり卑怯で小物なブシェミ、その他諸々。犯罪者だからって冷徹・理不尽一辺倒ではなく、筋を通すところは通すし、彼らにもそれぞれの個性や考え方がある(当たり前といえば当たり前だが)。演技以前に、俳優それぞれが役柄にマッチしているというキャスティングのセンスも凄いと思う。というわけで何もかも素晴らしい映画だが、自分としては人質の警官があまりに可哀相過ぎて満点にはできなかった。このへんはあくまで好みの問題なので…映画としては文句なしの大作。[DVD(字幕)] 8点(2009-12-13 14:06:29)(良:2票)

6.  ディア・ドクター 西川美和監督のすごいところは、人間の感情というものが複雑であり、矛盾を抱えたものであることを、2時間前後の、ストーリーも成立している作品のなかでちゃんと描けてしまうことだと思う。画一的に「善い人」、「悪い人」と、簡単に分けられないのが人間。本作のキャラクターそれぞれに、嘘やわがまま、嫌なところ、素敵なところがちゃんと見出せる。監督は、現代の医療が抱える問題の中に、愛情を主にした、人間ドラマを巧みに融合させている。作品の性質上、刑事の語りなどにどこか説明的とも思える箇所はあるが、それでも充分リアル。あまりにキャラクターが普通の人たちすぎて、役者さんたちはこの脚本を演じるのが難しかっただろうなあ。でもだからこそ、主要キャストはベテランばかりなのかもしれない。感情の読みにくいつるべの小さい目が、こんなにも生かされる作品って、そうはないでしょうな。[映画館(邦画)] 8点(2009-07-03 17:21:49)(良:2票)

7.  ジャージの二人 「サイドカーに犬」も本作も、原作は未読。ただ同じ原作者というのがわかると納得した。どちらもストーリーはとりとめもなく、しばらく経つと思い出せない感じ。ただ、作品として「良かったなあ」という印象だけは結構残る。この作品、私は父子水入らずで過ごすシーン(ジャージの二人)が好きで、妻や娘がいる状態(ジャージの三人)は何となく気分がざわついた。そのあたりはジャージの仲間はずれエピソードで意図されているのかな。やっぱりいい年の男二人、避暑地のぼろい家でのんびり過ごすというむさくるしさが味なので。本業・ロッカーの鮎川氏は格好いいけどどことなくとぼけていて、プロの役者じゃないからこそ出せるであろうぎこちなさが、作品における父親像に絶妙にマッチしていた。堺雅人は言うまでもなし。ジャージ着ててもハンサムな男たちは可笑しくて、でもやっぱり素敵。[DVD(邦画)] 8点(2009-07-10 21:33:14)(良:2票)

8.  ゴーン・ベイビー・ゴーン 《ネタバレ》 この映画が投げかける問いに明確な答えはない。ある人は主人公に共感し、ある人は主人公を否定するだろう。しかしながら、どちらかの行動を選ぶと言いながら、どちらの心情も理解できる人が殆どだろう。物語の結末の時点での娘の視点に立てば、どちらも正解とは言い切れないからだ。現実にはこういうことが往々にしてある。だから、どう思おうと、その人なりの価値観だということで、否定はできないと私は思う。アフレックもそういうつもりで、あえて結末をすっきりさせなかったに違いない(ちなみに私は、主人公の熱い考えには反対だ。私なら誘拐犯を見逃したかもしれない。しかし、かといって意見の相違で恋人が去ってしまうのも酷な気がした)。ただ、この映画を観て、何の感想も抱かなかったという人がもしいるとしたら、私はそちらのほうが問題だと思う。本作の主人公のように、人の一生を左右するような重大な選択を迫られる状況というのは、裁判員制度が導入された現在、私たちにとってもはや他人事ではないからだ。裁判員に選ばれたとき、我々は場合によっては人の生死まで判断せねばならなくなる。答えのない問題に取り組むのは、できれば避けたい大きな試練だが、それを放棄してしまうのは、最終的に判断を間違ってしまうよりも罪なことだ。実際、裁判員が自分なりの根拠を持たないで、適当に一票を投じてしまうようなことが起こるのは怖い。何らかの大きな選択をするなら、そこに必ず信念や自論は必要だと思う。主人公もそれがあればこそ、多少の後悔はあっても、孤独な少女の現実を受け入れられるのだろうから。…そんなことを真剣に考えさせられた作品。話は変わるが、ベン・アフレックといえば私のなかではケヴィン・スミスなわけですが(笑)、ケヴィンの作品ではアホっぽい姿をよく見るぶん、この作品で彼の別な一面が見えてある意味良かった。あんたはいい男だ!!ちと惚れた。[DVD(字幕)] 7点(2009-07-14 02:40:44)(良:2票)

9.  母なる証明 《ネタバレ》 今までいくつか観てきたなかでいえば、ポン・ジュノ監督はどうもある種の反骨精神の持ち主らしく、教授や司法家など、世間的に地位の高い者や権力を持った者を大抵くそみそに描く。そのペンとカメラでの裁きっぷりは容赦ない(何かトラウマでもあるのだろうか?)。本作でも、杜撰な捜査をする警察や、弱い者いじめの強い人間たちが出てくる、出てくる。嫌らしい大人のオンパレード。そんな社会じゃ弱者は救われず、貧しい少女は身売りまがいのことをしなければならないし、愚者はあくまで利用される。だからこそ母は強くなり、弱者である息子のために奔走する羽目になるわけだが…。結局この作品で一番不幸だったのは、正直者のおじさんと、罪がないはずなのに少女の鼻血によって捕まった少年。二人に「母」はなく、救ってくれる者はなかった。当初は「可哀相」だったはずの母子は、他人を「可哀相」にして、自分たちは助かってしまう。庇い合える存在さえいてくれたら、人は何とかなるってことか。それにしても、本当の意味では救われない作品。ミステリーではあるけれど、謎解き的な要素より人間の光と影というか、そういった部分が面白かった。しかし、様々な伏線をきちっと収束させる手腕もお見事。貧しいはずなのに湯水の如く湧いて出るお金については目を瞑ろう。[映画館(字幕)] 8点(2009-11-01 20:26:38)(良:2票)

10.  小野寺の弟・小野寺の姉 《ネタバレ》 見るからにいい子(だけど腹黒そう)な絵本画家、人はいいけどお節介な眼鏡屋夫婦、人はいいけど単細胞の営業マン、裏表ある服屋の女、俳優志望の変人など、どこにでもいそうな人物たちばかりが出てくるが、中心にいる姉弟は、関係性といい性格といい、造形が妙にファンタジック。なのにその非現実的な姉弟だけが唯一、私にとっては魅力的なキャラクターであるという、非常に不思議な映画だった。特に小野寺の姉の人物像、これだけでもう満点。色んなエピソードが出てくるが、弟が可愛くて愛しくて仕方ないという思いが伝わる。とっても熱いお姉ちゃん!姉と弟がこれほど密な関係を築いていながら、薄気味悪さは微塵もなく、むしろ微笑ましさしかないのは、その姉を演じるのが片桐はいりだからの一言に尽きるだろう。マイナス点は、そのはいりさんがもっと報われる展開であってほしかったことと、ラストがどうも、投げっぱなしな感じがすること。でも、これまさか続編を作るためあえて明確なオチをつけなかったという手法か?じゃなきゃちょっとあんまりっす。どう考えてもモテそうな弟はともかく、姉には、(可愛い弟がずっと傍にいてくれるというような温い感じじゃなく)幸せになってほしい。[DVD(邦画)] 7点(2015-08-23 13:35:06)(良:1票)

11.  セブンス・コンチネント 《ネタバレ》 私はつくづくマゾだ。ハネケ監督の作品は観たくなる。鑑賞後の心のざわつき、何ともいえない不安感は観る前から確実に分かっているのに、観てしまう。そして案の定、それらにじわじわ苦しめられる。圧倒的ではない。緩やかに、穏やかに、真綿で首を絞められるというのはこんな感じか。本当に、凄い。往々にして、ある監督の一番有名な作品は、その監督のカラーが色濃く出ていないことが多いように思う。ハネケ作を全部観ていない私の感覚だが、「ファニーゲーム」のように、分かりやすく不快感を提示する映画は、監督らしくない気がする。この映画は、身も蓋もない表現をすれば単なる一家心中の話である。だが、それだけではない何かを観客は確実に受け取っている。どこにでもあるからこそ、分からなくもない。分からなくもないから、怖い。誰にでもある「日常」から、破滅が生まれるということだから。そして、このタイトル。破滅は希望なのか、始まりなのか。いや、そんな筈はない。だから、哀しい。虚しい。ハネケ監督の作品はなかなかお目にかからないが、機会があれば全部観たいと思う。でも、他の作品を観れば観るほど、多分、この「セブンス・コンチネント」こそが、ハネケ映画なんだ、という思いが強まっていくような気がする。[DVD(字幕)] 8点(2010-06-15 10:41:04)(良:1票)

12.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》 でんでんと黒沢あすか夫妻の壊れっぷりと、吹越満の小市民感(というか至極まっとうな人間感)、凄まじい殺戮の融合。なんだかもう、わけがわからんけど、とにかく園子温らしく、全体的に赤いイメージの、ショッキングながらもパワーがある映画だった。 個人的にはスプラッターやグロいのはあまり得意ではないけれど、シリアスではなくどこかポップでもある(たぶんこれが園作品の特徴なんだと思うが)から、二時間半の長い尺も楽しく観られた。吹越満による「生きるって痛い」という娘へのメッセージ、そして娘のリアクション。ひどいオチだが、だからこそこのメッセージも生きる。ところで、「アウトレイジ」もそうだったが、バイオレンス表現があまりにひどすぎると笑えるというのはどういうメカニズムなんだろう。ダチョウ倶楽部や出川哲郎のリアクション芸を見て笑うのと同じなのか。大量出血も肉片も見慣れてくる頃には観客の倫理観も完全に麻痺していて、現実的に考えれば法的にも心情的にも許されないようなシーンでも構わず爆笑が起こる。そんなサディスティックで不思議な空間にいたことも、体感として忘れられない。「この素晴らしき世界」はまさしく、映画館で体験するべき。 [映画館(邦画)] 8点(2011-02-15 12:15:07)(良:1票) 《改行有》

13.  コドモのコドモ 《ネタバレ》 幼い少女が出産するというストーリーの映像作品がここ数年で何作か世に出て、物議を醸した。でもよくよく考えたら、作品中でもばあちゃんが言ってたが、産むことができる身体だから赤ちゃんができるってことなんだし、自然の摂理に反しているわけではない。子どもが出産するというテーマの問題点は、私が思いつく限り2つある。1つは赤ちゃんを育てるということは経済力や躾の面で子どもには難しいということと、そしてもう1つは―こちらの方が大きいと思うが―妊娠や出産以前の過程で、そもそも子どもがセックスするというのがタブーであるということだろう。前に他のレビュアーさんが書いてらっしゃる、セックスの意味も分かっていない子どもがセックスするということが暴力であるという意見はもっともだ。ただ、この手の作品の意味は、無論、幼い子どものセックス礼賛ではない。汲み取るべきは、「よかったね~」と笑い合っている周囲の理解ある仲間や家族という奇麗事ではなく、批判的な第三者というリアルの部分であると私は思う。また本作の、幸せそうな「今」だけ切り取り、あまり未来を感じさせないラストシーンはどこか名作映画「卒業」に似たものを感じる。これからもずっと幸せなんて約束はない。世の理みたいなものに背いて選んだ道は、間違いなく厳しい。それでも生まれてしまったものは仕方ない。たとえ産みたいという感情は一時的なものでも、結果は永遠についてまわる。ともかく子どもだろうが大人だろうが、命を作り出すという行為はいろんな意味でとーっても重い。そういうことを、不安も感動もひっくるめて、感じられればいいのではないか(そしてそれが似たテーマの「JUNO」よりは断然感じられる本作)。ただまあ個人的には、ハルナの大きなお腹にばあちゃん以外の大人がいつまでも気づかないというのが、子どもにしか見えない赤ちゃんの存在…的なファンタジー設定ゆえにかと思っていたから、本当に産んじゃうのには驚いた。「自分の子どものことは何でも分かる」と豪語する母親がずっと気づかないという設定はやっぱりどうしても無理がある。そこに何らかの意味を持たせたかったのは承知の上でも。[DVD(邦画)] 7点(2009-12-07 21:35:46)(良:1票)

14.  おくりびと 《ネタバレ》 純粋にいい映画だ、とは思う。わけあり女の余貴美子、実は「おくりびと」だった笹野高史、社長、吉行和子、役としては死人だったが峰岸徹、そしてなんといっても主演のモックン(所作の一つ一つが美しい)、みんな、実にいい。そんななか、完成度を下げたのは妻・広末涼子だ。いや、広末涼子のせいではないのかもしれない。素人の私には、彼女の演技が悪かったのか、それとも脚本がまずかったのか判断ができない。ただ、いずれにせよ、妻がこの映画において大きなマイナス要素なのは間違いない。この映画の流れで、妻の心境の変化がなぜ起こったのか、どのように変化したのか、よく分からないのだ、あまりに唐突で。なんとなくは理解できる。だが、筋書きをなぞったうえの理解でしかない。物分りのいい貞淑な妻のはずなのに夫の仕事を知るやいなや豹変し、夫を「汚らわしい」とまで口走った彼女が、夫の仕事ぶりに感動してすぐに見直しました、ってあまりにも簡単すぎるではないか。広末演じる妻はこの映画において、「死」というものを異常に忌避する点で、多くの観客に一番近い(ある意味ではごく普通の)、存在のはずである。その妻を適当に心変わりさせてお茶を濁して、客から共感を得るというのは無理な話だろう。実際、私もそうぐっとは来なかった。妻との物語をそこまで見せる気がないのなら、もっと描くべきことはあっただろうし、見せたかったのなら全然足りなかった(尺の問題ではなく)。とはいえ、様々な人の死に様々な思いが交錯する、日本的な「死の風景」が美しく描かれていたこと、冒頭にも挙げた俳優陣の演技など、個人的に好きな部分も多い作品である。だからこそ、自分のなかのマイナス箇所がとても勿体無く感じる。[DVD(邦画)] 6点(2010-07-16 21:03:46)(良:1票)

15.  おとうと(2009) アンパンが喋るとか未来からネコ型ロボットがやってくるとかいった国民的アニメの設定に「そんなバカな」とつっこむ人は誰もいない。単にフィクションというのとは違う意味合いで、この世に起こりえない「非現実」の話だからだ。この映画も同様に、山田洋次の世界という、現代日本に似た異世界の、全くの非現実の話だと思うことにしてみると違和感なく観れる。時代錯誤という単純な話では済まされないほど独特すぎるキャラクターたちの言い回しや行動は、現代の日本では絶対にお目にかかれないだろうが、それでも深い味わいがある。いかにも人情物らしく、脇役たちが生き生きしているのも良い。特にレオ&笹野ペア。二人のいかにも下町の人間らしい陽気さ・お節介さが微笑ましい。ただやはり、蒼井優や加瀬亮など良い意味で「普通さ」が売りの若手の役者陣は、観ていてこそばゆいくらい演じにくそうではあった。でもまあ、それもご愛嬌だ(逆に吉永さんはマッチしている。ご本人が浮世離れしているからだろう)。最後に鶴瓶について。「ディア・ドクター」も良かったが、今回も素晴らしい。彼はおそらく監督に愛されるのだろう。(多分)本人の人柄がそのまま生きた役を貰って、ありのままで楽しく演じている。だから観ている者も楽しくなる。ストーリーはありきたりだし、オチも何となく分かっていたが、それでも最後はホロリとくる。山田洋次の愛する、寅さん的なステレオタイプな人情の世界は、やはり日本映画には必要だと痛感した。自分で言っててなんだが、これが現代日本の話として観られないことがちょっと哀しい気もする。[映画館(邦画)] 7点(2010-02-28 23:48:04)(良:1票)

16.  百万円と苦虫女 《ネタバレ》 蒼井優という女優の存在を初めて認識したのは「リリイ・シュシュのすべて」だった。そのとき何となく只者ではないという感じはしたが、この映画で私にとって彼女は唯一無二の素晴らしい女優というポジションになった。本作の不器用な主人公・鈴子はとびきりの美人であってはいけない。かといって勿論ブスでもいけない。どこか陰気な感じで、生きにくそうだが、その後ろ向きなミステリアスさや儚さがそれなりに魅力的にも見える。当然、万人受けするわけはなく、寄ってくる男も限定される。さらに二十代そこそこという年齢設定も考えるとこの鈴子を演じられるのは蒼井優以外に私は考えられない。監督が蒼井優の魅力と持ち味を最大限に活かし、また蒼井優もその意図に沿った結果生まれた素晴らしい映画である。だからといってこの映画が蒼井優の魅力のみで成立しているとは思わない。ストーリーも秀逸である。特にラスト。森山未來演じる青年の裏切りの理由解明が蛇足という意見には全くの同意であるが、前に進む鈴子を応援するかのようにすれ違いのラストを選んだタナダ監督の心意気(?)に感動。とりあえず笹野さんのマイクテクはツボだった。[映画館(邦画)] 9点(2009-05-21 18:51:58)(良:1票)

17.  ジョゼと虎と魚たち(2003) 《ネタバレ》 そんじょそこらのホラー映画やサスペンス映画に負けないくらい、私にとってはものすごく怖い話だった。彼氏がいなくなったからと「種を撒く」一見清純派美少女(という設定であるらしいことはわかるが…しかし、上野樹里は化けたなあ。ホントに)、その美少女を高みから揶揄するクールな女、軽く恋しちゃう大学生ノリの延長線で重くなるであろう恋に走り、案の定、その重みに逃げ出す男…本当にこの世は魑魅魍魎の住処だなあ。不気味なばあちゃんや凶暴な幼馴染み、変態おじちゃんのほうがよほど私には好ましく思えたが、こういった人々のほうが異端扱いされるのが世の常。普通の人間って怖い。悪意がないから余計怖い。ジョゼとツネオの恋についての感想は人それぞれなんだろうけど、心溶かすような恋が永遠でなく一瞬だと分かっているならば、知ってしまうより、いっそ何も知らないままで海の底の何もない暗闇に延々漂っているほうが幸せなんじゃないかと私なら思う。離れていくツネオの心を眺めているジョゼの、物分りよく諦めの境地に立っているふりをしながら、懸命に「そんなもんだよ」と自分に言い聞かせているであろう心情を思うと、哀しくて哀しくてどうしようもなかった。この映画を前向きとか希望とかいう風に語れる人はきっと大人なんだろう。思い出に生きることもまた幸せだろうなんて、今の私には到底思えない。ただ、これから先、恋をしたら、もう一度観たい映画ではある。いつかは私にもこの味が分かるようになるといいのだが…しかしそれにはあと数年はかかるだろう。なにしろこの強烈な恋愛への恐怖心はしばらく私を支配するだろうから。でも結局はそのくらい、素晴らしい映画だった。[DVD(邦画)] 8点(2009-11-06 22:54:57)(良:1票)

18.  桐島、部活やめるってよ 《ネタバレ》 この映画において名前のついた登場人物は、全員主人公になれるような存在で、「それ以外」にスポットのあたる作品が観たかったというのが一番の感想。しかし、これはこれだ。一見仲よさそうな女子グループ内の微妙な関係性の嫌らしさとかよく描けていた。イケてる人は結局イケてる人としかくっつかないという夢も希望もない現実が提示されるも、でもそれすら部活という青春によって昇華するラストシーンのあまりの眩しさに、こんなの嘘だ!と毒づきつつも、ただただ圧倒された。高校時代、自分の立ち位置なりにもっと楽しめばよかった。[映画館(邦画)] 8点(2012-09-27 11:22:22)(良:1票)

19.  赤ちゃん泥棒 《ネタバレ》 一度でも子どもを産んだことがある人は、観ていて不快になるのかもしれないですね。確かに「五人もいるのだから一人くらいさらってもいい」は主人公たち側の勝手な理屈には違いないんですが、ただ、被害者が子どもを愛してやまないような親ではなく、子どもがさらわれるというドタバタの最中でも、しれっと自社CMをやっちゃうようなこれまたズレた真剣味のない親だから、悲劇ではなくコメディになってしまうのだと思います。どうかしたら泥棒たちのほうが赤ちゃんに対して情熱的なぐらいで(やり方は間違ってるけど。笑)そもそも、主人公夫婦の馴れ初めやら、赤ちゃんがまったくぐずったりしないやら、徹底的にフィクションなので、先に誰かもお書きになってますが、肩入れせずに力を抜いて観るタイプの一本なんでしょう。中途半端に現実の倫理観を持ち込むと青筋立ててキリキリしてしまい、非常に疲れます。個人的には、かっこいいヒーローものより、まっすぐ歩けないダメ人間があさっての方を向いて、それでも正直に懸命に生きている映画が大好きなので、高評価です。赤ちゃんは可愛いなあ、本当に。[DVD(字幕)] 7点(2008-12-26 16:35:52)(良:1票)

20.  空気人形 《ネタバレ》 印象が「TOKYO!」の一編、ミシェル・ゴンドリー監督の「インテリア・デザイン」と酷似している。モノ化する人間とヒト化する物体。どちらも途方もなく寂しいファンタジーだ。私にとって東京という街は特別である。渇いていて、クールで、美しい街。積年憧れてはいるが、住んだところでおそらく永久に融合できないだろうと思っている。この映画は私の憧れる東京のイメージそのものだ。身体に満ちているものが空気だろうが血液だろうが関係なく、人は誰かに使われて、いらなくなれば捨てられる。その結論はあまりに寂しいが、そういうものだから生きていられるのだと思う。観たときの気分かもしれないが、顛末があまりにも現実に正直で、非常に感銘を受けた。そしてなにより、ぺ・ドゥナがこんなに綺麗だなんて知らなかった。[映画館(邦画)] 9点(2009-10-08 19:29:13)(良:1票)


Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS