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1. オーバー・ザ・トップ
《ネタバレ》 子供の頃、兄がスタローンの大ファンで、よく家の中で「オーバーザトップ」のサントラが流れていた。
「オーバーザトップ・・・」と言いながら小指から順に手を握り締めていくさま、よく真似をした(笑)。
当時を懐かしむ気持ちで鑑賞。
スタローン扮するリンカーン・ホークは父親として最悪ですな。
祖父の家にトラックで突っ込むわ、釈放の示談で交わした約束をあっさり反故にするわ、ギャンブルに全財産をかけるわ(結果成功するが)、
家は無いわ金は無いわで、絵に描いたようなDQN親。
あげくに10年間行方をくらませた上で、母親が死に間際に突如現れて親権を主張する。
育ての親である祖父から見たら、とんでもない話だ。
こんなのに子供を任せたら不幸になるに決まってる・・・というのが、大人になった自分の嫌味な感想。
逆に考えるのは、子供の頃、この映画の何にそれほど惹かれたのか?という点である。
マイケル君が、リンカーンと暮らすことを決めた理由がそれと同じかもしれない。
大人になって見えるようになったものと、見えなくなってしまったもの。
時を経て鑑賞した「オーバーザトップ」にそれを示された気がする。[DVD(字幕)] 7点(2010-04-29 08:30:06)(良:4票) 《改行有》
2. ノルウェイの森
《ネタバレ》 なんかなあ・・・見ているときも、見終わった後もそんな気分。これじゃあ、異様にモテる男と面倒くさすぎる女の物語じゃないか。そこに動機が見出せない。
どうしてワタナベはあんなにヤリまくりモテるのか?原作では、ワタナベの不思議な魅力を淡々と描いてみせる。ワタナベの見方を通して、あるいは関わる人々から言われる「ワタナベ評」を通して、人物像を形成していく。例えば、緑の父親にキュウリを食べさせるエピソード(映画では省かれてる)。自分はこういうワタナベに対して人間としての魅力を感じる。
ところが、映画ではこの“理由付け”の部分が上手く描けてないから、結果的に「なんかなあ」と思ってしまう。これは、ストーリーテリングの問題が大きい。脚本家としてのトラン・アン・ユン。
“理由付け”の非力さという意味では直子も同様で、どうも映画中の彼女には惹きつけられるものがなかった。なんだ、あの媚びたような口調は。こっちは、役者にも問題がある。
ただ救いというか、個人的に新たな発見もあった。ラストで緑の名前を呼び続ける場面。原作にもある。これは、緑のセリフ「私をとるときは私だけをとってね。私を抱くときは私のことだけを考えてね。」と繋がっていたのか。映画のシンプルな構成だからこそ、浮かび上がった。
さて、国民的小説ともいえる「ノルウェイの森」。
もし自分ならこう撮る、直子役には○○を起用する等の居酒屋談議も当然出てくる。
大変僭越ながら、私の妄想をここに発表すると、ラストのシーンはレイコがギターを弾きワタナベと2人だけでやる直子のお葬式にする。レイコのギターをバックにエンディングロールを迎えて。
まあ、それはさておき。かつて、映画化されそうでされなかった「ノルウェイの森」。いや、できないだろうとも言われていた。情けないな、外国人に先を越されてしまったね。本作はトラン監督の感受性に敬意を表すると共に、色々な解釈があっていい、忘れた頃にでも他の人による第二、第三の「ノルウェイの森」を期待したりして。[映画館(邦画)] 6点(2010-12-25 14:52:47)(良:1票) 《改行有》
3. グラン・トリノ
《ネタバレ》 孤独で偏屈な老人が最期に命を捧げて友人を守った、単にそういうお話ではない。タオのためでもない、スーのためでもない、こういう形でしか自分を赦せなかったのだろう。なんてやるせないんだ。
老人はかつての戦場のようにやるべくしてやった。その結果返り討ちに合い、スーに無残なことが起こってしまう。 ―――このスーを演じた女性、素人役者に近いかもしれないが、小粋で魅力的であった。(失礼ながら)特段に器量が良いわけでもないが・・・これも、イーストウッド・マジックか。
だからこそ、変わり果てた姿で帰宅したシーンには非常にショックを覚えた。なんてことをしてくれたのか!この瞬間、映画にドップリと感情移入していた。
イーストウッドは古き良き保守的な人間に愛着を示す一方で、勧善懲悪ならぬ“勧悪懲悪”のような構図を好む。本作は佳作にして集大成だと思うが、オスカーにノミネートすら無かったのは、これまでのイーストウッド作品で繰り返し扱われてきたテーマだからだろう。これについては「許されざる者」でオスカーとってるからねと、審査員はそんな気持ちかもしれない。ただ一味違うのは、最期に「許される者」になったという点である。
磨いた愛車グラン・トリノを眺めながらビールを飲むシーン、自分も好きだ。[DVD(字幕)] 9点(2010-04-24 08:59:52)(良:1票) 《改行有》
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