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1. グラン・トリノ
《ネタバレ》 コワルスキーの大団円のシーンでは、ダブついたジャケットを羽織っていることから、
まさか、まさかと一瞬「荒野の用心棒」を想起しましたが、さすがにそれはありませんでしたね。
わかりやすくて、感情移入しやすい、いい映画だったと思います。
ハリー時代からの大ファンですが、アメリカ万歳の王道をいくかのようだった彼が
ここにきて「戦場からの手紙」やこの映画のモン族との関係等、アジアに眼を向けるようになるとは想像もつきませんでした。
それにしても米国人は玄関ポーチが本当に好きなんでしょうね。
社会と対峙し、自分の位置を確認する上での重要な場所ということでしょうか。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-26 23:17:52)(良:1票) 《改行有》
2. 真夏のオリオン
《ネタバレ》 しかし、日本の最近の戦争映画はどうしてこうも緊張感に欠けるのだろうか。
およそ終戦間近という時代背景や、回天搭乗員が乗艦している虚無感、そして作戦に従事する僚艦が全て沈没し、残った自艦は今や敵駆逐艦に完全補足されているという絶望感が全然伝わってこない。
また、潜水艦という過去の同系の映画であれば当然漂う館内特有の閉塞感が、
この作品からは微塵も感じられない。汗ひとつかかない乗組員の表情からは
真夏の南洋下にありながら、どこかエアコン完備の一流ホテル並みの居心地の良さすら感じるのは私だけであろうか?
役者もイケメンで、かつ戦時中であることを加味してスリムな人間に演じさせれば
事足りる程度の安易な選択だったとしか思えない。
なにやら途中からは、双方の艦長は自己の本来の任務も忘れ去り、
お互いの戦術の読み合いや駆け引きが展開の中心になり、しょうもないゲーム感覚が漂ってきたが、そんな暇があったら、潜水艦独特の浮遊感や居心地の悪さ、過酷さを丁寧に描いていくことこそが、テーマであるはずの「生きるために戦う」を訴求するのに必要だったと思う。
戦闘シーンの迫力のなさも失望。「ローレライ」の方がまだ良かった。
最後の安易な話の落とし具合といい、オリオン座との無理なからませ具合といい、
なんとも暗澹たる思いで、映画館を後にしました。
(苦言ばかりで申し訳ありません)
[映画館(邦画)] 3点(2009-06-22 23:09:31)(良:1票) 《改行有》
3. レスラー
《ネタバレ》 あまりに痛々しく、そして悲しい映画でした。始めから終わりまで退屈することなく引き込まれました。プロレスにはまったく興味がなく、ほとんど事前知識なしで席につきましたが、冒頭のレスラ-仲間との段取り確認と、しこんだカミソリ刃による自演流血の時点からはまってしまいました。
勝手ながらロッキーのようなアメリカンドリームの映画ではないかと思っていたら、そうではありません。プロレスラー界とそこで生きる一人の老雄を等身大に描いた愚直でまじめな映画でした。
ステイプラーガンのおぞましさ。対戦相手を気遣う戦友同士の仲間意識の暖かさ。閑散とした合同サイン会と、「8ドルだよ」と自身でお代を徴収し、ウエストバッグからお釣りを返す寂しさ。メインデッシュのPコートを少しは喜んでくれた様子に安堵したものの、2時間の待ちぼうけくらいであそこまで言うかぁ?という娘の厳しさ。我慢して総菜の盛り直しを繰り返す忍耐。キャンセルされたはずの対戦が直ぐまた復活される興行の安直さ。こうした境遇の中で心身ともみまさに満身創痍でリングに上がり、観客はそれなりに熱狂するわけですが、両者の間には背負うものについて大きな温度差があるのは否めません。片や死の淵を彷徨いながらのパフォーマンス、片や入場料20ドルで一時の娯楽を求めに来た観客達。ラムの居場所はリングただひとつしかありませんが、観客は別の娯楽は無数にある。映画は敢えてその対比をクローズアップはしませが、私は非常に恐ろしく感じました。「もう十分だ!」と言う相手構わず、命をかけた大団円を迎えるランディ・ラム。同じく「もう終わりにしてくれ!」「何故そこまで?」と叫びたくなったのは私だけではないでしょう。
ところで、ラム(雄ヒツジ)とは、字面だけではかわいいイメージがあり、リングネームとしてはふさわしくないのでは?と思いましたが、プロフットボールのチーム名でもあるし、辞書を見ると「(軍艦の)衝角」や「破城槌」という凶器的な意味もあるようなので納得しました。[映画館(邦画)] 9点(2010-03-14 16:58:41)(良:1票) 《改行有》
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