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プロフィール
コメント数 3862
性別 男性
年齢 53歳

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1.  網走番外地(1965) これぞまさしく男泣き。破れかぶれになりそうな健さんを、丹波が、そしてアラカンが、何とか食い止める。しかしその歯止めをついに突破してしまった時、男はどこまでも破れかぶれになる。そうならざるを、得ない。その破れかぶれ具合が、暴走するトロッコとして、あるいは迫りくる機関車として、執拗に描かれる。そしてその先のどうしようもなくなった最後の最後に、自暴自棄になりかけた男を食い止める、究極の一言。いやあ、みんな、孤独なんだ。寂しいんだあ。[CS・衛星(邦画)] 10点(2014-06-04 22:43:52)

2.  雨に唄えば ジーン・ケリーとドナルド・オコナーが、縦横無尽に踊り歌いまくれば、カメラも縦横無尽に走りまくる。まぎれも無くこれはアクション映画です。目の前で生身の役者が歌と踊りを繰り広げ、息遣いが直接伝わる舞台ミュージカルと違って、スクリーンを通じた間接的なものに過ぎないのが映画、しかし、映画でこそ可能な表現があり、また違った感動が、そこにあります。サイレントからトーキーへの移行時期の混乱を描き、音声ズレのギャグが、笑いをもたらすだけじゃなくて、ストーリー展開上の大きなキッカケとなっていたり、『ジャズ・シンガー』の成功を見るや一気にトーキーになびいてしまう業界の軽薄さとそれに乗っかり成功しちゃう主人公たちのチャッカリぶりがあったり、と、心憎くもまたアホらしいお話なのですが、いずれにせよ、この見事な「アクション映画」ぶりを観れば、映画の魅力はアクションにあり、そこにはサイレントもトーキーも無いのだ、ということがよく感じられます。[CS・衛星(字幕)] 10点(2013-10-20 09:16:06)(良:2票)

3.  アラバマ物語 まずは描かれる子供の世界。実にユーモラスに、実に活き活きと描かれており、この点だけをもってしても稀有の作品だと私は勝手に思い込んでいるのですけれども。この「子供の世界」が見事に描かれることによって、グレゴリー・ペック演じる父親、その存在は我々にとっての父親ともなる訳で。完璧な人間ではないかも知れないけれど、カッコいいのが父親。家族っていいよね、そういう映画。家の外には、危険もあれば(狂犬病の犬とか)、怪しさもあり(ブーとか)、そして不正義もある(人種差別とか)。父親の力をもってしても、どうにかなることもあればどうにもならないこともある。しかしそんなときこそ家族の絆……といいたいところだけど、時には隣人に、見知らぬ人に助けられることもある。そうして子供の世界は、家から社会へと少しずつ広がっていく。そういう映画。[CS・衛星(字幕)] 10点(2012-03-26 22:50:32)

4.  仇討(1964) 仇討の果し合いが行われようとしている冒頭。その順位が着々と準備が進められるシーンから、時間を巻き戻し、そもそもの事件の発端が描かれる。そして、時間軸を自由に行き交いながら、事件がさらに次の対決を生み、そして冒頭で示されていた果し合いの全貌がいよいよ明らかになったとき、退っ引きならぬ立場に追い込まれた主人公の焦燥感が、痛いほど我々の心を突き刺す。震えが来るほどのクライマックス。凄まじい、とは、まさにこの事。[CS・衛星(邦画)] 10点(2011-11-08 23:34:16)

5.  アンストッパブル わかっていたこととは言え、自分がこういう映画にヨワイこと、改めてつくづく思い知らされました。お涙頂戴の要素なんかまるで無いけど、映画観てる最中、もう涙が出て仕方が無い。それは、ひたすら運動エネルギーの巨塊として描かれる暴走列車のド迫力に、ただただ圧倒されるから(こういう映画を観てると“鉄チャン”の気持ちが少し理解できる)。そしてそのエネルギーの前には無力な人間の姿と、それでもなお暴走を止めようと列車に闘いを挑むその姿には、震えが来るほどの感動が。いやあ、暴走列車モノにハズレなし(例外はあるけど)。殆ど条件反射的に感動してしまいます(でも一部例外が)。以前、『暴走機関車』という映画がありましたが(メッチャ好きなんです)、本作は、この映画と、この映画の元になったクロサワ脚本の両方を合わせた感じ。暴走をどう食い止めるかに主眼が置かれている点はクロサワ脚本に近いけれど、列車の破壊的なパワーにこだわった描写は、コンチャロフスキーの映画版の方(四重連!)を思い起こさせます。D・ワシントンの仁王立ちの姿もJ・ボイトを思い出させるし。暴走列車モノ、最高です。アトミック・トレインなどは例外ですけど(しつこいってば)。さて本作ですが、映画中盤、列車の暴走の模様がテレビ中継によって描写されていくのが、いささか要領良過ぎるようで、何だかチャッカリしてる気もしたのですが、実はコレも意味がありそう。というのも、映画前半では「家族に“言葉”では気持ちが伝えられなかった」2人の主人公が、後半では、テレビという“映像”を通じることで家族との距離が縮まっていく、という、ちょいと洒落た仕掛けになっているのですね。また、運転席のミラーも重要な役割を果たしていて、もちろん暴走列車への闘いにおいても重要なのだけれど、主人公2人の関係をもこのミラーが表現していて、映画前半では不信の視線、後半では信頼の視線を表しているのが心憎いところ。ところで、デンゼル・ワシントンの役どころ、サブウェイ123の時とちょっと似ている部分もあり・・・そしてそしてこれもサブウェイ123の時と同様、列車の窓は、何故か濡れているのでした。[映画館(字幕)] 10点(2011-01-18 22:39:11)(良:2票)

6.  赤い風船 この作品に関しては語る言葉を知らない。ただただ、泣けてしょうがない。特にラストはもう、いたたまれない気持ちになる(嬉しいんだか悲しいんだかわからない。とにかく泣ける)。何が何でも子供に見せたくなったので、4歳の娘と一緒に観る。娘も、喜んだり怖がったり、夢中になっておりましたよ。さらには0歳の息子も巻き込んでみる。うーむ。さすが反応は乏しいが、いやきっと、0歳なりに何かを感じているに違いない(ホンマかいな)。まだ観てない方は、とにかく観てください。[DVD(字幕)] 10点(2010-04-05 22:54:45)(良:2票)

7.  アラビアのロレンス 完全版 そういうわけで(どういうわけ?)、やっぱり、結局、何だかんだ言っても、とどのつまり、この映画、なんですねえ。わたしゃ実話の映画化ってのにどうもヨワイんだけれども、ロレンスが実在の人物とかいうことより、あの砂漠が実在の光景、ってことの方がはるかに重要。壮大、広大、圧倒の世界。こうなりゃ当然、そこに騎馬隊、騎ラクダ隊(?)でも疾走させて、膨大なるマスゲームでも展開させたくなるのが、スペクタクル映画。しかし砂漠はビクともせず、すべてを飲み込む。アラビアの独立のため、なんぞという「個人の」野望なんぞ、当然ひと呑みにされるわけで。この砂漠という、すべてが取り払われた世界では、建前なんぞ通用しない。ロレンスは挫折する。アンソニー・クイン演じるアウダというキャラクターがユニークで、一見、単なる俗物のようでいながら、最も冷静に世界を眺めている。彼の存在の前で、理解と対立を繰り返す、ロレンスとアリ。映画史上屈指の名コンビの苦悩をさらに冷静に見つめるのは、砂漠そのものに他ならない。そして、<完全版>なるこの映画そのものもひたすら長く、すべてを包み込み、最後には、挫折したっていいじゃないか、という気分にさせてくれる。こういう長さもまた、いいもんだ。[CS・衛星(字幕)] 10点(2007-10-14 11:06:45)

8.  アパートの鍵貸します 美男と美女がウダウダ恋の駆け引きするような映画は、好きじゃないというより、興味無いので殆ど見ません。では好きな恋愛映画は、というと、つまり本作です。基本的にアウトオブ眼中(古いなあ)、この切なさがタマリマセン。でも暗さは無く、悲哀を描きつつも全編に軽妙さが行き渡っており、笑いのツボも押さえてます。素敵な映画です。10点(2003-10-11 22:22:30)(良:1票)

9.  明日に向って撃て! これは好きです! 列車強盗の現場に到着した謎の機関車。この機関車の描写って絶対『激突!』を先取りしてますよ。ラストの銃撃戦は類を見ない壮絶さ。前半の追跡エピソードが最後にまた効いてくる、脚本の妙。何もかも好きです。ところでバート・バカラックがオスカー作曲賞とってますが、ほとんどの場面は音楽無かったですよね?それでもいいの?ま、いいんでしょ。10点(2003-08-12 22:58:40)

10.  暗殺者の家 《ネタバレ》 この映画、原題は「知りすぎていた男」といって(笑)、要するに後のリメイク作は同じタイトルで作られた訳ですが、かなりの改変が行われています。キーワードとなる幾つかの設定は共通しているものの、殆ど別の映画、という印象。むしろ、リメイクでどこが再び採用されたか、なんてのも興味深いところ。 すぐに目につくのは、暗殺の直前に画面の右から左へ銃口が伸びてくる、あのシーンですかね。やはりアレは落とせない、と。一方で、暗殺の顛末をその瞬間には見せないのが、このオリジナル作。なるほど、そのテもあるワケですな。 この作品、リメイク作に比べるとかなり短く、尺にして3分の2に満たないコンパクトさ。まだサイレント映画の香りも残ってて、乱闘シーンにおける短いショットの積み重ねなど、コンサートシーンのクライマックスに劣らず印象的。 さらにはこの乱闘の騒動をオルガンの音でごまかそうとするあたりは、クライマックスに向けて我々に対し「音」に注目させようとする布石にもなってたり。 ラストは銃撃戦に発展し、この点に関しては、親子愛にスポットを当てたリメイク作よりも「大ごとに発展しちゃいました」というダイナミックさがあります。屋根の上という不安定さがもたらすスリル、そして伏線が効いたオチ。 子供を助けたい気持ちは父も母も同じ。という点は、オリジナルもリメイクも共通ですね![インターネット(字幕)] 9点(2022-04-10 12:21:54)《改行有》

11.  アルジェの戦い アルジェリア独立を目指しテロ行為を繰り返す活動家たちと、手段を選ばずそれを押さえ込もうとするフランス当局との戦い。 物語の軸には、一人の青年が組織に入り、やがて幹部となって、ついにフランス軍に追い詰められる(冒頭シーン)までの姿、というのがあるのですが、映画の多くを占めるのは、凄まじい爆破テロ、市街地での銃撃戦、フランス当局による拷問。そして何よりも、アルジェリアの名も無き民衆の表情、視線、があります。 フランス側が手段を選ばない一方で、テロリスト側も平気で騙し討ちを行い、泥沼のような戦いが繰り広げられます。その綺麗事ではない闘争模様が、作品の迫力となって、見る者に迫ってきます。[インターネット(字幕)] 9点(2021-06-06 13:37:54)《改行有》

12.  アダムス・ファミリー2 1作目に低すぎる点数をつけてしまったのでお詫びに2作目は高くしておきます。 という訳ではないのですが(いや実はそうなのかもしれないけれど)、ますますクダラなく、ますます中身がなくなって、しかし作品のテイストにはその方が、よりマッチしてます。大して笑えないのは相変わらずだし、アダムス一家が犯罪に巻き込まれるのかと思いきや、犯罪の方がむしろアダムス一家に巻き込まれる、という路線も相変わらずですが。しかし、ブラックなギャグ(多分、今ならPG12相当だと思う)が散りばめられたいくつかのエピソードが並列されていてテンポがよく、特に、今回の目玉であるシッターさんのハイテンションと、アダムス夫人のまったり感とが好対照になっていて、緩急自在といったところ。 前作ではハンドさんがやや目立ち過ぎたのですが、今作では登場人物たちの配置もよりバランスがとれている印象。 まあ、シリーズを100本くらい作ったらそのうち一本くらいは大当たりが出来るだろうし、本シリーズの場合はそれがたまたま2作目だったんだろうかどうなんだろうか。という疑問も、ラウル・ジュリアがその後ほどなく他界してしまった以上、永遠の謎ですけれども。[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-11-10 09:32:46)《改行有》

13.  アパッチ砦 優等生顔のヘンリー・フォンダが映画の中でヒドい目に合うと、大抵、なんだか溜飲が下がる気持ちになったりするもんで、そういう意味で貴重な俳優さんだと思っているのです。本作でもしっかりラストでヒドい目にあってくれるのですが、本作の場合にはどうにもやり切れなさ、虚しさが残ります。どっちかというと、ここでは超堅物の憎まれ役で、特にアパッチ族との間を取り持とうとするジョン・ウェインの存在により、ますます、困った頑固オヤジぶりが際立ちます(ジョン・ウェインが優等生役でも不思議と憎たらしくは感じませんね。似合わないけど)。 むしろ、中盤のユーモアやロマンスによって、物語に大きな幅を持たせていることで、ヘンリー・フォンダ演じる中佐の存在もうまく物語に包み込んでおります。そして、彼の言動が、単にエキセントリックなものではなく、何か、自らの弱さに裏打ちされた強がり、とでもいうようなものを感じさせるが故に、ラストの悲劇が、ああ、何とかならなかったものか、という虚しさを伴って、心に響いてくる。ま、自業自得と言えばそうなんだけど、それでもなお彼の悲劇を悼むような、このラスト。 これ、ニューシネマの先駆けとか言っちゃあ、ダメですか。[CS・衛星(字幕)] 9点(2017-05-16 22:58:27)《改行有》

14.  アイアン・ホース アメリカ大陸横断鉄道の敷設という壮大な事業が、本作のベースになっています。しかし日本だって、狭い国土ながら、よくもまあこれだけの鉄道網を完成させたことよ、と思いますけれど。 この鉄道建設に情熱を抱く主人公、その情熱は亡き父の遺志を継ぐものであるけれど、父の命を奪った「2本指の男」の行方は杳として知れない。という訳で、大自然の厳しさや、先住民の襲撃といった危機にさらされつつも雄々しく進められる鉄道建設の姿に、「2本指の男」への主人公の復讐譚、あるいは主人公と幼馴染の女性との恋愛などが絡められて、見応え満点。脇を支える3人のポンコツオヤジたちの存在も忘れられません。 アメリカ開拓史の実際を映画に取り入れようとして、やや解説調なところもありますが、ラストでは当時の機関車実物を登場させてみたり(ジュピター号と116号、だそうです、すみません不勉強なもんでどのくらい貴重なのかワカリマセンが、きっと貴重なんでしょうフムフム)して、ちょっとワクワクしてしまいます。また、盛り沢山の内容を2時間ほどにまとめ切っているのも、字幕による最低限のセリフしか使わないサイレント映画ならでは、といったところでしょうか。馬に乗った先住民が列車に襲い来るその姿を、列車の壁面に映る影として描く、なんていう演出でも、これ見よがしにやることなく、サラリと流して見せる。 畳みかけるようなクライマックスに、これぞ大団円といいたくなるラスト。お見事です。[DVD(字幕)] 9点(2016-10-25 13:59:30)《改行有》

15.  アパッチ(1954) 主人公であるアパッチ族の青年マサイをバート・ランカスターが演じていて、先住民の俳優ではないのが、製作された時代の制約なのかも知れませんが、彼の身体能力を駆使したこの演技を見ると、彼の起用は大正解だとも感じさせます。先住民たちが白人たちとの共存の道を選ぶ中、白人社会に背を向け戦い続ける主人公。映画は決して彼に対して同情的な視点では描いておらず、その頑なな態度を、いかにも頑なに描いている。差別され疎外される側の立場を変に理解を持って描くよりも(つまり白人の視点に「翻訳」するよりも)、この映画の描き方の方が、より誠実とも言えるでしょうし、何よりも、善悪や好悪という視点ではなく、信念に生き行動に生きる主人公の姿をそのまま我々の前に描きだすからこそ、我々は心を打たれるのです。そして、彼を単純に支えるのではなく、彼と対峙し、彼に影響を与え続ける先住民の女性。戦いを通じ、また彼女との関係を通じ、自らの手で生きる道を選び、掴み取っていく主人公、バート・ランカスターという俳優の肉体を得て、見事な存在感を示しています。[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-08-24 14:29:36)(良:1票)

16.  明りを灯す人 舞台は中央アジア・キルギス共和国の、とある村。主人公は、その村で電気工事をやってる、いかにも朴訥としたオジサンですが、このヒトがこの映画の監督さんなんだそうで。こういう見事な作品を作るヒトが、こういう顔をしてるってのが、意表を突きますね。電気を引き明りを灯す、といのはいわば文明の第一歩。村の“はいてく”担当であるところのこのオジサン、電気の扱いにこそ慣れていても、別にインテリでも何でもない。自分に息子ができないことを悩んで、友人にトンデモない依頼をしたり、妙な事を信じて感電死しかけたり。その一方でオジサンは、風力発電なんぞにも取り組んで、彼なりの夢や希望を持っていたりもする。で、そんなオジサンの日常がそのまま続けばよいのだけど、村の外にはオジサンの知らない世界が広がっていて、その世界は、オジサンが村に文明をもたらすのよりもずっとずっと速いスピードで動いている。そしてその世知辛い外部の世界と接したら最後、元には戻れない……まるであの「遠くを見たかった」という子供が、木から降りられなくなったように。そして待ち受ける暗い運命、それは中盤のヤギを奪い合う競技で予告されていたり、冒頭シーンが思わぬ形で後のシーンに繋がったり、「風車」が象徴的に取り入れられていたりと、作品が巧みな構成を持ちながらも、一方ではノンビリした美しい光景が広がっていて、技巧に走った印象を与えることなく自然な映画の流れを感じさせる。見事な作品だと思います。[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-04-27 13:43:07)

17.  アギーレ/神の怒り 冒頭からの苦難の行軍シーンは、本編というより、まるでメーキング映像を観ているかのような。“リアル”という言葉では表現し切れない、ドヨ~ンとした雰囲気が充満しています。で、命からがら、何とか川べりの平坦な地を見つけたところでようやく、お芝居でも始めましょか、映画の撮影でも始めましょか、まるでそんな感じの作品なんですね。それまで大自然の前に隷属していた人間たちが、矮小な物語を語り始める。だけど大自然はどこ吹く風、まったくの理不尽さを持って、彼らを取り巻く。アギーレの野心は、人間たちのささやかな秩序を無秩序に変えていくけれど、その無秩序もまた大自然の得体の知れなさの前においては、実にささやかなもの。と言う訳で、小さな小さな人間の社会・野心・挫折、それを取り巻く圧倒的な「得体の知れなさ」、これだけでもって成立している作品です。結局のところ、彼らをとりまく“外部”が一体どうなっているのか、何が起こっているのか、さっぱりわからないけれど、その“外部”に対し「敵わなかった」「敗れ去った」と言う事だけは痛いほどに伝わってくる、という、何ともエゲツない作品であります。[DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 21:19:59)

18.  悪名一番 感動的な作品ですよ、これは。今回、朝吉親分と清次のコンビが向うのは、大都会・東京。八尾ではそれなりに知られた存在の朝吉親分も、ここでは完全に田舎者扱い。いや、田舎者以前に、見た目といい、言動といい、時代錯誤も甚だしく、チャラチャラした清次の方がよほど進歩的。都度、朝吉親分にたしなめられる清次、しかし靖国神社でついに二人は決裂。とってつけたように靖国神社の英霊の前で号泣する朝吉親分には、清次ならずともア然とするところ、しかし朝吉はそれが気に食わず、大ゲンカになってしまう。まあ要するに、朝吉親分、都会からも、時代からも、ちょっと“浮いた”存在な訳ですね。それでも自らに忠実に、愚直に突き進む朝吉親分、その一方で清次は清次なりに活動を開始する。清次の活躍が見どころです。で、クライマックス。敵の事務所に監禁された清次の救出のため、殴り込みをかける朝吉とニセ朝吉ニセ清次。すさまじいばかりの格闘シーンが続きます。そして、リンチでズタボロになった顔の清次が、朝吉と言葉を交わす時。どうしてこんなにダサいシーンなのに、感動しちゃうんですかねえ。スバラシイです。[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-03-05 20:48:02)

19.  アンノウン(2011) いやー実に実に面白かった、興奮しました。謎に満ちた発端がイイですね。テンポよく挿入されるアクションがイイですね。待ち受けているのは思わぬ展開(そりゃま、似たアイデアの作品は過去にあったけど、この程度の類似を見咎めて楽しまないのでは、日頃からミステリ小説なんて読んでいられない(笑))。そして何より、このサスペンスの雰囲気がイイですね。ミステリってのは、単なる「こんなトリック思いつきました」という報告書じゃなくて、本分は、そのトリックをいかに「語る」か、にある訳で。本作は、まずはその「語り」に徹している、その丁寧さに非常に好感が持てます。一体何が起こっているのか。誰が敵で誰が味方なのか。単純にプロットやトリックという意味での物語ではなく、それらを含めた、サスペンスの流れとしての「物語」、それをいかに「語る」か、どのようなカットを積み上げていくか。例えば“主人公が電話帳のページを破る前に辺りを確かめる視線”、などというレベルから、省略せずに描写をひたすら紡いでいく。この映画には「適当に色々撮って、後で編集で何としよう」みたいな発想は無く(そんないい加減な映画があるのかどうか知らんけど)、どのようなシーンにも強い意思が感じられて、しかもそれが、意思のための意思じゃあない、あくまでサスペンスを盛り上げ、映画を面白く「語ろう」とする意思であるのが、実に嬉しいじゃないですか。強いて文句をつけるなら……このタイトルはもうちょっと考えてつけてもよいのでは(こんなタイトル、どんな映画にもついちゃうよね)。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-05-20 08:34:54)(良:2票)

20.  アメリカ上陸作戦 これは何とも、楽しい愉しい映画ですね。アメリカのとある島の近くでソ連の潜水艦が座礁し、乗組員の一部が島に上陸してきたことから巻き起こる騒動。ホームドラマの世界に突然、ソ連兵が闖入してきて、それでもホームドラマのノリが続いていくという、噛み合わない面白さ。はたまた、そもそも潜水艦の艦長のヘンテコリンな言動が騒動の原因なら、島の住人もそれに劣らずヘンテコな連中だらけ、なもんで、騒動が連鎖反応的に広がっていく、“転がり出したら止まらない”面白さ。で、一連の騒動を通じて、冷戦構造への皮肉、「個人レベルであれば、人間同士、誰でも互いに仲良くしたい、理解し合いたい、できれば争いたくない、と思っており、またそれが実現もできるのに、国同士の関係になるとどーして無意味に敵対するのか」という風刺が描かれてもいて。こりゃま、いささか素朴に過ぎる主張ではありますが、しかし脚本のうまさと、俳優たちの誇張された演技が、この風刺を受け入れやすいものとしております。ラストなんぞ、「何やねんこのアホみたいな“エエ話”ぶりは」と呆れかねないところですが、「ま、愉しいからいいか。コメディだもんね」と、(一応)納得しちゃう。でまあ、この映画、何が面白かったって、主人公の作家が、ソ連兵に振り回される一方で、家族にも振り回されちゃうところ。非日常と日常のせめぎ合いが誇張された面白さ、ですが、特に息子の言うことに振り回された挙句「育て方を間違えたか?」なんて言い出すのが、傍目に見れば「そんな事言ってる状況じゃないでしょ」となる訳ですが、一方で父親の立場からすれば妙に切実でもあります。そしてまた、“個人同士は仲良くできるはずなのに国同士はなぜ仲良くできないのか”という点にもこれはつながっていて(家族=ミニ国家)、要するに国家ってのは、こういう内部の不満、内部からの突き上げを常に抱えているわけですね。それを抱えながら国家自身をどうやって維持するか、それが国家の関心事。個人同士がナゼ互いに仲良くし理解し合いたいと考えるのか、それは、それが自分を維持し守っていくための手っ取り早い方法であるから(もたれ合いの構図)。国家同士にはこの関係は当てはまらない。そんな素朴ではいられない。現に、主人公が、そして島の住人が、トチ狂っていったように。という訳でこの映画、実は一筋縄ではいかぬオハナシかもしれんなーと思った次第。[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-09-04 00:32:39)

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