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1. アンティゴネ
《ネタバレ》 本作はストローブ=ユイレ(以下SH)の作品群の中でも「エンペドクレスの死」と並び彼らの最高傑作と呼ぶに相応しい。SH作品の特徴ともいうべきものが本作では密度・強度ともに最高潮に達している。まず本作のロケーションはシチリア島の古代円形劇場のみである。カメラがこの劇場から外に出ることはない。しかしこの要素が退屈を誘うことはありえない。アンティゴネの物語にこのロケ地は最適である。過去現在未来を全て内包しているような空と大地がここにはあるから。霞がかった雲のない青空、点在する褪せた色彩の草木、乾いた風と、それに吹かれ続けてきた岩肌。舞台は整い、あとは古代ギリシアの衣装を着けた役者たちが劇を演じるだけだ。その衣装が、深く折り重なった襞が、風にはためき、時が止まる。女の歌うような暗誦、男たちの恐ろしい合唱、国王の役者じみた台詞、そしてそれらを貫くアンティゴネの力強い横顔。徹底されたミニマルな演出は、最大限の豊穣さを引き出すことを証明した。[DVD(字幕)] 8点(2013-01-17 17:15:44)
2. アメリカ
《ネタバレ》 カフカとストローブ=ユイレ(以下SH)の親和性は非常に高い。SHのショットがカフカの小説世界を心地よく立体化してくれる。カフカ特有のもどかしさや、はたまた根拠のない楽天的感情さえもSHは映像にして見せてくれた。画面作りとしてはいつもの彼らの映画と同じだ。つまり練りに練ったであろう構図と人物の印象的な配置を長いフィックスショットで見せるというスタイルに変わりはない。しかしこの映画には彼らの他作品にはあまり感じられなかったリズムがあるように思う。それはカフカの紡ぐ文章のリズムに呼応するようにして生みだされたものではないだろうか。いずれにしろ126分という短くはない時間、私の視線は画面に吸い寄せられ続けた。ラスト、車窓を流れる景色を延々と捉えるシーンで私の心は主人公カールと同化した。絶望も希望も流れ去って、ただ生活だけが眼前に横たわっていた。[DVD(字幕)] 6点(2012-12-27 00:01:54)
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