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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  クロニクル 【8bit】さん同様、1年以上前にイギリス版ブルーレイにて鑑賞しました。劇場公開前の映画を、個人で簡単に海外から取り寄せることができる。良い時代になったものです。。。 本作の内容も、そんな現在のネットワーク社会の特徴をうまく利用したものになっています。「テクノロジーを扱った映画でもない本作のどこが?」とお思いになるかもしれませんが、それは主人公がカメラを回し続けることの理由付けの部分にあります。例えば『クローバーフィールド』では、いかに映像をリアルに作り上げても、登場人物がカメラを回し続ける点については合理的な説明をすることができず、そこが映画の穴となっていました。しかし、それから数年で個人がSNSを利用する局面は大きく広がり、FacebookやTwitterで私生活の一部を世界に公開することも、YouTubeにアップする目的で動画を撮ることも当たり前のものとなりました。本作の映像や編集は意図的にYouTubeに似せており、数分程度の短い動画の積み重ねにより全編が構成されています。pov映画は掃いて捨てる程ありますが、YouTubeに似せてきたものは恐らく本作が初めて。10年後の観客が本作の手法を受け入れられるかについては不安が残りますが、少なくとも現在の観客にはマッチしたやり方でした。。。 以上、長々と語ってしまいましたが、手法については本作の魅力の一部に過ぎません。青春ドラマとしてよくできていたことが、本作を傑作にした最大要因だったと思います。地味で陰気、彼女なし、友達なし、家では父親からの暴力を受け、学校ではアホにいじめられるというあんまりな青春を送るアンドリューの悲惨な物語が胸に突き刺さります。物語中盤で一瞬の平穏を見せるものの、その後、急速に悲劇へと雪崩込んでいく様は見ていて辛くなりました。他方、彼を一方的な被害者として描いていないという点もよく考えられています。彼が破滅したきっかけはいじめでも貧困でもなく、初体験での失敗をバカにされたことを必要以上に根に持ってしまったことでした。それは他者と触れ合いたくても触れ合えない者の悲劇。初期ティム・バートン作品を思わせる独特の暗さがあるのです。アンドリューを演じるデイン・デハーンはハマり役で、明るい表情の時にはかつてのレオナルド・ディカプリオの面影があるものの、暗い表情の時にはケイシー・アフレックのような腐った目を向けるという二面性が非常に印象的でした。[ブルーレイ(吹替)] 9点(2013-12-21 04:37:46)(良:1票) 《改行有》

2.  グッドフェローズ LAの裕福な芸術一家に育ったコッポラがマフィアの世界を荘厳に描く「ゴッドファーザー」を撮ったのに対し、NYの貧民街で育ったスコセッシが「チンピラなどは唾棄すべき人種だ」という考えで本作を撮ったのは興味深い事実。本物のマフィアの姿を見て育ったスコセッシが監督を担当したことが、本作の最大の強みとなっています。。。 虚弱体質で気の小さかったスコセッシ少年にとって、街を仕切るマフィアは死ぬほど怖い存在だったようです。大人になり映画監督になったスコセッシは、子供の頃に自らが感じた恐怖を観客に追体験させます。ジョー・ペシ演じるトミーこそがその恐怖の象徴。悪気ない一言にしつこく絡んでくる、些細な出来事がきっかけで人を酷く痛めつける、ヤクザ特有の理不尽な恐怖が見事なまでにスクリーン上で再現され、観客は身を凍らせるのでした。このアプローチはスピルバーグに似ています。極度の怖がりだったスピルバーグは、その強い感受性をスクリーンに再現することで観客に恐怖の追体験をさせましたが、本作もヤクザの怖さを追体験させているのです。本作はマフィア社会の描き方が素晴らしい等と絶賛されていますが、正直言ってそんなものは二の次。この映画が他のヤクザ映画よりも抜きん出ているのは、一般人がヤクザを見た時に感じる恐怖心を完璧に再現できていることです。”多くの人はテレビで戦争を見るのだから、カメラ越しの戦場映像こそが最もリアルに感じるはずだ”という理屈で撮られた「プライベート・ライアン」と同じ話で、”一般人がヤクザを見た時にどんな感情を抱くのか”という点に徹底的にこだわっている点が素晴らしいのです。。。 さらに、技術面でも注目すべき点が多数あります。絶え間なく流され続ける音楽、あることないこと話しまくりまったく途切れない会話、テンポの良い編集など、タランティーノやポール・トーマス・アンダーソンらに明らかに影響を与えているのです。本作にてスコセッシは驚くべき手腕を披露しており、これが彼のベストワークだと思います。 [DVD(吹替)] 9点(2012-06-07 01:22:19)(良:2票) 《改行有》

3.  クィーン 《ネタバレ》 革新派やフェミニストからの強力な支持もあって存命中は持ち上げられもしていましたが、死後15年経った現在から振り返ると、やはりダイアナ妃は魔女だったと思います。英国王室のあり方について国民レベルで賛否が割れることはあっても、少なくとも王室に嫁いだ人間には、その家族が大切にしてきた価値観を共有し、守っていくことが求められます。しかし、彼女はそうしなかった。自分に好意的なマスコミへ王室のスキャンダルを流したり、自ら王室批判を繰り返したり、挙句の果てには二人の息子がいるにも関わらず自由恋愛に明け暮れたりと、名誉と格式を重んじる英国王室が反論できないことにつけ込んで、彼女は好き放題をやっていたのです。。。 「我が家の籍を離れた人間なのだから、葬儀はご実家でやっていただきます」、常識的な感覚から言えば、ダイアナの死に対してエリザベス女王のとった対応は妥当なものでした。しかし、死亡事故にパパラッチが関与していたことへの負い目もあってかマスコミは一斉にダイアナを持ち上げはじめ、国葬をしろと騒ぎ出します。伝統を否定した人間に対して英国王室が最大級の敬意を表するなど前代未聞のことですが、異様な熱狂の中で正論はどんどん掻き消されていきます。まずは、自身の人気取りを優先したいチャールズ皇太子が落ち、次に、マスコミの異常なバッシングに怯えた王室ご意見番が落ちます。ブレアは善人ではあるものの、長く革新政党にいたため伝統というものへの理解は不足しています。「英国王室は400年の歴史を背負っており、現在の国民がどう思うかということとは別次元で生きている」という当たり前のことが理解されない。そんな状況の中でエリザベス女王は孤立無援へと追い込まれ、最終的にはマスコミとダイアナの力に負けてしまうのです。。。 以上、題材はかなりハードなのですが、あくまでこれをある家庭のドラマとして描いた脚本が秀逸。世間知らずの夫とバカ息子に挟まれ、対応を一手に引き受けねばならなくなったエリザベスの苦悩が非常に分かりやすく描かれています。ただし注意せねばならないのは、本作で描かれるドラマはあくまで脚本家の憶測に過ぎないということです。史実をベースに、その当事者達がどう考えていたのかを推測してドラマを組み立てるこの手法は、倫理的にはギリギリの技術だとも言えます。[DVD(吹替)] 8点(2013-06-26 01:11:39)《改行有》

4.  クローバーフィールド/HAKAISHA JJエイブラムスはコラージュの天才。本作では悪名高きエメリッヒゴジラを作り直しているのですが、そこにスピルバーグの演出手法を採り入れ、テレビドラマでやっていそうな青春ドラマをトッピング。自由の女神の生首が転がるビジュアルは「ニューヨーク1997」からの拝借なのですが、抜群のシチュエーションでこれを投入することで本作を象徴する場面へと昇華させています。。。 脚本は隙がないほどに作りこまれています。軍人さんの忠告を無視して火事場に入る迷惑男の物語なのですが(現実の被災地では一番厄介なタイプ)、主人公の心理的背景を簡潔ながらもしっかりと伝えているおかげで、身勝手な主人公への嫌悪感を覚えることはありません。カメラマン役については”空気を読めないバカ男”というキャラ設定がなされており、友人が目の前で兄弟を失おうが、さっきまで行動を共にしていた女性が血を吐いて死のうがカメラを回し続ける彼の不可解な行動についても一定のフォローがなされています。事態に対処する軍隊の行動は現実的であり、”NYが怪獣に蹂躙されたら?”という設定が論理的に煮詰められていると思います。ここまでやってくれれば文句なしです。。。 本作の問題点といえば、とにかく画面で酔うということ。私は手持ちカメラの映像に慣れているつもりなのですが、それでも凝視するのが苦しい場面がいくつかありました。人によっては鑑賞不可能に近い状態となっており、もし続編を作るのであれば、この点は改善すべきだと思います。 [映画館(字幕)] 8点(2012-06-20 01:14:51)《改行有》

5.  グッドナイト&グッドラック オスカー主要部門への大量ノミネート、ベルリン映画祭主演男優賞&脚本賞受賞も納得の仕上がりでした。クルーニーとグラント・ヘスロフ(トゥルーライズ等に出てた人)による脚本が非常に秀逸で、事実ベースの淡々とした物語でありながら、エンターテイメントとして十分楽しめる作品となっています。この手の作品にありがちな過剰な煽りや一方的な主張がなく、ジャーナリズムの良心というテーマ同様、本作の制作陣の姿勢も非常に良心的なものだと言えます、事実に基づいた話を取り上げる場合、必ずしも映画が望むタイミングで山場やオチが来てくれないという大きな制約があり、これに直面した多くの作品は事実とはズレのある展開・解釈を加えることで製作者が意図する物語にしようとしますが(インサイダー、ビューティフル・マインド、シンドラーのリスト等々)、本作は脚色を極力排除し、事実を追うことを最優先にしています。また、劇中声を荒げるのは記録映像におけるマッカーシー議員のみであり、論理的なセリフの淡々とした積み重ねのみでスリリングで物語が構築されています。このように映画を盛り上げるための技術を相当放棄しながらも面白い作品にしているのですから、驚異的な仕上がりと言えます。この手の作品は冗長になりがちですが、コンパクトにまとめたのが勝因でしょうか。話をあちこちに飛ばさず局内で起こることのみに集中し、登場人物や発生するイベントを無闇に水増しするようなことをしていません。仕事とプライベートの間での悩みといったお決まりもなし、ジャーナリストとして為すべきことを為すプロの姿のみが描かれます。こうした地に足のついた描写は、ニュースキャスターを父に持つクルーニーならではの強みでしょうか。[DVD(吹替)] 8点(2009-06-05 22:49:34)

6.  クライモリ(2003) 「悪魔のいけにえ」ミーツ「プレデター」の本作、なかなかの力作ではないでしょうか。同じような話(てか、まったく同じ話)の「テキサスチェーンソー」よりもこっちのが怖かったです。躊躇のない残酷描写、80分というタイトな上映時間、変な欲を出さずお客さんを絞り込んで作ってるのが好印象でした。この手のホラー映画にありがちな「徐々に殺されていく」という進行ではなく、余分な人物はテキパキと殺していくというスタイルが話にスピード感を与えており、またマウンテンマンの残虐性を引きたてていてよかったです。「ヒーローとヒロインが残ればいいのさ」という割り切ったその姿勢、また「窮鼠猫を噛む」な後半の展開、まさにプレデター方式ですね。しかし残念だったのはマウンテンマンの造詣。身体に対して頭が異様に小さく、いかにも「スタントマンにかぶせてます」みたいな造詣はあんまりでした。こういう鬼畜映画の場合でもやりすぎってのはあるようで、あそこまで人間離れさせる必要はなかったように思います。ジェイソン、ブギーマン、レザーフェイスなどの、あの素顔が分からないという被りものの怖さでやってくれれば、恐怖も倍増だったでしょう。顔が見えてしまうと、どうしても恐怖の底も見えてしまいますからね。しかしまぁ、「脱出」「悪魔のいけにえ」「ブレーキダウン」「Uターン」「激突」など、アメリカのド田舎ではとんでもない危険に遭わされるというのは常識なのでしょうか?[DVD(吹替)] 8点(2005-05-29 20:22:30)(良:1票)

7.  グレート・ウォリアーズ/欲望の剣 《ネタバレ》 奪われたお姫様を王子様が救い出す物語。そんな古典的な題材であっても、バーホーベンの手にかかるとグログロバイオレンスに早変わりします。「中世なんてメルヘンの世界じゃなかったんだぜ!」という御大の熱い主張がビンビン伝わってくる120分。毎度のことながら、この強烈な作家性には敬意を覚えます。 誘拐されたお姫様は古城に幽閉(無傷で)…なんてことが現実にあるわけなくて、本作のお姫様は容赦なく輪姦されます。そのお姫様もお姫様で、貞操を守ろうと必死で抵抗するのかと思いきや、賊の首領に積極的に接近し、身の安全を確保しようとします。これを悪女の振る舞いと見ることもできますが、お姫様のメンタリティなんてそんなものでしょう。彼女達には自由恋愛などなく、家が決めた相手であれば、どんなにキモかろうが、おっさんだろうが、そこに嫁ぐしかない運命にありました。本作のシチュエーションにおいては、アグネスもまた最も高く売れる相手に対してわが身を売った。それだけなのです。こうした、本作の突き詰められたリアリティには感心します。 描写はグロの極みをいきます。頭をカチ割られた尼さんがおっぱい(ついでに陰毛も)丸出しでもんどりうったり、王子様とお姫様が腐乱死体の下で永遠の愛を誓い合ったり、王女様が輪姦される場面では、腰の動きに合わせて少年が太鼓をトコトコ叩くといういやらしい演出が入ったりと、いちいち神経を逆撫でするバーホーベンの過剰演出は、史上最高レベルに達しています。 さらに、その上をいくほど過激なのが、極限状態で露わになる人間性の醜さで、当初は美男美女だった王子様とお姫様の人相がどんどん悪くなっていきます。偶然起こったことを手前勝手に解釈し、悪事を正当化するという信仰の問題点や、その信仰を自分の目的のために利用する人間が現れるなど、本作の指摘は多岐に及び、かつ、深いです。 そんな業にまみれた物語でありながらも、主要登場人物は一人も死なず、それぞれがあるべき場所へ戻っていくというラストには妙な爽快感がありましたが、これには、続く『ロボコップ』にも通じるバーホーベンの人生哲学を感じました。『ロボコップ』では数人の悪党が成敗されただけで、オムニ社という巨悪はほぼ無傷で生き残ったし、マーフィの人権問題も有耶無耶にされたまま終わりました。結局のところ、物事は解決しないまま終わるのだということがバーホーベンの人生観のようです。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2004-07-14 16:35:20)《改行有》

8.  クン・パオ!燃えよ鉄拳 最高ですよ、これ。て、評価低いですね。おもしろくなかったです?教科書の挿絵に落書きした吹き出しとまったく同レベルの笑いで、中学生が作ったとしか思えない出来でした。そんなことでも努力すれば形になるんですよ。という素敵な希望を持たせてくれる、部活にも勉強にも不完全燃焼な青少年必見の映画なのです。ネタの半分がホモネタというしつこさもGOODです。ただ、吹き替えで見ないとサッパリ笑えないので、もしこれから見ようという方はご用心を。8点(2004-06-11 00:14:21)

9.  黒い家(1999) 《ネタバレ》 原作未読。 まず、内野聖陽の話し方が保険会社に勤める友人とソックリで、その時点でハマってしまいました。調べてみると原作者の貴志祐介自身も生命保険会社への勤務経験があるようで、そのためか保険会社の人たちの言動がとても真に迫っていましたが、この手の作品は異常者の極端な行動と、その異常者に巻き込まれる普通の人々のリアクションがセットになってこそ説得力が生まれるものであり、リアクション側がしっかりとしている時点で本作は半分成功したようなものだと言えます。 もうひとつの要素である異常者側のキャラクターの作りこみや、その見せ方も良かったと思います。西村雅彦は登場時点から挙動がおかしいのですが、笑わせようとしているんだか怖がらせようとしているんだか観客が掴みかねる微妙な演技と演出で数分引っ張った後、子供の首吊り死体をドーンと見せるという場の空気の作り方や間の取り方は完璧だったと思います。本作はただ惨たらしい死体を見せるだけではなく、これをやった人間は異常者であるということまでを観客に示さねばならないのですが、その点で本作には突き抜けたものがありました。 また、大竹しのぶのキャラクターも立っていました。前半は西村雅彦が表に出ていてこの人物は何者なのかがよく分からないのですが、喜怒哀楽が一切こもっていない話し方で彼女も普通の人間ではないことは伝わってきて、観客にぼんやりとした不快感を与え続けます。この人物は関わってはならない類の人間なのですが、立場上関わらざるを得なくなった主人公がこの異常者からおかしな逆恨みを受けるのではないかというゆるやかな不安感が作品への関心を維持し続けているのです。 ただし、終盤はやややり過ぎだったと思います。この手のサイコパスは精神面での異常性にとどまっていれば良く、一連の不審死への関与が警察の知るところとなった時点で映画を終えれば良かったと思うのですが、小柄な大竹しのぶがモンスター化し、やや大柄で、水泳で体を動かす習慣もある内野聖陽を直接的な肉弾戦で圧倒するという展開は突飛過ぎたし、本作に求められる恐怖とはズレているように感じました。[インターネット(邦画)] 7点(2018-07-09 18:48:25)《改行有》

10.  グレイテスト・ショーマン 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。 頭から尻尾まで歌とダンスの迫力と楽しさで貫かれたザッツ・エンターテイメントな作品であり、音響に恵まれたスクリーンで見る価値が充分にありました。とにかく楽しくてずっと見ていたいほどの幸福感があって、良い意味で実際の上映時間よりも体感時間の長い作品でした。 さらに驚かされたのは観客に余計な頭を使わせないよう無駄が徹底的に削ぎ落とされ、情報量がコントロールされた脚本の質です。例えば、生涯続くこととなるバーナムとチャリティの精神的なつながりの強さを序盤における以下の3つの描写で説明しきっています。 ・下層の出身だからという理由でチャリティの父親から蔑まれるバーナムと、そのバーナムに寄り添おうとするチャリティ ・海岸での二人の密会 ・廃墟の邸宅をファンタジーの世界に変えるバーナムの想像力とパフォーマンス、そして、それに魅了されるチャリティ さらには、その後のバーナムのすべての行動はこの3つの描写に象徴される彼の個性【上流階級に対する反骨精神】【男性としての魅力】【自分の夢に他人を取り込む力】を源流としたものであり、人物描写を実に簡潔に終わらせているのです。 全体的な構成も恐らく意図的に紋切り型を通しているのですが、そのことによって状況説明がほぼなしでも映画として成立するという効果が上がっています。歌が始まると物語の進行がピタっと止まってしまい、詰め込める情報量に限界があるというミュージカルの欠点を考慮した構成なのだろうと思いますが、これほど直感的な理解が可能な映画も珍しいと思います。 ただしこれって諸刃の刃で、製作者が意図的に切り捨てた深みという要素が本作の欠点にもなっています。鑑賞後数日経過してからこのレビューを書いているのですが、鑑賞直後には「傑作中の傑作!ここ何年間で最高の作品!10点満点!」と思っていたものの、現時点では私の頭の中に驚くほど何も残っていません。 後々振り返ってみると、ネタふりだけで明確な回答が出されていない要素もいくつかありました。ひたすらに上を目指して止まらなくなるバーナムと、今の成功を充分としてここに留まることを願う周囲の人々との間で起こる軋轢や、フリークスの味方として成功を収めたバーナムが無自覚のうちに差別者側に回る件については、当事者達がどう納得して元サヤに戻ったのかがはっきりしていません。 確かに放火や破産という大イベントはありましたが、でもそれってバーナム側の事情ですよね。重要なのは一時期バーナムに不快な思いをさせられた人達がいかにしてバーナムを再度受け入れるかなのに、彼らが心情面でどう折り合ったのかが見事に誤魔化されています。もしこの辺りをうまく扱えていれば美談の中の良いスパイスになった可能性もあったのですが、全体のテンポを重視してこれらが切り捨てられたために、どこか絵空事を見せられているような後味になっています。 この手の人生讃歌的な映画って、見たことが人生のプラスに働くほどの強烈なパワーを持ってこそ傑作だと言えると思うのですが、本作はそのレベルには達しておらず、よくできた娯楽作に留まっています。どこかに強烈なサムシングが宿っていれば問答無用の傑作になったかもしれないのですが、本作は鑑賞後数時間でほとんどの要素が流れ去ってしまうのです。批評面での苦戦も、この辺りに原因があるのではないかと思います。[映画館(字幕)] 7点(2018-02-28 00:10:56)(良:1票) 《改行有》

11.  クライム・ヒート 《ネタバレ》 【注意!壮絶にネタバレしています】 『ミスティック・リバー』のデニス・ルヘインが自身の著作を脚色し、オスカーノミネート作『闇を生きる男』のミヒャエル・R・ロスカムが監督をしたということで、案の定暗くじめじめとした映画でした。数発の銃弾がぶち込まれるクライマックスのサプライズとカタルシスのためだけに残りの107分があると言っても過言ではない特殊な構成をとっているのですが、かったるい本編部分は旬な役者、実力のある役者のパフォーマンスで何とかもたせています。 トム・ハーディは真面目に仕事をこなすバーテンにして、犬を愛する優しい男。彼女に見当違いなキレ方をされても、刑事からしつこい尋問を受けても、チンピラに変な絡まれ方をされても怒ったり取り乱したりすることなく、淡々と受け答えをする物腰が印象的なのですが、あまりの落ち着きぶりにかえって裏の顔の存在を感じさせるという演出が実にいい塩梅でした。切り落とされた強盗の腕を丁寧にラップで包む辺りから「こいつはおかしいんじゃないのか」と思わせておいて、殺人マシーンであったことが判明するクライマックスでは「やっぱりな」となりますが、この振れ幅の激しい役をトム・ハーディは見事にこなしています。本作の8割は彼の魅力で出来ています。 これが遺作となったジェームズ・ガンドルフィーニは、新興のチェチェンマフィアの台頭によって権力基盤を失った元ヤクザ者という役柄であり、現状を受け入れているトムハとは対照的に、いつか目にもの見せてやるのだという野心を捨てきれていません。本作のトラブルの元凶は彼なのですが、栄光を失った現状に安住したくないという心理が観客にも伝わる形となっているために、彼に対して悪印象は抱きませんでした。この辺りは、ハマり役だったガンドルフィーニの魅力によるところが大きかったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-26 00:51:02)《改行有》

12.  空気人形 ヌードが頻繁に登場する内容ではあるがエロが立ちすぎると失敗してしまうという困難な企画でしたが、本作はギリギリのバランス感覚でうまく成立しています。監督の卓越した演出はもちろんのこと、空気人形役にペ・ドゥナを起用できたことが大きな幸運でした。彼女は、美人ではあるが幸の薄さが漂い、スレンダーで綺麗な体なのにエロさは感じさせません。童顔の彼女が服を脱ぐ時に観客が感じるのはエロスではなく痛々しさであり、このことが空気人形の物悲しさに繋がっています。知恵の浅い監督であれば芸達者なAV女優でも使ったところでしょうが、そんなことをすればこの企画は終わっていました。性的魅力のない女優を使わねばならないということを見抜いていた是枝監督の慧眼に拍手なのです。。。 そんな感じで基礎的な部分はしっかりしており、本作は良作の部類に入ると思います。辛い日々を我慢しながら一生懸命に生きている人々のカットなど胸が苦しくなる場面も多くあり、観てよかったと思える映画でした。ただし、不十分な点もあります。この世界の人々にとって空気人形とはどんな存在なのかという点が曖昧であり、そのことが時に感情移入を妨げる原因となっていました。レンタルビデオ屋の店長は主人公を人間だと思っているのに対して、板尾さん演じる持ち主にとっては動かないラブドールのままだったりと、世界観が一定していないのです。ファンタジー部分については「これは寓話だから」と適当に誤魔化されている点が多かったのですが、この点を丁寧に作り込んでおけば奇跡の傑作になった可能性もあるだけに、このツメの甘さが悔やまれます。[DVD(邦画)] 7点(2012-10-07 01:52:17)《改行有》

13.  クレイジーズ(2010) ロメロをプロデューサーとして迎えているだけのことはあって、オリジナルをかなり尊重したリメイクに仕上がっています。細かいエピソードにはオリジナルから引用したものが多くて、「ゾンビ」とは似ても似つかぬ映画になってしまった「ドーン・オブ・ザ・デッド」などと比較すると、その製作姿勢には大変好感が持てました。その一方で、ただオリジナルをなぞるだけではなく21世紀版としての適度な改編がなされている点でも本作は評価できます。細かいネタはオリジナルから拾いつつもその味付けを変えており、オリジナルとはまた違う楽しみが出来る作品に仕上げているのです。オリジナルはかなり体制批判的な作品でしたが、その作風は公民権運動やベトナム戦争を経た70年代という時代背景を反映したものであり、そんな作風をそのまま現代に復活させても時代錯誤なリメイクが仕上がるだけ。そこで本作は体制批判的な面をバッサリ落とし、ソリッドなサバイバルアクションとして「クレイジーズ」を再構築しています。最大の変更点は軍隊の指令系統をまったく描かなかったことで、これにより社会派作品としての魅力は失ってしまったものの、映画の視点を逃げる主人公のみに絞ったことでアクション映画としての面白さは倍増しています。主人公は、自身がウィルスに感染するという脅威だけでなく、感染者による襲撃と軍による追跡という複数の脅威と戦うこととなるのですが、描写を限定したおかげで主人公の苦境がオリジナル以上に鮮明となっています。アクションの面白さやショックシーンの作り込みはオリジナルを凌駕しており、電ノコを持った感染者、鍬で人を串刺しにする校長先生、洗車場での襲撃等、気合いの入った描写が目白押しです。アクション映画として作り直したことで映画全体のテンポも変わっており、序盤からサクサクと話が進んでいく点でもオリジナルより見やすい娯楽作となっています。オリジナルを尊重しながらも時代に合わせて作風を変える、これは理想的なリメイクの形であると思います。[DVD(吹替)] 7点(2011-10-21 01:13:36)(良:2票)

14.  蜘蛛女(1993) 「映像化困難な傑作脚本」として7年以上もの間幻の企画とされてきた作品らしいのですが、本作はそんな困難な素材を上手くまとめています。究極の悪女モナ(我が国にも、男を骨抜きにする山本モナなる人物がおりますが)をいかに描写するかにこの映画の成否はかかっていたわけですが、その点で言うと本作はほぼパーフェクト。レナ・オリンのハマり具合は尋常ではないし、彼女を人ではなく妖怪として描くという振り切った演出も的を射ています。本作はジャックによる回想という形式をとっているため、モナが人間離れした活躍を見せても「彼女に人生を引っ掻き回された主人公にはこう見えていました」という方便を使うことが可能。脚本も演出もこの点を利用してやりたい放題やっており、その結果他に類を見ない悪女を作り上げることに成功しています。本作の監督であるピーター・メダックなる人物のことはよく知らないのですが、この人の演出は概ね良好であったと思います。悪女ものと言えば多くの作品が「氷の微笑」の影響に引きずられる中で、本作は独自の印象を持つ作品に仕上がっているのですから。[DVD(吹替)] 7点(2011-05-28 19:57:03)

15.  グリーン・ゾーン 《ネタバレ》 さすがは21世紀のジョン・フランケンハイマーことポール・グリーングラスだけあって、余裕で水準を超えるアクション大作に仕上がっています。細かいカットを積み重ねて構成される銃撃戦は臨場感に溢れているし、現場を走る兵士の視点と、それを上空からナビゲートするヘリの視点を交互につなぎ、観客に対して戦況をスムーズに伝えるという神業的な編集には脱帽するしかありません。「ボーン・スプレマシー」の大ヒット以降は手ブレ映像や細かいカット割を採り入れるアクション映画が急増しましたが、やはり本家が一番です。また、硬派な題材をエンターテイメントとして味付けするという稀有な才能も全開。オリバー・ストーン作品のような重厚なテーマがアクション大作の皮を被っていて、それらが水と油にならずにうまく共存しているのです。こんな器用な芸当ができる監督は他に見当たりません。。。と、監督は相変わらず良い仕事をしているのですが、奇跡的な傑作だったジェイソン・ボーンシリーズと比較すると脚本が弱く、そのことが、ジェイソン・ボーンの何倍も野心的な本作を傑作にしていない原因となっています。まず、主人公が陰謀に挑むこととなる動機付けが弱く、一方で「イラクを良くしたい」と願って積極的な行動をとるイラク人フレディの扱いが軽く、キャラクターの動かし方がうまくありません。また、秘密主義のCIAが現場指揮官に過ぎない主人公に接触する理由も弱いし、陰謀の黒幕となるパウンドストーンはどう見ても小物で、映画のスケールを背負って立つ悪役になっていません。アメリカ政府のウソを無検証でタレ流したマスコミへの批判もなされるのですが、ここで登場するジャーナリストも本筋とうまく絡んでおらず、いてもいなくても大差ない存在となっています。そして大きなミスだったのが、「大量破壊兵器はウソだった」という話を謎解きの中心に持って来てしまったこと。2003年当時ならともかく、現在では全人類が知っている話です。今さら「なんと、イラクは大量破壊兵器を持っていなかったんですよ!」と言われても、見ているこちらとしては「そりゃそうだろ」としか思えません。陰謀の背景などはさっさと暴露してしまって、イラク軍元将軍の口封じをしようとする米軍上層部と、それを阻止しようとする主人公との攻防を核とした方が盛り上がったのではないでしょうか。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-10-28 20:06:38)(良:1票)

16.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 ガンコじいさんがお隣さんと親しくなるという物語をこれだけ面白く撮れる監督が世界中に何人いるでしょうか?個人的には「チェンジリング」や「ミリオンダラー・ベイビー」の方が好みなのですが、それらは脚本の秀逸さや題材の特異さに支えられていた面もありました。一方本作は極めてシンプルであり、脚本レベルで特に目立った要素はなく、だからこそ演出力がモロに問われる作品だったのですが、これを面白く撮ってしまうというのは驚異的な手腕ではないかと思います。また、監督イーストウッドは、俳優イーストウッドを過大評価しておらず、自分自身の使い方を極めて正確に理解できているように思います。ジョン・トラボルタやブルース・ウィリス同様、この人は何をやってもイーストウッドであり、基本的にひとつの人格しか演じることができません。彼はそれをよく分かっているようで、自分に合わない役柄では監督に専念し、自分で演じるべき作品にのみ出演するという判断が的確になされています。西部劇で培った俳優イーストウッドのイメージを活用した「許されざる者」という傑作がありましたが、本作ではセルフイメージをさらに有効活用。あの流れで、しかも演じているのはイーストウッド。どう考えても仇討に行くものと思いますが、そうではなかったというオチにはやられました。彼ほどの人物ともなれば正直な意見を言ってくれる取り巻きはそう多くなく、自分で自分を評価することは難しいポジションにいるはず。さらに、成功した俳優は時に自分に出来ること・出来ないことを見失って、よく分からない作品に挑戦することもありますが、イーストウッドについてはそのような判断ミスを犯しません。これは驚異的な人格ではないかと思います。まさに映画の神様。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-12-21 17:08:47)(良:3票)

17.  クリフハンガー 天敵ソ連を失って以降は迷走の続いたスタさんにとっては起死回生の作品であり、ジュラシック・パークをも超える大予算で挑んだ超大作だけあって、アクション好きにとっては大満足の作品です。しかも単純なドンパチアクションに終わらせておらず、崖を登ったり斜面を滑り落ちたりという雪山ならではアクションを中心にして見せ場を作っているのですから、他のアクション映画とはレベルの違う、かなり丁寧に作られた映画だと言えます。今回は山岳救助隊員であって戦闘のプロではないという設定を最後まで裏切ることはなく、スタさんが銃を一発たりとも撃たない、プロの傭兵と素手で格闘すると負けてしまうという辺りも新鮮です。また、CGが本格的に使えるようになる前の時代の作品だけあって、生身の人間が危険な撮影に挑んでいるという緊張感もバシバシ伝わってきます(スタさんの登場シーンはセット撮影が多いような気がしましたが…)。この辺りは、監督にレニー・ハーリンを持って来たことが功を奏しています。大予算にもまったくひるまぬ図太い根性があり、またスタッフや役者にいかなる無茶も要求する暴君ぶりも有名な監督だけあって、大変な困難を伴う撮影を妥協なくやりきっています。。。ただし、ハーリンの起用が裏目に出ている部分もあって、ドラマパートが台無しになっているのはその最たるもの。本作はアクションだけでなく、ドラマパートも実は充実しています。スタさん演じるゲイブは、敵の手から逃れた時点でさっさと下山してしまうという選択肢があったにも関わらず、親友のハルを救うためにテロリストと戦います。そのハルとは恋人の死を巡る深いわだかまりがありながら、それでもなお親友として彼の命を救おうとする熱い話でもあるのですが、ここが完全にスルー。対するテロリストは一枚岩ではなく、内部では殺し合いにつながりかねないほどの対立が発生しています。また強奪作戦の失敗からテロリスト達が猛烈に焦っているという珍しい描写も入っており、よく突っ込んだ話となっているのですが、これまた設定を活かしきれていません。演技のできる役者で脇を固めていることからも、本作をただのアクション映画には終わらせないという製作側の意思が読み取れるのですが、これらをうまく機能させられていないのが残念なところです。[DVD(字幕)] 7点(2009-10-12 22:20:32)(良:2票)

18.  クラークス 《ネタバレ》 Clerks(店員)のある不運な一日を描いた作品であり、店内のトイレで客が死んだり、友人の葬儀を知ったりと結構なことが起こる割には、日常系のほのぼのとした空気が流れ続ける不思議な温度感の作品です。また、彼女がとんでもないヤ○マンであることが判明して心が揺らぐ展開などは後の『チェイシング・エイミー』にも通じているのですが、どの要素もさほど深くは掘り下げられておらず、雰囲気ものの作品だと言えます。相性が合えばすごく愛せる作品になるのでしょうが、私はさほど面白みを感じませんでした。 ただし、一日中ボヤく主人公に対して友人が放つラストの言葉。これは最高でした。 ・誰もお前を引っ張って連れて来たのではない。お前はここにいることを自分で選んだんだろ ・自分が居なければこの店が潰れるような言い方をするな。こんな猿にでもできるような仕事、お前がいなくたっていくらでも代わりはいる。 ・お前は自分に価値があると言いたくて必死だが、出来の悪い店員に過ぎないんだよ。 ・バカな要求をしてくる客を見下しているが、俺らも同レベルだからここにいるんだ。 置かれた環境に文句を言い、誰かを見下すことで自分を優位に見せようとすることって誰にでもあると思うんですけど、そうした姿勢をズバっと切り裂き、その根底にある曲がった根性までを見透かされたような鋭利な言葉でした。しかもこれを主人公以上のダメ人間に見えていた友人に言わせるという点もうまく、このラストの言葉を聞けただけでも、鑑賞の価値はありました。[インターネット(吹替)] 6点(2018-02-23 19:53:10)《改行有》

19.  グレートウォール(2016) IMAX 3Dにて鑑賞。 アメリカではトンデモ映画扱いされている本作ですが、確かにこれはかなりの珍品でした。北京オリンピックの芸術監督を務めたチャン・イーモウ監督作品なのに中身は大怪獣映画だし、一応は中国の時代劇なのに主演はマット・デイモンだし、1億ドルバジェットの大作とは思えないほどの闇鍋感が漂っているのです。これまでもレジェンダリーフィルムズはチャイルディッシュな感覚溢れる大作を量産してきましたが、企画のバカバカしさを自覚して作られていた従来作品とは明らかに異なる質感が本作にはあり、基本的に物凄くおかしな話なのに監督も出演者も大真面目にやっちゃってる辺りがトホホ感を高めています。 とはいえ、さすがはレジェンダリーだけあって本編開始後まもなく繰り広げられる第一回会戦の出来は素晴らしい完成度でした。機能により色分けされた禁軍が見事な統制を見せる演出はチャン・イーモウの得意分野だけあって安定の仕上がりだし、対する怪獣軍団の手強さも見事に表現されています。敵味方双方の実力がきちんと描写されたアクションは見ていて本当に気持ちがいいものだし、米中合作らしい異常なボリューム感もあって、とにかく盛り上がるのです。これを見るだけでも入場料の元は十分にとれます。 ただし、序盤のこの戦闘こそが作品中最大の見せ場であり、その後はこれを縮小した見せ場が繰り広げられるのみという構成の歪さ、また、何か感動的なことを伝えようとしているのにすべて上滑りしている脚本のマズさなど、映画としての欠陥が至る所に見えてしまっている点は大きなマイナスでした。その他、主人公の成長物語や立場が違う者同士のロマンス、東西の文化比較などいろいろやろうとはしているものの、すべて中途半端に終わっていることも作品の印象を悪くしています。エドワード・ズウィックやトニー・ギルロイといった一流脚本家が雇われたのに、なぜこれほど脚本の出来が悪いのだろうかと首を傾げてしまったほどです。 また、クィーンさえ倒せば何百万の怪獣軍団を一気に潰せるというハリウッドでよくある攻略法もトホホ感を高めています。高度な知能を持ち通信機能までを有しているんだからクィーンは前線に出ていかず、どっか安全な場所で指示を出していろよと思ってしまいました。[3D(字幕)] 6点(2017-04-16 03:08:58)《改行有》

20.  クロユリ団地 さすがはJホラーを代表する監督・中田秀夫による作品だけあって、伏線の張り方や落とし方は非常にしっかりとしています。Jホラー特有の陰惨な空気も見事に醸成されており、丁寧に作りこまれた良作だと言えます。主演の前田敦子も、小慣れてはいないものの演技を全力でやりきっており、役作りのために自分を相当追い込んだことが伺えます。最初は、アイドル映画だと思って舐めた目で見ていたのですが、実際にはかなり本格的なホラー映画だったことは嬉しい誤算でした。。。 以上、褒めるべき点の多い作品ではあるのですが、ひとつひとつの場面が妙に長いために、全体としてチンタラした映画だという印象を受けたこともまた事実。静かな場面の積み重ねからいきなりショックシーンで観客を驚かせることはホラー映画の常套手段なのですが、観客の眠気を誘うほど静かな本編では、ショックシーンの勢いも削がれてしまいます。[ブルーレイ(邦画)] 6点(2013-11-06 01:11:45)《改行有》

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