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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
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1.  シービスケット 良い人が出てくる良い話なのですが、この手の映画の公式に当てはめて作られたかのような個性の薄い内容だったので、正直言って物足りなさを覚えました。ジェリー・ブラッカイマーのアクション映画を見ているかのような印象なんですよね。「主人公には暗い過去があります」「はい、ここで挫折します」「はい、ここで感動します」と、パターン化されたかのような紆余曲折。ゲイリー・ロスは『カラー・オブ・ハート』で注目された監督さんですが、素晴らしいアイデアと語り口を賞賛された『カラー・オブ・ハート』からは一転して、本作では保守的な作りに徹しています。。。 もうひとつ私が気になったのは、大衆とシービスケットとの間の距離感をうまく表現できていなかったという点です。シービスケットが活躍したのは大恐慌の時代。当初は駄馬とみなされていたシービスケットの思いがけない活躍に、多くのアメリカ国民が自分自身の物語を重ね合わせたことが、この馬を歴史に残る名馬にした大きな要因だったわけです。ならば、この馬がどうやって注目を集め、人気を獲得していったのかという経緯を丁寧に追いかけることがこの映画のキモだったと思うのですが、この点についてはかなりぞんざいに扱われています。映画の上では、たったひとつのレースの勝利によって大衆人気を獲得したかのような描写となっており、あまりに唐突な展開に感情が追いつかなくなってしまいました。冒頭、たっぷり30分かけて描かれる人間側のドラマなど切ってしまい、最初からシービスケットの話にした方が、物語としては一本筋が通ったのではないかと思います。[DVD(吹替)] 4点(2013-06-23 01:40:46)《改行有》

2.  10億分の1の男 《ネタバレ》 長い歴史で映画のネタは出し尽くされた感はありますが、「強運を戦わせる男の物語」という本作の着想はかつてないものであり、そのアイデアは素晴らしいと感じました。後に『28週後…』の監督に抜擢されるフアン・カルロス・フレスナディージョによる演出も重厚感があり、フェデリコとサミュエルの愛憎関係が描かれる冒頭では、傑作の予感すらしました。。。 ただし、本作はその序盤が全てでした。本編に入ると、映画は完全にダメダメになってしまいます。肝心の運試しにまったく面白みがないし、おまけに雰囲気重視で説明を省略しすぎた結果、設定やドラマが観客にほとんど伝わらないという残念な状態となっているのです。具体的には、「相手の運を吸う」という設定が直感的にわかりづらかったし、それに伴い、主人公の彼女の立ち位置も不明確なものとなっています。女刑事も何のために存在しているのかよく分からず、サミュエルとフェデリコ、フェデリコとトマスのドラマに焦点を当て、よりシンプルな物語にすべきだったと思います。[DVD(吹替)] 3点(2013-06-10 00:56:03)《改行有》

3.  実験室KR-13 《ネタバレ》 ベースとなる設定はハリウッドで多く製作されているソリッド・シチュエーション・スリラーと同様のものなのですが、これを被害者の側ではなく、仕掛人の側から描いている点が本作の特色。視点を移動させただけで映画の印象には大きな変化がもたらされており、なかなか面白い切り口の映画だと思いました。科学者達が被験者を淡々と追い込んでいく様には、なかなか空恐ろしいものがあったのです。ただし、この切り口には大きな副作用もありました。厳しい状況からどうやって突破口を見つけ出すのかというサスペンスや、黒幕は一体誰なのかというミステリーが失われてしまうために、類似作とはまったく違う見せ場を準備しなければならなかったのです。。。 本作の監督を務めたジョナサン・リーベスマンは、『テキサス・チェーンソー/ビギニング』を、リメイク版第一作はおろか、トビー・フーパーのオリジナルをも凌駕する鬼畜ホラーの傑作に仕立て上げた人物。思えば『ビギニング』もまた、被害者が誰ひとり助からないことが明らかになっているという設定上の大きな制約条件を抱えていた作品であり、その点を考えると、彼は本作の監督についても最適任者であったと言えます。果たして彼は本作をどう料理するのかに注目していたのですが、残念ながら本作では『ビギニング』ほどの仕事を見ることはできませんでした。監督がスポットライトを当てたのはクロエ・セヴィニー演じる新人科学者であり、非人道的な実験を傍観する彼女の心境がどう変化するのかを映画のハイライトとしたのですが、この点がどうにも弱かったために、作品全体が締まらない結果に終わっています。彼女が抱えるジレンマを、もう少しわかりやすい形で観客に提示すべきだったと思います。。。 さらに本作を残念な結果に終わらせているのは、公開時期を完全に逃してしまったという点です。情報機関による米国民の盗聴や、グアンタナモやアブグレイブでの異教徒に対する拷問など、対テロ戦争に勝利するためには手段を選ばなかったブッシュ政権に対する批判が本作の根幹にはあると思うのですが、本作が公開された2009年にはすでに民主党のオバマ政権に代替わりしており、今さら感が出まくっています。[DVD(吹替)] 5点(2013-04-24 00:51:26)《改行有》

4.  主人公は僕だった 《ネタバレ》 なかなか変わった切り口の映画で最後まで興味深く観ることはできたのですが、映画としての出来は微妙だったと思います。最大の問題点は、主人公が登場する小説の内容が観客に対して説明されていなかったということ。「几帳面な公務員が主人公の悲劇」という情報だけでは不十分で、このために作者と創作物が対話をするという本企画の趣旨が死んでしまっています。さらには、主人公の死によって美しい物語が完成するという構図を観客の頭の中に作り損ねているために、自らの死を受け入れたハロルドや、逆に小説の完成度を犠牲にしてでもハロルドを救ったカレンの決断の意義が薄れてしまっています。その他にも、前半のキーパーソンだったアナが、映画の核心に触れる後半では空気同然の存在感になるなど、構成上の不備がいくつも目に付きます。同様の趣旨を持つ企画だったチャーリー・カウフマン脚本の『アダプテーション』と比較するとアイデアもユーモアも不足しており、本作の脚本はもっと煮詰めるべきだったと思います。。。 マーク・フォースターによる演出も、真面目一辺倒で面白みに欠けました。この題材であればもっと個性を出すべきだったのに、フォースターは基本的に脚本を追いかけるのみ。ストーリーテリングにおいてもビジュアルにおいてもこれといった特徴がなく、凡庸な出来に終わっています。[DVD(吹替)] 4点(2013-04-12 01:18:29)《改行有》

5.  処刑人II 前作終了直後から続編の企画は存在していたものの、権利関係のトラブルが原因で製作が遅れに遅れ、8年寝かせてようやく実現した『処刑人』の続編。前作については、素材は良いものの味付けがイマイチと感じていたので、続編の本作では前作の問題点をどう解決するのかに注目していたのですが、残念ながら出来は前作よりも落ちています。前作にはまだ見所があったものの、本作はまったく面白くありませんでした。。。 兄弟の母国アイルランドからはじまる冒頭の時点で、早くもカックンでした。前作のクライマックスで「この街の悪は俺たちが処刑する!」と高らかに宣言したにも関わらず、実は逮捕を逃れるためにそそくさと街を放れ、海外で隠居していたとは。その後、いろいろあって兄弟は古巣ボストンへと舞い戻る決意を固めるのですが、そこは彼らに復讐しようと罠を張るマフィアと、逮捕への執念を燃やす警察が待ち受ける危険な都市!、、、かと思いきや、兄弟は行く先々で協力者に恵まれて、ほとんど苦労しません。警察は彼らを追いかける気がないし、マフィアも兄弟に先手をとられっぱなしという体たらく。これでは盛り上がりようがありません。おまけに、アクションにも面白みがありません。兄弟はロクな作戦もなしに「えいや!」と敵の拠点に乗り込み、ジャンジャン撃ちまくるうちに勝利。こんなにもバカバカしい見せ場が何度も何度も繰り返されるので、イヤになってしまいます。。。 さらには、キャラクターの動かし方もいただけません。今回初登場となるメキシコ人は、その登場場面で並外れた敏捷さと腕っ節の強さを披露し、後の見せ場でこの特技を活かした大立ち回りをやってくれるのだろうと期待させるのですが、そんな期待とは裏腹に、本編では彼の見せ場がまったくないという不可解な構成となっています。敵のヒットマンも、登場場面こそかっこいいものの本編では取るに足らない小物であり、アクションに華を添える悪役にはなりえていません。兄弟の歴史と父親の歴史もうまく交錯していないし、すべての陰謀の黒幕となる人物の投入タイミングもマズイため、構成上のサプライズがうまく機能していません。。。 ラストではさらなる続編を匂わせますが、本作がこのクォリティでは第3弾には期待できません。[ブルーレイ(吹替)] 3点(2013-03-10 02:14:34)《改行有》

6.  JUNO/ジュノ 本作の脚本でオスカーを受賞したディアブロ・コーディは、大学卒業後に普通に就職したものの興味本位でストリッパーに転職し、その後、ブログにおける圧倒的な文章力が評価されて脚本家に転身したという変わり種。そんな彼女によって生み出された本作が普通の青春映画であるわけがなく、16歳の女の子が妊娠しても誰からも怒られないし、クラスメイトからイジメや嫌がらせを受けるわけでもなく、赤ちゃんへの責任で思い悩むこともありません。妊娠して早々に、「今の自分に養育能力はないから、子供を欲しがっているお金持ちにこの子を引き取ってもらおう」という結論を出してしまうのですから。この手の映画で考えられるネタはほとんど外してきているのですが、それでいて奇をてらった嫌らしさはなく、コーディの個性がそのまま反映されたかのような奔放さに溢れています。。。 押しつけがましいドラマを嫌うジェイソン・ライトマンによる演出も、本作にはピタリとはまっています。変わった切り口ではあるものの、世の真理を突くかのような鋭さがあるために映画への共感は絶えないし、過剰ではない笑いにも独特のセンスが光ります。この映画が全米でブームとなり、フォックス・サーチライト史上最高の収益を上げた理由も理解できます。この映画には独特のセンスの良さやかわいらしさ、かっこよさがあって、この映画の良さを理解できること自体がファッションとなりうるのです。これについては、ジェイソン・ライトマンの手腕によるものと考えるべきでしょう。。。 エレン・ペイジは完璧にジュノになりきっています。皮肉屋で変わり者なんだけど、たまに女子の一面を覗かせるという絶妙な演技は、彼女以外ではちょっと無理だったのではないかと思います。なお、ジェイソン・ライトマンの映画はセリフの量が多く、かつ微妙なニュアンスの会話が交わされるので吹き替えでの鑑賞が向くのですが、特に本作におけるジュノの声のハマり具合は絶妙なので、DVDでご覧になる方はぜひとも吹き替えをお試しください。[地上波(吹替)] 7点(2012-10-13 02:49:09)《改行有》

7.  ジャンパー 陽気な『インビジブル』とでも言いましょうか、まったく悩まない主人公が斬新な映画でした。能力が発現すれば、その日の夜にはさっそく家出。ただひたすら私利私欲のために能力を浪費し、社会正義などはまったく気にかけないという潔さは見ていて気持ちがよくなるほどでした。確かに、10代の若者が特殊能力を身につければ、その能力を専ら金と女に向けることは自然なことです。正義のあり方についてあれこれ悩むピーター・パーカーのような殊勝な青年はむしろ例外であり、本作はアンチアメコミものとしてなかなか興味深い姿勢で製作されています。。。 問題だったのは、ジャンパーとパラディンの戦いに緊張感がまったくなかったこと。特殊能力を持つ主人公が圧倒的に有利なことは誰の目にも明らかであり、その戦力差は憎まれ役であるはずのパラディンが気の毒になるほどでした。また、主人公が大馬鹿野郎のバカボン君だったことも、映画のテンションを大きく下げる原因となっています。パラディンの襲撃から命からがら逃げ出した直後であるにも関わらず、高校時代のマドンナをナンパしてローマ旅行に向かい、案の定、パラディンに追跡されてしまうというバカさ加減には呆れました。意図的にライトさを狙った作品であることは理解できるのですが、主人公がここまで愚かでは活劇として成立しません。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2012-10-09 23:02:23)《改行有》

8.  しんぼる 「大日本人」が予想外に良かったので本作も鑑賞してみたのですが、残念ながらこちらは酷い出来でした。松本氏は斬新な発想だと思って本作の脚本を書いたのでしょうが、実際のところ映画の世界ではそれほど珍しくはない物語。まず、このボタンの掛け違えが痛かった。観客がラストで驚くことを前提にして映画全体を構成しているため、本編中における思わせぶりな間の取り方などが完全に浮いているのです。。。 さらに痛かったのが、コミカルなパートでまったく笑えなかったこと。本作は日本国外での上映も視野に入れており、松本氏の言う「ベタな笑い」が多く採り入れられています。白い部屋でのドタバタがそれなのですが、これがまったく面白くないという残念な結果に終わっています。コントを得意としてきた松本氏がコメディパートで失敗したのでは話になりません。[DVD(邦画)] 2点(2012-06-20 00:37:40)《改行有》

9.  G.I.ジョー(2009) 原作が男の子向けの玩具であり、アメコミよりもさらに下の年齢層を対象とした作品であるため、本作の設定の粗さには文句を付けません。敵組織の目的がサッパリわからなかったり、国際社会におけるG.I.ジョーという組織の位置付けが謎だったりしますが(各国領空に自由に侵入する権限を持っている一方で、地元警察に拘留されたりする)、男の子向けのアクション大作でそういう細かいことを言うのは野暮ってやつです。しかし、本作の構成のマズさは指摘されるべきでしょう。とにかくペース配分がメチャクチャで、映画は2時間もたずに失速します。G.I.ジョー登場にはじまり(スネークアイズかっこよすぎ!)、メタルスーツによる見たこともないチェイスが繰り広げられる前半は大いに楽しめるのですが、物語にまったく起伏がない状態で緊張感皆無の撃ち合いをダラダラ続けているだけでは、後半に入ると一気に飽きが来ます。前半ほどインパクトのある見せ場を配置できなかったことも致命的で、本作はペース配分が完全に狂っています。。。 「ハムナプトラ」以降のスティーブン・ソマーズ作品はすべてこの傾向にあって、冒頭からフルスロットルで見せ場を畳みかけるものの、途中で息切れしてクライマックスでは平凡なドンパチをやってしまい、尻すぼみになって終わるということをここ10年間繰り返しています。この監督が「インディ・ジョーンズ」に憧れているということはわかります(「ザ・グリード」は当初、ハリソン・フォードが主演する予定だった)。冒頭で観客の心を掴み、冒険の世界に引きずり込むというアクション映画が心底好きなのでしょう。ただし、冒頭でハデな掴みをやれば、観客はそれ以上の見せ場を本編に期待します。スピルバーグにはその期待に応える力量があったのですが、残念なことにこの監督にはその力量がありません。だからこの人の映画はつまらない。予算制約によって冒頭に掴みのアクションを入れられなかった「ザ・グリード」がフィルモグラフィ中もっともバランスの良い娯楽作に仕上がっていることが何とも皮肉です。 [DVD(吹替)] 4点(2011-11-02 23:44:35)《改行有》

10.  実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 本作は3つのパートから構成されているのですが(連合赤軍結成までを描く序盤・のちに山岳ベース事件として知られる総括リンチを描く中盤、あさま山荘事件へと雪崩れ込む終盤)、タイトルが示す通り、あさま山荘事件そのものではなくそこに至る過程を重視することで、あの事件が非常に分かりやすくなっています。また、本作のように歴史的経過を追う作品は事実の要約に終始してつまらないものになりがちなのですが、本作は山岳ベース事件という美味しい部分を山場に持ってきたことで、映画としての面白さがグっと増しています。連合赤軍との付き合いもあった監督にとって本作は思い入れの強い企画だったようなのですが、ただ個人的な思いをぶつけるだけの映画に終わらせず、観客にうける形を追求したことで客観的な完成度も維持できています。俳優の演技も良く、森恒夫と永田洋子の恐ろしさは尋常ではありません。どこかで聞きかじってきたそれらしい理屈を大声で主張し、そんな自分の言葉に酔って周りが見えなくなる森、こういう男って確かにいます。他の女性に対する個人的な僻みや嫉妬心をいつまでも覚えていて、まっとうな理由付けができるタイミングでウサを晴らす永田、こういう女性もいます。彼らをレクター博士やジョン・ドゥのようなモンスターとして描くのではなく、ありふれた人格の延長としてその凶暴性を描いたことで、より恐ろしさが増しています。両者とも指導者には向かないタイプの人間なのですが、組織を結成した大物達が逮捕されるか逃亡したかという状況では、彼らが組織を仕切らざるをえなくなっていました。さらに、学生運動に何万人もが参加していた時代は過ぎ去り、運動では社会を変えられないことが明らかになった時代。少しでも我に返れば「俺達は一体何をやってるんだ」と自覚してしまうことが怖くて、彼らは内面世界へと固執するようになっていました。気に入らないことがあれば「革命のためだ!」と叫んで暴力をふるう、それによって自身の指導力不足と一向に成果をあげられない焦燥感を同時に紛らわせることが出来たというわけです。なんとも恐ろしい世界。しかし、組織のメンバー達も革命ごっこを止めたくないからリーダー達の蛮行に黙って従っていたというのですから、こちらもまた恐ろしい限りです。[DVD(邦画)] 8点(2011-09-23 20:05:26)(良:3票)

11.  60セカンズ 《ネタバレ》 2時間は退屈しないので最悪な映画ではないものの、ストーリー展開及び作品の方向性について「なぜそうなるの?」という疑問点が多すぎて、決して良い映画とは言えません。。。タイトルの「60セカンズ」とは、たった60秒で車を盗んでしまうという盗みのプロフェッショナルのことを指しています。そんなタイトルである以上は、主人公が華麗な技を駆使して車を盗み出すことが作品のハイライトになると思うでしょ?普通。しかし驚いたことに、この映画では60秒で車を盗むという技が一度も登場しません。このことが象徴するように、本作は「車を盗み出す」という物語の芯の扱いが非常に軽く、そのために作品全体がまとまりに欠く結果となっています。盗みの場面における緊張感のなさは異常で、泥棒達が大声で喋るわ、車をボコボコぶつけるわとやりたい放題。警察に見つかるかもということは誰も気にしていないようです。「メルセデスのキー」など物語の前半部分で張っておいた伏線が主人公達を苦しめることもなく、驚くほどスムーズに、かといってプロらしい技を披露することもなく高級車50台を盗んでしまいます。窃盗団のメンバー達の描写も軽く、ヴィニー・ジョーンズやチー・マクブライドは訳ありげに登場したものの、彼らはどんな技を持っていて、作戦の中でどんな役割を果たすのかの説明は一切なく、ヒロインであるアンジェリーナ・ジョリーすら活躍の場を与えられていません。その一方で、ライバル窃盗団との抗争とかドラッグの隠蔽とか犬のフンとか本筋とはまったく関係のない描写が異様に多くて、贅肉ばかりで骨のない映画となっています。そして最悪なのがラストで、嫌な予感はしていたものの、本当にその通りにしてしまったプロデューサーのセンスには恐れ入りました。主人公は、物語の発端を作った悪党のボスを殺してしまうのですが、こいつを殺してしまったのでは車を50台も盗んできた意味がなくなってしまいます。最初からこいつを殺していればよかったわけですから。さらに、主人公達の犯罪がすべて見逃されるという都合の良すぎるオチには唖然。作品中にケイジと刑事が心を通わせたり、お互いを認め合う描写があったのならこんな展開にも必然性が生まれるのですが、そういった描写が一切ない中で、今までケイジを必死で追いかけていた刑事が、突如心変わりして彼を許すという展開は不自然にも程があります。[DVD(字幕)] 5点(2010-09-22 21:10:30)

12.  シャーロック・ホームズ(2009) シャーロック・ホームズについては原作を読んだことも、映像化作品を見たこともないため、少々厳しい鑑賞でした。「多分原作に絡めたネタなんだろうなぁ」という点はいくつか見つけたものの、原作を読んでないのでその面白さは分からず。また、ホームズとアイリーンの関係についての言及もなく、ルパンと峰不二子のような二人のやりとりも楽しめませんでした。こんな感じで原作を知らない人間は置いてけぼりにされるし、かといって推理小説のファンが喜ぶタイプの作風でもない。一体どんな客層を対象にした映画なのか、その製作意図がよくわかりません。古典の新解釈であれば、定石通りエピソードゼロから始めた方がよかったように思います。内容についても中途半端で、アクションメインの作品にしては見せ場が少ないし、かといって探偵ものとしては知的な部分が少々お粗末。観客もいっしょになって推理する形になっておらず、分かったような分からないような主張をする宗教組織の陰謀をホームズが少しずつ解明する様を外野から眺めるだけでは、探偵ものの醍醐味は味わえません。ホームズが推理力や洞察力を披露する場面は多くあるものの、本筋に関わる部分やいざという危機一髪の場面でその能力を発揮していないこともマイナスで(小手先のトリックは見破っても陰謀には気付かないし、常人と同じように敵の罠にかかってしまう)、ここぞというタイミングで彼の非凡さが活かされる場面があれば作品は引き締まったと思います。本作には5人もの脚本家がクレジットされていますが、それぞれの脚本家が得意とするパートを別々に担当しているうちに(ハリウッドではよくある脚本の作り方)、映画としての統一感が欠けたことが原因でしょうか。。。と弱点の多い作品なのですが、ホームズのキャラクターの作り込みは良く、主演にロバート・ダウニーJrを得られたことも幸運で、さらに19世紀ロンドンという異色の世界を舞台にしたアクション大作としての雰囲気作りも出来ているので、シリーズ化にあたっての基礎はかなりしっかりしています。続編はかなり面白いものが出来るはずです。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2010-08-15 20:26:37)(良:2票)

13.  16ブロック 《ネタバレ》 劇中では明言されていないし、レビュワーのみなさんも指摘されていないのであえて言いますけど、エディって知的障害のある役ですよね。つまりモーズリーは、タイムリミットまでにある地点へ到着しなければならないことと、フォレス・ガンプを連れて敵から逃げねばならないことの二つのプレッシャーと戦わねばならないわけです。主人公にタイムリミットを課すアクション映画は多くありますが、その相棒が知的障害者という設定が本作の新機軸。もしこれをマーティン・ローレンスやエディ・マーフィーのような面白黒人の一種だと勘違いすると、単なる鬱陶しい相棒になってしまうわけです。。。本作のようなタイトな作品においては、職人監督リチャード・ドナーの手腕が冴え渡っています。アクションには緊張感が溢れ、ドラマも手慣れたものです。妙に感動させたり、登場人物達に立派なことを言わせたりなどせず、基本はあくまでアクション、ドラマはその合間に差し込む程度。演出は変に欲をかかず、しっかりとしたサジ加減で仕上がっている点が好印象でした。。。リチャード・ドナーのフィルモグラフィーを振り返ると、本作の出現は必然だったように思えます。70年代後半から90年代前半にかけてはハリウッドトップクラスのヒットメーカーだったものの、90年代半ばに彼の転機が訪れます。「暗殺者」「陰謀のセオリー」という気鋭の脚本家によるエッジの立った作品を、立て続けに台無しにしてしまったのです。それ以来、彼はハリウッドの第一線から離れました。自分の感覚が時代に合わなくなったことを察したのでしょう。そして、本当に久しぶりの監督作がこの「16ブロック」でした。ド派手な爆破や銃撃戦のない引き締まった70年代風アクションに、80年代に絶頂を極めたコミカルなバディムービーの要素を追加。21世紀の作品としてはかなり古臭い内容なのですが、これこそドナーの手腕を最大限に発揮できる企画でした。企画の趣旨通り、ドナーはこれに21世紀風のムダな装飾や小理屈を挟まず、贅肉のないシャープな仕上がりとしました。結末にしても、モーズリーを殺して締めるのが妥当な落とし所ですが、安易に彼を殺さず温かみのある結末とした意図的な時代錯誤ぶりも心地よかったです。人生最後の作品と決めて本作を監督したのではないか?そう思わせるほどドナーらしい作品でした。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-06-27 22:16:55)(良:2票)

14.  シャフト(2000) サミュエルがかっこよすぎます。これまたかっこいい音楽に続いてのシャフト登場の時点で「このリメイクは成功したな」と思いました。しかし、肝心の話があまりにつまらなくて倒れそうになりました。。。オリジナルと同じ空気を出すために大作化を意図的に避けていることはわかるのですが、サミュエルの敵がアホぼんと街のチンピラでは、戦う前に勝負がついてるようなもの。クリスチャン・ベール演じるアホぼんも、ジェフリー・ライト演じるチンピラも単独では良いキャラだし、俳優もよく頑張っているのですが、シャフトの敵とするとどちらも役不足。シャフトは大した苦労もせず敵を追い詰め、あっさりと勝ってしまいます。このお手軽さ・無敵さは、もはやセガール映画の域に達しています。アクション映画なら、もうちょっと激しい攻防があるべきでしょう。せっかくシャフトが良かったのに、本作の失敗で続編が製作されなかったことは残念です。[DVD(吹替)] 4点(2010-05-30 17:19:24)

15.  ジャスティス(2002・ブルース・ウィリス主演) 《ネタバレ》 法廷もの、人種問題、人格者の悪役、お坊ちゃんの成長物語、兵士のプライド、脱走計画、これだけの要素を一本の映画にまとめてみせた脚本の出来はなかなかのものです。すべての要素がきちんと関連し合っていて、ラストに向けてすべてが収斂するように物語が計算されており、これだけの要素を放り込みながら闇鍋状態になっていない辺りは見事なものです。娯楽性を保ちながら硬派な題材を扱うことに長けるテリー・ジョージ、本作でも良い仕事をしています。しかし監督がこの題材を扱いきれず、散漫で何が言いたいのかよくわからない凡作になり下がっているのが残念です。収容所に到着するまでの前半部分は、よく出来た見せ場もあってなかなか面白いのですが、本筋がはじまると途端につまらなくなってしまいます。収容所に入ると「脚本通りに撮ってるだけ」という状態になってしまうのです。さらに、地味な本作を興行面で支えるために配置されたブルース・ウィリスが、マクナマラ大佐にまったく合っていないという問題もあります。脚本レベルではもっと深みと威厳があり、知性も感じさせる人物だったと推測されるのですが、彼が演じたためにそれらが失われてしまっています。同時期の「ティアーズ・オブ・ザ・サン」におけるような現場部隊の指揮官役には抜群にハマるものの、指令系統の頂点という役柄にはあまり馴染まないようです。さらに悪いことに、本作で彼に対することとなるドイツ軍のビッサー大佐がよく出来ているために、ウィリスがより浮いて感じられます。[DVD(吹替)] 5点(2010-02-01 21:15:19)

16.  地獄の黙示録 特別完全版 本作がとっ散らかっていることは、この「特別完全版」を見ればよくわかります。映画の完全版といえば、見たことのない場面がいくつか加わる程度のものが大半なのですが、本作における復活シーンはかなりしっかりとした内容です。脚本上はそれなりの重要性があり、かつ手の込んだ撮影がされていたにも関わらずこれらの場面はオリジナルからは丸々削られていたわけで、このことから、撮影時にコッポラの中で映画の全体像が出来上がっていなかったことが推測されます。B級映画の帝王ロジャー・コーマンの下で修業したコッポラに無駄な場面(復活したフッテージはまるで本編に必要がなく、これらを切ったオリジナルの判断は正解でした)を山ほど撮らせることはなかなかの異常事態なのですが、その原因はマーロン・ブランドにありました。カーツ大佐は、神経症とジャングル生活で痩せ細ってはいるが眼光鋭く、得体の知れないカリスマ性に満ちた人物という設定であり、押し寄せる北ベトナム正規軍とカーツの軍隊の繰り広げる死闘が本来のクライマックスだったのですが、ブランドは契約違反とも言えるほどぶくぶくに太って現場に現れ、クライマックスの大アクションを撮れなくなってしまいました。オチが白紙になった状態で撮影を進めざるをえなくなったことで本作は方向性を見失い、その場のアドリブと編集で辻褄を合わせるという無茶なやり方によりなんとか完成。映画の製作過程そのものが、ウィラードの旅と同じく「混沌」に支配されていたのでした。普通なら企画が倒れるか、駄作が生まれるかのどちらかなのですが、コッポラの才能や優秀な現場スタッフの貢献、そして一周して映画のテーマと合致するという奇跡によって、本作は「映画として成立していないが、訳のわからん迫力に満ちた他に類を見ない作品」となったのでした。シナリオ通りのラストであれば映画としては面白くなったはずですが、傑作としての歴史的地位は得られなかったでしょう。禅問答で煙に巻くラストによって何か奥深いことを言っている雰囲気を作り、観客に映画を読み解く作業を与えたことも、結果的に正解でした。。。私?私は失敗作だと思います。ひとつひとつのエピソードは面白くても全体としては統一感に欠けるし、ラストもオチから逃げただけにしか見えません。しかし、失敗作ではあるが駄作と切って捨てられない魅力があるのもまた事実なのです。[DVD(吹替)] 5点(2010-01-24 07:50:56)(良:2票)

17.  ジュラシック・パークIII 世評に逆らってひねくれた点数をつけているわけではないのですが、シリーズで一番面白かったと思います。「1」は理屈っぽい部分の掘り下げが中途半端だったし、「2」における安直な動物愛護精神は意味不明でした。だったら大仰な主張は潔く切り捨ててしまい、ついでに登場人物の数も絞り込んでコンパクトに仕上げた本作が、映画として一番まとまりが良いのです。コンパクトと言っても勢いだけで押し切る短絡的な作品というわけではなく、キャラクターや見せ場は作り込んであります。典型的な大作を得意とするデビッド・コープからドラマ畑のアレクサンダー・ペインに脚本家を変更し、情けない中年おやじ達の成長物語を横軸に持ってきたことで、前作、前々作よりもすんなりと登場人物に感情移入ができるようになっています。グラント博士の登場シーンからしてよく出来ており、エリーと幸せな家庭を築いたと思わせておいて、実は別の旦那と結婚していたサトラー家に遊びに来ていただけという導入部分は最高でした。エリーの子供からは恐竜おじちゃんと呼ばれる始末で、好きなことだけやって歳を重ねるとこうなってしまうという哀愁が漂っています。「1」の時は気鋭の古生物学者だったグラント博士も現在は冴えない中堅の学者で、研究資金も底をついているという切ない状態。そんな彼を再びサバイバルに引き込むのがウィリアム・H・メイシーですが、情けない中年をやらせると右に出る者のいないメイシーは、やっぱり本作でもハマっています。温厚なグラント博士に殴られ、妻からはギャンギャン怒鳴られ、何か言っても誰にも聞いてもらえないダメ親父ぶりをいかんなく発揮。そんな枯れかけの二人が、若かった頃のような自信とバイタリティを取り戻す物語は、定番だけどやっぱりグッとくるものがあります。。。見せ場にも工夫が見られます。「1」「2」とT-REXとラプターを見せ場の中心にしてきましたが、さすがに三度目はないと今回はスピノサウルスとプテラノドンを中心に持ってきた判断は正解でした。知名度の低いスピノサウルスには鮮烈な登場場面を準備し、他の恐竜に比べて攻撃力の弱いプテラノドンには霧に包まれた鳥かごを生かした見せ場を作ることで、T-REX、ラプターに負けない悪役ぶりを披露させています。また、笑いとスリルも絶妙なバランスで調和させており、この監督はなかなか巧いなと感心しました。[映画館(字幕)] 8点(2009-12-31 01:58:03)

18.  ジェシー・ジェームズの暗殺 《ネタバレ》 伝説的アウトローを撃ち殺した男の物語という着眼点の良さ、撮影の美しさ、俳優の演技の良さ等見るべきものの多い作品となっていますが、いかんせん長い。シンプルな話なのにどうしてここまで長くややこしい映画になったんだろうかと、テレンス・マリックの映画を見ている時と同じ感覚を味わいました。映像は綺麗だし、役者は良い表情してるし、何かを感じ取るべき場面なのはわかるけど、いくつかのシーンでそれを見せてくれれば十分伝わるわけで、映画の最初から最後までずっとその調子でやられるとさすがに飽きてしまいます。また長い割に話の整理が出来ておらず、前半などはさほど登場人物が多いわけでもないのに「で、今は誰の話をしてるんだっけ」と何度も話を見失いそうになりました。時間配分も適切とは言い難く、ジェシーが疑心暗鬼になるきっかけとなる仲間内のトラブルや隠し事を必要以上に丁寧に描く一方で、このテーマにおいて重要であるはずの、ジェシーを殺した後のロバートの人生や彼の葛藤については駆け足のナレーションで説明され、それまでイヤというほど見せられた冗長なカットもここにはありません。憧れの対象にいざ出会うと幻滅し、最終的に殺すに至ってしまうというテーマはすごく良いので、もっとストレートな映画にすべきだったと思います。本来わかりやすい話をわざわざ回りくどくすることは、「俺たち芸術的なもの作ってるぞぉ」という監督やプロデューサー(インディーズ作品を好むブラピ)の自己満足のような気がします。映画の外見にこだわって話を難しくする中で、一体何を見せたいのか、見た人に何を感じ取って欲しいのかという意識が薄くなっていったのではと思います。映画の流れを観客の生理に合わせることや、主張を浮き立たせるために映画全体のバランスを計算することは、娯楽作でなくとも重要なことです。[DVD(吹替)] 5点(2009-06-13 22:11:49)

19.  ジェヴォーダンの獣 フランス貴族に並んでインディアン風の男が立っているポスターを見た時点で「これはバカ映画だ」と確信したのですが、いざ鑑賞すると意外にも時代劇としてまっとうな出来なので驚きました。ヴァン・ヘルシングのように「設定だけは時代劇ですが」みたいな軽いものではなく、衣装やセットも手がこんでいるし演出にも重厚感があってよくできているのです。登場人物の演技やセリフもバカっぽくなく、怪しい時代の怪しい田舎の雰囲気も良く出ていて、少なくとも前半はどこの大河ドラマかとでも言わんばかりの仕上がりとなっています。問題のカンフーインディアンも撮影や編集がよかったためか視覚的にはそれほど浮いて感じられず、マニという人物もキャラクターとしてきちんと完成されているので、フランス貴族とカンフーという無茶苦茶な組み合わせなのに巧く見せるなぁと感心しました。ただし話の展開が単調なので後半になると猛烈に退屈になってきます。確かに後半は獣がついに姿を現し見せ場も増えるのですが、話自体が求心力を失っているので見ていてもまったく盛り上がらないのです。「実は○○は~~でした」などという短絡的な怒涛の展開が起これば起こるほどチープ加減に拍車がかかり、クライマックスに行き着く頃には完璧なB級映画になってしまいます。監督もその自覚があるのかないのか、最後のバトルは無茶苦茶で笑ってしまいました。文科系の学者さんで得意の武器は銃だったフロンサックが、インディアンばりのフェイスペイントして二刀流で大暴れ。ブレイドばりに敵のど真ん中へ飛び降りて大見栄を切ると、武闘派マニですら勝てなかった敵一味をひとりで殺しまくります。あんた、そんなに強かったのか?と驚いていると、今度はヴァンサン・カッセルが伸びる剣で対抗。重厚な時代劇としてはじまった話のクライマックスがこれかと、高級フランス料理のデザートがガリガリくんだったような気持ちになりました。安易にアクションで決着をつけるよりも、ジェヴォーダンの獣に関する陰謀や駆け引きをもっと見せて欲しかったような気がします。モニカ・ベルッチの正体をもう少し早く暴いて、闇の勢力とバチカンとの知的な駆け引きを後半の山場にすれば良い映画になったと思うんですけどね。[DVD(字幕)] 5点(2006-11-25 19:42:54)(笑:1票)

20.  ジャーヘッド 前作ロード・トゥ・パーディションがいかにも優等生的でつまらない映画になってしまったので、その反省とばかりにサム・メンデスは本来の持ち味である斜めの視点で本質をえぐり取るという皮肉精神を取り戻しています。ディア・ハンター以降、戦争映画と言えば主人公が「俺は殺人行為をやったんだ」と悩み、戦争で抱えた苦悩を背負う作品ばかりになってしまいましたが、この映画は四半世紀ぶりにその傾向に風穴をあけるような面白い姿勢で作られています。主人公が厳しい体験の中で成長するわけでもなく、悲惨な現実の中で何かの教訓を学ぶわけでもなく、「戦争行ったけど特に何もなかった」ということがテーマの変な戦争映画です。上官に向かって「俺の手で敵を殺させてくれ」と兵士が泣いて頼むという常識はずれのシーンまであります。監督も自分の試みに自覚的だったのか、ドラマ路線の戦争映画として最高の評価を受けるディア・ハンターのビデオにポルノまがいの不倫映像がダビングされてるくだりがあり、一方で「戦争映画としては非現実的だ」との批判を受ける地獄の黙示録を見て兵士が最高潮に盛り上がったりと、「『これが本当の戦争だ』と言ってた今までの戦争映画だって所詮脚色されたもんでしょ?」とでも言わんばかりの挑発ぶり。確かにこの映画の異色ぶりは相当なもので、これまでの戦争映画がどれも判を押したように「悲惨の連続」だったのに対し、この映画が描くのは「退屈の連続」。延々と退屈が続きそこに生死を分ける一瞬が突然やってくるというのが戦場の実態のようですので、「生死」並に大きな要素でありながらこれまで映画が取り上げてこなかった「退屈」という側面をはじめてテーマにしたところにも、この映画の価値はあると言えます。ただしこの監督、挑戦的な内容を扱いつつも映像や語り口に良くも悪くも「えげつなさ」がないという特徴を元々持っており、アメリカン・ビューティーにおいては過激な内容をうまくまとめてさらっと見せる手腕が良い方向で現れたものの、戦争映画においては刺激不足の原因となり、後半に猛烈な長さを感じさせられました。また最初と最後のモノローグは完全に蛇足で、何か意味ありげなあのモノローグは「何もない」がテーマのこの映画の本質をかえって見えづらくしています。[DVD(吹替)] 7点(2006-11-12 21:55:05)(良:1票)

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