みんなのシネマレビュー |
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2. 16ブロック 《ネタバレ》 アメリカンニューシネマの微かな香りのする作品。多種多様な映画が存在する中でこの作品はうもれてしまうかもしれないが、この香りを感じ取れればなかなかの一品だ。いつの時代にも通用する映画だが、もしかするとブルース・ウイルスゆえに固定概念が強すぎせいなのか。「ガントレット」と構図は一緒だが、「バニシング・ポイント」や「コンドル」のテイストが練りこまれている。リチャード・ドナー起用はそのためかもしれない。アクションの派手さや奇抜な演出が作品の善し悪しと思われる昨今だが、既にやり尽くしたあたりのジャンルの隙間を狙った優れた作品だと思う。[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-04-13 03:26:54)(良:1票) 3. シェルブールの雨傘 当時のハリウッドの絢爛豪華なセットと、急にオーケストラが鳴り出して歌いだすミュージカル映画に反発して、あえて全編セリフすらも歌にしてしまう試みは衝撃的だ。この監督のコンセプトを知らずして「セリフまで歌の必要性があるか」のレビューはあまりにも切ない。 衣装もパステルや原色のはっきりした色を配置し、あくまで非現実感を演出。徹底的にハリウッドのそれらに喧嘩を売っている。しかしそれだけでは企画倒れになりそうなところだが、当時二十歳のカトリーヌ・ドヌーヴの神々しいまでの美しさと明るさと切なさを織り成すミシェル・ルグランの楽曲、そして誰しもが経験する「戻すことのできない時の流れと、かつて愛した人との別れ」という王道テーマによって最後まで描ききったのは見事だ。[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-01-13 16:26:00)(良:2票) 《改行有》 4. ジュリエットからの手紙 不思議な映画の魔力を秘めている作品、それが鑑賞直後の印象。ベタで先が読める展開が「つまらない」ではなく、「だからこそ良かった」と素直に受け止められる。初見なのに「こういう映画好きなんだよなあ、もう1回見よう!」と思いながら見ている気分。まさに録画していたスポーツの勝ちゲームを見ている気分なのだ。ストーリーに翻弄されないから、映像や演技をしっかり堪能できる「余裕」や「安心感」を与えてくれるのだ。イタリアの美しい風景や50年前の恋人探しのクレアの少女のような美しさ、それを手伝うソフィのナチュラルな可愛さを感動できるのはまさにこのシンプルなストーリーのおかげなのだ。さらに感動を高めているのは、実際にヴェローナで「ジュリエットの秘書」たちによって行われている「ジュリエットレター」というなんともロマンチックなやり取りにすでに心打たれているからだ。おそらく今は亡きゲイリー・ウィニック監督やプロデューサーのエレン・バーキンもこの事実に相当ほれ込んだに違いない。それにしてもヴァネッサ・レッドグレーブが素敵過ぎる!あのブルーアイズの美しさは最近の洋画界でも特筆もの。彼女の瞳が50年をすべてあらわしているのだ。普通に考えれば、夫が亡くなって初恋探しをすることに後ろめたさを感じる可能性も無いわけではないが、彼女の立ち振る舞いと美しさはその夫としっかり愛情ある夫婦生活を送ってきた自負と威厳がある。おそらく亡くなった夫もあの世から応援しているかもしれない、とまで思えてしまう。一方ソフィも二人の男性の間で揺れ動くと思いがちであるが、すでにすれ違いはニューヨーク時代にさりげなく披露されており、別れは時間の問題であったことが伺える。ご都合主義、出来すぎと思いながらも、納得できてしまうのはそんな出演者の演技と演出によるものと感じずにはいられない。本来なら8点かもしれないが、震災以降の自分にとっては亡き監督と出演者への感謝の気持ちと、自分のメンタリティが映画によって救われるという「映画の魔力」を再認識させてくれた意味でプラス1点。[試写会(字幕)] 9点(2011-05-17 10:00:08)(良:4票) 5. JAWS/ジョーズ 《ネタバレ》 今作ればもっと本物っぽく、鮫の目線やもっと緊張感ある視点で表現できるかもしれない。でもそれはあくまでCG。機械っぽく動こうが動きが緩慢だろうが公開時の人にはそれを補う想像力があったように思う。船からみた鮫のでかいこと!これだけで十分なのだ。また、鮫を弱らせるための樽も一瞬「これで勝てるかもしれない」と思わせながら、それをつけながらもぐってしまう半端ない鮫の体力に絶望感を味わせる見事な表現。しかもそれは後にその樽そのものが鮫の出現を意味する演出。スピルバーグはどこまで冴え渡っているのだろう。彼は静と動の使い分けもすごい。樽の再出現直前で交わされる3人(2人?)の傷自慢から船長の大戦時の忌まわしい記憶、そして鮫が襲うときに見せる一瞬の白目のエピソード、静かな恐怖も観客にしっかり刷り込んでいるのだ。当時のポスターデザインも秀逸。CGのない時代に作られたからこそできた名作かもしれない。[映画館(字幕)] 10点(2009-03-02 02:19:15)(良:1票) 6. シービスケット 《ネタバレ》 まず、直感で8点。ストーリーの構成がマイナス1点。3人をすべて最初から説明する必要があるのだろうか?自動車で大成功を収めた大金持ちのハワーズがなぜ落ちぶれてさびしい暮らしを送っているのか?トムはなぜ殺されるはずの馬を助けようとしたのか?ジョニーはどうして片目が見えないのか?3人のうち1人だけでも後半まで引っ張ってもいいのではないだろうか。すべてを実直に均一で紹介をしたため、シービスケットと出会うまでに30分以上もかかってしまい、そこまでのモチベーションがなかなか持ちにくい印象を受けた。しかし、それぞれが名優。一度説明してしまえば後は何も描かずとも彼らが見事に行間を埋めてくれる、監督はそこに賭けていたのだろう。邦画の場合もこのケースが多いが、この映画のいいところは、そのマイナスを補っても余りある名シーン・名セリフが中盤から登場する。地味ながら一般市民の代表的な存在のDJはもちろんだが、ライバル騎手ウルフが特に素晴らしい。役を演じたゲイリー・スティーヴンスは殿堂入りも果たした本物中の本物のジョッキーであると後に知るのであるが、ヘンリー・フォンダの雰囲気漂う誠実さはとても素人とは思えない。間違いなくこの作品をさらに高めているのだ。ラストのレースシーンのスタート前や騎乗中の行動や言葉は何度見てもこみ上げるものがある。その他、ジョニーの欠陥を知って憤怒する調教師が、逆にハワーズの一言に納得するあたりは、絶妙なバランスの人間関係である。そして何よりレースシーンがすごい。ベンハーのレースシーンを髣髴とさせるカメラアングルは必見!対抗馬と並び、目が合った瞬間のシービスケットのダッシュは思わず「うおおー!」と唸るほどの興奮だ。そしてラストのジェフ・ブリッジスが勝利に狂喜乱舞するのではなく虚脱したようにへたり込む仕草が素晴らしい。心の底からレッドとシービスケットを心配し、そして見事再生する命の輝きを目の当たりにした人間の真の反応だ。プラス2点!1年に1回は見たくなる作品に久々に出会った。[DVD(字幕)] 9点(2006-05-08 19:41:42)(良:2票)
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